1 / 1
1話
しおりを挟む
大層な名で呼んでもらっているのに。
何故私が婚約破棄される事になった? いや、そもそも婚約者であるクリストファーがこの国にいる事自体がおかしいんだ。
アイツは確か今は隣国に留学している筈じゃなかっただろうか。
大体私の『祝福』は“闇”だった筈じゃ無かったのか? 何故私の方が“光”になっているんだよ! ああクソ、何か頭が割れそうに痛い。
……駄目だ、これ以上考えても何も答えが出なさそうだ。
兎に角今はその事は置いておこう。
兎に角、今の私は“悪役令嬢”と言う存在になっているらしい。
それに最近記憶が混濁しているのもきっとそのせいだろう。
だが、何故記憶が混同し始めたんだ? ……何かきっかけになる様な事があっただろうか? ……駄目だ、さっぱり思い出せん。
まあどうせまた馬鹿な私がドジを踏んだんだろうが……いい加減こんな体たらくな自分が嫌になるな。
でも、今はこの“悪役令嬢”と言う立場が私の最大の武器だ。
それを上手く使えばクリストファーに復讐をする事だって出来る筈だ! よし、やってやるぞ!!
「……おい」
「え?」
急に声を掛けられて私は我に返る。
どうやらいつの間にか深く考え込んでいたらしく、目の前に立っていた男の存在に全く気付かなかったらしい。
「一体何をぼさっとしてんだ。俺を待たせるなんていい度胸してるじゃねぇか」
目の前の男はそう言ってニヤリと笑う。
……あ、また思い出しちまった。
そうだ、こいつは私が初めて出会う攻略対象だ。
確か名前は……
「ああ!待たせて悪かったね!私の美しい婚約者様!!」
私がわざとそう言って笑顔を作ると、男はまた嫌そうな顔をして私を見た。
「うるせぇな。相変わらずのぶりっ子っぷりだな」
「……うーるさいわね!!私はあんたの婚約者なのよ?!何よその言い草は!!」
私がそう文句を言うと、男は面倒臭そうな顔をしながらも「へいへい」と言いながら私に手を差し出してきた。
私はその男の手を渋々取ると、男は満足そうに笑って私の手を握り返す。
……こいつの名前は確か……
「……おい!いい加減にその喋り方止めろ!」
私が名前を思い出そうとしていると、急に男が不機嫌な顔で文句を言ってきた。
「え?何よいきなり?」
「お前さ!この前俺に言っただろ?!」
「何をよ?」
「……あーもういいから!!お前はただの俺の婚約者だって!!!」
「……」
そうだ、こいつの名前は確か……
「……オーフェン」
「ああ?!何か言ったか?!」
「だから!あんたはただの私の婚約者だって言ってるのよ!!」
私が大きな声でそう言うと、目の前の男……オーフェンはやっと満足したのか私の手をグイッと引っ張って歩き出した。
私は突然の事によろけて思わず躓きそうになるが何とか踏ん張って耐えた。
そして文句を言おうとオーフェンを見上げた瞬間、彼の顔を見た私は思わず息を飲んだ。
何故なら彼の顔が真っ赤に染まっていたからだ。
……え?何故顔が赤いんだ?? こいつさっきまであんなに嫌がっていたのに? 私がその事について問いただそうとしたが、オーフェンは真っ赤な顔のまま真っ直ぐ前を向いて歩き続けている。
私は彼のこの行動と表情に驚きすぎて何も言う事が出来ないままただ彼と共に歩いたのだった。
「着いたぞ!」
そう言ってオーフェンは目の前の建物を見る様に私に促してくる。
そこには大きく立派な建物が建っていた。
「……これがあんたの家?」
「ああそうだ!どうだ?!立派だろ?!」
何故かオーフェンは自慢げに胸を張っている。
こいつ……やっぱり攻略対象だけあってそこそこ金持ちなんだなぁ……。
そんな事を思いながらその建物を見つめていると、オーフェンはニコニコしながら私に話し掛けてきた。
「さあ早く入ろうぜ!!」
そう言って私を急かすオーフェン。
そんな彼に私はそっと聞いてみた。
「ねぇ……さっきからずっと疑問に思っていたんだけどさ、どうしてあんたは私と婚約なんてしたいと思ったのよ?」
「え?そんなのお前に惚れたからに決まってんだろ?!」
「はぁ?!何言ってんのよ?!」
「な、何だよ突然大声出して!驚くじゃねえか!!」
私が大声を出した事にオーフェンは少し動揺していたが、私は構わず彼に食って掛かった。
「あんた馬鹿なの?!私は悪役令嬢なのよ?それなのにどうして私を好きになるのよ!!」
「ああそれな!そんなの俺も初めは意味が分からなかったさ!」
オーフェンは思い出したかの様にフッと笑って話し出す。
「最初は全然信じられなかったよ。だってゲームの世界に転生したと思ったら悪役令嬢の婚約者になれって言われるんだもんな!普通受け入れられる筈が無いだろ?!」
「じゃあ何故あんたは私の婚約を受け入れたのよ?」
私がそう言うと、オーフェンは途端に真面目な顔になって私をじっと見つめてきた。
