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第11話:醤油もどき開発計画
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レオン様との秘密の朝食会が始まってから、二週間が過ぎた。
私の日常は、驚くほど色鮮やかなものに変わっていた。朝、厨房に立つこと。彼の「腹が減った」という言葉を聞くこと。そして、空になったお皿を見ること。その一つ一つが、私の心を温かい光で満たしてくれた。
もう、私は孤独な人質ではなかった。私には待っていてくれる人がいる。私の料理を、心から美味しいと言ってくれる人がいる。その事実が、私に生きるための確かな力を与えてくれていた。
マルタとの関係も、少しずつ変化していた。相変わらず無表情で口数は少ないけれど、彼女は毎日、私が厨房に立つのを黙って見守ってくれるようになった。時には、どこからか珍しいハーブや、少しだけ新鮮な野菜を手に入れてきてくれることもあった。それは彼女なりの、不器用な優しさなのだと私は感じていた。
離宮での生活は、穏やかで満ち足りていた。
しかし、人間とは欲深い生き物らしい。心が満たされてくると、今度は別の欲求が顔を出す。
私の場合は、それが食欲だった。それも、極めて限定的な。
「……お醤油が、恋しい」
ある日の午後、厨房で一人、ぽつりと呟いてしまった。
レオン様のために作る朝食は、基本的にパンと卵、芋が中心だ。いわば、前世で言うところの洋食に近い。それはそれで美味しいし、作るのも楽しい。
だが、私の魂の半分は、やはり『佐藤葵』なのだ。日本人としての二十八年間の記憶が、私の味覚の根底には深く刻み込まれている。
炊き立ての白いご飯。湯気の立つお味噌汁。そして、あの香ばしくて旨味の塊のような、魔法の液体。
醤油。
あの味を思い出してしまうと、もう駄目だった。脳裏に、ありとあらゆる和食が洪水のように押し寄せてくる。
――照り焼きチキンの甘辛い香り。
――きつねうどんの、出汁と醤油が混じり合った優しいスープ。
――卵かけご飯に、たらりと一筋落とした時の、あの背徳的なまでの幸福感。
「うぅ……食べたい……」
私は調理台に突っ伏した。禁断症状とは、きっとこういうことを言うのだろう。ここ数日、私の頭の中は醤油と味噌のことでいっぱいだった。
レオン様にも、この味を教えてあげたい。彼がもし、初めて醤油の味を知ったら、どんな顔をするだろう。きっと、目を丸くして驚くに違いない。そして、いつものように「美味い」と、心の底から言ってくれるはずだ。
そう思うと、いてもたってもいられなくなった。
作れないだろうか。この世界で。
醤油と味噌を。
私は勢いよく顔を上げた。そうだ。諦めるのはまだ早い。私には、希望の種があるのだから。
私は急いで自室に戻ると、ベッドの下から母の形見の小箱を取り出した。蓋を開け、中に入っている小さな布袋を、祈るような気持ちで開く。
そこには、私が前世の記憶を頼りに選別しておいた、数種類の種が大切に保管されていた。
一つは、大豆によく似た、丸くて少し黄色味がかった豆の種。
もう一つは、米にそっくりな、白く艶のある穀物の種。
これがあれば、できるかもしれない。
醤油の主原料は大豆と小麦、塩。味噌は大豆と米、塩。小麦も米もないが、この穀物が代わりになってくれるはずだ。塩は、岩塩が手に入る。
問題は、発酵に不可欠な『麹菌』だった。前世の日本では、種麹として専門の店で売られていたものだ。もちろん、この世界にそんな便利なものはない。
「どうしよう……」
私は腕を組んで考え込んだ。麹菌は、カビの一種だ。自然界にも存在するはず。ならば、原始的な方法で培養するしかない。
前世で読んだ本の内容を、必死に思い出す。確か、蒸した米や麦を暖かい場所に置いておくと、自然に空気中の麹菌が付着して、繁殖することがあると書かれていたはずだ。成功するかどうかは、運次第。だが、やってみる価値はあった。
計画は決まった。私はすぐに行動を開始した。
まずは、マルタへの交渉だ。醸造には、それなりの大きさの壺や樽が必要になる。
私は厨房でマルタを捕まえると、真剣な顔で切り出した。
「マルタさん。お願いがあります。新しい保存食の研究をしたいのです」
「保存食、ですか?」
マルタは訝しげに眉をひそめた。
