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12章 クールな受付嬢も暑さでとろとろに溶けてしまうお話
296:土産
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リーゼさんが、子供をあやすような口調で、セレスさんが、感情の起伏を感じさせない、しかしその語尾に、ほんのりと甘い響きを乗せた平坦な口調で、矢継ぎ早に報告します。その声は、アシュワース氏の疲弊した精神に、じわじわと、しかし確実にダメージを与えていきました。
「ううむ…分かっている、分かっているとも…」
「もう、マスター! そんなことでは、いつまで経ってもお仕事は終わりません。もし、ぜーんぶ終わらせることができたら、このわたくし、セレスお姉さんが、とーっても素敵なご褒美をあげますから♡♡♡♡♡」
セレスさんはそう言うと、わざとらしく胸を張り、上目遣いでアシュワース氏に媚を売ります。その、かつての彼女からは想像もつかないような、あまりにも大胆な提案。リーゼさんだけでなく、アシュワース氏でさえも、一瞬、目を丸くしてしまいました。
「…セレス君。君は、自分の歳を分かっているのかね? 私の方が、君よりずっと年上なのだが」
アシュワース氏は、呆れたように、しかしその口元には、隠しようもない愉悦の笑みを浮かべて、苦笑しました。
「もう、セレスさん、ずるいですよぉ! マスターにご褒美をあげるのは、わたしの、大事な大事な、お仕事なんですから!♡♡♡♡♡」
リーゼさんが、ぷくーっと、可愛らしく頬を膨らませて拗ねてみせます。その、あまりにも可愛らしい嫉妬の姿に、セレスさんは、くすくすと、悪戯っぽく笑いました。
「あら、リーゼさん。ご褒美は、多ければ多いほど、嬉しいものでしょう?♡♡♡♡♡」
その、あまりにも倒錯的で、しかしどこか微笑ましい光景。アシュワース氏は、深い深いため息をつくと、まるで観念したかのように、ペンを手に取りました。
「…分かった、分かった。やればいいのだろう、やれば」
その言葉に、二人の受付嬢は、顔を見合わせて、満足げに、そして共犯者のように、にっこりと微笑み合うのでした。
執務室を出て、受付カウンターへと戻る、長い廊下。二人の間には、言葉はありませんでした。しかし、その沈黙は、気まずいものではなく、あの島で、あまりにも多くの秘密を共有してしまった、共犯者だけが分かち合える、甘く、そして心地よい沈黙でした。
ギルドの一階ホールは、いつものように、冒険者たちの熱気と喧騒に満ち溢れています。酒場で酔いつぶれる者、掲示板の前で次の依頼を吟味する者、武具の手入れに余念のない者。その、日常の光景。しかし、二人の目には、そのすべてが、どこか遠い、別の世界の出来事のように映るのでした。
自分たちの身体の奥深くには、今もなお、マスターの、そして見も知らぬ男たちの、熱い胤が、まるで大切な宝物のように、宿っている。その、あまりにも背徳的な事実が、二人の心を、甘く、そして重く、満たしているのでした。
「さ、お仕事、頑張りましょうか、リーゼさん」
「はい、セレスさん♡♡♡♡♡」
二人は、完璧な笑顔をその顔に貼り付けると、それぞれの持ち場へと戻っていきます。港湾要塞都市アストリナの、平和な一日は、今日もまた、こうして静かに、そして確かに、過ぎていくのでした。
「ううむ…分かっている、分かっているとも…」
「もう、マスター! そんなことでは、いつまで経ってもお仕事は終わりません。もし、ぜーんぶ終わらせることができたら、このわたくし、セレスお姉さんが、とーっても素敵なご褒美をあげますから♡♡♡♡♡」
セレスさんはそう言うと、わざとらしく胸を張り、上目遣いでアシュワース氏に媚を売ります。その、かつての彼女からは想像もつかないような、あまりにも大胆な提案。リーゼさんだけでなく、アシュワース氏でさえも、一瞬、目を丸くしてしまいました。
「…セレス君。君は、自分の歳を分かっているのかね? 私の方が、君よりずっと年上なのだが」
アシュワース氏は、呆れたように、しかしその口元には、隠しようもない愉悦の笑みを浮かべて、苦笑しました。
「もう、セレスさん、ずるいですよぉ! マスターにご褒美をあげるのは、わたしの、大事な大事な、お仕事なんですから!♡♡♡♡♡」
リーゼさんが、ぷくーっと、可愛らしく頬を膨らませて拗ねてみせます。その、あまりにも可愛らしい嫉妬の姿に、セレスさんは、くすくすと、悪戯っぽく笑いました。
「あら、リーゼさん。ご褒美は、多ければ多いほど、嬉しいものでしょう?♡♡♡♡♡」
その、あまりにも倒錯的で、しかしどこか微笑ましい光景。アシュワース氏は、深い深いため息をつくと、まるで観念したかのように、ペンを手に取りました。
「…分かった、分かった。やればいいのだろう、やれば」
その言葉に、二人の受付嬢は、顔を見合わせて、満足げに、そして共犯者のように、にっこりと微笑み合うのでした。
執務室を出て、受付カウンターへと戻る、長い廊下。二人の間には、言葉はありませんでした。しかし、その沈黙は、気まずいものではなく、あの島で、あまりにも多くの秘密を共有してしまった、共犯者だけが分かち合える、甘く、そして心地よい沈黙でした。
ギルドの一階ホールは、いつものように、冒険者たちの熱気と喧騒に満ち溢れています。酒場で酔いつぶれる者、掲示板の前で次の依頼を吟味する者、武具の手入れに余念のない者。その、日常の光景。しかし、二人の目には、そのすべてが、どこか遠い、別の世界の出来事のように映るのでした。
自分たちの身体の奥深くには、今もなお、マスターの、そして見も知らぬ男たちの、熱い胤が、まるで大切な宝物のように、宿っている。その、あまりにも背徳的な事実が、二人の心を、甘く、そして重く、満たしているのでした。
「さ、お仕事、頑張りましょうか、リーゼさん」
「はい、セレスさん♡♡♡♡♡」
二人は、完璧な笑顔をその顔に貼り付けると、それぞれの持ち場へと戻っていきます。港湾要塞都市アストリナの、平和な一日は、今日もまた、こうして静かに、そして確かに、過ぎていくのでした。
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