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6章 メイドとして潜入したら当然の如くぐちょぐちょえっちになってしまうお話
112:廊下
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小雪さんと若きご主人様であるユーノくんとの、甘くも激しい秘密の儀式から二日後のことです。
小雪さんの身体は、未だにあの禁断の霊薬の支配下にありました。夜ごと繰り返される、終わりなき自慰の責め苦。そして、朝を迎えれば、何食わぬ顔で仕えなければならない、倒錯的な現実。その心身の疲労は、シノビとして鍛え上げた彼女の精神を、確実に蝕んでいました。朝食の席についても、その苦しみは続きます。目の前で無邪気にスープをスプーンで口に運ぶユーノくんの、その何気ない仕草一つ一つが、彼女の敏感になった五感を刺激してやみません。
食事が終わるや否や、小雪さんは椅子を蹴るように立ち上がると、鬼気迫る表情でユーノくんに詰め寄ります。
「ユーノ様! 解毒剤は作れないのですか!」
その切羽詰まった、ほとんど悲鳴に近い声に、ユーノくんはきょとんとした顔で小雪さんを見上げました。
「っえ? 解毒剤? っておねえちゃん、この前たっぷり種付けしてあげたから満足したんじゃなかったの?」
そのあまりにも無邪気で、残酷な言葉に、小雪さんの顔がカッと赤く染まります。
「ッ!夜にはまたもとに戻りました!」
「じゃあ今からまた種付けしてあげるよ?」
「ユーノ様! それは夜にしてください! 解毒剤は!」
その必死の形相に、ユーノくんはようやく事態の深刻さを理解したようです。うーん、と少し考え込む素振りを見せると、ぽん、と手を打ちました。
「…え~っと、もしかしたら昨日読めなかった図書室の他の本に、そういう中和ポーションの本があるかも…」
「ッ!今すぐ行きましょう!」
その言葉は、溺れる者にとっての最後の藁でした。有無を言わさぬその気迫に押され、ユーノくんはこくこくと頷きます。こうして小雪さんは、半ばユーノくんを引きずるようにして、再び屋敷の奥深く、問題の図書室へと突入したのです。
◇◇◇
幸い、本日も図書室には危険な魔物の気配はありません。ユーノくんは慣れた様子で書架の間を進み、【妙薬と劇薬について】という、悪趣味なほど豪華な装丁の魔導書を奥から取り出してきました。
「多分この本に書かれている、と思うんだ!」
ユーノくんの屈託のない笑顔に、小雪さんはひとまず安堵の息を漏らします。
図書室に隣接する、埃をかぶった実験室で、ユーノくんは魔導書のページをめくり始めました。先日の反省から、小雪さんは一計を案じました。開かなくなるなら、閉じなければよいのです。持ってきていた沢山の分厚い本を、重厚な扉の隙間に次々と積み上げ、とびらを閉まらなくしてしまいます。これで<せっくすしないとでられないへや>対策は完璧なはずです。
「うーん、この論理魔術式は…」
小雪さんは再び隣でユーノくんの横顔を見つめます。その真剣な横顔を見つめていると、数日前の、身も心も蕩かされた情事の記憶が、むくむくと頭の中に広がってきます。ユーノくんにめちゃくちゃにお仕置きしてもらった、小雪さんの思い出旅行にいよいよ収集がつかなくなった、その時でした。追加の参考資料を探しに廊下へ出たユーノくんが、驚愕の声を上げました。
「「あれっ?おねえちゃん。僕が二人いる!」」
二人の、まったく同じご主人様。ユーノくんが、寸分違わぬ姿形で、驚きに目を見開いてこちらを見つめています。片方のユーノくんが首を傾げれば、もう片方も同じ角度で首を傾げる。その光景は、まるで合わせ鏡の迷宮に迷い込んだかのようでした。
小雪さんは慌てて廊下を調べますが、魔物の敵意は感じません。ただ、薄っすらと、しかし極めて精緻で強力な魔導具の気配が、空間そのものから漂っていました。今になって思えば、長らく誰も使っていないはずなのに、塵一つなく磨き上げられた床、曇り一つない窓、それらすべてがおかしかったのです。この廊下そのものが、一個の巨大な魔術的トラップなのでした。
「「おねえちゃん! 天井から紙が!」」
二人のユーノくんが同時に指さす先を見上げると、空間の裂け目から、一枚の羊皮紙がひらり、ひらりと舞い落ちてくるところでした。それは、まるで死刑執行を宣告するかのように、ゆっくりと、小雪さんの足元へと落ちてきます。
拾い上げた羊皮紙に書かれていたのは、子供が書いたような拙い、しかし魔力を帯びた字で書かれた恐るべき宣告。
<せっくすしないともどらないゆーのくん:カウント200>
血の気が、さっと引いていくのを感じました。二百回。二百回も、この若きご主人様と、身を重ねなければならない。その絶望的な数字が意味するものを瞬時に理解した小雪さんの身体は、しかし、恐怖とは裏腹に、ずくん、と熱く疼き始めるのでした。
「…ユーノ様。あの、その、ほかの方法を探しましょう…」
気まずそうに小雪さんがつぶやいた、その時です。
「…おねえちゃん。げんきになるぽーしょん、まだまだたくさんあるよ?」
二人のユーノくんが、悪魔のように無垢な笑顔で、声を揃えて言いました。
「ぇ?あ、はい。ユーノ様が合成されたものがそこの棚にたくさんあ」
