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第11話:「死んで耐性を得る」という発想
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ホブゴブリンとの戦いで得た教訓は、圧倒的な筋力と俊敏性があっても、防御力が追いつかなければ一瞬で殺されるということだった。ゴブリン相手なら素手で十分だったが、ホブゴブリンの剛力の前では、いくらステータスが上がっていても、受ける攻撃の質が変われば耐えきれない。
二度目の死から復活した俺は、すぐに廃砦へと戻り、何度もホブゴブリンに挑み続けた。
三度目の挑戦。二対一の戦闘で、俺は攻撃を受けながらも、その衝撃に耐える感覚を体に叩き込んだ。結果、全身打撲で死亡。耐久力はさらに上昇。
四度目の挑戦。防御に特化し、棍棒の攻撃をギリギリで受け流す練習をする。だが、油断した一瞬、頭部を砕かれ死亡。脳震盪耐性がわずかに上昇した気がした。
五度目、六度目、七度目……。
ホブゴブリンの持つパワーと、彼らが振るう巨大な棍棒の攻撃パターンは、俺の体に打撃耐性を刻み込んでいく。数十回の死を繰り返すうちに、俺の耐久力は100を超え、ホブゴブリンの棍棒攻撃も、致命傷に至る前に回避できるようになっていった。
俺の体は、この廃砦で鋼のように鍛え上げられつつあった。
しかし、この廃砦での効率も、やがて限界を迎えるだろう。ホブゴブリンの攻撃で死ぬたびに、ステータスの上昇幅がわずかに小さくなっているのを感じていた。次の強化ステップへ進む必要がある。
俺は一度、ホブゴブリンの巣から離れ、街道から少し外れた森の中を探索していた。次の「死に場所」を探すためだ。
森の奥深く、鬱蒼とした木々が茂る場所に、不気味な気配を感じた。
蜘蛛だ。しかし、普通の蜘蛛ではない。体長は犬ほどもあり、全身が黒く光る体毛に覆われている。その腹部は異様なほどに膨れ上がっており、見るからに毒々しい。
「ポイズン・スパイダー、か」
その魔物は、冒険者ギルドでもDランク相当の危険な存在だ。強力な毒を持ち、その糸に絡まれば、解毒薬なしでは即座に死に至る。
俺は試しに、ロングソードを構えてポイズン・スパイダーに近づいた。
その動きはホブゴブリンほどではないが、俊敏だ。俺が間合いに入った瞬間、蜘蛛は口から濃い緑色の液体を吐き出した。
俺は咄嗟に回避したが、その液体の一部が左足のブーツに付着した。ジュウ、と音を立ててブーツの革が溶け始める。
「強力な酸性か、それとも毒か」
俺は即座にロングソードを構え直したが、その判断は遅すぎた。
蜘蛛は鋭い牙を剥き出しにして俺の足に噛み付いた。激痛。そして、毒が血管に入り込んだと分かる、全身が痺れていく悪寒が走った。
「ぐっ……!」
意識が遠のく。体中が熱くなり、激しい嘔吐感が襲ってくる。毒の回りが早い。
俺は自らの体に流れ込む毒に抵抗することなく、そのまま意識を手放した。
宿のベッドで目覚める。全身の痙攣は収まっていたが、心臓は不規則なリズムを刻んでいる。
俺はすぐにステータスウィンドウを開いた。
【カイル・アッシュフィールド】
レベル:1
HP:20/20
MP:5/5
筋力:115
耐久力:103
敏捷性:130
魔力:5
スキル:やりなおし
**毒耐性:微(+5)**
「……これだ!」
俺は興奮に打ち震えた。ステータスだけでなく、スキル耐性も引き継いでいる!
