剣と魔法の世界で冒険はそこそこにして色々なお仕事の女の子達がはちゃめちゃにえっちなことになるお話

アレ

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9章 狩人も冒険ではちゃめちゃになってしまうお話

149:依頼

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港湾要塞都市アストリナの、まるで巨大な獣の顎のように開かれた城門をくぐり抜けた馬車は、しばらくは整然と敷き詰められた石畳の上を快調に進んでいきました。しかし、活気ある市街地を抜け、城壁の外に広がる農村地帯を過ぎる頃には、道は荒れた未舗装の街道へと姿を変えます。がたん、ごとん、という無骨で不規則な振動が、座席に座る二人を絶えず揺さぶり続けました。車窓の外では、見慣れた港町の喧騒と潮の香りが急速に遠ざかり、代わりにどこまでも続く広大な緑の平原と、乾いた土の匂いが満ちていきます。こうして、獣人族の狩人シャイラさんと、謎多き冒険者モブ=オジ、もとい「おじさん」との、奇妙でぎこちない二人旅が始まったのです。

はじめの三日間、狭い馬車の中は、まるで鉛を流し込んだかのように重苦しい沈黙に支配されていました。

シャイラさんは、窓の外にただ一心に視線を投げかけ、流れていく景色を目で追い続けています。彼女の頭頂部でぴんと立った猫の耳は、車輪がきしむ耳障りな音、馬の退屈そうないななき、そして遠くで鳴く鳥の甲高い声といった、あらゆる物音を拾っては、ぴく、ぴくと神経質に動いています。しかし、その意識が隣に座る男に向けられることはありません。むしろ、意識的に彼を視界から、そして思考から排除しているかのようでした。その全身からは、まるで初めて会う大型の肉食獣に対するような、張り詰めた警戒心がありありと放たれています。

一方のおじさんは、筋骨隆々の太い腕を胸の前で組んだまま、ほとんど身じろぎもせずに座っていました。その人相の悪い、まるで岩から削り出したかのような顔には何の感情も浮かびません。ただ時折、シャイラさんの尖った耳や、緊張からか無意識に小さく揺れる美しい尻尾に、面白がるでもなく、かといって無関心でもない、値踏みをするような不思議な視線を向けるだけでした。狭い空間に、気まずい空気と、なめされた革の匂い、そして微かな土埃の匂いが混じり合い、よどんでいます。

変化が訪れたのは、旅も四日目に入った昼下がりのことでした。

街道が緩やかな丘陵地帯に差し掛かり、車窓の風景が、それまでの開けた平原から、空を覆い隠すほどに鬱蒼とした針葉樹の森へと変わった時、シャイラさんが、ぽつり、と呟きました。

「……故郷の森に、少しだけ似てる」

それは、ほとんど自分自身に言い聞かせるような、か細い声でした。しかし、単調な揺れと静寂が支配する車内では、存外に大きく響き渡ります。おじさんは、ゆっくりとシャイラさんの方へ顔を向けました。その無言の視線に促されるように、シャイラさんは、まるで堰を切ったかのように、ぽつり、ぽつりと自らの過去を語り始めたのです。

「アタシの集落は、もっと北の、もっと深い森の中にある。ここよりもずっと寒くて、冬は、本当に厳しいんだ……」

彼女が語ったのは、北の森深くにある、小さな獣人の集落のこと。ここ数年、獲物がめっきりと減り、長く厳しい冬を越すための食糧が常に足りていないこと。長老たちは「森の怒りだ」と嘆き、若い狩人たちは焦り、そして子供たちは、空腹を訴えて泣き続ける。皆が日に日に痩せ細っていくのを、ただ見ていることしかできなかった、あのどうしようもない無力感。

「だから、アタシが稼がなくちゃならない。アタシには、狩りの才能があるから。この街で大きな獲物を狩って、一番たくさんのお金を稼いで、皆がお腹いっぱい食べられるだけの食糧を送ってやらなくちゃ……」

そして、集落に残してきた、心優しい許嫁、フィンのこと。彼は狩人ではないけれど、薬草の知識が豊富で、いつもアタシの怪我を心配してくれること。彼が作ってくれる薬草スープの、決してうまくはないけれど、身体の芯まで温まる、あの素朴で優しい味のこと。

シャイラさんは、誰かに自分の身の上話をするのが、これほどまでに心地よいものだとは知りませんでした。心の内に溜め込んでいた澱のようなものが、言葉と共にすうっと溶けていくような感覚。おじさんは、ただ黙って聞いています。時折、「そうか」「大変だったな」と、まるで独り言のように短く相槌を打つだけですが、その無骨な声には、彼のいかつい見た目からは想像もつかないような、不思議な温かみが感じられました。シャイラさんは、この人相の悪い男が、決して悪い人間ではないのかもしれない、と、この時初めて思ったのです。あれほど不快だった不愛想な態度にも、いつの間にか慣れていました。

道中、彼らはいくつかの村や町に立ち寄りながら、旅を続けました。街道は日に日に険しさを増し、道端には風化した石像や、打ち捨てられた祠が目につくようになります。すれ違う商人の数もめっきりと減り、代わりに武装した傭兵や、巡礼者の姿がちらほらと見られるようになりました。やがて馬車は、目的の廃墟があるという山脈の、まるで巨大な獣が横たわっているかのような、荒々しい山麓へと差し掛かったのです。

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