限られたある世界と現実

限られたある世界と現実

愛×苦痛×世界

　愛を教えてほしい。生まれてから愛されてこなかった僕に。愛って何？　無償の愛なんて言うけれど、本当にそんなものはあるのか。

　僕は大人に見捨てられた。両親にさえ、冷たい目で見られていたのだ。学校でいざこざがあり、相談したことがある。学校に呼び出された母は、面倒なことを起こさないで、と言った。

「世間の人から変な目で見られたらどうしてくれるの？」

　そう言ったのを覚えている。
　僕が悪いわけじゃないのに。僕がやったことじゃないのに。信じてもらえなかった。どんなに違うと声をあげても、僕の声は届かない。僕よりあいつの方が人の信頼を得ていたのだろう。だからこそ、僕の心からの叫びは誰にも届かなかった。

　僕はいじめられていたのだ。クラスの頂点にいる男に。その男に付き添っている男たちに。僕がやっていないことも僕のせいにされた。教師は僕の言葉を聞いてくれない。目を背けて、僕を避けた。それは、当然の行動なのかもしれない。誰だって面倒なことに首を突っ込みたくないのだから。

　見て見ぬ振り。僕がやっていないことをわかっているのに、彼らは僕を注意する。とうとう母親が呼び出された。母親は話を聞く前に、僕が悪いと言った。そして、僕はいじめの主犯に謝ることになる。　
　悔しくて悔しくてたまらなかった。だが、僕には力がない。僕は大人たちに従うしかできないのだ。唇を噛み、惨めな自分に耐えながら、頭を下げた。――僕は弱虫だ。

　父親は僕を打った。面倒なことを起こすな。大人しく過ごしていればいい。余計なことをするな。そう言った。母親はその状況を冷えた目で見ていた。僕は生きていただけ。生活していただけ。学校にいただけだ。目立ったり、根暗のようだったり、ということはなかった。平凡に過ごしていた。一人でいることは多かったが、数少ない友達はいた。

　トモダチナラボクノコトヲオモッテクレルハズダ。ドウシテカレラハボクカラメヲソムケルノ？

　ボクが生きていることはそんなに悪いことなの？
　ボクが生きているだけでそんなに面倒なの？
　だったら、生なければよかったのに。生まれてしまったボクはどうあがいたって生きていくしかない。地獄のような世界でも、ボクは――。

　ココロガコワレテシマッタボクハワラウコトデジブンヲゴマカスコト二シタ。ココロッテヒツヨウナモノナノダロウカ？

　僕に酷いことをしたやつらは、表では嫌な顔をしていて、裏でほくそ笑んでいるのだろう。いかにも、楽しそうに。そのせいで苦しんでいる人がいるとも知らずに。あいつらは、人の嫌がることをして喜ぶような人間だ。物足りなさや不満を発散させることを探しているに違いない。僕はあいつらのおもちゃじゃないのにね。

　視界一面に青空が広がっている。ああ、なんて残酷な世の中なのだろうか。僕はこんな世界、大嫌いだ。だが、その世界を変えようと行動できない自分も大嫌いだ。どちらにしろ、僕は僕の世界が大嫌いなことに変わりはない。愛なんて僕の世界には存在していないのだ。