死亡した原因が「毒」であったため、復活後のステータスウィンドウには『毒耐性:微(+5)』という見慣れない項目が追加されていた。これは、毒によるダメージや効果をわずかに軽減する能力だろう。
今まで、俺は物理攻撃で死ぬことを繰り返してきた。そのおかげで、打撃耐性はかなり高くなっているはずだ。しかし、ステータスウィンドウに表示されるのは「毒耐性」のような特殊なケースだけなのだろう。
「死んで耐性を得る」という、新たな発想。
これは、俺の戦術を根底から覆す発見だった。強敵に挑む際、弱点を克服するための手段が、手に入ったのだ。
毒に殺されれば、毒耐性が上がる。炎に焼かれれば、炎熱耐性が上がる。雷に感電すれば、麻痺耐性が上がる。
つまり、どんな致命的な攻撃であっても、俺にとっては克服すべき「課題」でしかない。
俺はすぐに森へと引き返した。ポイズン・スパイダーの巣は、最高のトレーニング場だ。
二度目の遭遇。俺は蜘蛛の攻撃を回避することなく、自ら毒牙に噛み付かれた。
全身が痺れ、激しい苦痛の中で死を迎える。
復活。毒耐性が「小(+10)」に上昇。
三度目の挑戦。毒の回りが、少し遅くなっているのを感じる。俺は死ぬ前に、蜘蛛の糸に絡まることも意識した。全身を縛られた状態で、毒を受けて死亡。
復活。毒耐性が「中(+20)」に、そして「糸拘束耐性:微」が追加されていた。
俺は、貪欲に毒を受け続けた。痙攣と嘔吐を繰り返し、心臓が止まる苦痛を何度も何度も味わった。だが、その度に、俺の肉体は毒への適応能力を高めていった。
十回の死を繰り返した後、俺は再びポイズン・スパイダーの巣へと現れた。
蜘蛛は、俺の足に毒牙を突き立てる。
チクリ、とした軽い痛み。体内に毒が流れ込むのを感じる。しかし、痺れや激しい悪寒は、もはや感じない。
ステータスウィンドウを確認する。
毒耐性:高(+80)
俺は笑った。毒耐性が高まった今、蜘蛛の毒はただの水同然だ。
「もう、お前たちでは俺を殺せない」
俺は素手で、蜘蛛の硬い甲殻を叩き割った。一撃で、その命を絶つ。
その後、俺は巣に残る全てのポイズン・スパイダーを殲滅した。その過程で、全身に毒液を浴びることもあったが、肌が爛れることはない。
俺の体は、毒を克服した。
ポイズン・スパイダーの討伐を終え、俺はギルドへと戻る。討伐依頼を提出し、報酬を受け取った後、俺は次なる目的地を定めた。
ホブゴブリンでも、ポイズン・スパイダーでも、もう満足できない。
「次は、もっと大きく、もっと強い獲物が必要だ」
俺の視線が留まったのは、ギルドの壁に貼られた、一枚の危険度の高い依頼書だった。
『緊急討伐依頼:オークの森の調査及び討伐。オークの異常増殖を確認。リーダー個体、オークジェネラル出現の可能性あり。推奨ランク:B』
オークの森。
俺がかつて、アランたちと共に恐る恐る進んでいた、あのグレイヴ大森林の奥地。
俺のステータスと耐性をさらに飛躍的に向上させるには、複数の強力な物理攻撃に加え、集団戦術を経験させてくれるオーク集団こそが最適だろう。そして、オークジェネラル。奴の力で死ねば、さらなるステータス上昇が見込める。
俺は、迷うことなくその依頼書を剥がし取った。
今度は、囮としてではなく。荷物持ちとしてでもなく。
一人の戦闘者として、俺はあの森へと帰還する。
二度目の死から復活した俺は、すぐに廃砦へと戻り、何度もホブゴブリンに挑み続けた。
三度目の挑戦。二対一の戦闘で、俺は攻撃を受けながらも、その衝撃に耐える感覚を体に叩き込んだ。結果、全身打撲で死亡。耐久力はさらに上昇。
四度目の挑戦。防御に特化し、棍棒の攻撃をギリギリで受け流す練習をする。だが、油断した一瞬、頭部を砕かれ死亡。脳震盪耐性がわずかに上昇した気がした。
五度目、六度目、七度目……。
ホブゴブリンの持つパワーと、彼らが振るう巨大な棍棒の攻撃パターンは、俺の体に打撃耐性を刻み込んでいく。数十回の死を繰り返すうちに、俺の耐久力は100を超え、ホブゴブリンの棍棒攻撃も、致命傷に至る前に回避できるようになっていった。
俺の体は、この廃砦で鋼のように鍛え上げられつつあった。
しかし、この廃砦での効率も、やがて限界を迎えるだろう。ホブゴブリンの攻撃で死ぬたびに、ステータスの上昇幅がわずかに小さくなっているのを感じていた。次の強化ステップへ進む必要がある。
俺は一度、ホブゴブリンの巣から離れ、街道から少し外れた森の中を探索していた。次の「死に場所」を探すためだ。
森の奥深く、鬱蒼とした木々が茂る場所に、不気味な気配を感じた。
蜘蛛だ。しかし、普通の蜘蛛ではない。体長は犬ほどもあり、全身が黒く光る体毛に覆われている。その腹部は異様なほどに膨れ上がっており、見るからに毒々しい。
