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あっさりと取り返す

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 あの女はうなだれている。あたりは静かであった。だが、急に部屋中に笑い声が響く。

「ふふふふふふふ、あはははははは!!!」

 狂ったように笑い出すあの女。追い詰められた人間は何をするかわからない。だから、警戒していた。突然、あの女の前に、銀の鳥籠が現れる。それは、キラリッと輝いた。鳥籠の中には何がいるのか。よく見てみると、そこにはオルニスがいる。傷ついた鳥がいる。

「私の……、私のオルニス!!」

 私は走り出して、自分の鳥のところへ行きたかった。取り戻したかった。けれど、私はウィルソンに止められてしまった。

「離して!! 私のなの! 私の……」

 今まで私の前に現れなかったのは、あの女に囚われていたからだったのだろう。私は泣きそうになった。気づいてあげられなくて、ごめんね。ピューピュー鳴く声は、元気をなくしている。このまま、お別れになってしまったら、悲しいよ。

「この鳥を傷つけられたくないでしょう? だから、カイン様。私と結婚することを誓ってください」

 不気味なほど綺麗な笑みを浮かべているあの女。恐怖を感じた。

「はぁ、君は知らないのか? 他人の鳥を勝手に奪い、閉じ込めるのは、罪に問われることだ。君の罪は他にもあるがな」

 お父様のところに、深みのある青い鳥が現れた。そして、お父様は鳥から力を借りて水を出し、その水を自由自在に操っている。あっさりと私の鳥が入っている籠を取り返した。今はお父様の手元にある。

「そ、そんな……」

 最後の手段をあっさりと奪い返されたあの女。気が抜けたようにぼんやりとしていた。

「お前、鳥がいたのか!! でも、遅かったな! 出来損ないのお前より、この家の後継選ばれているのは僕だ!! お前は、一生僕たちのしもべ。飼い殺してやる!!」

 クソガキは自分の母親の状況を見て、現状を理解していないのだろう。そうでなかったら、自分の首をわざわざ締めにいかない。

「私の娘を僕として扱うなんて、どういう育て方をしたのかな? どうしたら、場の空気も読めない子になるんだろうね??」

 凍えそうなくらい冷たい空気の中で、怯えずにいられるクソガキは鈍感かもしれない。しかも、お父様の氷のような視線を受けているわけだから、ある意味すごい。そう思っていたら、クソガキが倒れた。

「……恐怖で失神。平気じゃなかったんだね」

 呆然としているあの女と倒れたクソガキは、この家から追い出すことになった。私にしていたことを全てバレたのだから、そうならないと困ってしまう。私がね。

 お父様があの女を選んだのは、私のためというよりは、お母様のためだったのかもしれない。お父様の気持ちはお父様しかわからないけどね。


    
    
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