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6章 メイドとして潜入したら当然の如くぐちょぐちょえっちになってしまうお話
107:小部屋
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そして迎えた朝。
朝食の席についても、小雪さんの苦しみは続きます。目の前で無邪気にスープをスプーンで口に運ぶユーノくんの、その何気ない仕草一つ一つが、彼女の敏感になった五感を刺激してやみません。
(ああ…ユーノ様の、あの小さな唇が………だめ、いけない!)
そんな背徳的な妄想が頭をよぎるたび、下腹部の奥がずくん、と熱く脈打ち、太ももの内側を甘い蜜がとろりと伝うのがわかります。必死に平静を装いますが、上気した頬と、潤んでとろんとした瞳、そして、彼女の肌からふわりと香り立つ、熟れた果実のような甘い発情の匂いは、隠しようもありませんでした。
食事が終わるや否や、小雪さんは椅子を蹴るように立ち上がると、鬼気迫る表情でユーノくんに詰め寄ります。
「ユーノ様! 解毒剤は無いのですか!」
その切羽詰まった声に、ユーノくんはきょとんとした顔で小雪さんを見上げました。
「っえ? 解毒剤? って、おねえちゃん、顔まっかだけど大丈夫? 熱でもあるの?」
「体調は! 問題ありません! それよりもユーノ様! このお屋敷に、解毒剤は…!」
懇願するように、ほとんど悲鳴に近い声でした。このままでは、いつ理性の箍が外れ、この敬愛すべきご主人様に、メイドとしてあるまじき姿を晒してしまうかわかりません。
「え~っと、お薬の棚には、そういうのは無かったと思うけど…。もしかしたら、北塔の図書室にある別の魔導書に、そういう中和ポーションの作り方が載っているかも…」
その言葉は、溺れる者にとっての最後の藁でした。
「ッ! 今すぐ行きましょう!」
有無を言わさぬその気迫に押され、ユーノくんはこくこくと頷きます。
こうして小雪さんは、半ばユーノくんを引きずるようにして、領主邸の奥深く、問題の「封印されし書庫」へと突入したのです。
◇◇◇
ひんやりとした石の回廊を抜け、重厚な鉄の扉を開いた先には、時が止まったかのような空間が広がっていました。高い天井まで届く書架に、びっしりと詰め込まれた無数の背表紙。空気中には、乾燥した紙とインク、そして微かな魔力の残滓が混じり合った、独特の匂いが満ちています。アストリナの怪物と恐れられた先々代領主が遺した、禁断の知識の貯蔵庫。その圧倒的な情報量と、そこはかとなく漂う不気味な気配に、小雪さんはごくりと喉を鳴らしました。
幸い、魔物や罠の類が作動した形跡はありません。ユーノくんは慣れた様子で、書架の迷路を進んでいくと、一番奥まった場所にある、ひときわ豪華な装丁の一冊を指さしました。
「多分、この本に書かれていると思うんだ!」
【解毒と鎮静の妙薬合成について —魔力循環阻害薬と精神安定剤の理論と実践—】
悪趣味なほどに金と宝石で飾られた魔導書を、ユーノくんが得意げに掲げます。その屈託のない笑顔に、小雪さんはひとまず安堵の息を漏らしました。これ以上、この身体の疼きを抑えきれそうにありません。早く解毒のポーションを合成してもらい、この地獄から解放される必要があります。
図書室に隣接する、埃をかぶった実験室。そこでユーノくんは、ぱらぱらと魔導書のページをめくり始めました。羊皮紙に記された古代魔術語を、彼は淀みなく読み解いていきます。
「うーん、この『月の嘘涙』っていう素材は、地下の貯蔵庫にあるはずだけど、『賢者の石の偽物の粉末』は、いったい…」
真剣な横顔で呟くユーノくんを、小雪さんはすぐ隣でじっと見つめます。
見つめていると、昨夜、彼女の脳を焼き尽くした妄想が、むくむくと鎌首をもたげてきました。
(ユーノ様に…♡ この、はしたない身体を、めちゃくちゃにお仕置きしてもらいたい…♡)
薬によって強制的に引き出された淫らな願望が、いよいよ収集がつかなくなった、その時でした。
追加の参考書籍を探しに行こうとしたユーノくんが、ドアノブをガチャガチャと回しながら、悲鳴のような声を上げたのです。
「あれっ? おねえちゃん! ドアが開かない!」
その言葉に、小雪さんははっと我に返り、慌てて部屋の四隅を調べます。
依然として、外部からの敵意は感じません。しかし、部屋全体から、うっすらと、それでいて極めて強力な魔導具の気配が漂っていることに、今更ながら気がつきました。そうです、この部屋そのものが、何らかの魔術的な効果を持つ、巨大な魔導具なのです。
今になって思えば、おかしな点はいくらでもありました。何十年も誰も使っていないはずなのに、実験器具には塵一つなく、床には奇妙な幾何学模様の魔術紋様がうっすらと浮かび上がっています。
「おねえちゃん! 天井から紙が!」
ユーノくんの指さす先を見上げると、空間の裂け目から、一枚の羊皮紙がひらり、ひらりと舞い落ちてくるところでした。
床に落ちる前にそれを掴み取った小雪さんが、そこに書かれた文字を読み上げます。それは、子供が書いたような、拙くも不気味な筆跡でした。
<せっくすしないとでられないへや:かうんと100>
朝食の席についても、小雪さんの苦しみは続きます。目の前で無邪気にスープをスプーンで口に運ぶユーノくんの、その何気ない仕草一つ一つが、彼女の敏感になった五感を刺激してやみません。
(ああ…ユーノ様の、あの小さな唇が………だめ、いけない!)
