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第1章

17 訳あり人②

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「……ヒック……ヒック」

あれから5分くらいたちました。少し落ち着いてきたようです。

(あー腕が疲れる。)

いつ止めていいかも分からないのでずっと背中はポンポンしたりさすったりを繰り返してました。

(…にしても、どうなんだろうコレ。泣いている13歳の少年を4歳の幼女が慰める図って…また、私の悪役令嬢的な話しが浮上したりしないかな…。)

前世の記憶を思い出す前は周りの人に悪態を当たり散らしてたのでそれはそれはすごい悪口という名の噂がたくさん流れてました。

(まぁ、がんばって改善したけどね)

おっと、今の状況を忘れてた

「…ウィル様、大丈夫ですか?」

「………うん、もう死にたい」

あれ?病んでるー。この人忙しいな

私のことを追いかける

武術稽古見に来てとお願いする

謝る

自虐ネタでキャラ崩壊

泣く(年下に慰められる)

病む(いまここ!)

「はいはい、生きてくださいねー。というか、このままじゃ稽古なんて無理ですね。移動しますよ」

病んでるウィル様を連れて私の部屋へ。
部屋にはコレットが掃除をしていた。

「お嬢様!どちらに行かれてたんですか…え?ウィリアム様?あれ?泣いて…」

「はい、コレットこっちに来なさい。」

これ以上ウィル様が壊れないためにもこの天然爆弾を先に駆除しなければ。

「コレット、ウィル様は体調が悪いから今日の稽古は中止だとお兄様かお兄様の従者に伝えておいて。あと、私の部屋にいることは伝えないで。それと、私の部屋はしばらく誰にも立寄らせないで。」

「え、でもなんで…「頼んだわよ。」…はい、かしこまりました」

コレットの長所は好奇心旺盛、短所はKY(あえて空気を読まない)だな。なんて思いながら彼女を見送る。

部屋に戻るとウィル様は突っ立ってぼーっとしていた。

「ウィル様?大丈夫ですか?そこのソファに座ってくださいませ。いま紅茶を入れますわ」

「…え、あぁいや。大丈夫だ、です。すいません」

混乱してるみたいだ。

「敬語なしでいいですよ、そっちの方が楽ですし」

「いや、それはいいです。カイザー家は伯爵家なのでヴェルナー家である貴方に敬語を使わないなど不敬にあたります。」

「え、それ言ったらさっきの事も不敬になりますよ。私も素で話すので二人きりのときくらい別によくないですか?」

「……え、素とかあるのか?」

「誰でもあるんじゃないですか。そっちの方がやっぱり話しやすいですね。」

「はぁ…なんだかどっと疲れが出てきた…」

そう言うと急にぐったりと椅子にもたれかかる。

(ウィル様、こうしてみるとただの中学生だな。)

じっと彼の顔を見過ぎた。彼は私と目が合うと少し睨むように言う。

「なんだよ?…やはり俺は醜い愛人の子だとでも?」

さっきから愛人の子ってワードがよく出るがなんのことだろう。ゲームにもそんな設定なかったと思うけど…

「それ、さっきから言ってますよね?愛人の子ってなんですか?」

「……え?知らないのか?俺はカイザー伯爵の愛人の息子なんだけど…」

「知りませんね。今初めて知りました」

こっちを見たまま固まるウィル様。そんな有名なのか?

「つまり、君は何も知らなくて俺が自分で教えたのか?……あ、あは、あはは、無様すぎる…」

今日はウィル様とても壊れてますね。ひとまず紅茶を渡して私も席に座る。

「ふーん。ご愁傷ですね」

「人が悩んでることを、ふーんって…」

「だって私には関係ないですし。」

まるで豆鉄砲をくらった鳩のような顔をしてこちらを見る。

(え?なんか変なこと言ったか?)

