間違われて僕は呪われていた

月詠世理

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呪っていたのは、あいつだった

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 先輩が俺の彼女をとるから悪いんだ。
 呪いの藁人形。紙に名前を書いて、藁人形に貼り付ける。釘をさす。俺は恨みを込めながら、釘をトンカチで叩いた。

「死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇえええ!!」

 その後、俺は証拠隠滅に藁人形を土に埋めた。


 僕は誰かに呪われているらしい。なんでも僕がある人の彼女をとったからだとか。いやいや、僕に彼女なんていないから。恋人関係になるような親密な相手いないから。
 ある時から、思い込みの激しい後輩が、「先輩、殺す」と殺害宣言をしてくる。しかも、その後輩の同級生から聞いた話、僕を毎日毎日呪ってるみたいだ。最近、調子が悪いのはそのせいかもしれない。落とした財布を拾おうとしたら殴られるわ。ひったくった鞄を押し付けられるわ。おつかいは失敗に終わるわ。
 僕がとことんツイてない理由は絶対、後輩の呪いのせい。早いところ、やめさせよう。

「後輩くーん」

 わざわざ、後輩の教室に行った。後輩がいたので、呼んだ。

「先輩、俺のために死ね」

 マジの声のトーンだから。怖いから。しかも、僕に彼女はいないから! 後輩くんにそんなこと言われる意味がわからない。

「先輩の名前は、佐藤直紀さとうなおき。俺の彼女を奪ったやつの名前だ!! 絶対に許さない。呪い殺してやる~~!!」
「……後輩くん。僕の名前は、佐藤直人さとうなおとだから。先輩の名前間違えんなよ。しかも、その名前のやつは、僕の隣のクラスの人だね。隣のクラスの僕の席にいる人」
「なにいってんだ! 嘘ついたって、わかるんだからな!!」

 僕は「どうぞ」と後輩に学生証を渡した。後輩は学生証と僕を交互に見ながら、何度も確認している。

「……先輩。いままですみませんでした。俺……先輩に恨みを込めて、密かに、学校の先生に面倒ごとを押し付けられる呪いもかけていました」
「なにその地味に嫌な呪い……」
「先輩、この一ヶ月、死なずに生きてください!」

 走り去った後輩。嫌な予感がする。

「おい、佐藤直人。あとで、お前のクラスのノート回収して、職員室まで持ってきてくれ。頼んだぞーー」

 ハイ。僕は一ヶ月と言わず、半年ほど先生の雑用係をしていました。
 後輩くん。今度は僕が後輩くんを呪ってやるからな。意気込んで、呪ってはみたものの、嫌なことに、全部僕自身に返ってきた。呪うことを諦めるには、約一年の時間を要した。

 あの後輩くんのムカつく話から三日後。

「後輩くーん! ちょっと、僕に付き合ってくれる?」
「いやー、俺、新しくできた可愛い彼女とこれからデートなので……」

 殺意が湧いた。怒り。ぶん殴ってやりたい。
 僕の顔面が死んでないことを願う。
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