17 / 22
その他短編
天使 後編
しおりを挟む
天使たち三人はいろいろと話し合って、いや、二人の天使が説得して一人の天使を連れ戻そうとしていた。けれど、根暗天使は、二人の天使の存在が不愉快だとでも言うように指をパチンと鳴らし、彼らをどこかに消してしまった。
「彼らをどこにやったんだ?」
僕は静かになった空間で根暗天使に尋ねた。
「さあな。子どもが知る必要のないことだ。我らを見ることができる人間は珍しい。だから、子ども、お主はおかしいのだ」
「だから、初対面に対しておかしいって失礼だよ。あれ? これ前も言った気がするな」
「しかれども、子ども。お主が我の友人の生まれ変わりであるなら、我らが見えてもおかしくはないな。――そろそろ、寝るから邪魔をするな」
ん? 根暗天使が何か妙なことを言ったように思う。あれ? えっ!?
「ぼ、僕が根暗天使の友人の生まれ変わりって!?
嘘だーーーーーー!!!」
僕は、近くの長椅子に寝転がっている天使の方へ走った。
「ねぇ、ぼ、僕がお前の友人の生まれ変わりって嘘だよね? 嫌だよ、君の友人になれとか言われたら……」
僕は彼の体を大きく揺する。案の定、不機嫌そうに彼は眼を細める。
「残念だが……、友人の生まれ変わりであるお主は、すでに我の友人だ。それと、お主は神と言われる存在であった。神は約束を守らないと酷い罰を受けるらしい。だから、神として我と約束したことは守るべきだろうな」
理不尽すぎる。生まれ変わる前の僕はなんてことをしてくれたんだ。この天使と友人になるのは、避けたいが、酷い罰をうけるのも嫌だ。人間である僕が罰を受けるのかも怪しいが、可能性があるなら、この天使の友人になるということを避けないべきである。
「なぜ、人間に生まれ変わったんだ! もし、人間でなかったら、なんらかの方法を探ってお前とは絶対に友達にはならなかったのに……」
「ふっ、残念なことだな。神であったお主は人間になりたいと言っていて、現在、人間であるお主は神であった方がよかったと言っている。まぁ、またお主が生まれ変わり、それが人間であろうが、神であろうが、動物であろうが、友人にはかわりはない。なぜなら、神であったお主が、途切れることはない永遠の約束を結んだと言っていたからだ」
今、僕の表情は思いっきり引き攣っていることだろう。永遠の約束って、とても重い契約みたいなものじゃないか。最悪だ。
「これからも、友人としてよろしく頼む。ヨウト」
「前世の僕を恨むけど、そんなことをしていても何も解決しない。はぁ、とても嫌だけど、仕方がない。おまえの友人になるよ。でも、次はまた神様になって、あんたをこき使うことにする」
「ふっ、それができるといいな」
「その愉悦感たっぷりの笑いがムカつく!!」
収まりようのない、たくさんの感情に支配される。しばらくして、落ち着いたころ、礼拝堂が開いた。
「ヨウト、もうお祈りの時間はとうに終わっていますよ」
僕はもうそんな時間かと思った。そして、僕を呼び戻しに来た神父様は、不思議なことを言った。
「おや、珍しいものですね。ヨウトは楽しいひと時を過ごしたのでしょう」
珍しいって神父様は見えているのか? あの天使が……。
「ヨウト」
「なんですか、神父様」
僕を呼んだ彼はニッコリと笑う。
「友人は大事にするのですよ。――、それでは先に戻りますから、早く戻ってきてくださいね。皆がお腹を空かせて待っていますから、なるべく急いでくださいね」
僕は、神父様と一緒に今すぐにでも戻ることができるのに彼に置いて行かれた。やっぱり、神父様はあの天使が見えているのだろうか。突然、友人の話がでてきたし……。神父様、謎だ。いろいろ考えてはいたが、急がなければと思い、走って帰ろうとする。ふと、後ろから聞こえてくる声。
「ユウト、またここで会おう。我の名前は――だ。覚えておけ」
僕は、後ろは振り返らなかった。どうせ、また会えるから。
走って皆のもとに帰ってくると、遅いと言われたが怒られることはなかった。楽しい食事の時間が始まってから、すぐ神父様に告げられたこと。
「これから、天使様へのお祈りは毎回ヨウトが担当になりましたから、よろしくお願いしますね」
周りでは不満や喜びの声が出てきていたが、まったく僕の耳には入ってこない。その時、僕は、神父様があの天使を見えていたことを確信した。お世話になっている神父様に頼まれてしまったら、断ることは考えられない。僕は、仕方なく……。
「毎日、お祈りしますよ」
了承の返事をした。
今日も僕は、天使である友人のもとへ行く。
「彼らをどこにやったんだ?」
僕は静かになった空間で根暗天使に尋ねた。
「さあな。子どもが知る必要のないことだ。我らを見ることができる人間は珍しい。だから、子ども、お主はおかしいのだ」
「だから、初対面に対しておかしいって失礼だよ。あれ? これ前も言った気がするな」
「しかれども、子ども。お主が我の友人の生まれ変わりであるなら、我らが見えてもおかしくはないな。――そろそろ、寝るから邪魔をするな」
ん? 根暗天使が何か妙なことを言ったように思う。あれ? えっ!?
