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第75話 二つの視点
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「世界を、無垢な状態に……」
カゲツの言葉を、俺は執務室で反芻していた。
神聖教団の教義は、あまりにも過激で、独善的だ。だが、その狂信的な思想が、なぜこれほどまでに多くの人々を引きつけるのか。俺には、まだ理解できなかった。
「何か、手掛かりはないか……」
俺は、部屋に集まった仲間たちに問いかけた。
「リリア、君は魔王として、何か古代の伝承や、世界の成り立ちについて、知っていることはないか? フィーネは、エルフの長い歴史の中で、似たような思想を持つ集団の話を聞いたことは?」
俺の問いに、二人は難しい顔で考え込んでいた。
最初に口を開いたのは、リリアだった。
「……魔族に伝わる創世神話は、人間のそれとは大きく異なる」
彼女は、静かに語り始めた。
「我らの神話では、世界は元々、混沌の中から生まれたとされている。光も闇も、善も悪も、全てが混じり合った、生命力に満ちた原初のスープ。そこから、神々や、我ら魔族、そして人間やエルフといった、多様な種族が生まれたのだ、と」
彼女の語る神話は、多様性を肯定するものだった。混沌は、破壊されるべきものではなく、生命の源そのものなのだ。
「故に、神聖教団の言う『浄化』など、我らにとっては、世界の成り立ちそのものを否定する、冒涜的な思想に他ならん。だが……」
リリアは、そこで言葉を区切った。
「人間の国では、全く違う神話が語られているのかもしれん。光の神が、闇と混沌を打ち払い、秩序ある世界を創造した、というような、な」
リリアの推測に、今度はアリアが反応した。
「あ……」
彼女は、何かを思い出したように、声を上げた。
「私が勇者として育てられた教会では、確かに、そう教わりました。世界は、唯一絶対の光の神様がお作りになったって。魔族は、その光に嫉妬した闇から生まれた、世界を乱す存在だって……」
それは、アリアがこれまで信じてきた、世界の真実だった。
しかし、彼女は続ける。その碧色の瞳には、迷いと、そして新たな気づきの光が宿っていた。
「でも、ここに来て、それが全てじゃないって分かりました。リリアさんや、魔族の人たちは、決して悪い人たちじゃない。……もしかしたら、神聖教団の人たちは、私が教わった物語の、その一部分だけを、すごく大きく、すごく過激にして、信じちゃってるのかもしれません」
リリアの、魔族としての視点。
アリアの、勇者としての視点。
二つの異なる視点が、神聖教団の思想の根源を、ぼんやりと浮かび上がらせていた。
彼らは、光と秩序を絶対視する、人間の一般的な創世神話を、極端に解釈し、狂信している集団なのではないか。そして、その教義にとって、多様な種族が共存するアストレアは、まさに混沌の象徴であり、許されざる「悪」なのだ。
「なるほどな……」
俺は、ようやく腑に落ちた気がした。
「奴らにとって、俺たちは、対話の余地すらない、根絶すべき敵なんだ」
「だとしたら、尚更、情報が足りなさすぎる」
リリアが、厳しい表情で言った。
「奴らの言う『浄化』の具体的な手段も、仮面の大司教の正体も、何も分かっていない。このままでは、ただ後手に回るだけだ」
その通りだった。
カゲツの斥候によって、敵の輪郭は見えてきた。だが、その核心に迫るには、もっと決定的な情報が必要だ。
それは、普通の斥候任務では手に入らないような、世界の秘密に関わる、何か。
俺の脳裏に、一つの可能性が浮かんだ。
それは、いつものように、あまりにも都合が良く、そしてあまりにも非現実的な、最後の希望。
「……もう一度だけ、試してみるか」
俺は立ち上がり、玉座の間へと向かった。
皆が、またか、という顔で俺を見ている。
だが、今の俺たちには、これしか道は残されていなかった。
俺は、ガチャのスクリーンを前に、強く、強く念じた。
(頼む! この世界の真実を、神聖教団の正体を、暴くためのヒントをくれ!)
