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第1章 家族
朝
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「大分、衰弱しておいでです。体も12歳にしてはあまりにも栄養が足りておりませんね。あと…発熱があり、異常に汗をかかれていたため調べたのですが…毒を飲まされた形跡があります。…報告は以上です。」
私は父上の執政室で王宮医師にシルフィオーネの容態を聞いていた。
「毒はあちらで抜かれたのでしょう。最悪の場合は避けられています。が、少量の毒がまわり熱が出ているようです。
料理長を通して栄養があり食べやすいものを出してもよろしいでしょうか?あと、異国の薬で非常に打ち身や痣に効く薬があるので取り寄せてもよろしいでしょうか?…高価なものなので値が張るのですが」
「金はいくらかかっても構わん。出来るだけ身体の傷は治せ。料理長は…レオン」
「はい、私から伝えておきます。」
「あぁ。」
☆
「ん……ん?」
私は今までに触れたことのないような柔らかな白い生地のネグリジェを着て、私が寝るには広すぎるベットの上にいた。
どうして?
確か、お兄さん…レオン様に王宮に連れて来られて、お話して、泣いて…寝ちゃった?
うそ
ばっと、ベットから降りて部屋を見渡す。
部屋にはベット、サイドテーブル、小さなソファが置いてある。
まぁ、後宮に置いてある家具とは桁が違うような高級感があるが。
右側には扉があり、出入りするにはこの扉を使うようだ。
どこに続いているかもわからないのでそぉーっと取手を捻り、隙間から部屋を除く。
その部屋は机にソファもあり、なんかだだっ広い部屋だった。
ひとまず、誰も人は居ないようで入ってみる。奥には大きな窓があり、そこからは小さな家がたくさんあり、人が行き来する街と呼ばれるような景色が見えた。
それをただ、ぼぉっと見つめる。
あんなに人っているんだな……
空は青く、サンサンと太陽の光を浴びる中で
談笑したり商売したり、小さい子なんかは走りまわっている。
もちろん、この部屋の窓から街は遠くて目を凝らしても手前の見えやすい所しか見えないし、聞こえないから想像だが。
不思議な感情だ。なにかがもやっとした。
コンコン
扉を優しくノックする音が聞こえ、返事をするべきか迷う。しばらくすると、静かに「入ります。」と聞え、マーサが入室してきた。
「…っシルフィオーネ様!おはようございます。お目覚めとは知らず勝手に入ってしまって申し訳ございません。」
「いえ…大丈夫…おはようございます、マーサ」
「はい、おはようございます。シルフィオーネ様」
昨日より喉の調子がいい気がする。
にこやかに微笑みかけてくれる彼女は優しく挨拶を返してくれた。
こんなに心地よい朝が今までにあっただろうか。
朝起きて、自分で支度をする。
もっと幼い頃はメイドが手伝ってくれたけれど、ドミニカ様が「そんな子を手伝うくらいなら私の手伝いをしなさい。」といい、メイドを連れて行ってしまった。
それからは一人で支度をし、一人で放り出された朝食(とも呼べない野菜)を食べ、ラベンナ様の皮肉から始まる。
あぁ、ここに住めたらどんなにいいことか。
そんな夢をマーサの笑顔を見つめながら思ってしまう。
そうして、私は気がついた。
あれ?
昨日、レオン様にここに連れてこられた?
あれ?
1日たってない?
いま、朝?あれ?
「ま、マーサ…私が寝て、どれくらい、経っているでしょうか?」
「はい、昨日シルフィオーネ様は熱が出てしまいまして、お休みになりました。今はそれから一日が経って、次の日でございます。」
一日が経っている……!?
まずい…
何がまずいかって?
それは…皆様を覚えているだろうか。
昨日、私はどうしてレオン様に出会ったのか。
それは、ドミニカ様に庭に放り出されたから。だったら、庭にいない私をドミニカ様はどう思うか。
きっと、あの人だったらあのまま夜まで私を放置だろう。次の日になりやっと後宮に入れてもらえるのだ。
毎回のごとく、「あぁ、虫が戻ってきたわ」とでもいいながら。
では、今の状況は?
庭にはいくら探しても私はいない。では、私の代わりにあの人とその娘の玩具になるのは…?
それは残された、ミーナやその他使用人たちだ。
何をされるのか…蹴られ殴られ罵倒され、鞭を打たれるかも。もしかしたらもっと酷いことをされるかもしれない。
早く、早くあそこに戻らなければ。
焦りはじめ、どうやってここからに帰るかを考える。
すると、マーサが心配そうに覗いてきた。
「し、シルフィオーネ様?どうかされたのですか?体調が悪いのですか?」
違う違うと首を横に振り、道もわからず部屋から出ようと扉を片っ端から開ける。
浴室、トイレ、ドレッサールーム、寝室、応接室
開けても開けても、廊下らしき所に繋がらない。
部屋中を駆け回る。そして、先程マーサが入ってきた扉を勢いよく開け、飛び出した。
後ろからマーサの声が聞こえるが、振り向きもしない。
ただただ、後宮でいつも陰ながら心配し、優しく接してきてくれた使用人たちを思い出す。
涙をこらえながらもその長い廊下を、まだふらつく足で踏ん張って走る。
早く、早く!!
