限られたある世界と現実

月詠世理

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その他短編

Robot mind

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【あらすじ】
 はじめの頃の話。人間ではない女の子が人間などについて学んでいく姿。

 人間のような見た目をしている女の子、ainoは人間によって作られたロボット。その存在が人間や感情などを学ぶ、はじめの頃。
(要素:robot、mind、人間、研究者、感情、短編)

【本編】

 愛などあるはずがない。愛なんて目に見えないものを信じるなんて馬鹿みたい。でも、それを信じることができる人間を、……私は羨ましく思う。

 みんなはなぜ愛という目に見えないものを信じるのか。愛の形はいろいろあって、人それぞれ違うんだ。だから、目に見えなくても信じられる。

 一人の女の子がボソッと呟いた。

藍乃aino、意味わからない。理解できないよ」

 その声に応えるのは、白衣を着ている男。

「そうだね、人形である君はもっとわからないことだよね。でも、ainoは人間の感情を理解できなければいけないよ? なぜなら、君はそのために作られ、生み出されたのだから」

 彼女は人間の見た目をしているが、人間の女の子ではない。

「藍乃には、むつかしくてわからない」

「あれ、プログラミングがおかしくなったのかな?
 言語情報に間違いはなかったはずだけど……。」

 メンテナンスが必要だと考えたのだろう。彼は箱の中に乱雑にしまわれている道具をガチャガチャと音を立てて取り出した。

「わざとやったのよーー、心配しすぎーー。藍乃ちゃんは、人間のことなんか知りたいと思いません」

 彼に意地悪してみたくて、やったことなのに、真面目な返事をされてしまう。異常もないのにいじられては困るから、すぐにネタバレをした。


 この前、ドロドロに黒い話読んだ。人間は怖い生き物よ。信じているなんて言いながら平気で人のことをうらぎる。裏と表の使い分けが上手にできているの。そんな生き物が愛なんて目に見えない現象を信じるなんて滑稽だ。私には、ワカラナイ。なぜ、そんなものに人はすがりつくのか。ワカラナイ、ワカラナイ。だから、知りたくないけど、知りたいって矛盾した気持ちが私をオーバーヒートさせる。回路、おかしくなっちゃったのだろうか。

「私を生み出した研究者に相談……しなくちゃ……」

 嫌なブツっと途切れる音が聞こえた気がする。その瞬間、目の前が真っ暗になった。


 扉にもたれかかっている者。それは、無造作に体を投げ出していた。

「はぁー、最近電源、切れるの早いなー」

 たくさんのコードをなんの迷いもなく的確にそれに貼り付けたり、繋いだりしている。しばらく、時間が経って聞こえた言葉。

「おはよう」

 何があったのかそれはわかっているのだろうか。

「また、ショートしたの?」

 首を傾けた。そして、私と目を合わせようとしたのだろう。私は、それに上目使いをされる。

「ショートはしてない。電源がなくなっただけだ。あれほど、自分で充電しなさいと……」
「最近、いつ電源がなくなるのか自分でも不明。無理。人間のことばっかり考えてるからよ。愛なんてフタシカナモノがこんなに私を混迷させる。もう、寝る」

 頰を膨らませ、そっぽを向くそれ。私はため息を吐いた。

「寝るのは構わないけど、人間について学ばないなら、君を破棄するしかなくなるからね。今ところ君がよく作れたからそばに置いてる。何もしなくなった君は私にとってはガラクタ。人間を学ぶことだけはやめないでよ」

 私はそれを部屋に放って、研究室に向かう。後ろでブツブツ何かを言っているが、気にせずに前を歩いた。

「破棄する、破棄するって脅さないでよね。そんなに簡単に生まれたものを捨てられる人間って不思議。てか、無神経。私だって、一応コアがあるのよ。人間でいう命ってものがあるのよ」

 命あるものを捨てることができる。さらに、疑問。人間って怖い。

「コワイ? コワイってなんだろう。調べないと……。」

 あの研究者の研究のために作られた私はあれに従うしかない。ときに大切なものを切り捨てることができる人。ときに自分で作ったものを破壊する人。
 それぞれに何か理由があると思う。だけど、人間の行動は意味がワカラナイ。大切なら大切にすればいい。
 自分で生み出したもの、命あるものをすぐに捨てると言える。人間はどういう回路をしてるのか。

 私は作られたロボット。インターネットや本で検索して答えが出てくれば、簡単なのに……。人間って生き物はそんなに簡単に測ることはできない。面倒、いや、面倒すぎる生き物だ。
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