レベル1の死に戻り英雄譚 ~追放された俺の【やりなおし】スキルは、死ぬほど強くなる~

夏見ナイ

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第82話:門番、闇の勇者

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奈落の城へと続く一本道は、まるで地獄への誘いのようだった。両脇を流れる溶岩の川が俺たちの顔を不気味な赤色に照らし出す。空を覆う雷雲からは時折、黒い稲妻が走り大地を揺るGAした。

城に近づくにつれて俺が感じていた忌まわしい気配は、ますます強く明確になっていく。間違いない。アランだ。あいつはここにいる。

やがて俺たちは城の巨大な正門の前にたどり着いた。高さ数十メートルにも及ぶ黒鉄の門。その表面には苦悶に歪む無数の顔が彫り込まれており、見る者に言い知れぬ恐怖を与える。

そして、その門の前には一つの人影が立っていた。
漆黒の、堕天使の翼を模したかのような禍々しい鎧。その手にはかつて光を放っていたはずの、今や輝きを完全に失った聖剣が握られている。

「……アラン……君……?」

エリナが信じられないといった様子で、か細く呟いた。
その声に漆黒の騎士はゆっくりとこちらを振り返った。兜の隙間から覗くその瞳は、もはや人間のものではなかった。憎悪と狂気に満ちた赤黒い光。

「……久しぶりだな、カイル。そしてエリナ」

兜の下から聞こえてきた声は確かにアランのものだった。だが、その声質は地獄の底から響いてくるかのように冷たく歪んでいた。

「アラン! なぜお前がここにいる! その姿は一体……!」

ヴォルフが驚きと怒りの入り混じった声で叫んだ。
アランは、その問いにくつくつと喉の奥で笑った。

「見ての通りだ。俺は生まれ変わったのさ。光に裏切られた哀れな勇者ではない。偉大なる魔王様の血を賜り、絶対的な力を手に入れた『闇の勇者』としてな」
「魔王の血……!?」

シルフィリアが驚愕に目を見開く。
なんと愚かな選択をしたのだ。彼はカイルへの憎しみのあまり、自ら人であることを捨て世界の敵に魂を売ったというのか。

「アラン君! やめて! そんなことをしても何も生まれないわ! お願いだから目を覚まして!」

エリナが涙ながらに訴えかける。だが、その声はもはや彼には届かない。

「目を覚ます? 俺はかつてないほどに冴え渡っているさ、エリナ。お前が、あの愚かな勇者ではなくこの俺こそが真の力を持つにふさわしい存在だと、すぐに理解させてやる」

アランはエリナに粘着質な視線を向けると、ゆっくりと聖剣を構えた。

「そしてカイル。貴様との決着も、今日ここでつける。貴様が手に入れたもの全てを、俺がこの手で奪い破壊し尽くしてやる!」

彼の全身から黒いオーラが噴き出した。それは俺がアイギスで感じた獣将軍ガルムのそれに匹敵する、強大で邪悪な気配だった。

だが、それだけではなかった。
アランの背後から、ぞろぞろと二人の人影が現れた。

一人は大盾を構えた巨漢。
もう一人は杖を握る派手な女魔術師。

「ゴードン……! レナ……!」

エリナが驚きの声を上げる。
そこにいたのはアランと同じく「暁の剣」の元メンバーだったゴードンとレナだった。
だが、彼らの姿もまた異様だった。その瞳は虚ろで生気が感じられない。そしてその体からはアランと同じ禍々しい闇のオーラが立ち上っていた。

「……久しぶりだな、エリナ。お前もアラン様の力の前にひれ伏すことになるぜ」

ゴードンが感情のない声で言った。

「そうよ。私たちを捨ててあんなレベル1についたのが、どれほど愚かな選択だったのか後悔させてあげるわ」

レナもまた人形のように無機質な声で、憎しみの言葉を吐いた。
彼らもまたアランによって、闇の力に染められてしまったのだ。

「……貴様、仲間たちにまでなんてことを……!」

ヴォルフが怒りに声を震わせる。
アランはそんなヴォルフを鼻で笑った。

「仲間? こいつらは俺の『手駒』だ。そうだ、カイル。貴様にも教えてやろう。仲間などという脆くて不確かなものに縋っている限り、真の力は手に入らないということをな!」

アラン、ゴードン、レナ。
かつての「暁の剣」が闇に染まり、俺たちの前に立ちはだかる。
それはあまりにも歪で、悲しい再会だった。

俺は仲間たちへと向き直った。

「……ここは俺に任せろ」
「カイル!?」
「これは俺が始めた因縁だ。俺が終わらせる」

俺の瞳には揺るぎない決意が宿っていた。
シルフィリアとヴォルフは俺のその覚悟を悟り、何も言わずに頷いた。
エリナだけが不安そうな顔で俺を見つめている。

「……大丈夫だ。必ず終わらせてくる」

俺は彼女にだけそう優しく囁くと、一歩前に出た。
そして無限の聖剣インフィティを、静かに抜き放つ。

「……来い、アラン。お前の歪んだ物語を俺がここで終わらせてやる」

俺の言葉を合図に、アランが獣のような雄叫びを上げた。
闇の勇者と化したかつての幼馴染。
因縁の対決の火蓋が今、奈落の城門の前で切って落とされた。
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