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15章 宿屋娘が憧れの先輩と一緒にどろどろえっちになってしまうお話
334:作戦
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「…そこで、提案なのですが、先輩」
リリアさんは、眼鏡の位置をくい、と直すと、真剣な眼差しでエレナさんを見つめました。
「わたくしたちで、夜の間、交代でユーノ様のお部屋に付き添い、警護をするというのは、いかがでしょうか」
「まあ…!」
その、あまりにも大胆な提案に、エレナさんは息を呑みました。しかし、それは、彼女が心のどこかで望んでいた、まさにその言葉だったのです。
「もちろん、これは、あくまでユーノ様の御身の安全を確保するため。そして、死霊魔術の正体を突き止めるという、わたくしたちの本来の任務を遂行するためですわ」
リリアさんは、あくまで冷静に、学術的な探求心を装ってそう言います。しかし、その眼鏡の奥の瞳は、これから始まるであろう、さらなる背徳的なお勉強への、抗いがたい期待に、爛々と輝いておりました。
こうして、二人の美しき共犯者は、互いの腹の内を探り合うような視線を交わした後、どちらからともなく、こくり、と深く頷き合ったのでした。
◇◇◇
次の日の昼食後。二人は、意を決してユーノくんの私室を訪れました。愛らしいご主人様は、書斎の大きな机で、古代語で書かれた分厚い魔導書を、熱心に読みふけっております。その真剣な横顔は、年相応のあどけなさと、アストール家の血筋が持つ、底知れない知性の煌めきが同居しており、見る者の心を捉えて離しません。
「ユーノ様。少し、よろしいでしょうか」
エレナさんが、優雅に、しかしどこか緊張を隠せない声で話しかけると、ユーノくんはぱっと顔を上げ、花が咲くような笑顔を向けました。
「あ、おねえちゃんたち! どうしたの?」
「実は、ご相談がございまして。わたくしたち、近頃、夜になりますと、このお部屋のあたりから、少々気になる魔力の気配を感じるのです。つきましては、万が一のことがあってはなりませんので、今宵から、わたくしたちが交代で、ユーノ様の寝室を警護させていただきたいと…」
「ああ、あれのこと?」
しかし、ユーノくんは、二人の深刻な申し出を、こてん、と不思議そうに首を傾げながら、あっさりと受け流してしまいました。
「大丈夫だよ! あれはね、きっと、ひいじいちゃんが、僕のことを見守ってくれてるんだよ。だから、全然、危なくなんかないんだ!」
「「ひい、おじいさま…?」」
二人は、思わず顔を見合わせます。ひいおじいさま。それはつまり、かつてアストリナを恐怖で支配したと伝えられる、大魔術師であった、先々代領主のこと。しかし、彼はとうの昔に亡くなったはずです。その高位の魂が、今もなお、この屋敷に留まっているというのでしょうか。
「ユーノ様! 先々代領主様は天国でユーノ様を見守っておいでです…! やはり、わたくしたちが、お側で…!」
エレナさんが、必死に食い下がります。その剣幕に、ユーノくんは少しだけむっとしたように唇を尖らせましたが、やがて、何か面白いことを思いついたかのように、その青い瞳を悪戯っぽく輝かせました。
「…わかったよ。じゃあ、おねえちゃんたちが、僕と一緒に寝てくれるっていうなら、付き添ってもいいよ?」
「「え…?」」
「僕のベッドで、ちゃんと、僕の隣で寝てくれるならね! そしたら、この前、蔵からこっそり出してきた、秘密の葡萄酒も、特別に味見させてあげちゃう!」
そう言って、ユーノくんは満面の笑みを浮かべます。その手には、いつの間にか、琥珀色に輝く液体が満たされた、古めかしいデザインの小瓶が握られていました。瓶の表面には、微かな光を放つルーン文字がびっしりと刻まれており、それがただの葡萄酒ではないことを物語っています。
その、あまりにも無邪気で、あまりにも悪魔的な提案。エレナさんとリリアさんは、ごくり、と同時に喉を鳴らしました。ユーノくんは、もちろん、夜伽をさせるつもりで言っているのです。しかし、二人は、その真意に気づかないふりをして…あるいは、気づいていながらも、その甘い誘惑に抗うことができなかったのです。
「……かしこまりましたわ、ユーノ様。では、今晩は、わたくしが、お側に」
静寂を破り、先に口を開いたのは、エレナさんでした。その声は、決意と、そして未知なる悦びへの期待に、微かに震えておりました。
