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第79話 世界の「リセット」
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『世界は、自動的に「初期化」される』
古文書に記されたその一文が、俺たちの思考を凍りつかせた。
初期化――リセット。その言葉が持つ、恐ろしい響き。
「リセット、とは……どういう意味だ?」
俺の問いに、誰も答えることができない。
俺たちは、まるで何かに憑かれたかのように、古文書の次のページを、震える指でめくった。
そこには、さらに詳細な記述があった。
『世界のリセットは、天変地異という形で、実行される。全てを焼き尽くす大火、全てを飲み込む大洪水、あるいは、天から降り注ぐ無数の隕石。その方法は、神々の気まぐれによって変わる』
『リセットが実行されると、地上の文明は、そこに生きる全ての生命と共に、跡形もなく消え去る。大地は洗い流され、生命の記憶は白紙に戻される。そして、神々は、更地となった箱庭に、再び新たな駒を配置し、新しいゲームを始めるのだ』
「……なんだ、それ」
アリアが、か細い声で呟いた。
「じゃあ、私たちが生きてるこの世界も……いつか、全部、なくなっちゃうってこと……?」
「それだけではない」
リリアが、蒼白な顔で、古文書のある一点を指さした。
「見ろ、ユウト。リセットの条件が、書かれている」
『リセットの条件は、二つ。一つは、世界の「混沌」のパラメータが、一定値を超えた時。もう一つは、世界の「秩序」のパラメータが、一定値を超えた時』
『神々は、世界の均衡を測る天秤を創造した。混沌と秩序、どちらかに傾きすぎた時、天秤は崩れ、リセットのスイッチが押される。魔王が世界を闇に染めすぎても、勇者が光で世界を照らしすぎても、その結末は、等しく『無』なのだ』
その記述を読んだ瞬間、アリアの体が、ガクガクと震え始めた。
「……じゃあ、私が魔王を倒して、世界に平和を取り戻した、あの戦いは……」
彼女が成し遂げた、勇者としての最大の功績。
それは、世界の「秩序」のパラメータを、極限まで高める行為だった。
もし、彼女がもう少しだけ、その光の力を世界に広げていたら。
世界は、「秩序に傾きすぎた」という理由で、リセットされていたかもしれないのだ。
「そんな……。私は、世界を救ったんじゃなくて……滅ぼしかけてたって、こと……?」
アリアの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちる。彼女が信じてきた正義が、彼女の存在意義そのものが、今、完全に崩壊した。
俺は、崩れ落ちそうになるアリアの肩を、強く抱きとめた。
「違う! 君は、何も悪くない!」
だが、どんな慰めの言葉も、今の彼女には届かないだろう。
俺は、怒りで奥歯をギリ、と噛み締めた。
神々。その、あまりにも身勝手で、残酷な遊戯。
俺たちの命も、歴史も、喜びも、悲しみも、全てが、彼らにとっては、ただの盤上のゲームでしかないのか。
「……待ってください」
その時、これまで黙って古文書を読んでいたフィーネが、震える声で言った。
「王よ……。まだ、続きが。神聖教団についての、記述が……」
俺たちは、はっとしたように、フィーネが指さすページに目を向けた。
そこには、俺たちの最後の希望を打ち砕く、決定的な一文が記されていた。
『稀に、神々のゲームの盤上に、システムの『バグ』とも言うべき存在が生まれることがある。彼らは、神々の意図を超え、世界の理そのものを理解し、そして、それを自らの手で操ろうと望む』
『彼らは、神々の『リセット』の力を欲し、それを人為的に引き起こす方法を探求する。混沌と秩序のパラメータを、意図的に、そして極端に操作することによって』
『彼らこそ、神々の箱庭に巣食う、最大の『癌』。――後世の者は、彼らをこう呼ぶだろう。「神聖教団」と』
全てのピースが、繋がった。
神聖教団の目的。
それは、領土の拡大でも、富の略奪でもない。