「はい。この国の冬は、とても厳しいと聞きました。冬の間も栄養を摂れるように、豆や穀物を発酵させて、長期保存できる調味料のようなものを作れないかと思いまして」
嘘ではない。醤油も味噌も、元々は保存食だ。そして、彼女を説得するには、これが一番の理由になると思った。
私の真剣な眼差しと、理にかなった説明に、マルタはしばらく考え込んでいた。彼女も、この国の厳しい冬と、それに伴う食糧事情の悪化は身に染みて分かっているのだろう。
「……分かりました。離宮の物置に、昔使われていた古い壺がいくつかあったはずです。使えるかどうかは分かりませんが、見てみましょう」
やった! 私は心の中でガッツポーズをした。
マルタに案内されて向かった物置は、厨房と同じくらい埃っぽかった。しかし、その奥に、私が必要としていたものが眠っていた。大小様々な大きさの、頑丈そうな陶器の壺。これを綺麗に洗って煮沸消毒すれば、十分に使えるだろう。
「ありがとうございます、マルタさん!」
「いえ……。もし本当に、冬を越すための助けになるのなら」
彼女はそう言って、少しだけ誇らしそうな顔をした。
道具は揃った。次は、いよいよ仕込みだ。
私はまず、母の形見の種の中から、穀物の種を少量だけ取り出し、離宮の庭の片隅にこっそりと蒔いた。アリアの体には魔力はない。しかし、前世の記憶からくる農業の知識が少しだけあった。それに、不思議なことに、私が世話をした植物は、なぜか驚くほど元気に育つのだ。
数週間後、穀物は見事に実った。量は少ないが、麹を作るには十分だった。
私は収穫した穀物を丁寧に脱穀し、大きな蒸し器でふっくらと蒸し上げる。厨房には、甘くてもちもちとした、まるで炊き立てのご飯のような香りが満ち満ちた。
蒸し上がった穀物を、清潔な木の板の上に広げて冷ます。そして、その上から濡らした麻の布をふわりとかけた。
「どうか、良い菌がついてくれますように……」
私は祈るような気持ちで、その板を厨房の隅の、比較的暖かくて薄暗い場所に置いた。ここから数日間、温度と湿度を管理しながら、麹菌が自然に生えてくるのを待つのだ。成功するかどうかは、神のみぞ知る。
麹もどきを仕込んでいる間に、醤油と味噌の本体となる豆の準備も進める。
これも庭で育てた豆を、たっぷりの水で一晩ふやかす。翌日、ふっくらと水を吸った豆を、大きな鍋で指で潰せるくらい柔らかくなるまで、コトコトと何時間も煮続けた。厨房は、大豆を煮る時特有の、甘く優しい香りでいっぱいになった。
レオン様は、このいつもと違う匂いに気づいたようだった。
「今日は、何を作っているんだ?」
朝食のパンを頬張りながら、彼は不思議そうに尋ねた。
「未来の、美味しいものですよ」
私が悪戯っぽく笑うと、彼は少しだけ不満そうな顔をしたが、それ以上は聞いてこなかった。彼も、私が厨房で何か新しいことに挑戦しているのを、面白がってくれているようだった。
そして、麹を仕込んでから三日目の朝。
私は恐る恐る、麻の布をめくった。
「……あ!」
思わず、小さな歓声が漏れた。
蒸した穀物の表面が、うっすらと白い綿のようなもので覆われている。所々に、緑色の胞子も見えた。これは、まさしく麹カビだ。変な色のカビや、嫌な匂いもない。大成功だった。
私の無自覚な力が、良い菌だけを呼び寄せてくれたのかもしれない。理由は分からないが、とにかく、最大の難関は突破した。
私は喜び勇んで、最後の工程に取り掛かった。
味噌用には、柔らかく煮た豆を熱いうちにすり潰し、塩と完成した麹もどきを混ぜ合わせる。それを丸めて団子状にし、壺の底に叩きつけるようにして詰めていく。空気を抜くことが、雑菌の繁殖を防ぐコツだ。
醤油用には、炒って砕いた穀物と麹もどき、そして煮た豆を混ぜ合わせ、濃い塩水と共に壺に入れる。
全ての仕込みが終わる頃には、私は汗だくになっていた。しかし、その顔は達成感で輝いていた。
厨房の片隅に、五つの壺が静かに並んでいる。まだ、中身はただの豆と穀物の塊だ。しかし、これから数ヶ月、あるいは一年という時間をかけて、この中で微生物たちが懸命に働き、あの魔法の調味料を生み出してくれる。
私はその壺を、我が子のように愛おしい目で見つめた。
この壺の中には、未来の味が詰まっている。私の、そしてレオン様の食卓を、もっと豊かに、もっと楽しくしてくれる、希望の味が。
「待っていてくださいね、レオン様」
私は壺にそっと語りかけた。
