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ルリアナとエリオット
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『結婚するのは自分の利益のためで王子さまは付随物です』から、ルリアナとエリオットのお話。
(2021.10.10のメモに残っていたもの。そのメモに「家族愛?」と書かれていたため、ファンタジーの短編に入れました。本編のジャンルは恋愛としています)。
【以下本文】
あの人に恋をしたの。だから、あの女から奪ってやった。あの人が大好きで愛しているから、私は彼の側にいる。そして、その想いが通じたのか、あの人も私を愛してくれている。……、そんなわけないでしょう? 王様になるって決まってたから彼に近づいた。彼の隣をあの女から奪った。なのに、この惨状はなんなの? 私はこんな惨めになるなんて思いもしなかった。王妃になれないなんて、なんのために今まで彼と一緒にいたというのかしら。
「ルリアナ。頼むから、これ以上は……」
「うっさいわね! あんたが王様にならなかったから、私がこんな貧しい暮らしをしているのよ!? この私がこんな貧乏な生活をしているのよ!? もっと稼ぎなさいよ! それができないなら、いっそのこと……」
「ルリアナ!! いい加減にしてくれ! 僕は君の奴隷じゃないんだよ! 見栄を張ってドレスを買ったって、ここでは笑われる。何もできないわがままお姫様だって……ね。いい加減、現実を見てくれ」
王子だったエリオットは、フラフラ歩きながら外へ出て行った。私たちはあの日、真実を告げられた時から、監視されながら暮らしている。見られながら過ごす日々。もし、近くに住んでいる村人に手を出そうものなら、王様に報告されてしまうだろう。そして、私はもっと下層の人間に落とされる。まさに、彼が言った奴隷になってしまうわね。
***
王都から離れた土地は、建物よりも自然が多かった。お金を持ってお店に行けば、求めるものが買える。しかし、私たちが監視されながら暮らす土地ではお店はなかった。物々交換が主流で、村人を手伝うことで何かを得ることができる。助け合いの環境だった。たまに、遠くから行商人がやってきて、それで安く生活必需品などを手に入れることもできた。
あの日、エリオットは王族の血を引いていないと知り、呆然としていた。私が彼を愛していないと言う事実にも絶望していたのだろう。彼の心情は私にはわからない。わかりたくもない。どうでもよかった。ただ、私が価値のなくなった彼と別れることができなかったのがとても屈辱だった。
王様が命令した。それで王様を守護している影を務める者たちが動いた。素早く私たちは質素な馬車に押し込まれた。どこに行くのかも告げられず、私たちは地獄への道を進んでいく。ガタガタと揺れる居心地の悪い馬車で、気分は最悪だった。これからは貴族のようなお金に困らない生活はできない。エリオットが王様になれる人間だったなら、私はいつまでも散財できた。はあ、本当に使えない男をつかまされたものだ。ぐったりとしてなにも理解できていなさそうな男を見た。
「役立たず。こんな男、いなければわたしは今頃……」
彼からしたら侮辱されているものなのに、その言葉にも反応しない。そんな彼を私は鼻で笑った。私は彼みたいにまだ心は折れていない。彼を利用して私は私の生活を築く。私は貧相な人生は送らないわ。彼を使って楽に生きるのよ。私は私のしたいようにするの。
――現実が見えていなかったのは私自身だった。
「ルリアナ! どこからこんなドレスを買ってきた!! このドレスを買える大金はこの家にはない。どうやって……。これでは、生活していけなくなる!!」
「ほんと、ギャーギャーとうるさいわね。王家から渡されたはした金を使ったのよ。別にいいじゃない。私たちに渡されたお金なんだから、私が綺麗になるために使ってもいいでしょう? それとも私が綺麗になることをとめるつもり?」
「そういう問題じゃない! あれは、ルルフィアーノに返すお金だったんだ。僕自身の少ない資産だったんだよ。これからどうやってルルフィアーノに……」
「エリオット。あの女に慰謝料なんて払う必要ないわ。そんなことのために使うなら私に全部よこしなさい!」