彼らの目的は、この世界そのものを、意図的に「リセット」させることだったのだ。
古文書に記されたその一文が、俺たちの思考を凍りつかせた。
初期化――リセット。その言葉が持つ、恐ろしい響き。
「リセット、とは……どういう意味だ?」
俺の問いに、誰も答えることができない。
俺たちは、まるで何かに憑かれたかのように、古文書の次のページを、震える指でめくった。
そこには、さらに詳細な記述があった。
『世界のリセットは、天変地異という形で、実行される。全てを焼き尽くす大火、全てを飲み込む大洪水、あるいは、天から降り注ぐ無数の隕石。その方法は、神々の気まぐれによって変わる』
『リセットが実行されると、地上の文明は、そこに生きる全ての生命と共に、跡形もなく消え去る。大地は洗い流され、生命の記憶は白紙に戻される。そして、神々は、更地となった箱庭に、再び新たな駒を配置し、新しいゲームを始めるのだ』
「……なんだ、それ」
アリアが、か細い声で呟いた。
「じゃあ、私たちが生きてるこの世界も……いつか、全部、なくなっちゃうってこと……?」
「それだけではない」
リリアが、蒼白な顔で、古文書のある一点を指さした。
「見ろ、ユウト。リセットの条件が、書かれている」
『リセットの条件は、二つ。一つは、世界の「混沌」のパラメータが、一定値を超えた時。もう一つは、世界の「秩序」のパラメータが、一定値を超えた時』
『神々は、世界の均衡を測る天秤を創造した。混沌と秩序、どちらかに傾きすぎた時、天秤は崩れ、リセットのスイッチが押される。魔王が世界を闇に染めすぎても、勇者が光で世界を照らしすぎても、その結末は、等しく『無』なのだ』
その記述を読んだ瞬間、アリアの体が、ガクガクと震え始めた。
「……じゃあ、私が魔王を倒して、世界に平和を取り戻した、あの戦いは……」
彼女が成し遂げた、勇者としての最大の功績。
それは、世界の「秩序」のパラメータを、極限まで高める行為だった。
もし、彼女がもう少しだけ、その光の力を世界に広げていたら。
世界は、「秩序に傾きすぎた」という理由で、リセットされていたかもしれないのだ。
「そんな……。私は、世界を救ったんじゃなくて……滅ぼしかけてたって、こと……?」
アリアの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちる。彼女が信じてきた正義が、彼女の存在意義そのものが、今、完全に崩壊した。
俺は、崩れ落ちそうになるアリアの肩を、強く抱きとめた。
「違う! 君は、何も悪くない!」
だが、どんな慰めの言葉も、今の彼女には届かないだろう。
俺は、怒りで奥歯をギリ、と噛み締めた。
神々。その、あまりにも身勝手で、残酷な遊戯。
俺たちの命も、歴史も、喜びも、悲しみも、全てが、彼らにとっては、ただの盤上のゲームでしかないのか。
「……待ってください」
その時、これまで黙って古文書を読んでいたフィーネが、震える声で言った。
「王よ……。まだ、続きが。神聖教団についての、記述が……」
俺たちは、はっとしたように、フィーネが指さすページに目を向けた。
そこには、俺たちの最後の希望を打ち砕く、決定的な一文が記されていた。
『稀に、神々のゲームの盤上に、システムの『バグ』とも言うべき存在が生まれることがある。彼らは、神々の意図を超え、世界の理そのものを理解し、そして、それを自らの手で操ろうと望む』
『彼らは、神々の『リセット』の力を欲し、それを人為的に引き起こす方法を探求する。混沌と秩序のパラメータを、意図的に、そして極端に操作することによって』
『彼らこそ、神々の箱庭に巣食う、最大の『癌』。――後世の者は、彼らをこう呼ぶだろう。「神聖教団」と』
全てのピースが、繋がった。
神聖教団の目的。
それは、領土の拡大でも、富の略奪でもない。
彼らの目的は、この世界そのものを、意図的に「リセット」させることだったのだ。
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