こうして、二人の美しき魔術師による、愛らしくも危険なご主人様の夜の警護が、始まることになったのです。
リリアさんは、眼鏡の位置をくい、と直すと、真剣な眼差しでエレナさんを見つめました。
「わたくしたちで、夜の間、交代でユーノ様のお部屋に付き添い、警護をするというのは、いかがでしょうか」
「まあ…!」
その、あまりにも大胆な提案に、エレナさんは息を呑みました。しかし、それは、彼女が心のどこかで望んでいた、まさにその言葉だったのです。
「もちろん、これは、あくまでユーノ様の御身の安全を確保するため。そして、死霊魔術の正体を突き止めるという、わたくしたちの本来の任務を遂行するためですわ」
リリアさんは、あくまで冷静に、学術的な探求心を装ってそう言います。しかし、その眼鏡の奥の瞳は、これから始まるであろう、さらなる背徳的なお勉強への、抗いがたい期待に、爛々と輝いておりました。
こうして、二人の美しき共犯者は、互いの腹の内を探り合うような視線を交わした後、どちらからともなく、こくり、と深く頷き合ったのでした。
◇◇◇
次の日の昼食後。二人は、意を決してユーノくんの私室を訪れました。愛らしいご主人様は、書斎の大きな机で、古代語で書かれた分厚い魔導書を、熱心に読みふけっております。その真剣な横顔は、年相応のあどけなさと、アストール家の血筋が持つ、底知れない知性の煌めきが同居しており、見る者の心を捉えて離しません。
「ユーノ様。少し、よろしいでしょうか」
エレナさんが、優雅に、しかしどこか緊張を隠せない声で話しかけると、ユーノくんはぱっと顔を上げ、花が咲くような笑顔を向けました。
「あ、おねえちゃんたち! どうしたの?」
「実は、ご相談がございまして。わたくしたち、近頃、夜になりますと、このお部屋のあたりから、少々気になる魔力の気配を感じるのです。つきましては、万が一のことがあってはなりませんので、今宵から、わたくしたちが交代で、ユーノ様の寝室を警護させていただきたいと…」
「ああ、あれのこと?」
しかし、ユーノくんは、二人の深刻な申し出を、こてん、と不思議そうに首を傾げながら、あっさりと受け流してしまいました。
「大丈夫だよ! あれはね、きっと、ひいじいちゃんが、僕のことを見守ってくれてるんだよ。だから、全然、危なくなんかないんだ!」
「「ひい、おじいさま…?」」
二人は、思わず顔を見合わせます。ひいおじいさま。それはつまり、かつてアストリナを恐怖で支配したと伝えられる、大魔術師であった、先々代領主のこと。しかし、彼はとうの昔に亡くなったはずです。その高位の魂が、今もなお、この屋敷に留まっているというのでしょうか。
「ユーノ様! 先々代領主様は天国でユーノ様を見守っておいでです…! やはり、わたくしたちが、お側で…!」
エレナさんが、必死に食い下がります。その剣幕に、ユーノくんは少しだけむっとしたように唇を尖らせましたが、やがて、何か面白いことを思いついたかのように、その青い瞳を悪戯っぽく輝かせました。
「…わかったよ。じゃあ、おねえちゃんたちが、僕と一緒に寝てくれるっていうなら、付き添ってもいいよ?」
「「え…?」」
「僕のベッドで、ちゃんと、僕の隣で寝てくれるならね! そしたら、この前、蔵からこっそり出してきた、秘密の葡萄酒も、特別に味見させてあげちゃう!」
そう言って、ユーノくんは満面の笑みを浮かべます。その手には、いつの間にか、琥珀色に輝く液体が満たされた、古めかしいデザインの小瓶が握られていました。瓶の表面には、微かな光を放つルーン文字がびっしりと刻まれており、それがただの葡萄酒ではないことを物語っています。
その、あまりにも無邪気で、あまりにも悪魔的な提案。エレナさんとリリアさんは、ごくり、と同時に喉を鳴らしました。ユーノくんは、もちろん、夜伽をさせるつもりで言っているのです。しかし、二人は、その真意に気づかないふりをして…あるいは、気づいていながらも、その甘い誘惑に抗うことができなかったのです。
「……かしこまりましたわ、ユーノ様。では、今晩は、わたくしが、お側に」
静寂を破り、先に口を開いたのは、エレナさんでした。その声は、決意と、そして未知なる悦びへの期待に、微かに震えておりました。
こうして、二人の美しき魔術師による、愛らしくも危険なご主人様の夜の警護が、始まることになったのです。
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