「今度は、もっともっと、びっくりするくらい美味しいものを作ってあげますから」
静かな厨房で、私の新たな挑戦が始まった。完成の日を夢見て、ゆっくりと、しかし確実に、美味しくなれと願いを込めて。
私の日常は、驚くほど色鮮やかなものに変わっていた。朝、厨房に立つこと。彼の「腹が減った」という言葉を聞くこと。そして、空になったお皿を見ること。その一つ一つが、私の心を温かい光で満たしてくれた。
もう、私は孤独な人質ではなかった。私には待っていてくれる人がいる。私の料理を、心から美味しいと言ってくれる人がいる。その事実が、私に生きるための確かな力を与えてくれていた。
マルタとの関係も、少しずつ変化していた。相変わらず無表情で口数は少ないけれど、彼女は毎日、私が厨房に立つのを黙って見守ってくれるようになった。時には、どこからか珍しいハーブや、少しだけ新鮮な野菜を手に入れてきてくれることもあった。それは彼女なりの、不器用な優しさなのだと私は感じていた。
離宮での生活は、穏やかで満ち足りていた。
しかし、人間とは欲深い生き物らしい。心が満たされてくると、今度は別の欲求が顔を出す。
私の場合は、それが食欲だった。それも、極めて限定的な。
「……お醤油が、恋しい」
ある日の午後、厨房で一人、ぽつりと呟いてしまった。
レオン様のために作る朝食は、基本的にパンと卵、芋が中心だ。いわば、前世で言うところの洋食に近い。それはそれで美味しいし、作るのも楽しい。
だが、私の魂の半分は、やはり『佐藤葵』なのだ。日本人としての二十八年間の記憶が、私の味覚の根底には深く刻み込まれている。
炊き立ての白いご飯。湯気の立つお味噌汁。そして、あの香ばしくて旨味の塊のような、魔法の液体。
醤油。
あの味を思い出してしまうと、もう駄目だった。脳裏に、ありとあらゆる和食が洪水のように押し寄せてくる。
――照り焼きチキンの甘辛い香り。
――きつねうどんの、出汁と醤油が混じり合った優しいスープ。
――卵かけご飯に、たらりと一筋落とした時の、あの背徳的なまでの幸福感。
「うぅ……食べたい……」
私は調理台に突っ伏した。禁断症状とは、きっとこういうことを言うのだろう。ここ数日、私の頭の中は醤油と味噌のことでいっぱいだった。
レオン様にも、この味を教えてあげたい。彼がもし、初めて醤油の味を知ったら、どんな顔をするだろう。きっと、目を丸くして驚くに違いない。そして、いつものように「美味い」と、心の底から言ってくれるはずだ。
そう思うと、いてもたってもいられなくなった。
作れないだろうか。この世界で。
醤油と味噌を。
私は勢いよく顔を上げた。そうだ。諦めるのはまだ早い。私には、希望の種があるのだから。
私は急いで自室に戻ると、ベッドの下から母の形見の小箱を取り出した。蓋を開け、中に入っている小さな布袋を、祈るような気持ちで開く。
そこには、私が前世の記憶を頼りに選別しておいた、数種類の種が大切に保管されていた。
一つは、大豆によく似た、丸くて少し黄色味がかった豆の種。
もう一つは、米にそっくりな、白く艶のある穀物の種。
これがあれば、できるかもしれない。
醤油の主原料は大豆と小麦、塩。味噌は大豆と米、塩。小麦も米もないが、この穀物が代わりになってくれるはずだ。塩は、岩塩が手に入る。
問題は、発酵に不可欠な『麹菌』だった。前世の日本では、種麹として専門の店で売られていたものだ。もちろん、この世界にそんな便利なものはない。
「どうしよう……」
私は腕を組んで考え込んだ。麹菌は、カビの一種だ。自然界にも存在するはず。ならば、原始的な方法で培養するしかない。
前世で読んだ本の内容を、必死に思い出す。確か、蒸した米や麦を暖かい場所に置いておくと、自然に空気中の麹菌が付着して、繁殖することがあると書かれていたはずだ。成功するかどうかは、運次第。だが、やってみる価値はあった。
計画は決まった。私はすぐに行動を開始した。
まずは、マルタへの交渉だ。醸造には、それなりの大きさの壺や樽が必要になる。
私は厨房でマルタを捕まえると、真剣な顔で切り出した。
「マルタさん。お願いがあります。新しい保存食の研究をしたいのです」
「保存食、ですか?」
マルタは訝しげに眉をひそめた。
「はい。この国の冬は、とても厳しいと聞きました。冬の間も栄養を摂れるように、豆や穀物を発酵させて、長期保存できる調味料のようなものを作れないかと思いまして」