「ポイズン・スパイダー、か」
その魔物は、冒険者ギルドでもDランク相当の危険な存在だ。強力な毒を持ち、その糸に絡まれば、解毒薬なしでは即座に死に至る。
俺は試しに、ロングソードを構えてポイズン・スパイダーに近づいた。
その動きはホブゴブリンほどではないが、俊敏だ。俺が間合いに入った瞬間、蜘蛛は口から濃い緑色の液体を吐き出した。
俺は咄嗟に回避したが、その液体の一部が左足のブーツに付着した。ジュウ、と音を立ててブーツの革が溶け始める。
「強力な酸性か、それとも毒か」
俺は即座にロングソードを構え直したが、その判断は遅すぎた。
蜘蛛は鋭い牙を剥き出しにして俺の足に噛み付いた。激痛。そして、毒が血管に入り込んだと分かる、全身が痺れていく悪寒が走った。
「ぐっ……!」
意識が遠のく。体中が熱くなり、激しい嘔吐感が襲ってくる。毒の回りが早い。
俺は自らの体に流れ込む毒に抵抗することなく、そのまま意識を手放した。
宿のベッドで目覚める。全身の痙攣は収まっていたが、心臓は不規則なリズムを刻んでいる。
俺はすぐにステータスウィンドウを開いた。
【カイル・アッシュフィールド】
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耐久力:103
敏捷性:130
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スキル:やりなおし
**毒耐性:微(+5)**
「……これだ!」
俺は興奮に打ち震えた。ステータスだけでなく、スキル耐性も引き継いでいる!
死亡した原因が「毒」であったため、復活後のステータスウィンドウには『毒耐性:微(+5)』という見慣れない項目が追加されていた。これは、毒によるダメージや効果をわずかに軽減する能力だろう。
今まで、俺は物理攻撃で死ぬことを繰り返してきた。そのおかげで、打撃耐性はかなり高くなっているはずだ。しかし、ステータスウィンドウに表示されるのは「毒耐性」のような特殊なケースだけなのだろう。
「死んで耐性を得る」という、新たな発想。
これは、俺の戦術を根底から覆す発見だった。強敵に挑む際、弱点を克服するための手段が、手に入ったのだ。
毒に殺されれば、毒耐性が上がる。炎に焼かれれば、炎熱耐性が上がる。雷に感電すれば、麻痺耐性が上がる。
つまり、どんな致命的な攻撃であっても、俺にとっては克服すべき「課題」でしかない。
俺はすぐに森へと引き返した。ポイズン・スパイダーの巣は、最高のトレーニング場だ。
二度目の遭遇。俺は蜘蛛の攻撃を回避することなく、自ら毒牙に噛み付かれた。
全身が痺れ、激しい苦痛の中で死を迎える。
復活。毒耐性が「小(+10)」に上昇。
三度目の挑戦。毒の回りが、少し遅くなっているのを感じる。俺は死ぬ前に、蜘蛛の糸に絡まることも意識した。全身を縛られた状態で、毒を受けて死亡。
復活。毒耐性が「中(+20)」に、そして「糸拘束耐性:微」が追加されていた。
俺は、貪欲に毒を受け続けた。痙攣と嘔吐を繰り返し、心臓が止まる苦痛を何度も何度も味わった。だが、その度に、俺の肉体は毒への適応能力を高めていった。
十回の死を繰り返した後、俺は再びポイズン・スパイダーの巣へと現れた。
蜘蛛は、俺の足に毒牙を突き立てる。
チクリ、とした軽い痛み。体内に毒が流れ込むのを感じる。しかし、痺れや激しい悪寒は、もはや感じない。
ステータスウィンドウを確認する。
毒耐性:高(+80)
俺は笑った。毒耐性が高まった今、蜘蛛の毒はただの水同然だ。
「もう、お前たちでは俺を殺せない」
俺は素手で、蜘蛛の硬い甲殻を叩き割った。一撃で、その命を絶つ。
その後、俺は巣に残る全てのポイズン・スパイダーを殲滅した。その過程で、全身に毒液を浴びることもあったが、肌が爛れることはない。
俺の体は、毒を克服した。
ポイズン・スパイダーの討伐を終え、俺はギルドへと戻る。討伐依頼を提出し、報酬を受け取った後、俺は次なる目的地を定めた。
ホブゴブリンでも、ポイズン・スパイダーでも、もう満足できない。
「次は、もっと大きく、もっと強い獲物が必要だ」
俺の視線が留まったのは、ギルドの壁に貼られた、一枚の危険度の高い依頼書だった。
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一人の戦闘者として、俺はあの森へと帰還する。
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