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12章 クールな受付嬢も暑さでとろとろに溶けてしまうお話
266:本音
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三つの月が、紺碧のベルベットのような夜空に、それぞれ異なる色の光を放っていました。アストリナで見る白銀の大月「ルース・マーレ」と青白い小月「ルース・シアン」に加えて、この南の島では、まるで乙女の頬のように淡い薔薇色の光を放つ第三の小月「ルース・ロゼ」が、優しく世界を照らしています。
寄せては返す波の音だけが、子守唄のように優しく響く、静かな夜。むせ返るような熱気を孕んだ昼間とは打って変わって、涼やかな潮風が、開け放たれた窓からそっと忍び込み、最高級の絹で織られたシーツの上で眠る二人の裸体を、優しく撫でていきました。
「んっ…♡」
先に微かな寝息を漏らしたのは、リーゼさんでした。プラチナブロンドの髪が、純白の枕に天使の輪光のように散らばっています。昼間の、あまりにも激しすぎた快楽の記憶が、夢の世界にまで追いかけてきているのでしょうか。その唇は半開きのまま、時折、くちゅ、と可愛らしい音を立て、その豊満な身体は、ぴくん、と小さく痙攣しています。
その、すぐ隣。
まるで示し合わせたかのように、セレスさんもゆっくりと、その紫色の瞳を開きました。意識が覚醒するにつれて、全身を支配する、気怠い、しかしどこか心地よい疼きと、身体の奥深くで今もなお燻り続ける熱の存在に気づきます。
(わたしは、いったい…)
ぼんやりとする頭で記憶の糸をたぐり寄せ、脳裏に蘇ったのは、灼熱の太陽の下で繰り広げられた、あまりにも背徳的で、淫らな光景でした。マスターの、あのいやらしい指の感触。自分の身体から噴き出した、恥ずかしいほどの量の蜜。そして、胎内の最も奥深くまで、彼の灼熱の奔流を注ぎ込まれた、あの脳が焼き切れるような絶頂の瞬間…。
「…っ♡」
思い出しただけで、秘裂の奥がきゅん、と甘く疼き、新たな熱い蜜がじわりと滲み出すのを感じて、セレスさんはぎゅっと太ももを閉じました。シーツに擦れた肌が、昼間の陵辱によって極限まで敏感になっていて、ぞくぞくとした快感が背筋を駆け上ります。
ここは、あの乳白色の砂浜ではありません。広々とした、しかし無機質なほどに整えられた、豪奢なベッドルーム。自分たちが、気を失っている間に、あの男ーアシュワース氏によってここに運ばれたのだということは、考えるまでもありませんでした。おそらくは、あの無機質な家事用ゴーレムにでも命じて。
その事実に、セレスさんの胸の奥で、屈辱と、そしてなぜかほんの少しの安堵が入り混じった、複雑な感情が渦を巻きます。
その時でした。
リビングの方から、ふわりと、食欲をそそる、香ばしい匂いが漂ってきたのです。
◇◇◇
キッチンに立っていたのは、上半身裸で、腰にエプロンだけを巻いた、アシュワース氏の恰幅のいい後ろ姿でした。その背中は、戦士のように鍛え上げられたものではありませんが、幾多の困難を乗り越え、巨大なギルド組織をその腕一つで束ねてきた、絶対的な支配者の風格を漂わせています。
彼が振るっているのは、ミスリル銀でできた、銘のある業物ではなく、ごく普通の鉄製のフライパン。しかし、その手つきは、まるで高名な宮廷料理人のように手際が良く、小気味よい音が、静かなキッチンに響いていました。
ジュウ、という音と共に、フライパンの上で踊っているのは、アストリナからわざわざ持参らしき、大陸北方の雪山地帯にしか生息しない「霜降り猪」の厚切り肉。その隣では、黄金色のバターで、これもまた希少な「月光茸」が、食欲をそそる香りを立てながら炒められています。
(この男…魔導具作りだけでなく、料理まで…)
その意外な光景に、セレスさんは思わず言葉を失いました。そして、自分の夫エミールの、料理はできてもどこか頼りない姿を思い出し、胸の奥がちくりと痛みます。
「おや、目が覚めたかね、二人とも。ちょうど、晩餐の準備ができたところだ」
振り返ったアシュワース氏は、にやりと人の悪い笑みを浮かべます。その手には、二つの包みが握られていました。
「シャワーを浴びてくるといい。これは、私からのささやかなるプレゼントだ。昼間の、君たちの素晴らしい働きに対する、褒美だと思ってくれたまえ」
促されるままに包みを受け取った二人は、その中身を見て、再び顔を見合わせます。
そこに収められていたのは、ふんわりとした柔らかな生地で作られた、可愛らしいデザインのパジャマ。そして、その下には、昼間の水着よりもさらに布面積が少なく、挑発的なデザインのおそろいの黒いランジェリーが、まるで「今夜も期待しているぞ」とでも言いたげに、妖しく収まっていたのです。
シャワールームの鏡に映った自分たちの身体は、あまりにも淫らでした。肌は、南国の日差しと、マスターの執拗な愛撫によって、うっすらと上気したまま。特に、リーゼさんの豊かな胸や、セレスさんの引き締まった臀部には、彼の指の跡が、まるで所有の印のように、微かに赤く残っています。
「…ひどい…♡♡♡♡♡こんな、跡が残るまで…♡♡♡♡♡」
