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14章 ドジっ子くのいち娘が遊郭っぽい施設でたいへんえっちになるおはなし
313:遊郭
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都市遺跡エンブレス。かつては火山活動の活発化によって人々に見捨てられ、五百年もの間、ただ静かに朽ち果てるのを待つだけの廃墟だったこの場所は、今や大陸中から富と権力、そして尽きることのない欲望を持つ男たちが夜な夜な集う、一大歓楽都市へと変貌を遂げていました。
皮肉なことに、人々をこの地から追い出したはずの活発な地熱活動こそが、この街に新たな命を吹き込んでいたのです。大地から絶え間なく湧き出る豊富な温泉は、巨大な温泉郷と、その湯を求める男たちの欲望を受け止めるための壮麗な風俗街を擁する一大歓楽都市へと、この地を生まれ変わらせました。その豪奢で、どこか退廃的な街並みは、遠く離れた東方の国、ショウグンの都にかつて存在したという、伝説の歓楽街の光景を彷彿とさせるものでした。
秋のエンブレスは、肌を刺すように冷たい風が山々から吹き下ろしてくる中、街の至る所から立ち上る温泉の湯気によって、常に乳白色の霞に包まれていました。その湯気は、街中に張り巡らされた水路からも絶え間なく立ち上り、まるで街全体が熱い吐息を漏らす、一つの巨大な生き物であるかのように見えました。夜になると、街灯代わりに道端に並べられた赤く妖しい光を放つ魔導灯が、その濃い湯気を通して幻想的な光の滲みを作り出します。湯気の向こうでは、艶やかな着物を身にまとった女性たちが、客を誘うために妖艶な影をちらつかせ、どこからともなく漂ってくる甘い香の匂いが、アストリナのスラムに染み付いていた、あのどぶ川と腐敗の匂いとはまるで違う、どこまでも淫靡で官能的な空気を創り出していたのです。
この街の地下には、かつての火山活動で形成された巨大な空洞が無数に存在していました。街の支配者である盗賊団は、その一部を温泉街の熱源や下水路、そして遊郭から客を秘密裏に逃がすための通路として巧みに利用していたのです。卓越した腕を持つ地熱魔術師たちが、大地を流れる魔力の脈、すなわち「地脈」の流れを魔術的に調整することで、街のどの建物にも潤沢な温泉を供給できるという、極めて高度な魔導技術が、この背徳の街の繁栄を根底から支えていました。
そして、このエンブレスの街全体には、極めて強力で大規模な「認識阻害」の魔法が、常にかけられていました。この魔法の影響で、この街で働く女性たちは、客の顔をはっきりと認識することができません。もちろん、男性の方からは遊女の顔ははっきりと認識できるのですが、女性たちからは、客の顔はまるで濃い霧の向こうにあるかのように、おぼろげにしか見えないのです。そのため、背格好や声、身体から発せられる匂いや雰囲気、そして肌を重ねた時の熱や感触だけを頼りに、相手を識別するしかありませんでした。
この特殊な認識阻害の魔法は、もちろん、この街を訪れる高名な貴族や大商人たちの素性を隠すためのものでした。しかし、それと同時に、一度肉体関係を持った女性を、客が再び指名し、その行為を何度も反復させることで、特定の女性への執着をより深く、より歪んだ形で増幅させる効果がある、非常に高度な精神干渉の魔術でもあったのです。
そんなエンブレスの数ある遊郭の中でも、レイスさんに荷物のように運び込まれた小雪さんが預けられた宿「黒蝶楼」は、一際異彩を放つ存在でした。この地方で採れる黒い火山岩を寸分の狂いもなく組み上げて造られたその無骨な外観は、まるで堅牢な要塞のよう。しかし、その重々しい門を一度くぐれば、そこには東方の意匠を随所に凝らした、豪華絢爛で、それでいてどこか物悲しいほどに美しい空間が広がっていました。
この黒蝶楼では、「色恋遊戯」という、他ではあまり聞かない不思議な言葉を商いの心得として掲げていました。それは、客と女性がまずはお茶を飲んだり、お話をしたり、時には街へ出て恋人同士のように過ごしたりしてから、初めて閨を共にするというものでした。そうすることで、客の心に「この女は他の遊女とは違う、特別な存在なのだ」という強い独占欲を植え付け、より高額な対価を、より長い期間にわたって支払わせるための、実に巧妙な仕掛けだったのです。
そんな、何もかもが普通ではない街で、小雪さんは、あっという間に黒蝶楼で一番の売れっ子になりました。夜の闇を溶かし込んだかのように艶やかな黒髪、雪のように白い肌、そして東方の国から来たという神秘的な雰囲気。それらが、男たちの心を強く惹きつけてやまなかったのです。しかし、彼女が一番になった本当の理由は、別のところにありました。ユーノくんが作り出した妙薬「ちゃんとげんきになるぽーしょん」の効果で、極めて発情しやすくなってしまった小雪さんの身体。そして、赤煙亭と、あのレイスさんとの夜伽によって、心身ともに完全に雄への奉仕者として調教されてしまった淫らな魂。それらが、男たちの欲望を引き付けて止まなかったのです。
