毎日無料10連ガチャスキルでスローライフのはずが、排出率0.0001%の【建国】スキルを引いてしまい、美少女魔王やポンコツ勇者が集まってきた

夏見ナイ

文字の大きさ
89 / 100

第89話 魔王の覚悟

しおりを挟む
聖剣エクスカリバーが、アリアの手に戻った。
そのニュースは、アストレア連合軍の兵士たちの間に、瞬く間に広まった。伝説の勇者が、伝説の聖剣を手にした。その事実は、兵士たちの士気を、これ以上ないほどに高揚させた。
「勇者様が聖剣を! これで百人力だ!」
「もはや、我らに敵はない!」
連合軍の空気は、楽観的なムードにさえ包まれていた。

だが、その熱狂の中心から、一人、静かに離れていく影があった。
魔王リリアだ。
俺は、城壁の上で一人、沈みゆく夕日を眺めている彼女の元へと向かった。

「どうした、リリア。一人で黄昏て」
「……ユウトか」

彼女は、振り返らずに言った。その横顔は、いつもより、どこか物憂げに見えた。
「別に。勇者崩れが、ようやくただの勇者に戻っただけのこと。浮かれている民の姿が、少し、目障りなだけだ」
「素直じゃないな。本当は、アリアのために喜んでるんだろ?」
「なっ! 誰が、あんな脳筋のために!」

リリアは顔を真っ赤にして否定するが、その動揺は隠せていなかった。
俺は、彼女の隣に立ち、同じように夕日を眺めた。

「……なあ、ユウト」
しばらくの沈黙の後、リリアが、ぽつりと呟いた。
「余は、この戦いで、役に立てるだろうか」
「なんだ、急に。当たり前だろ。お前の魔法がなきゃ、前回の戦いだって勝てなかった」

「だが、今度の敵は五万だ。それに、神聖教団には、不思議な力を持つ幹部がいるという」
リリアの瞳に、珍しく、不安の色が浮かんでいた。
「余の魔法は、広範囲の敵を殲滅するには有効だ。だが、それは、膨大な魔力を消費する。連発はできん。それに、もし、勇者のように、単独で戦局を覆せるほどの強大な敵が現れた場合……余一人では、守り切れんかもしれん」

それは、魔王としての、彼女の偽らざる本音だった。
アリアが、聖剣という絶対的な力を手にしたことで、彼女は逆に、自分の力の限界を感じているのかもしれない。
国を失った、かつての無力感が、彼女の心の奥底で、再び燻り始めている。

俺は、どう声をかけるべきか、迷った。
頑張れ、と言うのは簡単だ。だが、それは、何の解決にもならない。
彼女に必要なのは、気休めの言葉ではない。
本当の意味で、彼女が自信を取り戻せる、何か。

「……リリア」
俺は、意を決して、彼女に向き直った。
「俺は、お前のことを、ただの強力な魔法使いだとは思っていない」
「……何が言いたい」
「君は、魔王だ。かつて、一つの種族を束ね、国を治めていた、本物の王だ。その経験と、カリスマ、そして、民を思う心は、アリアにはない、君だけの力だ。魔法だけが、君の全てじゃない」

俺の言葉に、リリアは、ハッとしたように目を見開いた。

「この戦いは、力と力のぶつかり合いだけじゃない。知恵と、戦略、そして、兵士たちの心を一つにする、王としての器が試される。俺は、君に、その力を貸してほしいんだ。アリアが連合軍の『剣』なら、君は、この軍を導く『頭脳』であり、『心臓』だ」

俺は、彼女の紅い瞳を、まっすぐに見つめた。
「リリア。俺と一緒に、この連合軍を率いてくれ。俺の、隣で」

俺の言葉は、リリアの心に、深く、深く、響いたようだった。
彼女は、しばらくの間、何も言わずに、ただ俺の顔を見つめていた。
やがて、彼女の瞳から、不安の色が消え、いつもの、強く、気高い光が戻ってきた。

彼女は、ふい、と顔を背け、夕日に染まる空を見上げた。
そして、静かに、しかし、揺るぎない覚悟を込めて、言った。

「……ふん。仕方ないな。貴様が、そこまで言うのなら」

彼女は、ゆっくりと、自分の胸に手を当てた。
「よかろう、ユウト。この身に流れる、魔王の血と、その魂の全てを、お前に預けよう。余は、もはや、ただの元魔王ではない。アストレア連合軍の、軍師として、この戦いに、我が全てを捧げる」

その宣言と共に、リリアの身から、これまでとは比較にならないほどの、濃密で、そして気高い魔力が、オーラとなって立ち上った。
それは、破壊のための力ではない。
国を導き、民を守るための、王としての、覚悟の力だった。

勇者の覚醒に続き、魔王もまた、真の覚悟を決めた。
アストレア連合軍は、最強の「剣」と、最高の「頭脳」を、同時に手に入れたのだ。
決戦の日は、もう、すぐそこまで迫っていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

どうやら俺は、魔王を倒した英雄の両親より強いらしい。~オリハルコンを斬ってくっつけたら試験無しで王立学園に入学、いろいろやらかすハメに

試運転中
ファンタジー
山を割るほどに剣を極めたおとん「ケン」と、ケガなど何でも治してしまうおかん「セイ」。 そんな二人に山で育てられた息子「ケイ」は、15歳の大人の仲間入りを機に、王都の学園へと入学する。 両親の素性すらも知らず、その血を受け継いだ自分が、どれほど常軌を逸しているかもわからず。 気心の知れた仲間と、困ったり楽しんだりする学園生活のはずが…… 主人公最強だけど、何かがおかしい!? ちょっぴり異色な異世界学園ファンタジー。

処理中です...