「ぼ、僕が根暗天使の友人の生まれ変わりって!?
嘘だーーーーーー!!!」
僕は、近くの長椅子に寝転がっている天使の方へ走った。
「ねぇ、ぼ、僕がお前の友人の生まれ変わりって嘘だよね? 嫌だよ、君の友人になれとか言われたら……」
僕は彼の体を大きく揺する。案の定、不機嫌そうに彼は眼を細める。
「残念だが……、友人の生まれ変わりであるお主は、すでに我の友人だ。それと、お主は神と言われる存在であった。神は約束を守らないと酷い罰を受けるらしい。だから、神として我と約束したことは守るべきだろうな」
理不尽すぎる。生まれ変わる前の僕はなんてことをしてくれたんだ。この天使と友人になるのは、避けたいが、酷い罰をうけるのも嫌だ。人間である僕が罰を受けるのかも怪しいが、可能性があるなら、この天使の友人になるということを避けないべきである。
「なぜ、人間に生まれ変わったんだ! もし、人間でなかったら、なんらかの方法を探ってお前とは絶対に友達にはならなかったのに……」
「ふっ、残念なことだな。神であったお主は人間になりたいと言っていて、現在、人間であるお主は神であった方がよかったと言っている。まぁ、またお主が生まれ変わり、それが人間であろうが、神であろうが、動物であろうが、友人にはかわりはない。なぜなら、神であったお主が、途切れることはない永遠の約束を結んだと言っていたからだ」
今、僕の表情は思いっきり引き攣っていることだろう。永遠の約束って、とても重い契約みたいなものじゃないか。最悪だ。
「これからも、友人としてよろしく頼む。ヨウト」
「前世の僕を恨むけど、そんなことをしていても何も解決しない。はぁ、とても嫌だけど、仕方がない。おまえの友人になるよ。でも、次はまた神様になって、あんたをこき使うことにする」
「ふっ、それができるといいな」
「その愉悦感たっぷりの笑いがムカつく!!」
収まりようのない、たくさんの感情に支配される。しばらくして、落ち着いたころ、礼拝堂が開いた。
「ヨウト、もうお祈りの時間はとうに終わっていますよ」
僕はもうそんな時間かと思った。そして、僕を呼び戻しに来た神父様は、不思議なことを言った。
「おや、珍しいものですね。ヨウトは楽しいひと時を過ごしたのでしょう」
珍しいって神父様は見えているのか? あの天使が……。
「ヨウト」
「なんですか、神父様」
僕を呼んだ彼はニッコリと笑う。
「友人は大事にするのですよ。――、それでは先に戻りますから、早く戻ってきてくださいね。皆がお腹を空かせて待っていますから、なるべく急いでくださいね」
僕は、神父様と一緒に今すぐにでも戻ることができるのに彼に置いて行かれた。やっぱり、神父様はあの天使が見えているのだろうか。突然、友人の話がでてきたし……。神父様、謎だ。いろいろ考えてはいたが、急がなければと思い、走って帰ろうとする。ふと、後ろから聞こえてくる声。
「ユウト、またここで会おう。我の名前は――だ。覚えておけ」
僕は、後ろは振り返らなかった。どうせ、また会えるから。
走って皆のもとに帰ってくると、遅いと言われたが怒られることはなかった。楽しい食事の時間が始まってから、すぐ神父様に告げられたこと。
「これから、天使様へのお祈りは毎回ヨウトが担当になりましたから、よろしくお願いしますね」
周りでは不満や喜びの声が出てきていたが、まったく僕の耳には入ってこない。その時、僕は、神父様があの天使を見えていたことを確信した。お世話になっている神父様に頼まれてしまったら、断ることは考えられない。僕は、仕方なく……。
「毎日、お祈りしますよ」
了承の返事をした。
今日も僕は、天使である友人のもとへ行く。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サディストの私がM男を多頭飼いした時のお話
トシコ
ファンタジー
素人の女王様である私がマゾの男性を飼うのはリスクもありますが、生活に余裕の出来た私には癒しの空間でした。結婚しないで管理職になった女性は周りから見る目も厳しく、私は自分だけの城を作りまあした。そこで私とM男の週末の生活を祖紹介します。半分はノンフィクション、そして半分はフィクションです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる