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第1章
16 訳あり人①
しおりを挟む「リオーネ様!リオーネ様!」
私はただいま廊下を淑女らしくなく全力で逃走中である。もし、ここでマナーレッスンのイザベル先生が居たらとても怒られるがバレなきゃいいのだ。
そして、走る理由は私を追いかけてくるこの人にある。
「もー!なんですの!ウィル様、あなたお兄様の剣術の稽古があるでしょう!なぜ私のことを追いかけてくるのです!?」
立ち止まり彼の方へ向く。私は武術とか剣術とか習っていないので体力があまりないのだ。走るなんて数分も持たない。
(体力作りしたほうがいいわね…)
「もちろんこれから稽古もあるのですが、最近リオーネ様を稽古に誘っても見に来てくれないとアルベルト君が寂しがっていまして、中々集中できないみたいで…一度でいいので見に来てもらえませんか?お願い致します」
綺麗な礼(90°)で頭を下げられる。
(お兄様ぁぁぁ!寂しがってるって可愛いけど今はあかんんん)
「寂しがってるって…それでも稽古は稽古でしょう!妹が見にこないと言って出来ないのはダメでは?貴方も講師という立場ならガツンと言いなさい!!」
口調が素に近いがそれどころではない。
(これ以上私に話しかけないでー!変な風に関わってゲームのイベントが始まったらめっちゃ困るって!)
「それは…確かにその通りです。私がしっかりしないと…。わかりました、ですがせめて何故来られないのかだけでも教えていただけませんか?」
「レッスンと講義が多いからです。」
これは即答ですね。他に言いようがないし。
「それは存じ上げております、なら言い方を変えましょう。
何故私を避けているのでしょうか?私は何か気づかないうちに貴方に失礼なことでも?」
急に核心を突いてくる。
「いいえ、何もされてないですよ。大丈夫です、最近レッスンや講義が忙しいのでまた機会が会ったら伺いますね。それでは、ごきげんよう」
そそくさと早歩きをしてその場から立ち去ろうとする。すると、急に右手を取られ壁際に責められる。
「きゃっ」
(わぁーこれが壁ドンかぁ)
めんどくさい男は嫌われますよって言ってやりたい。
「どうせ…どうせ貴方もなんでしょう?どうせ俺は愛人の子なんだ…。貴方も俺の事を馬鹿にしているのでしょう?だから、俺が講師と紹介を受けたとき不思議そうに俺を見たんだ。はいはい、どうせ俺は愛人の子。みんなの嫌われ者なんだ……くそっ…グズ」
13歳のウィリアム・カイザー君。人に壁ドンをかましたくせに急に1人で怒り急に泣き出しています。
(やばい、私が泣きそう)
なんでこう私の周りには泣き叫んで黒歴史を作る男が多いのか。
ひとまず、前のお兄様同様に背中をポンポンする。
この人、これからどうしようか…
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