剣と魔法の世界で冒険はそこそこにして色々なお仕事の女の子達がはちゃめちゃにえっちなことになるお話

アレ

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10章 危ないお店に潜入したら当然のごとくぐちょぐちょえっちになってしまうお話

191:売人

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 男の顔には、まるで古い地図のように幾筋ものおぞましい傷跡が走り、その目には、冬の沼の底のように冷たく淀み、爬虫類を思わせる非人間的な光を宿していた。男の全身からは、血と鉄、そして死の匂いが、まるで瘴気のように微かに立ち上っている。それは、幾多の戦場や裏社会の暗闘を生き延びてきた者だけが纏うことを許される、圧倒的なまでの死のオーラであった。この無法地帯で、盗賊団や暗殺者として生きる者たちの中には、時折このような危険な空気を放つ者がいるが、この男のそれは、これまで小雪が感じてきた誰のそれよりも、濃密で、凝縮されていた。

 男は、店内にゆっくりと足を踏み入れると、まず油断なく周囲を見回した。その視線は鋭く、まるで縄張りを侵す者を探す、飢えた肉食獣のようだ。床に転がる酔客たちをゴミでも見るかのように一瞥し、やがてその視線は、カウンターの片付けをしていた小雪に、ぴたりと注がれた。

 ねっとりとした、品定めするような視線。それは、小雪がこの赤煙亭で受けてきた、どんな下品で欲望に満ちた視線とも異質であった。それは、ただの雌に対する性欲ではない。これから屠殺する家畜の肉質を確かめるような、あるいは競売にかける商品の価値を見定めるような、どこまでも冷徹で、所有欲に満ちた視線であった。その視線に射抜かれた瞬間、小雪の身体の奥、若き主君に与えられた妙薬によって常に熱を帯びている部分が、きゅん、と甘く疼いた。肌が粟立ち、背筋をぞくりとした悪寒にも似た痺れが駆け上る。

 男は、小雪から無感動に視線を外すと、カウンターの奥で帳簿をつけていた店長の方へ、無言で歩み寄った。その一歩一歩が、まるで床板を沈ませるかのように重い。店長は、男の姿を認めると、明らかに顔色を変えた。額に滲んだ脂汗が、魔法の灯りの下でぬらぬらと光る。卑屈な作り笑いを浮かべ、震える声で男を迎えた。

「こ、これは…レイス様。今宵はどのようなご用向きで…?」

 店長の声は、媚びへつらうように上ずり、哀れなほど震えていた。レイスと呼ばれた男は何も言わず、ただ顎で小雪の方をしゃくってみせる。その無言の仕草だけで、店長は男の意図を正確に察し、さらに顔を青ざめさせた。

「そ、それは…あの娘は、まだ来たばかりでして…それに、近頃は自警団の目も厳しく…」

 店長は、必死で何かを言い訳しようと、意味をなさない言葉を紡ぐ。しかし、レイスは店長の言葉を遮るように、重々しく、腹の底から響くような声で言った。

「黙れ。いつもの『品』だ。今夜、連れて行く」

 その声には、有無を言わせぬ絶対的な威圧感があった。それは、抵抗や交渉といった選択肢の存在そのものを否定する、支配者の声であった。店長は、もはや反論することもできず、苦虫を噛み潰したような顔で俯いた。そして、絞り出すような声で、最後の抵抗を試みた。

「…だんなぁ、これ以上連れていかれるのは困りますぜ…店の評判にも関わります…それに、あの娘はまだ『熟れて』いません…」

 小雪は、二人のやり取りから、断片的な言葉を耳ざとく拾い上げていた。「連れていかれる」「品」「熟れていない」。それは、この店で行われているであろう人身売買の核心に触れる言葉に違いなかった。やはり、この店は盗賊団の拠点、あるいは少なくとも重要な中継地点なのだ。そして、自分もまた、他の消えたウェイトレスたちと同じように、「商品」として扱われようとしている。

 任務は、ついに佳境に入ったのかもしれない。この男に連れていかれれば、盗賊団の根城である都市遺跡エンブレスへと辿り着ける可能性が高い。しかし、それは同時に、自分がこれから想像を絶するような危険な状況に置かれることを意味していた。

 恐怖が、冷たい氷の矢となって全身を駆け巡る。だが、それと同時に、かの妙薬に煽られた身体の奥底から、未知の状況への倒錯した興奮が、熱いマグマのように湧き上がってくるのを、小雪は止められなかった。強者であるレイスが放つ圧倒的な威圧感と死の匂い。それは、小雪の中に眠る「雌」としての本能を揺り覚ますには、十分すぎるほどの刺激であった。生命の危機に瀕した時、より強い雄の種を求めるという、生物としての根源的な欲求。妙薬は、その本能を何十倍にも増幅させ、恐怖を背徳的な快感へと歪めてしまうのだ。

(ああ、だめ…♡♡ こんな、こわい人の前で…♡♡ なのに、どうして…♡♡♡ からだの奥が、こんなに熱く、なって…♡♡♡)

 秘裂の奥がじゅくりと熱い蜜を滲ませ、きゅうっと収縮するのを感じる。心臓は恐怖と興奮で激しく高鳴り、呼吸が浅くなる。これから自分を待ち受けるであろう、屈辱と陵辱。その想像が、小雪の理性をじわじわと溶かし、抗いがたい官能的な期待へと変貌させていく。密偵としての冷静な思考と、媚薬に蝕まれた雌の本能が、彼女の内で激しくせめぎ合っていた。

 ラストオーダーの声が、むせ返るような熱気と喧騒に満ちた安酒場「赤煙亭」に、ようやく終わりの訪れを告げた。床に転がされた酔客の獣じみた鼾だけが響く中、客の姿もまばらになり、一人、また一人とスラムの夜の闇へと吸い込まれていく。酸っぱいエールと汗、油と埃、そして安物のヤニが混じり合った淀んだ空気の中に、今はもう、カウンターで気怠そうに帳簿をつける店長と、給仕服姿の小雪、そして――店の最も奥まったテーブル席で、一人、黙々と酒精を呷る男だけが残されていた。
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