皮肉なことに、人々をこの地から追い出したはずの活発な地熱活動こそが、この街に新たな命を吹き込んでいたのです。大地から絶え間なく湧き出る豊富な温泉は、巨大な温泉郷と、その湯を求める男たちの欲望を受け止めるための壮麗な風俗街を擁する一大歓楽都市へと、この地を生まれ変わらせました。その豪奢で、どこか退廃的な街並みは、遠く離れた東方の国、ショウグンの都にかつて存在したという、伝説の歓楽街の光景を彷彿とさせるものでした。
秋のエンブレスは、肌を刺すように冷たい風が山々から吹き下ろしてくる中、街の至る所から立ち上る温泉の湯気によって、常に乳白色の霞に包まれていました。その湯気は、街中に張り巡らされた水路からも絶え間なく立ち上り、まるで街全体が熱い吐息を漏らす、一つの巨大な生き物であるかのように見えました。夜になると、街灯代わりに道端に並べられた赤く妖しい光を放つ魔導灯が、その濃い湯気を通して幻想的な光の滲みを作り出します。湯気の向こうでは、艶やかな着物を身にまとった女性たちが、客を誘うために妖艶な影をちらつかせ、どこからともなく漂ってくる甘い香の匂いが、アストリナのスラムに染み付いていた、あのどぶ川と腐敗の匂いとはまるで違う、どこまでも淫靡で官能的な空気を創り出していたのです。
この街の地下には、かつての火山活動で形成された巨大な空洞が無数に存在していました。街の支配者である盗賊団は、その一部を温泉街の熱源や下水路、そして遊郭から客を秘密裏に逃がすための通路として巧みに利用していたのです。卓越した腕を持つ地熱魔術師たちが、大地を流れる魔力の脈、すなわち「地脈」の流れを魔術的に調整することで、街のどの建物にも潤沢な温泉を供給できるという、極めて高度な魔導技術が、この背徳の街の繁栄を根底から支えていました。
そして、このエンブレスの街全体には、極めて強力で大規模な「認識阻害」の魔法が、常にかけられていました。この魔法の影響で、この街で働く女性たちは、客の顔をはっきりと認識することができません。もちろん、男性の方からは遊女の顔ははっきりと認識できるのですが、女性たちからは、客の顔はまるで濃い霧の向こうにあるかのように、おぼろげにしか見えないのです。そのため、背格好や声、身体から発せられる匂いや雰囲気、そして肌を重ねた時の熱や感触だけを頼りに、相手を識別するしかありませんでした。
この特殊な認識阻害の魔法は、もちろん、この街を訪れる高名な貴族や大商人たちの素性を隠すためのものでした。しかし、それと同時に、一度肉体関係を持った女性を、客が再び指名し、その行為を何度も反復させることで、特定の女性への執着をより深く、より歪んだ形で増幅させる効果がある、非常に高度な精神干渉の魔術でもあったのです。
そんなエンブレスの数ある遊郭の中でも、レイスさんに荷物のように運び込まれた小雪さんが預けられた宿「黒蝶楼」は、一際異彩を放つ存在でした。この地方で採れる黒い火山岩を寸分の狂いもなく組み上げて造られたその無骨な外観は、まるで堅牢な要塞のよう。しかし、その重々しい門を一度くぐれば、そこには東方の意匠を随所に凝らした、豪華絢爛で、それでいてどこか物悲しいほどに美しい空間が広がっていました。
この黒蝶楼では、「色恋遊戯」という、他ではあまり聞かない不思議な言葉を商いの心得として掲げていました。それは、客と女性がまずはお茶を飲んだり、お話をしたり、時には街へ出て恋人同士のように過ごしたりしてから、初めて閨を共にするというものでした。そうすることで、客の心に「この女は他の遊女とは違う、特別な存在なのだ」という強い独占欲を植え付け、より高額な対価を、より長い期間にわたって支払わせるための、実に巧妙な仕掛けだったのです。
そんな、何もかもが普通ではない街で、小雪さんは、あっという間に黒蝶楼で一番の売れっ子になりました。夜の闇を溶かし込んだかのように艶やかな黒髪、雪のように白い肌、そして東方の国から来たという神秘的な雰囲気。それらが、男たちの心を強く惹きつけてやまなかったのです。しかし、彼女が一番になった本当の理由は、別のところにありました。ユーノくんが作り出した妙薬「ちゃんとげんきになるぽーしょん」の効果で、極めて発情しやすくなってしまった小雪さんの身体。そして、赤煙亭と、あのレイスさんとの夜伽によって、心身ともに完全に雄への奉仕者として調教されてしまった淫らな魂。それらが、男たちの欲望を引き付けて止まなかったのです。
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