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14章 ドジっ子くのいち娘が遊郭っぽい施設でたいへんえっちになるおはなし
316:遊郭
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着替えを終えて客間に戻ると、男は小雪さんの姿を一目見るなり、満足そうに喉を鳴らしました。
「へぇ、なかなか似合ってるじゃねぇか。さあ、行こうぜ、ユキ」
男は、まるで本当の恋人を誘うかのように、優しく、それでいて有無を言わせぬ力強さで、その手を差し伸べました。小雪さんは、そのあまりにも優しい仕草に、心臓がドクン、と大きく跳ねるのを感じました。これが、この宿の売りである「色恋遊戯」の始まりなのです。これも任務なのだと、かろうじて残った理性で自分に言い聞かせながら、小雪さんはおずおずと男の手を握りました。
その掌は、驚くほど優しく、そして、その体温は、彼女の熱く火照った身体を、じんわりと、しかし確実に、さらなる欲望の熱で溶かしていくようでした。
男の優しく、それでいて有無を言わせぬ力強さを感じる掌に導かれ、二人は黒蝶楼の重厚な門をくぐり、夜の歓楽街へと足を踏み出しました。
ひんやりとした秋の夜気が、火照った小雪さんの頬を撫でていきます。街路に敷き詰められた黒い火山岩の石畳は、夜露と、街の至る所から立ち上る温泉の湯気によって、しっとりと濡れていました。一歩足を踏み出すたびに、小雪さんの履く草履が「ぺたり、ぺたり」と湿った音を立て、その感触が足の裏からじかに伝わってきて、なんだかとても淫らなことをしているような気持ちにさせられます。
乳白色の湯気の向こうでは、道端に並べられた赤く妖しい光を放つ魔導灯が、ぼんやりと滲んで揺らめいていました。その光に照らされて、艶やかな着物を身にまとった女性たちが、客を誘うために妖艶な影をちらつかせています。街中に張り巡らされた水路を「さらさら」と流れる湯の音、どこからともなく聞こえてくる嬌声や喧騒、そして、この街の空気そのものに溶け込んでいる、むせ返るような硫黄の匂いと、甘ったるい香木の香り。そのすべてが混じり合って、このエンブレスという街だけの、どこまでも退廃的で官能的な空気を創り出していたのです。
すれ違う人々は、誰も彼もが楽しそうで、無邪気でした。彼らは、この刹那的な快楽と、湯気が作り出す幻想にその身を委ね、明日のことなど何も考えていないようでした。小雪さんは、そんな街の空気に、まるで美しい悪夢を見ているかのような、不思議な浮遊感を覚えました。
ふいに、男がその逞しい腕で、小雪さんの華奢な肩をぐっと抱き寄せました。そして、熱い吐息がかかるほど近くで、その甘い声が耳元で囁きます。
「いい街だろう? 誰もが、好きなことができる。何もかも忘れられる」
その声は、悪魔の誘いのように優しく、そしてどこか遠くを懐かしむような響きを帯びていました。小雪さんの心臓が、どくん、と大きく跳ねます。彼の言葉は、まるで自分の心の内側をすべて見透かしているかのようで、思わず身体が震えてしまいました。
(何もかも、忘れられる……?)
その言葉が、棘のように胸に突き刺さります。故郷に残してきた許嫁、早瀬くんの、あの朴訥で優しい笑顔が脳裏をよぎりました。彼への想いは、決して色褪せてなどいないはずでした。それなのに、今、この男の腕に抱かれている自分の身体は、歓喜に打ち震え、彼の雄々しい匂いを吸い込むたびに、下腹部の奥が「きゅうぅん」と甘く疼いてしまうのです。
(だめ、だめですぅ…っ♡ こんなの、早瀬くんに申し訳が…っ♡)
しかし、その罪悪感とは裏腹に、秘裂からはもう、止めどなく愛の蜜が溢れ出してきていました。熱く、ねっとりとした粘液が、浴衣の裏地をじっとりと濡らし、太ももの内側をゆっくりと伝っていくのが分かります。このままでは、この美しい浴衣を汚してしまうかもしれない。そんな背徳的な考えが、さらに彼女の身体を火照らせました。
彼に抱かれたい。でも、もっとこの男に、めちゃくちゃに、ぐちゃぐちゃにされたい。そんな、矛盾した感情の嵐が、小雪さんの胸を激しく掻き乱しました。
男は、そんな小雪さんの内心に気づいているのか、気づいていないのか、何も言わず、ただ優しくその身体を抱きしめる力を強めました。その圧倒的な温かさと、岩盤のように硬い胸板の感触が、小雪さんの凍てつきかけた心を、ゆっくりと、しかし確実に溶かしていくようでした。
二人はやがて、歓楽街の裏路地にある、ひときわ怪しげな光を放つ酒場に立ち寄りました。分厚い木製の扉を開けると、むわりとした熱気と共に、酒と汗と、そして獣人たちのむき出しの欲望の匂いが鼻をつきます。店内は薄暗く、カウンターでは屈強なドワーフや、牙を剥き出しにしたオークといった荒くれ者たちが、重厚なエールジョッキを片手に大声で談笑していました。
