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第88話 聖剣、再び
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アストレア連合軍の結成は、城に新たな活気をもたらした。
中庭では、テルミナの騎士たちが魔族の兵士たちに盾の陣形を教え、その隣では、獣人の戦士たちがフィーネの仕掛けた罠を潜り抜ける高速移動訓練を行っている。異なる文化と戦術が混ざり合い、互いに高め合っていく光景は、まさに連合軍の名にふさわしいものだった。
その中心で、誰よりも精力的に動き回っているのが、勇者アリアだった。
「そこ! 脇が甘いです!」「もっと踏み込んで!」
彼女は教官として、あらゆる部隊の訓練に顔を出し、その的確な指導力と、底なしの元気で、兵士たちの士気を高めていた。
彼女の姿は、まさしく連合軍の希望の象徴だった。
だが、俺は、そんな彼女の笑顔の裏に、わずかな翳りがあることに気づいていた。
夜、一人で中庭の隅に座り、月を見上げている彼女の姿を、何度か見かけたのだ。その手には、いつもドルガンが作った訓練用の剣が握られていたが、その表情はどこか物足りなげで、寂しそうだった。
「……アリアの奴、まだ気にしているのか」
執務室で、俺の呟きを聞いたリリアが、腕を組んで言った。
「聖剣、とか言っていたな。勇者が持つという、伝説の剣のことか」
「ああ。かつて魔王を倒した時に使った、彼女の魂とも言える剣だ。だが、その後の混乱の中で、どこかで失くしてしまったらしい」
リリアは、ふん、と鼻を鳴らした。
「武器一つで、あれほどの実力を持つ奴が、女々しいことだ。だが……確かに、今のあいつは、全盛期の力を完全には取り戻せていないようにも見える。魂の片割れを失ったような、そんな不安定さを感じる」
魔王である彼女には、勇者の本質が分かるのだろう。
アリアは、連合軍の希望の象徴だ。彼女が、迷いを抱えたままでは、兵士たちの士気にも影響するかもしれない。
そして何より、俺は、仲間である彼女に、心から笑っていてほしかった。
彼女が、真の勇者として、迷いなくその力を振るえるように。
俺に、何かできることはないか。
「……ユウト様」
俺の考えを読んでいたかのように、アリアが執務室に入ってきた。
「明日の訓練メニューの確認に来ました。……あれ? どうかしましたか、難しい顔をして」
「いや、何でもない。いつもご苦労さま、アリア」
俺は彼女に笑顔を向けながら、心の中で、一つの決意を固めていた。
都合が良すぎるかもしれない。非現実的かもしれない。
だが、この国では、そんな奇跡が、何度も起きてきたじゃないか。
その夜、俺は一人、玉座の間へと向かった。
スクリーンを呼び出し、今日分のガチャを引く。
狙いは、ただ一つ。
(頼む……! アリアに、彼女の魂を、返してやってくれ!)
俺の強い願いに、ガチャが応えた。
十個の光の玉が飛び出す。その中の一つが、これまでにない、神々しいまでの純粋な黄金の光を放っていた。
それは、特定の一個人の運命に、深く、強く干渉する時だけに見られる、奇跡の輝きだった。
他の九個の結果など、もう目に入らない。
黄金の光が弾け、スクリーンに現れたのは、一振りの剣のカードだった。
白銀の刀身に、黄金の柄。華美な装飾はないが、ただそこにあるだけで、邪を滅し、闇を払う、絶対的な聖の力を感じさせる、美しい剣。
【UR:聖剣エクスカリバー】
『勇者の魂にのみ応える、伝説の聖剣。かつて、一人の勇者がこの剣を手に、世界を救ったとされる。その所有者が真の覚悟を決めた時、剣は星の如き輝きを放ち、あらゆる悪を断ち切るだろう』
俺は、インベントリからその剣を、静かに取り出した。
謁見の間の空気が、浄化されていくような、清浄な気に満ちていく。
俺は、その聖剣を手に、アリアの部屋の扉を叩いた。
「アリア、いるか」
「はい、ユウト様。どうかなさいま……」
扉を開けたアリアは、俺が手にしている剣を見て、その言葉を失った。
彼女の碧色の瞳が、信じられないというように、大きく見開かれる。
その瞳から、ぽろり、ぽろりと、大粒の涙がこぼれ落ちた。
「……エクスカリバー……」
彼女は、震える声で、その名を呼んだ。まるで、離れ離れになっていた、最愛の相棒に再会したかのように。
彼女が聖剣に手を伸ばすと、剣は待ってましたとばかりに、眩い黄金の光を放ち、彼女の手の中に、すっと収まった。
その瞬間、アリアの全身から、黄金のオーラが、天を突くほどの勢いで溢れ出した。
勇者の、完全なる覚醒だった。
「ユウト様……! ありがとうございます……! ありがとうございます!」
アリアは、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、しかし、これまでで一番、幸せそうな笑顔で、俺に何度も頭を下げた。
「この剣で、今度こそ! 私、みんなの未来を、絶対に守ります!」
その誓いは、アストレア連合軍に、最強の「希望の光」が灯ったことを、高らかに告げていた。
中庭では、テルミナの騎士たちが魔族の兵士たちに盾の陣形を教え、その隣では、獣人の戦士たちがフィーネの仕掛けた罠を潜り抜ける高速移動訓練を行っている。異なる文化と戦術が混ざり合い、互いに高め合っていく光景は、まさに連合軍の名にふさわしいものだった。
その中心で、誰よりも精力的に動き回っているのが、勇者アリアだった。
「そこ! 脇が甘いです!」「もっと踏み込んで!」
彼女は教官として、あらゆる部隊の訓練に顔を出し、その的確な指導力と、底なしの元気で、兵士たちの士気を高めていた。
彼女の姿は、まさしく連合軍の希望の象徴だった。
だが、俺は、そんな彼女の笑顔の裏に、わずかな翳りがあることに気づいていた。
夜、一人で中庭の隅に座り、月を見上げている彼女の姿を、何度か見かけたのだ。その手には、いつもドルガンが作った訓練用の剣が握られていたが、その表情はどこか物足りなげで、寂しそうだった。
「……アリアの奴、まだ気にしているのか」
執務室で、俺の呟きを聞いたリリアが、腕を組んで言った。
「聖剣、とか言っていたな。勇者が持つという、伝説の剣のことか」
「ああ。かつて魔王を倒した時に使った、彼女の魂とも言える剣だ。だが、その後の混乱の中で、どこかで失くしてしまったらしい」
リリアは、ふん、と鼻を鳴らした。
「武器一つで、あれほどの実力を持つ奴が、女々しいことだ。だが……確かに、今のあいつは、全盛期の力を完全には取り戻せていないようにも見える。魂の片割れを失ったような、そんな不安定さを感じる」
魔王である彼女には、勇者の本質が分かるのだろう。
アリアは、連合軍の希望の象徴だ。彼女が、迷いを抱えたままでは、兵士たちの士気にも影響するかもしれない。
そして何より、俺は、仲間である彼女に、心から笑っていてほしかった。
彼女が、真の勇者として、迷いなくその力を振るえるように。
俺に、何かできることはないか。
「……ユウト様」
俺の考えを読んでいたかのように、アリアが執務室に入ってきた。
「明日の訓練メニューの確認に来ました。……あれ? どうかしましたか、難しい顔をして」
「いや、何でもない。いつもご苦労さま、アリア」
俺は彼女に笑顔を向けながら、心の中で、一つの決意を固めていた。
都合が良すぎるかもしれない。非現実的かもしれない。
だが、この国では、そんな奇跡が、何度も起きてきたじゃないか。
その夜、俺は一人、玉座の間へと向かった。
スクリーンを呼び出し、今日分のガチャを引く。
狙いは、ただ一つ。
(頼む……! アリアに、彼女の魂を、返してやってくれ!)
俺の強い願いに、ガチャが応えた。
十個の光の玉が飛び出す。その中の一つが、これまでにない、神々しいまでの純粋な黄金の光を放っていた。
それは、特定の一個人の運命に、深く、強く干渉する時だけに見られる、奇跡の輝きだった。
他の九個の結果など、もう目に入らない。
黄金の光が弾け、スクリーンに現れたのは、一振りの剣のカードだった。
白銀の刀身に、黄金の柄。華美な装飾はないが、ただそこにあるだけで、邪を滅し、闇を払う、絶対的な聖の力を感じさせる、美しい剣。
【UR:聖剣エクスカリバー】
『勇者の魂にのみ応える、伝説の聖剣。かつて、一人の勇者がこの剣を手に、世界を救ったとされる。その所有者が真の覚悟を決めた時、剣は星の如き輝きを放ち、あらゆる悪を断ち切るだろう』
俺は、インベントリからその剣を、静かに取り出した。
謁見の間の空気が、浄化されていくような、清浄な気に満ちていく。
俺は、その聖剣を手に、アリアの部屋の扉を叩いた。
「アリア、いるか」
「はい、ユウト様。どうかなさいま……」
扉を開けたアリアは、俺が手にしている剣を見て、その言葉を失った。
彼女の碧色の瞳が、信じられないというように、大きく見開かれる。
その瞳から、ぽろり、ぽろりと、大粒の涙がこぼれ落ちた。
「……エクスカリバー……」
彼女は、震える声で、その名を呼んだ。まるで、離れ離れになっていた、最愛の相棒に再会したかのように。
彼女が聖剣に手を伸ばすと、剣は待ってましたとばかりに、眩い黄金の光を放ち、彼女の手の中に、すっと収まった。
その瞬間、アリアの全身から、黄金のオーラが、天を突くほどの勢いで溢れ出した。
勇者の、完全なる覚醒だった。
「ユウト様……! ありがとうございます……! ありがとうございます!」
アリアは、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、しかし、これまでで一番、幸せそうな笑顔で、俺に何度も頭を下げた。
「この剣で、今度こそ! 私、みんなの未来を、絶対に守ります!」
その誓いは、アストレア連合軍に、最強の「希望の光」が灯ったことを、高らかに告げていた。
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