18 / 22
その他短編
現実に起こった夢
しおりを挟む
白の羽がはらはらと落ちてくる。上を見上げると白い翼を持った者。あれはきっと天使だろう。人々は口々に言った。天使が舞い降りる、と。全身が真っ白な天使様の閉じていた目が開く。人々を見下ろしている天使様は衝撃的な内容を口にした。
「滅びは近い。我らはお主たちを助けることなどないと思え!」
天使様の言葉が合図だったかのように、突然ドンっと大きな音が鳴り響いた。地上に落ちる大きな岩のような塊の数々。勢いよく落ちてくるそれに地は耐えられず、割れた。岩は形を残した物もあれば、衝撃で砕け散った物もある。地上には大きな穴ができていた。岩が落ちてくる様子を見ていた人々は混乱状態。その場にいた人々は悲鳴を上げて逃げ惑うばかり。中には落ちてきた塊に潰された人もいた。
「我々は世界を滅ぼす者。人間よ、罰を受けよ!!」
ビリビリと空気が揺れた。逃げている足が止まりそうになった。だが、それをしたら死ぬと思い、精一杯走る。一体何が起こっているんだろうか。まだ状況を理解できていない僕たちは逃げようとも恐怖に支配されたまま。
「さぁ~、It’s showtime! 愚かな人間よ。神の眷属である我らの玩具となれ! あはははははは!!! ひひひひひひひ!!!」
不気味な笑い声が聞こえた。ふと、真っ白な天使を見てしまう。空に手を向けていた。たらりと冷や汗が流れる。嫌な予感。僕はゾッとした。収まることのない混乱の最中に、再び巨大な岩がやってきたから。大きな大きな物で、ここらに落ちたらひとたまりもない。僕たちは死んでしまうだろう。
「ほらほら逃げなさい! 逃げて逃げて逃げて逃げなさい!! どんなに逃げたって潰されちゃうけどさ」
どんどん迫ってくる物。逃げることさえ無駄だと思うくらいにそれは大きかった。逃げ道なんてない。奇跡的に生きられるか、それとも死んでしまうか。僕は足を止めた。もうどんなに逃げたところであれが落ちてくるのは止められやしない。僕は諦めた。生きることを――。ああ、僕は死ぬのか。俯いて自分の死を待つ。
ぎゅっと目をつぶってどれくらい経っただろうか。もうあの世に着いたのかな。痛みもなく、逝けたのかな。そんなことを考えていた。
「あ、あんた! 何してんのよーーーーっ!!!」
突然、スパーンとどこからか音が聞こえた。驚きとともに目を開ける。たしか、上から聞こえてきたような……。恐る恐る上を見る。そこには白い天使と金色の翼を持つ天使、かもしれない者がいた。
「人間滅ぼそうとすんなーー!! 勝手なことをするな!!」
金色の翼を持った者は白い天使に説教をしている。しかもどこから取り出してきたのかわからないハリセンでバシバシ頭叩いてるし。とても痛そうだ。
「神様! 我らは勝手なことはしていません。神様は言われました。人間って面倒だな。滅ぼしちゃえば世界なんて管理しなくて楽だな。よし、君たち、人間で遊んでいいよー、と」
「え、そんなこと言ったかな?」
「はい、おっしゃいました。録音テープあるので聴きますか?」
へぇ~、人間の世界じゃないけど、録音できる道具あるんだ。天の世界も科学が発展してるのだろうか。あっ! それより、人間滅亡を推奨するって正気か?
