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11章 宿屋娘が憧れの先輩と一緒にとろとろえっちになってしまうお話
206:仕事
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秋の長雨が、港湾要塞都市アストリナの石畳を灰色に濡らす、そんな日の午後のこと。冒険者ギルドの受付嬢セレスティアに告げられた言葉に従い、魔術師エレナさんは、かつての師であるアウレリウスが待つという、魔術師ギルドの「星見の塔」を訪れています。
塔の最上階に位置するギルドマスターの執務室。その重厚な樫の扉を開けた瞬間、彼女の鼻腔をくすぐったのは、古びた羊皮紙とインクの乾いた匂い、そして師が好んで焚く、東方伝来の白檀の、心を落ち着かせるような、それでいてどこか官能的な甘い香りなのでした。
壁一面を埋め尽くす本棚には、禁書に指定されていてもおかしくないような、禍々しい装丁の魔導書がぎっしりと並び、机の上には、用途不明の魔導具や、解読途中の古代語の文献が、雑然と、しかしある種の法則性をもって積み上げられています。そこは、彼女が弟子であった頃と、何も変わっていませんでした。
「よう、エレナ。久しぶりじゃねえか。まあ、そこに座れや」
その雑然とした空間の中心で、椅子にふんぞり返っていた師、アウレリウス・フォン・リーゼンフェルトは、エレナさんの顔を見るなり、にやりと意地の悪い笑みを浮かべました。スラムのチンピラと見紛うばかりの、着古したぼろぼろの衣服。悪趣味な銀のアクセサリーをじゃらじゃらと首から下げ、その細身の身体には、大陸でも五指に入ると謳われる大魔術師の威厳など、欠片も感じられません。しかし、その剃り上げられた頭の下にある、すべてを見透かすような鋭い瞳だけが、彼の本質を物語っています。
その視線が、エレナさんの身体を、まるで服の上から肌を直接撫でるかのように、ねっとりと這い回ります。そのたびに、彼女の身体の奥深く、子宮のあたりがきゅううんと甘く疼き、白いブラウスの下で、豊かな双丘の先端が、きゅっと硬く尖るのを感じました。
(いやですわ、わたくしったら……。師の前だというのに、なんて、はしたない……)
貞淑な人妻としてあるまじき身体の反応に、エレナさんは内心で狼狽えながらも、それをおくびにも出さず、優雅に微笑んでみせます。
「ご無沙汰しております、アウレリウス様。本日は、一体どのような御用でございましょうか? 『高額の報酬』をご用意していると、セレスさんから伺いましたが」
努めて冷静に、そして淑女然として問いかけると、師は、くつくつと喉を鳴らして笑いました。
「相変わらず、金にがめつい女だな、お前は。まあ、いい。単刀直入に言う。ちいと、面倒な仕事をお前に頼みたい」
師はそう言うと、机の上に置かれた、黒曜石でできた通信用の魔導具を、指先でとん、と叩きました。その表面には、冒険者ギルドの紋章である『剣と竜』が、微かに光って浮かび上がっています。
「先日、領主邸から、冒険者ギルドの若造……アシュワースのところに、内密の依頼があったそうだ。領主フェリクス様の一人息子、ユーノ様の家庭教師を探している、とかなんとか。これを利用させてもらう。」
「……と、申しますと?」
「ここ最近、領主邸の周辺で、妙な魔力の残滓が観測されてやがる。俺の見立てじゃ、ありゃあ、死霊魔術の匂いだ。それも、ただのアンデッドを使役するような低級な術じゃねえ。魂そのものに干渉し、世界の理を歪めかねん、禁忌の中の禁忌……。そんな厄介な代物のな」
死霊魔術。その言葉の響きに、エレナの背筋を、ぞくりと冷たいものが駆け上りました。しかし、それと同時に、心の奥底で、危険な任務に対する、どうしようもない興奮が湧き上がってくるのを、彼女は確かに感じておりました。
「俺たち魔術師ギルドから調査の依頼をアシュワースに出したがそもそも死霊術調査なんぞそこいらの冒険者には荷が重い。そこで、あの若造が、面白い提案をしてきやがった。家庭教師として、魔術師ギルドから人員を派遣し、潜入調査させてはどうか、とな。そして、その大役を、お前に任せたい」
「わたくしに、ですか……?」
「ああ。報酬は、お前の亭主の店の借金をすべて返済しても、お釣りがくるくらいは出してやる。どうだ? 悪い話じゃねえだろう」
その言葉は、悪魔の囁きのように、甘く、そして抗いがたい魅力に満ちておりました。夫ニルスの薬代、店の経営難……。それらすべてが、この任務一つで解決する。エレナに、断るという選択肢はございませんでした。
「……謹んで、お受けいたしますわ」
エレナが深々と頭を下げると、師は満足げに頷きました。
「ただし、お前一人じゃ、ちいと不安でな。お前の後輩を、一人、一緒につけてやる。まだ見習いだが、筋はいい。お前が、きっちり指導してやれ」
「後輩の、指導、ですか……?」
「そうだ。そいつは、お前と違って、真面目だけが取り柄の、くそつまらん小娘でな。今回の任務で、ちいと、世の中の裏側ってもんを、見せてやるのもいいだろう。お前にとっても、いい刺激になるはずだ」
