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その他短編
天使 中編
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もう一人の天使は金の髪色をもち、全体的に見ると黄色な感じだ。とても、目立つ。二人の天使を一人ずつ見たら、非常に目に悪い。片や根暗。片や煌びやか。天使って個性的だ。それよりも驚いたことは、根暗天使が王族だったこと。
「放浪していて何が悪い。王族という身分など邪魔なだけで、どうでもいい。我は、好きに動く」
根暗天使はマイペースみたいだ。僕には考えられないくらいにとても高い身分なのにそれを邪魔って言えるなんて、馬鹿なのか。身分があったら、そのお金で好きなことができそうなのに……。その分、義務も生じそうではあるけれどね。そもそも、天使はお金を持っていないという仮説もあるな。お金がないなら、王族の位置にいる意味ないな。メリットがないからね。
「そ、そんなことを言うものではありません。王族で黒の色を持っていることは素晴らしいことなのですよ。白は王族の象徴ではありますが、黒はもっと素敵な色なのです。天を統治した初めの王が黒を持っていたのですから。白よりも黒を持っているということは、王位継承権の優先順位が一番ということです。そんな貴方に、何か不幸があっては敵いません。だから、早く帰りますよ。」
目の前にいる根暗天使はとても稀な存在であったようだ。彼が王を継承したら、世も末な気がする。とにかく……。
「げっ!! お前みたいな根暗が王族なのかよ。お前が王になったら、天使の世界は絶対に荒れる。それに、その暗くジメジメした空気が伝染していくわ。僕の天使像はどんどん崩壊していくよ」
この根暗が王になるのは反対だ。天使の世界がどうなのかは知らないが、僕たちにも影響があるなんて言われたら困る。だから、否定しておく。また、お世話係の天使が驚愕していた。何故そんなに驚いているのか。こちらが不思議である。
「ど、どうしましょう。――様。に、人間に見られています」
「放っておけ。面倒だ」
「いえ、そういうわけにはまいりません。天使の姿は見られてはいけないのですから」
「なぜ、見られてはいけない。どうせ、人間のイメージを壊さないようにとかであろう」
根暗天使の名前はどうしてなのか不明だが、聞こえなかった。根暗天使は根暗天使だから、名前を知れなくてもかまわないが、疑問ではある。
「ねぇ、お前の名前聞こえなかったんだけど、なんで?」
あえて、僕はお世話天使に呼ばれていた彼に尋ねた。しかし、返答は僕の望むような答えではなかった。
「しらん、子どもよ。理由が欲しいなら、お主自身で考えよ。我は、そんなことはどうでもいい」
相変わらず、笑わない。表情筋が凝り固まっているっていわれそうなくらい。僕も、こいつが理由を知らないなら、どうでもいいや。
「ど、どうでも良くなんてありませんよ。名前は……」
「くどい。面倒事を増やそうとするな。我のことは放って、さっさと帰れ。どいつもこいつも安らぎの邪魔だ。この光のあまり入ってこない教会が心地いいのに、休むことを妨害して来よって、……我は苛ついている」
急に空気が重くなった。ピリピリしている。そんな空間にいたくはない。しかし、僕はしばらくの間この場所にいないといけないため、この空気から逃れることはできない。誰が、天使へのお祈りの時間なんて作ったんだか。神様じゃなくて、天使へのお祈りだよ。礼拝堂で簡略的に祈らなけらばならないそれは、この瞬間だけはいらないと思いたくなる。交代制で一日の大部分を使って、お祈りする。その担当が今日は僕だった。僕も含まれていたら、困る。割と、本気で困る。
「貴方を置いていくわけにはいかないと申しています」
「我は帰れと言っている」
にらみ合っている二人は、どちらも引かない。このいたたまれない空間にはいたくないや。僕は、距離をとろうとした。だけど、捕まった。根暗天使に首の根っこを掴まれる。
「子どもよ。これの相手をするか、これをさっさと帰らせろ」
「いや、無理。天使を相手にするのは、お前だけで充分だ。それに、お前も直視したくない相手だけど、こっちの天使も直視したくはないからな」
僕は、煌びやかな奴を指差した。それを相手にするくらいなら、暗い雰囲気を持っている奴を相手にした方がまだましだ。煌びやかな奴を相手にしたら、すぐに目がやられる。
「生意気でわがままな子どもだな。天使の願いを聞くといいことがある。だから、やってみろ」
「いや、普通にやだ。あんたみたいな、根暗の願いを聞いたら、あんたから呪われそうだから。断固阻止」
「本当に子どもは生意気で使えない。少しでも、我の役に立てばよいものを……」
「おい! 人間の子ども。 ――様を根暗というなんて躾のなってない子どもだな」
また、突然変なのが現れた。今度は赤い天使だ。
「おい! 子ども。この俺たちの王子の根暗の良さが分からないなんて、やっぱり人間だな。天使の世界では、根暗は素晴らしいものなんだぞ。全身が黒で暗い雰囲気を纏っていて、表情も動かない、猫背な姿はなんと麗しいことだ! 王子の素敵さが分からないなんて、人間の世界に王子はおいてはいけません。だから、帰りましょう、王子!」
キラキラ目が輝いている、いかにも、崇拝しているって感じだ。天使は皆、この根暗みたいな天使を崇めたたえているのか、恐ろしい。こんな中身は、マイペースの天使を尊敬の眼差しでみているとは、天使の世界は本当に大丈夫なのか。僕は、少し引いた眼で彼らを眺める。根暗天使の顔が引きつったが、僕はそれに触れない。触らぬ神に祟りなしだ。この場合は、神ではなく、天使なんだけどね。