小雪さんが言い終わるよりも早く、片方のユーノくんが棚から緑色に輝く小瓶を取り出し、もう一人のユーノくんに手渡しました。そして、ポーションを口に含んだユーノくんは、抵抗する間もなく小雪さんの両腕を掴んで動きを封じると、その唇に、自らの唇を強く押し付けたのです。
小雪さんの身体は、未だにあの禁断の霊薬の支配下にありました。夜ごと繰り返される、終わりなき自慰の責め苦。そして、朝を迎えれば、何食わぬ顔で仕えなければならない、倒錯的な現実。その心身の疲労は、シノビとして鍛え上げた彼女の精神を、確実に蝕んでいました。朝食の席についても、その苦しみは続きます。目の前で無邪気にスープをスプーンで口に運ぶユーノくんの、その何気ない仕草一つ一つが、彼女の敏感になった五感を刺激してやみません。
食事が終わるや否や、小雪さんは椅子を蹴るように立ち上がると、鬼気迫る表情でユーノくんに詰め寄ります。
「ユーノ様! 解毒剤は作れないのですか!」
その切羽詰まった、ほとんど悲鳴に近い声に、ユーノくんはきょとんとした顔で小雪さんを見上げました。
「っえ? 解毒剤? っておねえちゃん、この前たっぷり種付けしてあげたから満足したんじゃなかったの?」
そのあまりにも無邪気で、残酷な言葉に、小雪さんの顔がカッと赤く染まります。
「ッ!夜にはまたもとに戻りました!」
「じゃあ今からまた種付けしてあげるよ?」
「ユーノ様! それは夜にしてください! 解毒剤は!」
その必死の形相に、ユーノくんはようやく事態の深刻さを理解したようです。うーん、と少し考え込む素振りを見せると、ぽん、と手を打ちました。
「…え~っと、もしかしたら昨日読めなかった図書室の他の本に、そういう中和ポーションの本があるかも…」
「ッ!今すぐ行きましょう!」
その言葉は、溺れる者にとっての最後の藁でした。有無を言わさぬその気迫に押され、ユーノくんはこくこくと頷きます。こうして小雪さんは、半ばユーノくんを引きずるようにして、再び屋敷の奥深く、問題の図書室へと突入したのです。
◇◇◇
幸い、本日も図書室には危険な魔物の気配はありません。ユーノくんは慣れた様子で書架の間を進み、【妙薬と劇薬について】という、悪趣味なほど豪華な装丁の魔導書を奥から取り出してきました。
「多分この本に書かれている、と思うんだ!」
ユーノくんの屈託のない笑顔に、小雪さんはひとまず安堵の息を漏らします。
図書室に隣接する、埃をかぶった実験室で、ユーノくんは魔導書のページをめくり始めました。先日の反省から、小雪さんは一計を案じました。開かなくなるなら、閉じなければよいのです。持ってきていた沢山の分厚い本を、重厚な扉の隙間に次々と積み上げ、とびらを閉まらなくしてしまいます。これで<せっくすしないとでられないへや>対策は完璧なはずです。
「うーん、この論理魔術式は…」
小雪さんは再び隣でユーノくんの横顔を見つめます。その真剣な横顔を見つめていると、数日前の、身も心も蕩かされた情事の記憶が、むくむくと頭の中に広がってきます。ユーノくんにめちゃくちゃにお仕置きしてもらった、小雪さんの思い出旅行にいよいよ収集がつかなくなった、その時でした。追加の参考資料を探しに廊下へ出たユーノくんが、驚愕の声を上げました。
「「あれっ?おねえちゃん。僕が二人いる!」」
二人の、まったく同じご主人様。ユーノくんが、寸分違わぬ姿形で、驚きに目を見開いてこちらを見つめています。片方のユーノくんが首を傾げれば、もう片方も同じ角度で首を傾げる。その光景は、まるで合わせ鏡の迷宮に迷い込んだかのようでした。
小雪さんは慌てて廊下を調べますが、魔物の敵意は感じません。ただ、薄っすらと、しかし極めて精緻で強力な魔導具の気配が、空間そのものから漂っていました。今になって思えば、長らく誰も使っていないはずなのに、塵一つなく磨き上げられた床、曇り一つない窓、それらすべてがおかしかったのです。この廊下そのものが、一個の巨大な魔術的トラップなのでした。
「「おねえちゃん! 天井から紙が!」」
二人のユーノくんが同時に指さす先を見上げると、空間の裂け目から、一枚の羊皮紙がひらり、ひらりと舞い落ちてくるところでした。それは、まるで死刑執行を宣告するかのように、ゆっくりと、小雪さんの足元へと落ちてきます。
拾い上げた羊皮紙に書かれていたのは、子供が書いたような拙い、しかし魔力を帯びた字で書かれた恐るべき宣告。
<せっくすしないともどらないゆーのくん:カウント200>
血の気が、さっと引いていくのを感じました。二百回。二百回も、この若きご主人様と、身を重ねなければならない。その絶望的な数字が意味するものを瞬時に理解した小雪さんの身体は、しかし、恐怖とは裏腹に、ずくん、と熱く疼き始めるのでした。
「…ユーノ様。あの、その、ほかの方法を探しましょう…」
気まずそうに小雪さんがつぶやいた、その時です。
「…おねえちゃん。げんきになるぽーしょん、まだまだたくさんあるよ?」
二人のユーノくんが、悪魔のように無垢な笑顔で、声を揃えて言いました。
「ぇ?あ、はい。ユーノ様が合成されたものがそこの棚にたくさんあ」
小雪さんが言い終わるよりも早く、片方のユーノくんが棚から緑色に輝く小瓶を取り出し、もう一人のユーノくんに手渡しました。そして、ポーションを口に含んだユーノくんは、抵抗する間もなく小雪さんの両腕を掴んで動きを封じると、その唇に、自らの唇を強く押し付けたのです。
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