愛される王女の物語

ててて

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第1章 家族

ただの事情聴取

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そのあとは、ソファに座りニクロスと他愛もない話をしていた。

「…シルフィオーネ様、つかぬ事をお聞きしますが、何故、ネグリジェなのですか?」

そう言われ、やっと忘れていたことを思い出す。まだ着替えてなかった!!!!

恥ずかしくて、ついつい顔を逸らす。
ニクロスは私の頭をそっと撫でると、マーサを呼んでくれた。

マーサはどうやら私のことを探していたようで、まさか陛下の執務室にいるとは思わなかったらしい。

「全く…あんなふうに廊下を走っては行けませんよ。部屋の扉もです。あんなふうに開けるものではありません。それにネグリジェのままで陛下に会うだなんて…もってのほかです。いけませんよ。めっです。」

「…はい、ごめんなさい。」

そう、くどくどと言われ続けた。
仕方がないと言ってもあの時は確かに品が無さすぎた。しかもここは王宮なのだ。そんな事をしていいはずがない。…反省

そうして、着替えさせられた青と深緑のグラデーションがかかるドレスを着て、遅いから軽い朝食だと出されたサンドウィッチに手をつける。

サンドウィッチには野菜だけでなくフルーツも挟まっていれば、ハムと呼ばれるお肉も挟まっていた。……とても、とても美味しかった。


一通りの身支度を済ませ、何故だかまた執務室に案内される。

執務室には陛下、ニクロス、そしてレオン様の姿もあった。

「おはよう、シルフィオーネ。」

「おはようございます、レオン様」

すると、ぽんぽんと彼の隣の椅子が叩かれる。近づいて隣に座ると、紅茶を出された。

「シルフィオーネ様、ネグリジェ姿も可愛らしかったですが、ドレス姿もより一層可愛らしいですね。妖精さんみたいですよ!」

「あ、ありがとうございます」

どう返したらいいかわからず、ひとまずお礼を言っておいた。

そのままニクロスが口を開く。

「シルフィオーネ様…もし良ければなのですが。嫌だったら断って頂いても構いません。貴方に任せます。……貴方は後宮で、何をされましたか?」


陛下も、レオン様も、ニクロスも私に悲痛な面持ちのある顔で見つめてくる。
思い出したくもない今までのことをわざわざ思い出させて聞くのだから。
そりゃあ、罪悪感を感じるだろう。
本当に聞くの?…本当に?
より聞いたことを後悔するかもよ…?

そんなことを思いながらも、私は淡々とまるで他人事かのように話し始めた。

身体の節々に出来た傷をひとつずつなぞり、痛みを思い出しながら丁寧に、それは丁寧に伝える。髪の毛も、腕も、足も、背中も、首も、頭も、声も。時には外に出され、時には部屋から出してもらえず。