「へぇ、なかなか似合ってるじゃねぇか。さあ、行こうぜ、ユキ」
男は、まるで本当の恋人を誘うかのように、優しく、それでいて有無を言わせぬ力強さで、その手を差し伸べました。小雪さんは、そのあまりにも優しい仕草に、心臓がドクン、と大きく跳ねるのを感じました。これが、この宿の売りである「色恋遊戯」の始まりなのです。これも任務なのだと、かろうじて残った理性で自分に言い聞かせながら、小雪さんはおずおずと男の手を握りました。
その掌は、驚くほど優しく、そして、その体温は、彼女の熱く火照った身体を、じんわりと、しかし確実に、さらなる欲望の熱で溶かしていくようでした。
男の優しく、それでいて有無を言わせぬ力強さを感じる掌に導かれ、二人は黒蝶楼の重厚な門をくぐり、夜の歓楽街へと足を踏み出しました。
ひんやりとした秋の夜気が、火照った小雪さんの頬を撫でていきます。街路に敷き詰められた黒い火山岩の石畳は、夜露と、街の至る所から立ち上る温泉の湯気によって、しっとりと濡れていました。一歩足を踏み出すたびに、小雪さんの履く草履が「ぺたり、ぺたり」と湿った音を立て、その感触が足の裏からじかに伝わってきて、なんだかとても淫らなことをしているような気持ちにさせられます。
乳白色の湯気の向こうでは、道端に並べられた赤く妖しい光を放つ魔導灯が、ぼんやりと滲んで揺らめいていました。その光に照らされて、艶やかな着物を身にまとった女性たちが、客を誘うために妖艶な影をちらつかせています。街中に張り巡らされた水路を「さらさら」と流れる湯の音、どこからともなく聞こえてくる嬌声や喧騒、そして、この街の空気そのものに溶け込んでいる、むせ返るような硫黄の匂いと、甘ったるい香木の香り。そのすべてが混じり合って、このエンブレスという街だけの、どこまでも退廃的で官能的な空気を創り出していたのです。
すれ違う人々は、誰も彼もが楽しそうで、無邪気でした。彼らは、この刹那的な快楽と、湯気が作り出す幻想にその身を委ね、明日のことなど何も考えていないようでした。小雪さんは、そんな街の空気に、まるで美しい悪夢を見ているかのような、不思議な浮遊感を覚えました。
ふいに、男がその逞しい腕で、小雪さんの華奢な肩をぐっと抱き寄せました。そして、熱い吐息がかかるほど近くで、その甘い声が耳元で囁きます。
「いい街だろう? 誰もが、好きなことができる。何もかも忘れられる」
その声は、悪魔の誘いのように優しく、そしてどこか遠くを懐かしむような響きを帯びていました。小雪さんの心臓が、どくん、と大きく跳ねます。彼の言葉は、まるで自分の心の内側をすべて見透かしているかのようで、思わず身体が震えてしまいました。
(何もかも、忘れられる……?)
その言葉が、棘のように胸に突き刺さります。故郷に残してきた許嫁、早瀬くんの、あの朴訥で優しい笑顔が脳裏をよぎりました。彼への想いは、決して色褪せてなどいないはずでした。それなのに、今、この男の腕に抱かれている自分の身体は、歓喜に打ち震え、彼の雄々しい匂いを吸い込むたびに、下腹部の奥が「きゅうぅん」と甘く疼いてしまうのです。
(だめ、だめですぅ…っ♡ こんなの、早瀬くんに申し訳が…っ♡)
しかし、その罪悪感とは裏腹に、秘裂からはもう、止めどなく愛の蜜が溢れ出してきていました。熱く、ねっとりとした粘液が、浴衣の裏地をじっとりと濡らし、太ももの内側をゆっくりと伝っていくのが分かります。このままでは、この美しい浴衣を汚してしまうかもしれない。そんな背徳的な考えが、さらに彼女の身体を火照らせました。
彼に抱かれたい。でも、もっとこの男に、めちゃくちゃに、ぐちゃぐちゃにされたい。そんな、矛盾した感情の嵐が、小雪さんの胸を激しく掻き乱しました。
男は、そんな小雪さんの内心に気づいているのか、気づいていないのか、何も言わず、ただ優しくその身体を抱きしめる力を強めました。その圧倒的な温かさと、岩盤のように硬い胸板の感触が、小雪さんの凍てつきかけた心を、ゆっくりと、しかし確実に溶かしていくようでした。
二人はやがて、歓楽街の裏路地にある、ひときわ怪しげな光を放つ酒場に立ち寄りました。分厚い木製の扉を開けると、むわりとした熱気と共に、酒と汗と、そして獣人たちのむき出しの欲望の匂いが鼻をつきます。店内は薄暗く、カウンターでは屈強なドワーフや、牙を剥き出しにしたオークといった荒くれ者たちが、重厚なエールジョッキを片手に大声で談笑していました。
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