袋に入ったお金は少なかった。チャリン、チャリン、と落ちてきたが、本当に少ないものだった。かろうじて、庶民が食べる物を一つ買えるくらいのお金。ちっ! こんなお金じゃ何にもできないじゃない。ほんと使えない男。
(2021.10.10のメモに残っていたもの。そのメモに「家族愛?」と書かれていたため、ファンタジーの短編に入れました。本編のジャンルは恋愛としています)。
【以下本文】
あの人に恋をしたの。だから、あの女から奪ってやった。あの人が大好きで愛しているから、私は彼の側にいる。そして、その想いが通じたのか、あの人も私を愛してくれている。……、そんなわけないでしょう? 王様になるって決まってたから彼に近づいた。彼の隣をあの女から奪った。なのに、この惨状はなんなの? 私はこんな惨めになるなんて思いもしなかった。王妃になれないなんて、なんのために今まで彼と一緒にいたというのかしら。
「ルリアナ。頼むから、これ以上は……」
「うっさいわね! あんたが王様にならなかったから、私がこんな貧しい暮らしをしているのよ!? この私がこんな貧乏な生活をしているのよ!? もっと稼ぎなさいよ! それができないなら、いっそのこと……」
「ルリアナ!! いい加減にしてくれ! 僕は君の奴隷じゃないんだよ! 見栄を張ってドレスを買ったって、ここでは笑われる。何もできないわがままお姫様だって……ね。いい加減、現実を見てくれ」
王子だったエリオットは、フラフラ歩きながら外へ出て行った。私たちはあの日、真実を告げられた時から、監視されながら暮らしている。見られながら過ごす日々。もし、近くに住んでいる村人に手を出そうものなら、王様に報告されてしまうだろう。そして、私はもっと下層の人間に落とされる。まさに、彼が言った奴隷になってしまうわね。
***
王都から離れた土地は、建物よりも自然が多かった。お金を持ってお店に行けば、求めるものが買える。しかし、私たちが監視されながら暮らす土地ではお店はなかった。物々交換が主流で、村人を手伝うことで何かを得ることができる。助け合いの環境だった。たまに、遠くから行商人がやってきて、それで安く生活必需品などを手に入れることもできた。
あの日、エリオットは王族の血を引いていないと知り、呆然としていた。私が彼を愛していないと言う事実にも絶望していたのだろう。彼の心情は私にはわからない。わかりたくもない。どうでもよかった。ただ、私が価値のなくなった彼と別れることができなかったのがとても屈辱だった。
王様が命令した。それで王様を守護している影を務める者たちが動いた。素早く私たちは質素な馬車に押し込まれた。どこに行くのかも告げられず、私たちは地獄への道を進んでいく。ガタガタと揺れる居心地の悪い馬車で、気分は最悪だった。これからは貴族のようなお金に困らない生活はできない。エリオットが王様になれる人間だったなら、私はいつまでも散財できた。はあ、本当に使えない男をつかまされたものだ。ぐったりとしてなにも理解できていなさそうな男を見た。
「役立たず。こんな男、いなければわたしは今頃……」
彼からしたら侮辱されているものなのに、その言葉にも反応しない。そんな彼を私は鼻で笑った。私は彼みたいにまだ心は折れていない。彼を利用して私は私の生活を築く。私は貧相な人生は送らないわ。彼を使って楽に生きるのよ。私は私のしたいようにするの。
――現実が見えていなかったのは私自身だった。
「ルリアナ! どこからこんなドレスを買ってきた!! このドレスを買える大金はこの家にはない。どうやって……。これでは、生活していけなくなる!!」
「ほんと、ギャーギャーとうるさいわね。王家から渡されたはした金を使ったのよ。別にいいじゃない。私たちに渡されたお金なんだから、私が綺麗になるために使ってもいいでしょう? それとも私が綺麗になることをとめるつもり?」
「そういう問題じゃない! あれは、ルルフィアーノに返すお金だったんだ。僕自身の少ない資産だったんだよ。これからどうやってルルフィアーノに……」
「エリオット。あの女に慰謝料なんて払う必要ないわ。そんなことのために使うなら私に全部よこしなさい!」
袋に入ったお金は少なかった。チャリン、チャリン、と落ちてきたが、本当に少ないものだった。かろうじて、庶民が食べる物を一つ買えるくらいのお金。ちっ! こんなお金じゃ何にもできないじゃない。ほんと使えない男。
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