食事はまともなものが出て来ない。そんなとき私にパンを持ってきたメイドはどうなった?冬に外に出され、私のためにブランケットを持ってきてくれたメイドも。

──あなた方は、後宮に住むあの毒婦がどれほどの屑がご存知?そして、その娘も。

昨日までされたことを大方全て言い終わる。

陛下は青筋を浮かべ、どこか一点を見つめていた。

レオン様は両手で顔を覆い、表情がわからない。

ニクロスはぐっと右手を握りしめ、目を閉じている。

そのまま誰も話さない時間が続いた。
その沈黙を破ったのは、昼食を呼びに来たメイドだ。そのまま皆様は昼食を取りに行き、何かをずっと考えているようだった。


何かをね。


◇おまけ◇

これは、シルフィオーネがマーサに連れられ
執務室に残された男二人の話。




シルフィオーネ様が部屋を出ていかれてから何かがおかしい。
空気が突然重たくなり、ぞっとするような悪寒が背中を走る。

その原因である陛下は何かが気に入らないようでとても機嫌が悪そうだった。

また俺が何かしてしまったのだろうか。
国宝級の花瓶を割ったり、大事な書類に紅茶を掛けてしまったり、色々とやってきたがその時と筆頭するほどの機嫌の悪さだ。

長年、幼なじみとして一緒にいる俺ならわかる。逃げるが勝ちだと。

「……じゃ、じゃあ、私はそろそろ仕事に戻ろうかなー、なんて」

「待て。」

さっと扉のノブに手をかけた所で止められてしまう。


「……もう!なんなんだよ!
あれか?姫様の前で敬語を外したからか?それとも、姫様のネグリジェ姿を見たからか?それとも、こんな可愛い娘が俺も欲しいなぁ!と思ってしまったことか?」

やけくそになり思ってることを全て言ってしまう。これは俺の悪い癖だ。
陛下は眉間に皺を寄せながら、はぁ?という顔をする。
違うのかよ!!

「………触っただろ」

「……え、何を」

そう言いつつ考える。俺がさっき触れたもので、コイツの機嫌を損ねるもの…?
……………ハッ!

もしかしてシルフィオーネ様……?

「え?俺が?シルフィオーネ様の?頭を?撫でたから?しかも、自分より先に?
え?それが気に入らない的な?
え?それがムカついちゃう的な?」

「……」

「あらあらあらあら、陛下もしかして自分よりも先に俺が触っちゃったのが気に入らないのねぇ~!ごめんなさいねぇ~!触っちゃった!さらさらの髪の毛で可愛らしい頭触っちゃった!っっっって、ちょっと待て!!!」

陛下は鞘から剣を抜き、早々俺をぶったぎる構えをしていた。殺気に溢れやる気(殺る気)満々である。

「…お前の最後の遺言くらい聞いてやる。これでも、昔馴染みだ。言ってみろ」

「すいません!ごめんなさい!申し訳ございません!!もう言いません!触りません!俺が悪かったです!許してください!!」

「そうか…じゃあ、死ね」

そういって思い切り振る。
俺は死にものぐるいでそれを避ける。
剣は俺が土下座をしていた所にしっかり刺さっていた。

「ひぃぃぃぃ」

「おい、動くな。王命だ。」

「ごめんって!!ごめんって!!!」

「………何をやっているのですか」

そこで救世主レオン様がご入室して下さった!

「レオン様ァァァァァァ!!助けてくださいぃぃぃぃぃ!!」

「……何をしたらここまでまた父上を怒らせるのですか。貴方はそれでも宰相なのですか。」


そう言いつつもレオン様は陛下を止めて下さり、俺は一命を取り留めた。


ただ、誤算だった。それほどまでに陛下がシルフィオーネ様を気にかけていらっしゃるとは…

シルフィオーネ様は確かに可愛らしい。というか、完全に姫君だ。

俺がシルフィオーネ様を王女だと確信がもてた青い瞳。そして、ソフィア様譲りの銀色の髪。真白く透き通るような肌で、小柄な方だ。

可愛らしいし、なんというか守りたいと思える。

だが、陛下がそんな事を思うか…?
あの陛下が?

陛下は幼い頃から愛というものを理解できなかったと思う。それは、彼が先王の12番目の王子で、先王も、実の母である妃も陛下を愛でることも無く、ただ産み落とされた赤子というべきだった。

だから、彼は愛というものが欠落していた。
ただ、他のところが全てずば抜けており、血を流しながらも上り詰め、今の地位に立った。

国王というものになってもその欠落した愛は生まれず、迎え入れた妃にも、王子にも、家族愛を表すことは無かった。

ただ、最近は少しずつ王子様との距離が変わったかと感じていたが…まさか、シルフィオーネ様も…

だとしたら、いいことなのかもしれない。
陛下に愛がわかるようになれば、もう少し人間らしくなるだろう。

俺はシルフィオーネ様という存在に期待をした。

あ、そのまえに血祭りがあったな…



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