その真剣な眼差しに私は思わずドキッとする。
そんな私の様子にオーフェンはフッと笑うと、ゆっくり口を開いた。
「……お前さ、俺の事好きか?」
「はぁ?!何よ急に?!」
私が驚きながらもそう聞き返すと、オーフェンは少し悲し気な顔をする。
「……やっぱりお前は俺の事なんか好きじゃなかったんだな。だから俺は婚約を受け入れたんだぜ?」
「な、何よそれ……」
「俺はお前が好きだ」
そう言ってオーフェンはまたフッと笑うと私に背を向けて歩き出した。
「お、おい!!待てよ!!」
私はオーフェンの急な告白に動揺しながらも彼を追い掛けたが、彼はこちらを振り向く事なくスタスタと歩いて行ってしまったのだった……。
……その後結局オーフェンに追い付く事が出来ず、私はそのまま家に帰って来た。
私はオーフェンの事が頭から離れず悶々とした気持ちを抱えたまま自室のベッドに潜り込んだ。
……思えば、オーフェンがあんな事を言い始めたのは『祝福』が『闇』と分かってからだった気がする。
私が彼を避け出した時から少しずつおかしくなっていったのだ。
いや、でもまだ分からないぞ? もしかしたら彼のあのおかしな行動は婚約者としての義務感からかもしれないじゃないか!! そんな言い訳をしながら私は目を閉じ眠りに就いた……
何故私が婚約破棄される事になった? いや、そもそも婚約者であるクリストファーがこの国にいる事自体がおかしいんだ。
アイツは確か今は隣国に留学している筈じゃなかっただろうか。
大体私の『祝福』は“闇”だった筈じゃ無かったのか? 何故私の方が“光”になっているんだよ! ああクソ、何か頭が割れそうに痛い。
……駄目だ、これ以上考えても何も答えが出なさそうだ。
兎に角今はその事は置いておこう。
兎に角、今の私は“悪役令嬢”と言う存在になっているらしい。
それに最近記憶が混濁しているのもきっとそのせいだろう。
だが、何故記憶が混同し始めたんだ? ……何かきっかけになる様な事があっただろうか? ……駄目だ、さっぱり思い出せん。
まあどうせまた馬鹿な私がドジを踏んだんだろうが……いい加減こんな体たらくな自分が嫌になるな。
でも、今はこの“悪役令嬢”と言う立場が私の最大の武器だ。
それを上手く使えばクリストファーに復讐をする事だって出来る筈だ! よし、やってやるぞ!!
「……おい」
「え?」
急に声を掛けられて私は我に返る。
どうやらいつの間にか深く考え込んでいたらしく、目の前に立っていた男の存在に全く気付かなかったらしい。
「一体何をぼさっとしてんだ。俺を待たせるなんていい度胸してるじゃねぇか」
目の前の男はそう言ってニヤリと笑う。
……あ、また思い出しちまった。
そうだ、こいつは私が初めて出会う攻略対象だ。
確か名前は……
「ああ!待たせて悪かったね!私の美しい婚約者様!!」
私がわざとそう言って笑顔を作ると、男はまた嫌そうな顔をして私を見た。
「うるせぇな。相変わらずのぶりっ子っぷりだな」
「……うーるさいわね!!私はあんたの婚約者なのよ?!何よその言い草は!!」
私がそう文句を言うと、男は面倒臭そうな顔をしながらも「へいへい」と言いながら私に手を差し出してきた。
私はその男の手を渋々取ると、男は満足そうに笑って私の手を握り返す。
……こいつの名前は確か……
「……おい!いい加減にその喋り方止めろ!」
私が名前を思い出そうとしていると、急に男が不機嫌な顔で文句を言ってきた。
「え?何よいきなり?」
「お前さ!この前俺に言っただろ?!」
「何をよ?」
「……あーもういいから!!お前はただの俺の婚約者だって!!!」
「……」
そうだ、こいつの名前は確か……
「……オーフェン」
「ああ?!何か言ったか?!」
「だから!あんたはただの私の婚約者だって言ってるのよ!!」
私が大きな声でそう言うと、目の前の男……オーフェンはやっと満足したのか私の手をグイッと引っ張って歩き出した。
私は突然の事によろけて思わず躓きそうになるが何とか踏ん張って耐えた。
そして文句を言おうとオーフェンを見上げた瞬間、彼の顔を見た私は思わず息を飲んだ。
何故なら彼の顔が真っ赤に染まっていたからだ。
……え?何故顔が赤いんだ?? こいつさっきまであんなに嫌がっていたのに? 私がその事について問いただそうとしたが、オーフェンは真っ赤な顔のまま真っ直ぐ前を向いて歩き続けている。
私は彼のこの行動と表情に驚きすぎて何も言う事が出来ないままただ彼と共に歩いたのだった。
「着いたぞ!」
そう言ってオーフェンは目の前の建物を見る様に私に促してくる。
そこには大きく立派な建物が建っていた。
「……これがあんたの家?」
「ああそうだ!どうだ?!立派だろ?!」
何故かオーフェンは自慢げに胸を張っている。
こいつ……やっぱり攻略対象だけあってそこそこ金持ちなんだなぁ……。
