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魔法を使えない少女
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トトリーブ国に住んでいるものは、皆が魔法を使うことができる。そう言われていた。しかし、ある一人の少女は魔法を使えなかった。その少女の名前はリンネ。少女の前には鳥は現れなかった。そのため、少女は魔法を使えない。
リンネは、魔法を使用できる人たちからバカにされる日々を過ごしている。少女がまったく魔法を使えないからだ。赤い火の玉を出せない。少ない水も作ることができない。緑を成長させることもできない。みんなが出来ることをできない少女。
なぜ、少女の前には鳥が現れなかったのだろうか。その理由もわかっていない。
現在、彼女は鳥を探すこともなく家の中にいる。外に出るのは恥だと言われ、家の中に閉じ込められたようだ。
リンネは、与えられた埃まみれの部屋の隅でうずくまっていた。
――薄暗い部屋。
埃のかぶった鏡。床に落ちている汚い布を拾い上げた。パンパンとはたき、その布で鏡を拭く。鏡の前に立ってみた。映ったのは、肩につく栗色の髪。おっとりした印象を与えそうなタレ目。だが、二重で目はパッチリしていた。唇は閉じられており、笑みは浮かんでいない。
「また、嫌な一日が始まる……」
鏡に映っている、白の薄いワンピースを着た少女の口が動いた。もちろん、それは私のこと。
ドンッドンッドンッ!!
激しく扉を叩く音が小さな部屋に響いた。あの人がやってきたとすぐにわかった。嫌々ながら、扉を開ける。そこにいたのは、思った通りの人。
「リンネ、早くわたくしたちの朝食を用意しなさい」
「はい……」
高圧的に命令してくる女は、ある人の再婚相手。残念なことだが、女を見る目がない、ある人の再婚相手だ。悲しいことにね。
リンネは、魔法を使用できる人たちからバカにされる日々を過ごしている。少女がまったく魔法を使えないからだ。赤い火の玉を出せない。少ない水も作ることができない。緑を成長させることもできない。みんなが出来ることをできない少女。
なぜ、少女の前には鳥が現れなかったのだろうか。その理由もわかっていない。
現在、彼女は鳥を探すこともなく家の中にいる。外に出るのは恥だと言われ、家の中に閉じ込められたようだ。
リンネは、与えられた埃まみれの部屋の隅でうずくまっていた。
――薄暗い部屋。
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「また、嫌な一日が始まる……」
鏡に映っている、白の薄いワンピースを着た少女の口が動いた。もちろん、それは私のこと。
ドンッドンッドンッ!!
激しく扉を叩く音が小さな部屋に響いた。あの人がやってきたとすぐにわかった。嫌々ながら、扉を開ける。そこにいたのは、思った通りの人。
「リンネ、早くわたくしたちの朝食を用意しなさい」
「はい……」
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