「ええ、本当に。これでは、エミールに何と申し開きをすればよいものか…」
口ではそう言いながらも、二人の瞳は、昼間の狂乱を思い出して、とろりと熱っぽく潤んでいました。シャワーのお湯が、敏感になった肌を優しく刺激するたびに、甘い吐息が漏れてしまいます。
寄せては返す波の音だけが、子守唄のように優しく響く、静かな夜。むせ返るような熱気を孕んだ昼間とは打って変わって、涼やかな潮風が、開け放たれた窓からそっと忍び込み、最高級の絹で織られたシーツの上で眠る二人の裸体を、優しく撫でていきました。
「んっ…♡」
先に微かな寝息を漏らしたのは、リーゼさんでした。プラチナブロンドの髪が、純白の枕に天使の輪光のように散らばっています。昼間の、あまりにも激しすぎた快楽の記憶が、夢の世界にまで追いかけてきているのでしょうか。その唇は半開きのまま、時折、くちゅ、と可愛らしい音を立て、その豊満な身体は、ぴくん、と小さく痙攣しています。
その、すぐ隣。
まるで示し合わせたかのように、セレスさんもゆっくりと、その紫色の瞳を開きました。意識が覚醒するにつれて、全身を支配する、気怠い、しかしどこか心地よい疼きと、身体の奥深くで今もなお燻り続ける熱の存在に気づきます。
(わたしは、いったい…)
ぼんやりとする頭で記憶の糸をたぐり寄せ、脳裏に蘇ったのは、灼熱の太陽の下で繰り広げられた、あまりにも背徳的で、淫らな光景でした。マスターの、あのいやらしい指の感触。自分の身体から噴き出した、恥ずかしいほどの量の蜜。そして、胎内の最も奥深くまで、彼の灼熱の奔流を注ぎ込まれた、あの脳が焼き切れるような絶頂の瞬間…。
「…っ♡」
思い出しただけで、秘裂の奥がきゅん、と甘く疼き、新たな熱い蜜がじわりと滲み出すのを感じて、セレスさんはぎゅっと太ももを閉じました。シーツに擦れた肌が、昼間の陵辱によって極限まで敏感になっていて、ぞくぞくとした快感が背筋を駆け上ります。
ここは、あの乳白色の砂浜ではありません。広々とした、しかし無機質なほどに整えられた、豪奢なベッドルーム。自分たちが、気を失っている間に、あの男ーアシュワース氏によってここに運ばれたのだということは、考えるまでもありませんでした。おそらくは、あの無機質な家事用ゴーレムにでも命じて。
その事実に、セレスさんの胸の奥で、屈辱と、そしてなぜかほんの少しの安堵が入り混じった、複雑な感情が渦を巻きます。
その時でした。
リビングの方から、ふわりと、食欲をそそる、香ばしい匂いが漂ってきたのです。
◇◇◇
キッチンに立っていたのは、上半身裸で、腰にエプロンだけを巻いた、アシュワース氏の恰幅のいい後ろ姿でした。その背中は、戦士のように鍛え上げられたものではありませんが、幾多の困難を乗り越え、巨大なギルド組織をその腕一つで束ねてきた、絶対的な支配者の風格を漂わせています。
彼が振るっているのは、ミスリル銀でできた、銘のある業物ではなく、ごく普通の鉄製のフライパン。しかし、その手つきは、まるで高名な宮廷料理人のように手際が良く、小気味よい音が、静かなキッチンに響いていました。
ジュウ、という音と共に、フライパンの上で踊っているのは、アストリナからわざわざ持参らしき、大陸北方の雪山地帯にしか生息しない「霜降り猪」の厚切り肉。その隣では、黄金色のバターで、これもまた希少な「月光茸」が、食欲をそそる香りを立てながら炒められています。
(この男…魔導具作りだけでなく、料理まで…)
その意外な光景に、セレスさんは思わず言葉を失いました。そして、自分の夫エミールの、料理はできてもどこか頼りない姿を思い出し、胸の奥がちくりと痛みます。
「おや、目が覚めたかね、二人とも。ちょうど、晩餐の準備ができたところだ」
振り返ったアシュワース氏は、にやりと人の悪い笑みを浮かべます。その手には、二つの包みが握られていました。
「シャワーを浴びてくるといい。これは、私からのささやかなるプレゼントだ。昼間の、君たちの素晴らしい働きに対する、褒美だと思ってくれたまえ」
促されるままに包みを受け取った二人は、その中身を見て、再び顔を見合わせます。
そこに収められていたのは、ふんわりとした柔らかな生地で作られた、可愛らしいデザインのパジャマ。そして、その下には、昼間の水着よりもさらに布面積が少なく、挑発的なデザインのおそろいの黒いランジェリーが、まるで「今夜も期待しているぞ」とでも言いたげに、妖しく収まっていたのです。
シャワールームの鏡に映った自分たちの身体は、あまりにも淫らでした。肌は、南国の日差しと、マスターの執拗な愛撫によって、うっすらと上気したまま。特に、リーゼさんの豊かな胸や、セレスさんの引き締まった臀部には、彼の指の跡が、まるで所有の印のように、微かに赤く残っています。
「…ひどい…♡♡♡♡♡こんな、跡が残るまで…♡♡♡♡♡」
「ええ、本当に。これでは、エミールに何と申し開きをすればよいものか…」
口ではそう言いながらも、二人の瞳は、昼間の狂乱を思い出して、とろりと熱っぽく潤んでいました。シャワーのお湯が、敏感になった肌を優しく刺激するたびに、甘い吐息が漏れてしまいます。
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