そんな背徳的な妄想が頭をよぎるたび、下腹部の奥がずくん、と熱く脈打ち、太ももの内側を甘い蜜がとろりと伝うのがわかります。必死に平静を装いますが、上気した頬と、潤んでとろんとした瞳、そして、彼女の肌からふわりと香り立つ、熟れた果実のような甘い発情の匂いは、隠しようもありませんでした。
食事が終わるや否や、小雪さんは椅子を蹴るように立ち上がると、鬼気迫る表情でユーノくんに詰め寄ります。
「ユーノ様! 解毒剤は無いのですか!」
その切羽詰まった声に、ユーノくんはきょとんとした顔で小雪さんを見上げました。
「っえ? 解毒剤? って、おねえちゃん、顔まっかだけど大丈夫? 熱でもあるの?」
「体調は! 問題ありません! それよりもユーノ様! このお屋敷に、解毒剤は…!」
懇願するように、ほとんど悲鳴に近い声でした。このままでは、いつ理性の箍が外れ、この敬愛すべきご主人様に、メイドとしてあるまじき姿を晒してしまうかわかりません。
「え~っと、お薬の棚には、そういうのは無かったと思うけど…。もしかしたら、北塔の図書室にある別の魔導書に、そういう中和ポーションの作り方が載っているかも…」
その言葉は、溺れる者にとっての最後の藁でした。
「ッ! 今すぐ行きましょう!」
有無を言わさぬその気迫に押され、ユーノくんはこくこくと頷きます。
こうして小雪さんは、半ばユーノくんを引きずるようにして、領主邸の奥深く、問題の「封印されし書庫」へと突入したのです。
◇◇◇
ひんやりとした石の回廊を抜け、重厚な鉄の扉を開いた先には、時が止まったかのような空間が広がっていました。高い天井まで届く書架に、びっしりと詰め込まれた無数の背表紙。空気中には、乾燥した紙とインク、そして微かな魔力の残滓が混じり合った、独特の匂いが満ちています。アストリナの怪物と恐れられた先々代領主が遺した、禁断の知識の貯蔵庫。その圧倒的な情報量と、そこはかとなく漂う不気味な気配に、小雪さんはごくりと喉を鳴らしました。
幸い、魔物や罠の類が作動した形跡はありません。ユーノくんは慣れた様子で、書架の迷路を進んでいくと、一番奥まった場所にある、ひときわ豪華な装丁の一冊を指さしました。
「多分、この本に書かれていると思うんだ!」
【解毒と鎮静の妙薬合成について —魔力循環阻害薬と精神安定剤の理論と実践—】
悪趣味なほどに金と宝石で飾られた魔導書を、ユーノくんが得意げに掲げます。その屈託のない笑顔に、小雪さんはひとまず安堵の息を漏らしました。これ以上、この身体の疼きを抑えきれそうにありません。早く解毒のポーションを合成してもらい、この地獄から解放される必要があります。
図書室に隣接する、埃をかぶった実験室。そこでユーノくんは、ぱらぱらと魔導書のページをめくり始めました。羊皮紙に記された古代魔術語を、彼は淀みなく読み解いていきます。
「うーん、この『月の嘘涙』っていう素材は、地下の貯蔵庫にあるはずだけど、『賢者の石の偽物の粉末』は、いったい…」
真剣な横顔で呟くユーノくんを、小雪さんはすぐ隣でじっと見つめます。
見つめていると、昨夜、彼女の脳を焼き尽くした妄想が、むくむくと鎌首をもたげてきました。
(ユーノ様に…♡ この、はしたない身体を、めちゃくちゃにお仕置きしてもらいたい…♡)
薬によって強制的に引き出された淫らな願望が、いよいよ収集がつかなくなった、その時でした。
追加の参考書籍を探しに行こうとしたユーノくんが、ドアノブをガチャガチャと回しながら、悲鳴のような声を上げたのです。
「あれっ? おねえちゃん! ドアが開かない!」
その言葉に、小雪さんははっと我に返り、慌てて部屋の四隅を調べます。
依然として、外部からの敵意は感じません。しかし、部屋全体から、うっすらと、それでいて極めて強力な魔導具の気配が漂っていることに、今更ながら気がつきました。そうです、この部屋そのものが、何らかの魔術的な効果を持つ、巨大な魔導具なのです。
今になって思えば、おかしな点はいくらでもありました。何十年も誰も使っていないはずなのに、実験器具には塵一つなく、床には奇妙な幾何学模様の魔術紋様がうっすらと浮かび上がっています。
「おねえちゃん! 天井から紙が!」
ユーノくんの指さす先を見上げると、空間の裂け目から、一枚の羊皮紙がひらり、ひらりと舞い落ちてくるところでした。
床に落ちる前にそれを掴み取った小雪さんが、そこに書かれた文字を読み上げます。それは、子供が書いたような、拙くも不気味な筆跡でした。
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