剣と魔法の世界で冒険はそこそこにして色々なお仕事の女の子達がはちゃめちゃにえっちなことになるお話

アレ

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6章 メイドとして潜入したら当然の如くぐちょぐちょえっちになってしまうお話

100:任務

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一週間ほど前のこと。活気と喧騒、そして冒険者たちの汗と酒の匂いが渦巻く、港湾要塞都市アストリナの冒険者ギルドでの出来事です。

ギルドの紋章である「剣と竜」が刻まれた分厚い樫の扉が、ひっきりなしに訪れる者たちを迎え入れては送り出していく。その喧騒から隔絶されたギルドマスターの執務室は、しかし、静かながらも重い緊張感に支配されていました。

「うーん……これは、困ったことになったな」

執務机に山と積まれた羊皮紙の報告書の山に埋もれるようにして、ギルドマスターであるアシュワース氏は、唸るように呟きました。恰幅のいいその身体を、普段よりも小さく見せるほどに深く椅子に沈み込ませ、節くれだった指でこめかみを揉んでいます。彼の抜け目のない瞳が、机に広げられた二通の依頼書の上を、苛立たしげに行き来していました。

そのわかりやすいため息に、控えめなノックの音とともにいつの間にか室内に滑り込んできた影が、くすりと楽しそうな笑みを浮かべます。

「マスター、どうかなさいました? そんなに大きなため息をつくと、幸せが逃げていってしまいますよ!悩み事でしたら、このわたし、リーゼお姉さんが、なーんでも聞いてあげますよ!」

プラチナブロンドの髪を揺らし、ギルドの制服である黒いプリーツスカートをひらりと翻して、リーゼさんが小悪魔的な笑みを浮かべて近づきます。彼女が動くたびに、清潔なシャツの生地と甘い花の香りがふわりと香り、書類とインクの匂いしかしない無骨な部屋の空気を華やかに塗り替えていきました。

「……」

確かに、耳長族である彼女の年齢は、人間であるアシュワース氏のはるか上です。しかし、その見た目と、子供をあやすような口ぶりに、アシュワースの眉間の皺がさらに深くなりました。(この小生意気な長い耳のウサギは、今度じっくりと「教育」してやる必要があるな)。そんな黒い考えを胸の奥に押し込め、彼は重々しく口を開きました。

「リーゼ君。君もこれを見たまえ」

彼が指し示したのは、二通の依頼書。
一つは、アストリナの領主、その人からの親書でした。上質な羊皮紙に、一族の象徴である四つ頭の蛇の紋章が蝋で物々しく封印されています。内容は、一人息子であるユーノ様の奇行について。最近、自室に引きこもって何かに没頭しており、心身ともに衰弱しているように見える。ついては、信頼できる人物を「世話係」として潜入させ、その身辺警護と原因の調査を依頼したい、というものでした。万が一、悪しき魔術や魔物が関わっているのであれば、速やかにこれを排除せよ、との厳しい一文で締めくくられています。

もう一通は、魔術師ギルドのマスターからのものです。こちらは魔術的な通信に使われる特殊な鉱石の板で、表面には淡い光を放つルーン文字が刻まれていました。内容はさらに深刻です。領主邸の北塔に存在する「封印されし書庫」の結界が、何者かによって破られた形跡がある、というのです。
かの書庫は、アストリナの民から「怪物」と恐れられた先々代の領主が遺した、禁断の魔導書を封じ込めた場所。魂を弄ぶ降霊術、人の精神を蝕む呪詛、果ては異界の存在を呼び出す召喚術に至るまで、悪用されれば街一つを容易に混沌の渦に叩き込むほどの危険な知識が眠っている、とされています。

「えーっと、どちらも最高ランクの緊急依頼、ですねぇ。しかも、この成功報酬! やりましたね、マスター! これで今月のギルドの経営も黒字達成ですよ!」

金の計算を始めて、ぱあっと顔を輝かせるリーゼさんに、アシュワース氏はもう一度、今度はこれ見よがしに深いため息をついてみせました。

「リーゼ君。問題はそこではないのだよ。おそらく、この二つの案件は繋がっている」
「と、言いますと?」
「領主の息子、ユーノ様が引きこもり始めた時期と、書庫の結界が破られた時期が、ほぼ一致する。おそらく、ユーノ様自身が、何らかの目的で禁書を求めて書庫に侵入したのだろう」
「なるほどぉ。それで、腕利きの冒険者を送り込んで、こっそり調査させたい、と」
「その通りだ。だが、考えてもみろ。領主邸に『世話係』として潜入できる、高い隠密行動能力。ユーノ様の『万が一』に対応できる、屈強な護衛能力。そして、禁断の魔術が関わっている可能性を考えれば、古代語や魔術理論にもある程度通じている必要がある。おまけに、あの領主邸のことだ。家柄や容姿の悪い者は、門前払いにするに決まっている」

アシュワースは頭を抱えます。そんな、まるで物語の英雄のような都合のいい人材が、そう簡単に見つかるはずもありません。ギルドに所属する腕利きの冒険者たちの顔を一人一人思い浮かべますが、脳筋の戦士、粗野な盗賊、世間知らずの魔術師ばかり。

しばらくの沈黙の後、アシュワースは何かを決意したように顔を上げると、引き出しの奥から一枚の真新しい羊皮紙と羽ペンを取り出しました。そして、よどみない筆致で、一通の手紙を書き上げ始めます。その瞳には、先程までの悩みとは違う、確信に満ちた光が宿っていました。

「リーゼ君。この手紙を、至急、宛先の人物に送ってくれたまえ!」

そう言って彼が差し出した封筒には、アストリナの街の住所ではなく、遠く離れた東方の街の名前が記されていました。
リーゼはそれを受け取ると、執務室の隅に置かれた、不思議な装飾の小箱の前に進みます。それは「転送の箱」と呼ばれる魔導具でした。彼女が箱の蓋を開けて手紙をそっと中に置き、蓋に埋め込まれた青い魔晶石に触れると、箱の内側がまばゆい光を放ち、次の瞬間には手紙は跡形もなく消え去っていました。

「いやー、何度見ても便利ですよねぇ、マスターの魔導具は。ところで、マスター? 今のって、別にわたしがやらなくても、よかったんじゃないですか?」

きょとんとした顔で尋ねるリーゼに、アシュワースは答えず、ただ口の端を歪めて不敵に笑うだけでした。

冒険者ギルドは、今日もいつも通り、平和な時間が流れていきます。
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