「……な、へ、ほ、あ? あ、あ、あぁぁぁ……うん、流さないでね。流しちゃだめだからね」
うわ、すごい焦ってるな。神様。両手を前に突き出して、遠慮してるし。
「はい、ポチッとな!」
「うわーーー!!!」
白い天使は四角いのにある赤いボタンを押した。それを見た神様がきっと何かをしたんだろう。ボンっと爆発した。プスプスと音が立ち、粉々になった機械。
「ふぅ~、危ない危ない。あのね、ちょっとお酒飲んで酔ってたのよ。人間の数の管理、世界に異常はないかの確認などなど、天井につきそうなくらいの紙束が数えきれないくらい机にあるのよ。そんな書類仕事でストレス溜まりまくってたの。やー、だからね――」
「神様、言い訳は無用です。お酒を飲んで吐いた言葉はあなたの本心です。人間はクソ。さっさと滅んでしまったら、こんなクソみたいな大量の仕事せずに楽できる。それなのに、どうしてこんなに紙があるの? 人間なんていなければ……」
「はい、ちょっと静かにしてようね~。そんなこと一っ言も言ったことないよー。うんうん、ないない」
これは、神様、言ったことあるな。反応がわかりやすすぎる。もし言ってないなら、白い天使の口を塞いで、そっぽ向かなくていいと思うし。
「いや~、人間の諸君! 迷惑かけたね。ああ、君たち人間はここで起こったことの全てを忘れる。それじゃあ、せいぜい根強く生き残ってねー!!」
あ、消えた。天使も一緒にいなくなってるし。なんだろう。夢でも見たのかな。いや、これは現実だ。そう思ったが、なんだか眠気が襲ってくる。僕は抗うことはできず、そのまま眠りについた。
「もう、時間巻き戻すの大変なんだからね! 今後はこんな暴挙一切しないでよ。また処理する書類が増えるんだからーー!!」
どこからか悲痛な叫びが聞こえてきたような気がするけど、気のせいだよな。はぁ、変な夢も見たし。内容は、天使が人間滅ぼそうと襲ってきて、それを神様が止めるというもの。もともと人間滅亡は酔っ払った神様のせいで起こったことらしいけど。なんか、リアルな夢見たな~。
「まあ、現実にそんなこと起こるわけないよな。よし、さっさと出かける準備でもするか」
※※※
「我の給料が……8割減らされている!? どうやって生きていけばいいんだ! あの酔っ払い!! よし、神様に物申す!!……あの~、減給はなかったことにして……」
「しないよ。ほら、これ人間管理部ね。これは世界秩序部。これは時間管轄部。それでこれとこれは………………。はい、持ってって」
ペンを持ち机にある紙を処理していた金色の翼を持つ者。その者はお願いに来た白い天使にドサドサと大量の紙を渡した。天使はヨロヨロになり、潰れそうになっている。
「落としちゃダメだよ。落としたら、今後しばらく給料なしね」
「そんなことになったら、生きていけない!!」
必死に紙を抱える天使は、さっと部屋を出ていった。そして、紙の重さに耐えきれなくなったのか、紙の量が多いせいか、神様のいないところでたくさんの紙を落とした。散らばる紙を前に呆然と立つ天使がいたようだ。
「滅びは近い。我らはお主たちを助けることなどないと思え!」
天使様の言葉が合図だったかのように、突然ドンっと大きな音が鳴り響いた。地上に落ちる大きな岩のような塊の数々。勢いよく落ちてくるそれに地は耐えられず、割れた。岩は形を残した物もあれば、衝撃で砕け散った物もある。地上には大きな穴ができていた。岩が落ちてくる様子を見ていた人々は混乱状態。その場にいた人々は悲鳴を上げて逃げ惑うばかり。中には落ちてきた塊に潰された人もいた。
「我々は世界を滅ぼす者。人間よ、罰を受けよ!!」
ビリビリと空気が揺れた。逃げている足が止まりそうになった。だが、それをしたら死ぬと思い、精一杯走る。一体何が起こっているんだろうか。まだ状況を理解できていない僕たちは逃げようとも恐怖に支配されたまま。
「さぁ~、It’s showtime! 愚かな人間よ。神の眷属である我らの玩具となれ! あはははははは!!! ひひひひひひひ!!!」
不気味な笑い声が聞こえた。ふと、真っ白な天使を見てしまう。空に手を向けていた。たらりと冷や汗が流れる。嫌な予感。僕はゾッとした。収まることのない混乱の最中に、再び巨大な岩がやってきたから。大きな大きな物で、ここらに落ちたらひとたまりもない。僕たちは死んでしまうだろう。
「ほらほら逃げなさい! 逃げて逃げて逃げて逃げなさい!! どんなに逃げたって潰されちゃうけどさ」
どんどん迫ってくる物。逃げることさえ無駄だと思うくらいにそれは大きかった。逃げ道なんてない。奇跡的に生きられるか、それとも死んでしまうか。僕は足を止めた。もうどんなに逃げたところであれが落ちてくるのは止められやしない。僕は諦めた。生きることを――。ああ、僕は死ぬのか。俯いて自分の死を待つ。
ぎゅっと目をつぶってどれくらい経っただろうか。もうあの世に着いたのかな。痛みもなく、逝けたのかな。そんなことを考えていた。
「あ、あんた! 何してんのよーーーーっ!!!」
突然、スパーンとどこからか音が聞こえた。驚きとともに目を開ける。たしか、上から聞こえてきたような……。恐る恐る上を見る。そこには白い天使と金色の翼を持つ天使、かもしれない者がいた。
「人間滅ぼそうとすんなーー!! 勝手なことをするな!!」
金色の翼を持った者は白い天使に説教をしている。しかもどこから取り出してきたのかわからないハリセンでバシバシ頭叩いてるし。とても痛そうだ。
「神様! 我らは勝手なことはしていません。神様は言われました。人間って面倒だな。滅ぼしちゃえば世界なんて管理しなくて楽だな。よし、君たち、人間で遊んでいいよー、と」
「え、そんなこと言ったかな?」
「はい、おっしゃいました。録音テープあるので聴きますか?」
へぇ~、人間の世界じゃないけど、録音できる道具あるんだ。天の世界も科学が発展してるのだろうか。あっ! それより、人間滅亡を推奨するって正気か?