「放浪していて何が悪い。王族という身分など邪魔なだけで、どうでもいい。我は、好きに動く」
根暗天使はマイペースみたいだ。僕には考えられないくらいにとても高い身分なのにそれを邪魔って言えるなんて、馬鹿なのか。身分があったら、そのお金で好きなことができそうなのに……。その分、義務も生じそうではあるけれどね。そもそも、天使はお金を持っていないという仮説もあるな。お金がないなら、王族の位置にいる意味ないな。メリットがないからね。
「そ、そんなことを言うものではありません。王族で黒の色を持っていることは素晴らしいことなのですよ。白は王族の象徴ではありますが、黒はもっと素敵な色なのです。天を統治した初めの王が黒を持っていたのですから。白よりも黒を持っているということは、王位継承権の優先順位が一番ということです。そんな貴方に、何か不幸があっては敵いません。だから、早く帰りますよ。」
目の前にいる根暗天使はとても稀な存在であったようだ。彼が王を継承したら、世も末な気がする。とにかく……。
「げっ!! お前みたいな根暗が王族なのかよ。お前が王になったら、天使の世界は絶対に荒れる。それに、その暗くジメジメした空気が伝染していくわ。僕の天使像はどんどん崩壊していくよ」
この根暗が王になるのは反対だ。天使の世界がどうなのかは知らないが、僕たちにも影響があるなんて言われたら困る。だから、否定しておく。また、お世話係の天使が驚愕していた。何故そんなに驚いているのか。こちらが不思議である。
「ど、どうしましょう。――様。に、人間に見られています」
「放っておけ。面倒だ」
「いえ、そういうわけにはまいりません。天使の姿は見られてはいけないのですから」
「なぜ、見られてはいけない。どうせ、人間のイメージを壊さないようにとかであろう」
根暗天使の名前はどうしてなのか不明だが、聞こえなかった。根暗天使は根暗天使だから、名前を知れなくてもかまわないが、疑問ではある。
「ねぇ、お前の名前聞こえなかったんだけど、なんで?」
あえて、僕はお世話天使に呼ばれていた彼に尋ねた。しかし、返答は僕の望むような答えではなかった。
「しらん、子どもよ。理由が欲しいなら、お主自身で考えよ。我は、そんなことはどうでもいい」
相変わらず、笑わない。表情筋が凝り固まっているっていわれそうなくらい。僕も、こいつが理由を知らないなら、どうでもいいや。
「ど、どうでも良くなんてありませんよ。名前は……」
「くどい。面倒事を増やそうとするな。我のことは放って、さっさと帰れ。どいつもこいつも安らぎの邪魔だ。この光のあまり入ってこない教会が心地いいのに、休むことを妨害して来よって、……我は苛ついている」
急に空気が重くなった。ピリピリしている。そんな空間にいたくはない。しかし、僕はしばらくの間この場所にいないといけないため、この空気から逃れることはできない。誰が、天使へのお祈りの時間なんて作ったんだか。神様じゃなくて、天使へのお祈りだよ。礼拝堂で簡略的に祈らなけらばならないそれは、この瞬間だけはいらないと思いたくなる。交代制で一日の大部分を使って、お祈りする。その担当が今日は僕だった。僕も含まれていたら、困る。割と、本気で困る。
「貴方を置いていくわけにはいかないと申しています」
「我は帰れと言っている」
にらみ合っている二人は、どちらも引かない。このいたたまれない空間にはいたくないや。僕は、距離をとろうとした。だけど、捕まった。根暗天使に首の根っこを掴まれる。
「子どもよ。これの相手をするか、これをさっさと帰らせろ」
「いや、無理。天使を相手にするのは、お前だけで充分だ。それに、お前も直視したくない相手だけど、こっちの天使も直視したくはないからな」
僕は、煌びやかな奴を指差した。それを相手にするくらいなら、暗い雰囲気を持っている奴を相手にした方がまだましだ。煌びやかな奴を相手にしたら、すぐに目がやられる。
「生意気でわがままな子どもだな。天使の願いを聞くといいことがある。だから、やってみろ」
「いや、普通にやだ。あんたみたいな、根暗の願いを聞いたら、あんたから呪われそうだから。断固阻止」
「本当に子どもは生意気で使えない。少しでも、我の役に立てばよいものを……」
「おい! 人間の子ども。 ――様を根暗というなんて躾のなってない子どもだな」
また、突然変なのが現れた。今度は赤い天使だ。
「おい! 子ども。この俺たちの王子の根暗の良さが分からないなんて、やっぱり人間だな。天使の世界では、根暗は素晴らしいものなんだぞ。全身が黒で暗い雰囲気を纏っていて、表情も動かない、猫背な姿はなんと麗しいことだ! 王子の素敵さが分からないなんて、人間の世界に王子はおいてはいけません。だから、帰りましょう、王子!」
キラキラ目が輝いている、いかにも、崇拝しているって感じだ。天使は皆、この根暗みたいな天使を崇めたたえているのか、恐ろしい。こんな中身は、マイペースの天使を尊敬の眼差しでみているとは、天使の世界は本当に大丈夫なのか。僕は、少し引いた眼で彼らを眺める。根暗天使の顔が引きつったが、僕はそれに触れない。触らぬ神に祟りなしだ。この場合は、神ではなく、天使なんだけどね。
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