そんな事を思いながらその建物を見つめていると、オーフェンはニコニコしながら私に話し掛けてきた。
「さあ早く入ろうぜ!!」
そう言って私を急かすオーフェン。
そんな彼に私はそっと聞いてみた。
「ねぇ……さっきからずっと疑問に思っていたんだけどさ、どうしてあんたは私と婚約なんてしたいと思ったのよ?」
「え?そんなのお前に惚れたからに決まってんだろ?!」
「はぁ?!何言ってんのよ?!」
「な、何だよ突然大声出して!驚くじゃねえか!!」
私が大声を出した事にオーフェンは少し動揺していたが、私は構わず彼に食って掛かった。
「あんた馬鹿なの?!私は悪役令嬢なのよ?それなのにどうして私を好きになるのよ!!」
「ああそれな!そんなの俺も初めは意味が分からなかったさ!」
オーフェンは思い出したかの様にフッと笑って話し出す。
「最初は全然信じられなかったよ。だってゲームの世界に転生したと思ったら悪役令嬢の婚約者になれって言われるんだもんな!普通受け入れられる筈が無いだろ?!」
「じゃあ何故あんたは私の婚約を受け入れたのよ?」
私がそう言うと、オーフェンは途端に真面目な顔になって私をじっと見つめてきた。
その真剣な眼差しに私は思わずドキッとする。
そんな私の様子にオーフェンはフッと笑うと、ゆっくり口を開いた。
「……お前さ、俺の事好きか?」
「はぁ?!何よ急に?!」
私が驚きながらもそう聞き返すと、オーフェンは少し悲し気な顔をする。
「……やっぱりお前は俺の事なんか好きじゃなかったんだな。だから俺は婚約を受け入れたんだぜ?」
「な、何よそれ……」
「俺はお前が好きだ」
そう言ってオーフェンはまたフッと笑うと私に背を向けて歩き出した。
「お、おい!!待てよ!!」
私はオーフェンの急な告白に動揺しながらも彼を追い掛けたが、彼はこちらを振り向く事なくスタスタと歩いて行ってしまったのだった……。
……その後結局オーフェンに追い付く事が出来ず、私はそのまま家に帰って来た。
私はオーフェンの事が頭から離れず悶々とした気持ちを抱えたまま自室のベッドに潜り込んだ。
……思えば、オーフェンがあんな事を言い始めたのは『祝福』が『闇』と分かってからだった気がする。
私が彼を避け出した時から少しずつおかしくなっていったのだ。
いや、でもまだ分からないぞ? もしかしたら彼のあのおかしな行動は婚約者としての義務感からかもしれないじゃないか!! そんな言い訳をしながら私は目を閉じ眠りに就いた……
0
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
私はざまぁされた悪役令嬢。……ってなんだか違う!
杵島 灯
恋愛
王子様から「お前と婚約破棄する!」と言われちゃいました。
彼の隣には幼馴染がちゃっかりおさまっています。
さあ、私どうしよう?
とにかく処刑を避けるためにとっさの行動に出たら、なんか変なことになっちゃった……。
小説家になろう、カクヨムにも投稿中。
「そうだ、結婚しよう!」悪役令嬢は断罪を回避した。
ミズメ
恋愛
ブラック企業で過労死(?)して目覚めると、そこはかつて熱中した乙女ゲームの世界だった。
しかも、自分は断罪エンドまっしぐらの悪役令嬢ロズニーヌ。そしてゲームもややこしい。
こんな謎運命、回避するしかない!
「そうだ、結婚しよう」
断罪回避のために動き出す悪役令嬢ロズニーヌと兄の友人である幼なじみの筋肉騎士のあれやこれや
侯爵令嬢の置き土産
ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。
「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。
わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが
水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。
王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。
数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。
記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。
リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが……
◆表紙はGirly Drop様からお借りしました
◇小説家になろうにも掲載しています
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる