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11章 宿屋娘が憧れの先輩と一緒にとろとろえっちになってしまうお話
210:仕事
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年配の侍女に導かれ、エレナさんとリリアさんが足を踏み入れた謁見の間は、彼女たちの想像を遥かに超えるほど、壮麗な空間でした。
天井は、まるで夜空をそのまま切り取ってきたかのように高く、そこにはアストリナの街の神話を描いた巨大なフレスコ画が、金箔を惜しげもなく使って描かれています。磨き上げられた大理石の床は、二人の姿を鏡のように映し出し、歩を進めるたびに、メイド服のスカートの裾が優雅に揺れる様まで、くっきりと描き出していました。壁に掛けられた巨大なタペストリーには、アストール家の象徴である『四つ頭の蛇』の紋章が、銀糸で緻密に織り込まれています。空気は、高価な香油と、磨かれた銀食器が放つ清浄な匂いで満たされており、スラムの安酒場や、冒険者ギルドの喧騒とは、まさに別世界のようでした。
あまりの荘厳さに気圧され、二人の喉がごくりと鳴ります。メイド服の下、蜘蛛の糸のように繊細な黒いレースの下着が、緊張でじっとりと汗ばむ肌に張り付くのを感じました。特に、太腿を締め付けるガーターストッキングの感触は、自分たちが今、いかに場違いで、そして淫らな格好をしているのかを、絶えず意識させてきます。
(なんて、場所ですの……。まるで、おとぎ話のお城のようですわ)
エレナさんは、鍛冶屋の妻として慎ましく暮らす日常との、あまりの隔たりに眩暈さえ覚えます。
(おかあさま……。わたくし、とんでもない場所に来てしまいました……)
リリアさんに至っては、普段の冷静さはどこへやら、ただただ目を丸くして、きょろきょろと周囲を見回すばかりです。
やがて、部屋の最奥。一段高くなった場所に置かれた、巨大な玉座が二人の目に飛び込んできました。そこに座る人物こそ、このアストリナの頂点に君臨する領主、フェリクス・アストールその人。
(い、いったい、どれほど恐ろしい方が……)
二人が身構えた、その時でした。
「やあやあ! 君たちが、アシュワース君のところから来てくれた、新しい先生だね! よく来てくれた、長旅で疲れただろう!」
玉座から立ち上がった領主は、まるで近所のおじさんのように気さくな笑顔で、ぱたぱたと手を振りながら駆け寄ってきました。その姿は、二人が想像していた権力者のイメージとは、あまりにもかけ離れています。歳は四十代半ばほどでしょうか。高価な生地で仕立てられたであろう上着を、少し着崩して身に纏い、その柔和な顔には、苦労と人の良さが滲み出ていました。威圧感など、どこにも感じられません。
あまりの拍子抜けに、エレナさんとリリアさんは、ただ呆然と立ち尽くすしかありませんでした。
「ええと、私がここの領主をしている、フェリクスだよ。まあ、そんなに固くならないで。ささ、そこに座って座って」
領主はそう言うと、豪奢な玉座ではなく、その手前に置かれた、客人のための柔らかなソファを指し示します。その親しみやすい態度に、二人の緊張は、少しだけ解けていきました。
ソファに腰を下ろした二人を前に、フェリクスは少し申し訳なさそうな顔で、話を切り出します。
「いやあ、すまないね、急に呼び立ててしまって。実は、君たちには、私のたった一人の息子、ユーノの家庭教師をお願いしたいんだ」
その声には、息子への深い愛情が滲み出ています。まさしく、親バカ、といった風情でした。
「先日まで、東方の国から来た、小雪さんという、とても優秀な方が世話係をしてくれていてね。彼女のおかげで、ユーノもずいぶんと明るくなって、勉学にも意欲を見せてくれるようになったんだが……。残念ながら、家の事情とかで、長くはいてもらえなくてね。後任を探していたところに、アシュワース君から、君たちのことを紹介してもらった、というわけなんだよ」
領主は、冒険者ギルドマスターから受け取ったのであろう、二人の経歴が書かれた紹介状に目を落とします。
「エレナさんは、アウレリウス先生の高弟だったとか。そしてリリアさんは、今、ギルドで最も優秀な見習いだと聞いている。二人なら、きっと、ユーノの良い先生になってくれると信じているよ」
「もったいないお言葉ですわ」
「光栄です」
恐縮する二人に、領主は「それで、早速で悪いんだが」と、本題に入りました。
「ユーノに、幅広い学問を教えてやってほしいんだ。あの子は、魔術の才能は、どうやらアストール家の血筋を反映してずば抜けているようなんだが、それ以外のことは、とんと疎くてね。魔術だけじゃなく、算術、歴史、地理、錬金術の基礎、いくつかの国の語学、それから、星の動きを読む天文学。貴族として、為政者として、必要な知識を、どうか、君たちの手で授けてやってはくれないだろうか」
その真剣な眼差しに、二人は、ごくりと喉を鳴らしました。これは、ただの家庭教師ではありません。次期領主を育てるという、アストリナの根幹に関わる、極めて重要な任務なのです。
天井は、まるで夜空をそのまま切り取ってきたかのように高く、そこにはアストリナの街の神話を描いた巨大なフレスコ画が、金箔を惜しげもなく使って描かれています。磨き上げられた大理石の床は、二人の姿を鏡のように映し出し、歩を進めるたびに、メイド服のスカートの裾が優雅に揺れる様まで、くっきりと描き出していました。壁に掛けられた巨大なタペストリーには、アストール家の象徴である『四つ頭の蛇』の紋章が、銀糸で緻密に織り込まれています。空気は、高価な香油と、磨かれた銀食器が放つ清浄な匂いで満たされており、スラムの安酒場や、冒険者ギルドの喧騒とは、まさに別世界のようでした。
あまりの荘厳さに気圧され、二人の喉がごくりと鳴ります。メイド服の下、蜘蛛の糸のように繊細な黒いレースの下着が、緊張でじっとりと汗ばむ肌に張り付くのを感じました。特に、太腿を締め付けるガーターストッキングの感触は、自分たちが今、いかに場違いで、そして淫らな格好をしているのかを、絶えず意識させてきます。
(なんて、場所ですの……。まるで、おとぎ話のお城のようですわ)
エレナさんは、鍛冶屋の妻として慎ましく暮らす日常との、あまりの隔たりに眩暈さえ覚えます。
(おかあさま……。わたくし、とんでもない場所に来てしまいました……)
リリアさんに至っては、普段の冷静さはどこへやら、ただただ目を丸くして、きょろきょろと周囲を見回すばかりです。
やがて、部屋の最奥。一段高くなった場所に置かれた、巨大な玉座が二人の目に飛び込んできました。そこに座る人物こそ、このアストリナの頂点に君臨する領主、フェリクス・アストールその人。
(い、いったい、どれほど恐ろしい方が……)
二人が身構えた、その時でした。
「やあやあ! 君たちが、アシュワース君のところから来てくれた、新しい先生だね! よく来てくれた、長旅で疲れただろう!」
玉座から立ち上がった領主は、まるで近所のおじさんのように気さくな笑顔で、ぱたぱたと手を振りながら駆け寄ってきました。その姿は、二人が想像していた権力者のイメージとは、あまりにもかけ離れています。歳は四十代半ばほどでしょうか。高価な生地で仕立てられたであろう上着を、少し着崩して身に纏い、その柔和な顔には、苦労と人の良さが滲み出ていました。威圧感など、どこにも感じられません。
あまりの拍子抜けに、エレナさんとリリアさんは、ただ呆然と立ち尽くすしかありませんでした。
「ええと、私がここの領主をしている、フェリクスだよ。まあ、そんなに固くならないで。ささ、そこに座って座って」
領主はそう言うと、豪奢な玉座ではなく、その手前に置かれた、客人のための柔らかなソファを指し示します。その親しみやすい態度に、二人の緊張は、少しだけ解けていきました。
ソファに腰を下ろした二人を前に、フェリクスは少し申し訳なさそうな顔で、話を切り出します。
「いやあ、すまないね、急に呼び立ててしまって。実は、君たちには、私のたった一人の息子、ユーノの家庭教師をお願いしたいんだ」
その声には、息子への深い愛情が滲み出ています。まさしく、親バカ、といった風情でした。
「先日まで、東方の国から来た、小雪さんという、とても優秀な方が世話係をしてくれていてね。彼女のおかげで、ユーノもずいぶんと明るくなって、勉学にも意欲を見せてくれるようになったんだが……。残念ながら、家の事情とかで、長くはいてもらえなくてね。後任を探していたところに、アシュワース君から、君たちのことを紹介してもらった、というわけなんだよ」
領主は、冒険者ギルドマスターから受け取ったのであろう、二人の経歴が書かれた紹介状に目を落とします。
「エレナさんは、アウレリウス先生の高弟だったとか。そしてリリアさんは、今、ギルドで最も優秀な見習いだと聞いている。二人なら、きっと、ユーノの良い先生になってくれると信じているよ」
「もったいないお言葉ですわ」
「光栄です」
恐縮する二人に、領主は「それで、早速で悪いんだが」と、本題に入りました。
「ユーノに、幅広い学問を教えてやってほしいんだ。あの子は、魔術の才能は、どうやらアストール家の血筋を反映してずば抜けているようなんだが、それ以外のことは、とんと疎くてね。魔術だけじゃなく、算術、歴史、地理、錬金術の基礎、いくつかの国の語学、それから、星の動きを読む天文学。貴族として、為政者として、必要な知識を、どうか、君たちの手で授けてやってはくれないだろうか」
その真剣な眼差しに、二人は、ごくりと喉を鳴らしました。これは、ただの家庭教師ではありません。次期領主を育てるという、アストリナの根幹に関わる、極めて重要な任務なのです。
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