「…?というか、何故愛人の子なのにカイザー家にいるんですか?」

「……あ、あぁ。それは、カイザー伯爵夫人は子供がてきない体質で、ストレスのたまった伯爵が外に愛人を作り俺が産まれたんだ。

でも、最初は赤の他人だった。俺だって父親はいないって思ってて母と一緒に暮らしてたんだ。だが、ある日急に屋敷に連れてかれて母は俺を置いて言った。まぁ、簡単に言えば売られたんだ。

そこから地獄が始まった。俺は髪も目も母に似てしまったから伯爵夫人から見ると嫌なものだったんだ。愛人の子だと周りには距離を置かれ、伯爵だって用がある時以外は俺には会いになんて来なかった。

一日中講義やらなんやらで計画され、ただ俺はそれの通りに動くだけだったんだ。まるで、指示をされてただその通りに動く駒にすぎなかった。

そんな俺に仕事がきた。君の兄、アルベルト君の剣術稽古だった。伯爵には恥のないようにやれと言われ俺はそれに頷いた。恥のないように、恥のないように。そうしないと、俺はまた売られるかもしれない。また伯爵夫人に蔑まれ鞭で打たれるかもしれない。結局俺はどんな扱いを受けてもこの家から出たくないんだ。もしかしたらこれ以上に最悪な所があるかもしれないと、怖がって。

だから、俺はこの仕事を絶対に失敗しないように。上手くいくように。態度を改めて喋り方も変えて最初はいい調子だった。そして君に出会った。
一日しかあってないのに君は俺を避ける。何故避けるのかと考えてしまって仕事に集中できなくなった。何か俺がしたのか?俺が醜い姿だからか?愛人の子だからか?」

今までのストレスを吐くようにぶちまける。

(あぁ、もう!うっぜえし長いし。しらねぇーよ!)

その瞬間、両手を彼の頬につけて勢いよく叩いた。

パァンっ

「貴方が愛人の子だろうがなんだろうが知ったこっちゃないんですよ。ていうか、どうでもいい。髪や目の色が愛人と同じだからいじめられる?はぁ?そんだけ綺麗な色してて何コンプレックス感じてんですか。そんなに嫌なら染めればいいでしょう。私が貴方を避けたって貴方は鞭で打たれませんよ。貴方の仕事はお兄様の剣術稽古でしょうが。だったら今ここで泣きべそかいてる方が鞭打ちですよ。ったく、愛人の子がそんなに気になるんですか?だったら、逆に開き直って俺は愛人の子だーっとかいってスキップとかしとけばいいですよ。そうすれば、どうでもよくなりまよ。きっと!」

思いっきりノンブレスで言ってやる。
するとウィル様は顔を抑えて笑った。

「…くくっ。あはははは!スキップか!それをやったら俺は別の意味で距離を置かれるよ!」

「な!そんなに笑わなくてもいいじゃないですか!」

お腹を抑え笑っている。

「あはははは!はー。こんなに笑ったのは久しぶりだ」

「ふふ、そういえば言いますけど初めて貴方に会った時私が不自然に止まったのは貴方が思ってたより若かったのと。もう一つ、貴方のその淡い水色の髪と藍色の目がとても美しかったからですよ」

「…………え」

顔を真っ赤にしてこちらをみる。
耳まで真っ赤だ。

(結局、関わらないのは無理だな。)

彼はその日から何か吹っ切れたように、前よりも美しく笑うようになった。そして、二人だけのお茶会という名の愚痴り会が週一に開かれるようになった。



ある日の愚痴り会

「リオーネ様、後からそちらに伺っても?」

「えぇ。お待ちしておりますわ。」

~10分後 ~

「リオーネ!聞いてくれ!また伯爵夫人がさー、まったく貴方は出来の悪い子ね。誰に似たのかしらとか言って皮肉言われたんだけど!!」

「へー。大丈夫だよ。そーゆーこと言う人は心がブサイクなんだよ。はいって笑って心でバカにしときなよ。」

「本当だよ!!それでさ!…」

まるで女友達みたいになりました。





☆遅くなりまして申し訳ございません
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