嘘ではない。醤油も味噌も、元々は保存食だ。そして、彼女を説得するには、これが一番の理由になると思った。
私の真剣な眼差しと、理にかなった説明に、マルタはしばらく考え込んでいた。彼女も、この国の厳しい冬と、それに伴う食糧事情の悪化は身に染みて分かっているのだろう。
「……分かりました。離宮の物置に、昔使われていた古い壺がいくつかあったはずです。使えるかどうかは分かりませんが、見てみましょう」
やった! 私は心の中でガッツポーズをした。
マルタに案内されて向かった物置は、厨房と同じくらい埃っぽかった。しかし、その奥に、私が必要としていたものが眠っていた。大小様々な大きさの、頑丈そうな陶器の壺。これを綺麗に洗って煮沸消毒すれば、十分に使えるだろう。
「ありがとうございます、マルタさん!」
「いえ……。もし本当に、冬を越すための助けになるのなら」
彼女はそう言って、少しだけ誇らしそうな顔をした。
道具は揃った。次は、いよいよ仕込みだ。
私はまず、母の形見の種の中から、穀物の種を少量だけ取り出し、離宮の庭の片隅にこっそりと蒔いた。アリアの体には魔力はない。しかし、前世の記憶からくる農業の知識が少しだけあった。それに、不思議なことに、私が世話をした植物は、なぜか驚くほど元気に育つのだ。
数週間後、穀物は見事に実った。量は少ないが、麹を作るには十分だった。
私は収穫した穀物を丁寧に脱穀し、大きな蒸し器でふっくらと蒸し上げる。厨房には、甘くてもちもちとした、まるで炊き立てのご飯のような香りが満ち満ちた。
蒸し上がった穀物を、清潔な木の板の上に広げて冷ます。そして、その上から濡らした麻の布をふわりとかけた。
「どうか、良い菌がついてくれますように……」
私は祈るような気持ちで、その板を厨房の隅の、比較的暖かくて薄暗い場所に置いた。ここから数日間、温度と湿度を管理しながら、麹菌が自然に生えてくるのを待つのだ。成功するかどうかは、神のみぞ知る。
麹もどきを仕込んでいる間に、醤油と味噌の本体となる豆の準備も進める。
これも庭で育てた豆を、たっぷりの水で一晩ふやかす。翌日、ふっくらと水を吸った豆を、大きな鍋で指で潰せるくらい柔らかくなるまで、コトコトと何時間も煮続けた。厨房は、大豆を煮る時特有の、甘く優しい香りでいっぱいになった。
レオン様は、このいつもと違う匂いに気づいたようだった。
「今日は、何を作っているんだ?」
朝食のパンを頬張りながら、彼は不思議そうに尋ねた。
「未来の、美味しいものですよ」
私が悪戯っぽく笑うと、彼は少しだけ不満そうな顔をしたが、それ以上は聞いてこなかった。彼も、私が厨房で何か新しいことに挑戦しているのを、面白がってくれているようだった。
そして、麹を仕込んでから三日目の朝。
私は恐る恐る、麻の布をめくった。
「……あ!」
思わず、小さな歓声が漏れた。
蒸した穀物の表面が、うっすらと白い綿のようなもので覆われている。所々に、緑色の胞子も見えた。これは、まさしく麹カビだ。変な色のカビや、嫌な匂いもない。大成功だった。
私の無自覚な力が、良い菌だけを呼び寄せてくれたのかもしれない。理由は分からないが、とにかく、最大の難関は突破した。
私は喜び勇んで、最後の工程に取り掛かった。
味噌用には、柔らかく煮た豆を熱いうちにすり潰し、塩と完成した麹もどきを混ぜ合わせる。それを丸めて団子状にし、壺の底に叩きつけるようにして詰めていく。空気を抜くことが、雑菌の繁殖を防ぐコツだ。
醤油用には、炒って砕いた穀物と麹もどき、そして煮た豆を混ぜ合わせ、濃い塩水と共に壺に入れる。
全ての仕込みが終わる頃には、私は汗だくになっていた。しかし、その顔は達成感で輝いていた。
厨房の片隅に、五つの壺が静かに並んでいる。まだ、中身はただの豆と穀物の塊だ。しかし、これから数ヶ月、あるいは一年という時間をかけて、この中で微生物たちが懸命に働き、あの魔法の調味料を生み出してくれる。
私はその壺を、我が子のように愛おしい目で見つめた。
この壺の中には、未来の味が詰まっている。私の、そしてレオン様の食卓を、もっと豊かに、もっと楽しくしてくれる、希望の味が。
「待っていてくださいね、レオン様」
私は壺にそっと語りかけた。
「今度は、もっともっと、びっくりするくらい美味しいものを作ってあげますから」
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