師の言葉に、エレナさんの胸に、ほんの少しの優越感が芽生えました。自分が、先輩として、後輩を導く。その響きは、存外、心地よいものなのでした。
塔の最上階に位置するギルドマスターの執務室。その重厚な樫の扉を開けた瞬間、彼女の鼻腔をくすぐったのは、古びた羊皮紙とインクの乾いた匂い、そして師が好んで焚く、東方伝来の白檀の、心を落ち着かせるような、それでいてどこか官能的な甘い香りなのでした。
壁一面を埋め尽くす本棚には、禁書に指定されていてもおかしくないような、禍々しい装丁の魔導書がぎっしりと並び、机の上には、用途不明の魔導具や、解読途中の古代語の文献が、雑然と、しかしある種の法則性をもって積み上げられています。そこは、彼女が弟子であった頃と、何も変わっていませんでした。
「よう、エレナ。久しぶりじゃねえか。まあ、そこに座れや」
その雑然とした空間の中心で、椅子にふんぞり返っていた師、アウレリウス・フォン・リーゼンフェルトは、エレナさんの顔を見るなり、にやりと意地の悪い笑みを浮かべました。スラムのチンピラと見紛うばかりの、着古したぼろぼろの衣服。悪趣味な銀のアクセサリーをじゃらじゃらと首から下げ、その細身の身体には、大陸でも五指に入ると謳われる大魔術師の威厳など、欠片も感じられません。しかし、その剃り上げられた頭の下にある、すべてを見透かすような鋭い瞳だけが、彼の本質を物語っています。
その視線が、エレナさんの身体を、まるで服の上から肌を直接撫でるかのように、ねっとりと這い回ります。そのたびに、彼女の身体の奥深く、子宮のあたりがきゅううんと甘く疼き、白いブラウスの下で、豊かな双丘の先端が、きゅっと硬く尖るのを感じました。
(いやですわ、わたくしったら……。師の前だというのに、なんて、はしたない……)
貞淑な人妻としてあるまじき身体の反応に、エレナさんは内心で狼狽えながらも、それをおくびにも出さず、優雅に微笑んでみせます。
「ご無沙汰しております、アウレリウス様。本日は、一体どのような御用でございましょうか? 『高額の報酬』をご用意していると、セレスさんから伺いましたが」
努めて冷静に、そして淑女然として問いかけると、師は、くつくつと喉を鳴らして笑いました。
「相変わらず、金にがめつい女だな、お前は。まあ、いい。単刀直入に言う。ちいと、面倒な仕事をお前に頼みたい」
師はそう言うと、机の上に置かれた、黒曜石でできた通信用の魔導具を、指先でとん、と叩きました。その表面には、冒険者ギルドの紋章である『剣と竜』が、微かに光って浮かび上がっています。
「先日、領主邸から、冒険者ギルドの若造……アシュワースのところに、内密の依頼があったそうだ。領主フェリクス様の一人息子、ユーノ様の家庭教師を探している、とかなんとか。これを利用させてもらう。」
「……と、申しますと?」
「ここ最近、領主邸の周辺で、妙な魔力の残滓が観測されてやがる。俺の見立てじゃ、ありゃあ、死霊魔術の匂いだ。それも、ただのアンデッドを使役するような低級な術じゃねえ。魂そのものに干渉し、世界の理を歪めかねん、禁忌の中の禁忌……。そんな厄介な代物のな」
死霊魔術。その言葉の響きに、エレナの背筋を、ぞくりと冷たいものが駆け上りました。しかし、それと同時に、心の奥底で、危険な任務に対する、どうしようもない興奮が湧き上がってくるのを、彼女は確かに感じておりました。
「俺たち魔術師ギルドから調査の依頼をアシュワースに出したがそもそも死霊術調査なんぞそこいらの冒険者には荷が重い。そこで、あの若造が、面白い提案をしてきやがった。家庭教師として、魔術師ギルドから人員を派遣し、潜入調査させてはどうか、とな。そして、その大役を、お前に任せたい」
「わたくしに、ですか……?」
「ああ。報酬は、お前の亭主の店の借金をすべて返済しても、お釣りがくるくらいは出してやる。どうだ? 悪い話じゃねえだろう」
その言葉は、悪魔の囁きのように、甘く、そして抗いがたい魅力に満ちておりました。夫ニルスの薬代、店の経営難……。それらすべてが、この任務一つで解決する。エレナに、断るという選択肢はございませんでした。
「……謹んで、お受けいたしますわ」
エレナが深々と頭を下げると、師は満足げに頷きました。
「ただし、お前一人じゃ、ちいと不安でな。お前の後輩を、一人、一緒につけてやる。まだ見習いだが、筋はいい。お前が、きっちり指導してやれ」
「後輩の、指導、ですか……?」
「そうだ。そいつは、お前と違って、真面目だけが取り柄の、くそつまらん小娘でな。今回の任務で、ちいと、世の中の裏側ってもんを、見せてやるのもいいだろう。お前にとっても、いい刺激になるはずだ」
師の言葉に、エレナさんの胸に、ほんの少しの優越感が芽生えました。自分が、先輩として、後輩を導く。その響きは、存外、心地よいものなのでした。
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