俺は、全てを賭けて、ガチャを引いた。
カゲツの言葉を、俺は執務室で反芻していた。
神聖教団の教義は、あまりにも過激で、独善的だ。だが、その狂信的な思想が、なぜこれほどまでに多くの人々を引きつけるのか。俺には、まだ理解できなかった。
「何か、手掛かりはないか……」
俺は、部屋に集まった仲間たちに問いかけた。
「リリア、君は魔王として、何か古代の伝承や、世界の成り立ちについて、知っていることはないか? フィーネは、エルフの長い歴史の中で、似たような思想を持つ集団の話を聞いたことは?」
俺の問いに、二人は難しい顔で考え込んでいた。
最初に口を開いたのは、リリアだった。
「……魔族に伝わる創世神話は、人間のそれとは大きく異なる」
彼女は、静かに語り始めた。
「我らの神話では、世界は元々、混沌の中から生まれたとされている。光も闇も、善も悪も、全てが混じり合った、生命力に満ちた原初のスープ。そこから、神々や、我ら魔族、そして人間やエルフといった、多様な種族が生まれたのだ、と」
彼女の語る神話は、多様性を肯定するものだった。混沌は、破壊されるべきものではなく、生命の源そのものなのだ。
「故に、神聖教団の言う『浄化』など、我らにとっては、世界の成り立ちそのものを否定する、冒涜的な思想に他ならん。だが……」
リリアは、そこで言葉を区切った。
「人間の国では、全く違う神話が語られているのかもしれん。光の神が、闇と混沌を打ち払い、秩序ある世界を創造した、というような、な」
リリアの推測に、今度はアリアが反応した。
「あ……」
彼女は、何かを思い出したように、声を上げた。
「私が勇者として育てられた教会では、確かに、そう教わりました。世界は、唯一絶対の光の神様がお作りになったって。魔族は、その光に嫉妬した闇から生まれた、世界を乱す存在だって……」
それは、アリアがこれまで信じてきた、世界の真実だった。
しかし、彼女は続ける。その碧色の瞳には、迷いと、そして新たな気づきの光が宿っていた。
「でも、ここに来て、それが全てじゃないって分かりました。リリアさんや、魔族の人たちは、決して悪い人たちじゃない。……もしかしたら、神聖教団の人たちは、私が教わった物語の、その一部分だけを、すごく大きく、すごく過激にして、信じちゃってるのかもしれません」
リリアの、魔族としての視点。
アリアの、勇者としての視点。
二つの異なる視点が、神聖教団の思想の根源を、ぼんやりと浮かび上がらせていた。
彼らは、光と秩序を絶対視する、人間の一般的な創世神話を、極端に解釈し、狂信している集団なのではないか。そして、その教義にとって、多様な種族が共存するアストレアは、まさに混沌の象徴であり、許されざる「悪」なのだ。
「なるほどな……」
俺は、ようやく腑に落ちた気がした。
「奴らにとって、俺たちは、対話の余地すらない、根絶すべき敵なんだ」
「だとしたら、尚更、情報が足りなさすぎる」
リリアが、厳しい表情で言った。
「奴らの言う『浄化』の具体的な手段も、仮面の大司教の正体も、何も分かっていない。このままでは、ただ後手に回るだけだ」
その通りだった。
カゲツの斥候によって、敵の輪郭は見えてきた。だが、その核心に迫るには、もっと決定的な情報が必要だ。
それは、普通の斥候任務では手に入らないような、世界の秘密に関わる、何か。
俺の脳裏に、一つの可能性が浮かんだ。
それは、いつものように、あまりにも都合が良く、そしてあまりにも非現実的な、最後の希望。
「……もう一度だけ、試してみるか」
俺は立ち上がり、玉座の間へと向かった。
皆が、またか、という顔で俺を見ている。
だが、今の俺たちには、これしか道は残されていなかった。
俺は、ガチャのスクリーンを前に、強く、強く念じた。
(頼む! この世界の真実を、神聖教団の正体を、暴くためのヒントをくれ!)
俺は、全てを賭けて、ガチャを引いた。
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