「……な、へ、ほ、あ? あ、あ、あぁぁぁ……うん、流さないでね。流しちゃだめだからね」
うわ、すごい焦ってるな。神様。両手を前に突き出して、遠慮してるし。
「はい、ポチッとな!」
「うわーーー!!!」
白い天使は四角いのにある赤いボタンを押した。それを見た神様がきっと何かをしたんだろう。ボンっと爆発した。プスプスと音が立ち、粉々になった機械。
「ふぅ~、危ない危ない。あのね、ちょっとお酒飲んで酔ってたのよ。人間の数の管理、世界に異常はないかの確認などなど、天井につきそうなくらいの紙束が数えきれないくらい机にあるのよ。そんな書類仕事でストレス溜まりまくってたの。やー、だからね――」
「神様、言い訳は無用です。お酒を飲んで吐いた言葉はあなたの本心です。人間はクソ。さっさと滅んでしまったら、こんなクソみたいな大量の仕事せずに楽できる。それなのに、どうしてこんなに紙があるの? 人間なんていなければ……」
「はい、ちょっと静かにしてようね~。そんなこと一っ言も言ったことないよー。うんうん、ないない」
これは、神様、言ったことあるな。反応がわかりやすすぎる。もし言ってないなら、白い天使の口を塞いで、そっぽ向かなくていいと思うし。
「いや~、人間の諸君! 迷惑かけたね。ああ、君たち人間はここで起こったことの全てを忘れる。それじゃあ、せいぜい根強く生き残ってねー!!」
あ、消えた。天使も一緒にいなくなってるし。なんだろう。夢でも見たのかな。いや、これは現実だ。そう思ったが、なんだか眠気が襲ってくる。僕は抗うことはできず、そのまま眠りについた。
「もう、時間巻き戻すの大変なんだからね! 今後はこんな暴挙一切しないでよ。また処理する書類が増えるんだからーー!!」
どこからか悲痛な叫びが聞こえてきたような気がするけど、気のせいだよな。はぁ、変な夢も見たし。内容は、天使が人間滅ぼそうと襲ってきて、それを神様が止めるというもの。もともと人間滅亡は酔っ払った神様のせいで起こったことらしいけど。なんか、リアルな夢見たな~。
「まあ、現実にそんなこと起こるわけないよな。よし、さっさと出かける準備でもするか」
※※※
「我の給料が……8割減らされている!? どうやって生きていけばいいんだ! あの酔っ払い!! よし、神様に物申す!!……あの~、減給はなかったことにして……」
「しないよ。ほら、これ人間管理部ね。これは世界秩序部。これは時間管轄部。それでこれとこれは………………。はい、持ってって」
ペンを持ち机にある紙を処理していた金色の翼を持つ者。その者はお願いに来た白い天使にドサドサと大量の紙を渡した。天使はヨロヨロになり、潰れそうになっている。
「落としちゃダメだよ。落としたら、今後しばらく給料なしね」
「そんなことになったら、生きていけない!!」
必死に紙を抱える天使は、さっと部屋を出ていった。そして、紙の重さに耐えきれなくなったのか、紙の量が多いせいか、神様のいないところでたくさんの紙を落とした。散らばる紙を前に呆然と立つ天使がいたようだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サディストの私がM男を多頭飼いした時のお話
トシコ
ファンタジー
素人の女王様である私がマゾの男性を飼うのはリスクもありますが、生活に余裕の出来た私には癒しの空間でした。結婚しないで管理職になった女性は周りから見る目も厳しく、私は自分だけの城を作りまあした。そこで私とM男の週末の生活を祖紹介します。半分はノンフィクション、そして半分はフィクションです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる