追放された”お荷物”の俺がいないと、聖女も賢者も剣聖も役立たずらしい

夏見ナイ

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第96話 英雄の凱旋と乞食たち

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数日後。
王都アークライトは歓喜と祝福の光に満ち溢れていた。

魔将ヴラドの完全な消滅。そして、奇跡の復活を遂げた救国の英雄リアム。
二つの奇跡は人々の心を長きにわたる絶望から完全に解き放ち、王国はかつてないほどの祝祭ムードに包まれていた。

その夜、王宮では俺たちの功績を称える最大級の祝勝会が催されていた。

シャンデリアが煌めく広大なホールには、王国の全貴族と騎士団の上層部が集結している。テーブルの上には最高級の料理と美酒が並び、宮廷楽団が奏でる優雅な音楽がその場を華やかに彩っていた。

そのあまりにも場違いな空間の中心に、俺たちはいた。

俺の身体はセレスティアの献身的な治癒と仲間たちの看病のおかげで、驚異的な速さで回復していた。俺がなぜ蘇ったのか、その明確な理由はソフィアでさえも解明できなかった。彼女の仮説によれば、「リアムさんのスキルがヴラドの魂のエネルギーさえも魔力に変換し、その膨大な魔力が停止した心臓を再び動かしたのかもしれない」とのことだったが、真偽は定かではない。

俺自身にも何が起こったのかは分からなかった。ただ目が覚めた時、泣きじゃくる仲間たちの顔に囲まれて、ああ、自分は生きているのだと実感しただけだった。

「救国の英雄、リアム殿、並びにエデンの皆様のご入場!」

侍従の甲高い声と共に俺たちがホールに足を踏み入れると、割れんばかりの拍手と歓声が俺たちを包み込んだ。貴族たちが我先にと俺たちの元へ駆け寄り、賞賛と媚びへつらいの言葉を次々と浴びせてくる。

「おお、リアム様! そのご武勇、神話の英雄のごとし!」
「聖女セレスティア様、そのお美しさはまさに女神の化身!」
「エルフの姫君よ、我が息子との縁談などいかがかな?」

そのあまりにも現金な手のひら返しに、俺はただ苦笑いを浮かべるしかなかった。ルナリエルは言い寄ってくる貴族たちを「失せなさい、下郎」と一喝し、アイリスは珍しい料理の数々に目を輝かせている。

やがて国王が玉座から立ち上がり、俺たちの元へと歩み寄ってきた。

「リアム殿。重ね重ね、礼を言う。そなたたちがいなければ、今頃この国はなかったであろう」

国王は俺の肩に手を置き、最大の賛辞と、そして過去の過ちに対する心からの謝罪を改めて口にした。俺を追放した勇者パーティーを国の英雄として持て囃し、その裏にあった真実に目を向けようとしなかった自らの不明を。

俺は、その謝罪を静かに受け止めた。過去はもういい。俺が望むのは未来だけだ。

祝宴が最高潮に達したその時だった。

ホールの巨大な扉が乱暴に開かれた。
衛兵の制止を振り切り、その場に三人のあまりにも場違いな者たちが転がり込んできた。

その姿は乞食そのものだった。
着ている服はボロボロで悪臭を放っている。髪は伸び放題で、その顔は絶望と飢えで醜く歪んでいた。

ホールは一瞬で静まり返った。誰もがその汚らわしい侵入者たちを眉をひそめて見つめている。

だが、俺はその三人の顔を見間違えるはずがなかった。

勇者だった男、アレク。
聖女だった女、イリーナ。
賢者だった男、マルス。

彼らは俺が復活したという噂と、この祝勝会が開かれるという情報をどこかで聞きつけたのだろう。最後の蜘蛛の糸にすがるように、この場所へ這い上がってきたのだ。

彼らの瞳が人込みの中から俺の姿を捉えた。
その瞬間、彼らの顔が驚愕と、信じられないものを見るかのような、そして僅かな、しかし確かな『希望』の色に染まった。

「……り、リアム……?」

アレクのひび割れた唇から掠れた声が漏れた。

次の瞬間、彼らはまるで示し合わせたかのように俺の元へと這うようにして駆け寄ってきた。

そして彼らは、ホールにいる全ての貴族たちが見守る前で俺の足元にひれ伏した。

「リアム……! 生きていたのか……! おお、神よ……!」

アレクは俺のブーツにその汚れた額を擦り付け、声を上げて泣きじゃくった。

「すまなかった……! 俺が愚かだった! お前がいなければ俺は何もできない、ただの無力な男だったんだ! 頼む、リアム! もう一度俺たちのパーティーに戻ってきてはくれないか! お前の力があれば俺たちはまた……!」

それはあまりにも醜く、そして惨めな懇願だった。

「そうですわ、リアムさん!」

イリーナもまた涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔で俺にすがりついた。

「わたくしが悪うございました! あなた様のその偉大な力に気づかず、あなた様を侮辱して……! ですが、わたくし、もう改心いたしました! これからはあなたのそばで誠心誠意お仕えいたします! だから、どうか、もう一度わたくしに聖女の力を……!」

マルスだけは何も言わなかった。
だが彼はフードの奥でその身体を小刻みに震わせていた。プライドの高い彼がこの場で頭を下げている。その事実が何よりも彼の絶望の深さを物語っていた。

ホールは死のような静寂に包まれた。
誰もがこの異様な光景に固唾を呑んで、成り行きを見守っている。

俺の仲間たちは俺の後ろで静かに、しかし絶対零度の冷たい怒りをその瞳に宿して、その三人の元英雄たちを見下ろしていた。

俺はどうするのか。
かつて自分を追放し、地獄へと突き落とした者たちにどのような言葉をかけるのか。

全ての視線が俺一人に集中していた。
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