不意にグンっと体が後ろに引っ張られた。足は浮かび、体には浮遊感がある。
私の体を掴むその手は分厚く、支える体は大きい。
「…何をそんなに急いでいるんだ。」
私は父上の執政室で王宮医師にシルフィオーネの容態を聞いていた。
「毒はあちらで抜かれたのでしょう。最悪の場合は避けられています。が、少量の毒がまわり熱が出ているようです。
料理長を通して栄養があり食べやすいものを出してもよろしいでしょうか?あと、異国の薬で非常に打ち身や痣に効く薬があるので取り寄せてもよろしいでしょうか?…高価なものなので値が張るのですが」
「金はいくらかかっても構わん。出来るだけ身体の傷は治せ。料理長は…レオン」
「はい、私から伝えておきます。」
「あぁ。」
☆
「ん……ん?」
私は今までに触れたことのないような柔らかな白い生地のネグリジェを着て、私が寝るには広すぎるベットの上にいた。
どうして?
確か、お兄さん…レオン様に王宮に連れて来られて、お話して、泣いて…寝ちゃった?
うそ
ばっと、ベットから降りて部屋を見渡す。
部屋にはベット、サイドテーブル、小さなソファが置いてある。
まぁ、後宮に置いてある家具とは桁が違うような高級感があるが。
右側には扉があり、出入りするにはこの扉を使うようだ。
どこに続いているかもわからないのでそぉーっと取手を捻り、隙間から部屋を除く。
その部屋は机にソファもあり、なんかだだっ広い部屋だった。
ひとまず、誰も人は居ないようで入ってみる。奥には大きな窓があり、そこからは小さな家がたくさんあり、人が行き来する街と呼ばれるような景色が見えた。
それをただ、ぼぉっと見つめる。
あんなに人っているんだな……
空は青く、サンサンと太陽の光を浴びる中で
談笑したり商売したり、小さい子なんかは走りまわっている。
もちろん、この部屋の窓から街は遠くて目を凝らしても手前の見えやすい所しか見えないし、聞こえないから想像だが。
不思議な感情だ。なにかがもやっとした。
コンコン
扉を優しくノックする音が聞こえ、返事をするべきか迷う。しばらくすると、静かに「入ります。」と聞え、マーサが入室してきた。
「…っシルフィオーネ様!おはようございます。お目覚めとは知らず勝手に入ってしまって申し訳ございません。」
「いえ…大丈夫…おはようございます、マーサ」
「はい、おはようございます。シルフィオーネ様」
昨日より喉の調子がいい気がする。
にこやかに微笑みかけてくれる彼女は優しく挨拶を返してくれた。
こんなに心地よい朝が今までにあっただろうか。
朝起きて、自分で支度をする。
もっと幼い頃はメイドが手伝ってくれたけれど、ドミニカ様が「そんな子を手伝うくらいなら私の手伝いをしなさい。」といい、メイドを連れて行ってしまった。
それからは一人で支度をし、一人で放り出された朝食(とも呼べない野菜)を食べ、ラベンナ様の皮肉から始まる。
あぁ、ここに住めたらどんなにいいことか。
そんな夢をマーサの笑顔を見つめながら思ってしまう。
そうして、私は気がついた。
あれ?
昨日、レオン様にここに連れてこられた?
あれ?
1日たってない?
いま、朝?あれ?
「ま、マーサ…私が寝て、どれくらい、経っているでしょうか?」
「はい、昨日シルフィオーネ様は熱が出てしまいまして、お休みになりました。今はそれから一日が経って、次の日でございます。」
一日が経っている……!?
まずい…
何がまずいかって?
それは…皆様を覚えているだろうか。
昨日、私はどうしてレオン様に出会ったのか。
それは、ドミニカ様に庭に放り出されたから。だったら、庭にいない私をドミニカ様はどう思うか。
きっと、あの人だったらあのまま夜まで私を放置だろう。次の日になりやっと後宮に入れてもらえるのだ。
毎回のごとく、「あぁ、虫が戻ってきたわ」とでもいいながら。
では、今の状況は?
庭にはいくら探しても私はいない。では、私の代わりにあの人とその娘の玩具になるのは…?
それは残された、ミーナやその他使用人たちだ。
何をされるのか…蹴られ殴られ罵倒され、鞭を打たれるかも。もしかしたらもっと酷いことをされるかもしれない。
早く、早くあそこに戻らなければ。
焦りはじめ、どうやってここからに帰るかを考える。
すると、マーサが心配そうに覗いてきた。
「し、シルフィオーネ様?どうかされたのですか?体調が悪いのですか?」
違う違うと首を横に振り、道もわからず部屋から出ようと扉を片っ端から開ける。
浴室、トイレ、ドレッサールーム、寝室、応接室
開けても開けても、廊下らしき所に繋がらない。
部屋中を駆け回る。そして、先程マーサが入ってきた扉を勢いよく開け、飛び出した。
後ろからマーサの声が聞こえるが、振り向きもしない。
ただただ、後宮でいつも陰ながら心配し、優しく接してきてくれた使用人たちを思い出す。
涙をこらえながらもその長い廊下を、まだふらつく足で踏ん張って走る。
早く、早く!!
不意にグンっと体が後ろに引っ張られた。足は浮かび、体には浮遊感がある。
私の体を掴むその手は分厚く、支える体は大きい。
「…何をそんなに急いでいるんだ。」
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