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第二十八話:空からの脅威と「投石」カウンター
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「終わりだ、地質学者! 空の上からでは、貴様にできることは何もあるまい!」
《赤蠍団》のリーダーが、勝利を確信した声で叫ぶ。
彼らは、飛行アイテムを駆使し、僕たちの頭上で包囲陣を形成していた。その数は、リーダーを含めて五名。残った戦力の全てだ。彼らの目には、もはや地面でうごめく僕たちが、絶好の的としか映っていないだろう。
「ゴードン、ミモリ、伏せろ!」
リーダーの号令一下、空中の団員たちが、一斉に矢や魔法を放ち始めた。それは、回避不能の死の雨。
「させるかァ!」
ゴードンは、僕とミモリさんをかばうように、巨大な盾【イグニス・ウォール】を頭上に掲げた。ガガガガッ、と凄まじい音がして、盾の表面が火花を散らす。彼の驚異的な防御力をもってしても、全方位からの攻撃を完全に防ぎきることはできず、僕たちのHPがじわじわと削られていく。
「ヒールレイン!」
ミモリさんが、必死に回復魔法を詠唱するが、攻撃の勢いはそれを上回っていた。このままでは、ジリ貧だ。
「ははは! どうした、反逆者! 手も足も出ないだろう!」
リーダーが、高笑いを響かせる。彼の言う通り、僕の【地形編集】スキルは、空中の敵には届かない。僕の最大の武器が、完全に無力化されている。
まさに、絶体絶命。誰もが、そう思っただろう。
だが、僕は、静かに空を見上げていた。その瞳には、焦りの色など微塵も浮かんでいない。
「ゴードンさん、ミモリさん。もう少しだけ、耐えてください。今、お返しの準備をしますから」
「リク!? 何か手があるのか!?」
「ええ。少し、大がかりになりますが」
僕は、自分の足元の石畳に、そっと手を触れた。そして、ユニークスキルを発動させる。
狙うは、この路地裏を形成する、石畳の岩盤そのもの。
「ユニークスキル【地形編集】――《造成》!」
僕がスキルを発動すると、僕の周囲の石畳が、グググ……と音を立てて、隆起し始めた。
「な、なんだ!? また地面を……!?」
リーダーが、訝しげな声を上げる。だが、今度の変形は、これまでとは全く違っていた。
隆起した岩盤は、ただ盛り上がるだけではない。それは、まるで粘土細工のように形を変え、僕の目の前に、巨大な「球体」を創り出していったのだ。直径、約二メートル。緻密な花崗岩でできた、完全な球体。それは、まるで古代の巨人が使う砲弾のようだった。
「岩の玉……? そんなものを作って、どうするつもりだ?」
リーダーは、僕の意図が理解できず、眉をひそめている。
だが、僕の「造成」は、まだ終わらない。
次に僕が創り出したのは、その巨大な岩球を乗せるための、湾曲した「受け皿」と、その受け皿を、シーソーのように跳ね上げるための、長大な「アーム」だった。
僕が創り上げたもの。それは、現代の兵器ではない。もっと、原始的で、しかし、城壁すらも打ち砕く、古の知恵の結晶。
――巨大な、「投石器(カタパルト)」だった。
「まさか……!」
リーダーが、ついに僕の狙いに気づいた時には、もう遅かった。
「ゴードンさん! 今です!」
「おうよ!」
僕は、投石器のアームの先端に、ゴードンを誘導した。そして、彼に、その巨体と、スキルを使って、全力で地面を踏みつけるように指示する。
「ヘヴィ・スタンプ!」
ゴードンが渾身の力でアームの端を踏みつけると、シーソーの原理で、反対側の「受け皿」が、凄まじい勢いで跳ね上がった。
その上に乗っていた、直径二メートルの巨大な岩球が、放物線を描いて、夜空へと撃ち出される。
ヒュオォォォ!
風を切り裂く、凄まじい音。
それは、もはや単なる「投石」ではない。ビルをも砕く、巨大な質量兵器。
予想だにしなかった「対空攻撃」に、空中の《赤蠍団》は、完全に虚を突かれた。
「う、うわああああ!」
「避けろ! 避けろォ!」
彼らは、慌てて散開しようとする。だが、巨大な岩球は、彼らの密集した隊形の中央へと、寸分の狂いもなく吸い込まれていった。
ゴッ!
鈍い、肉が潰れるような音。
一人の団員が、岩球に直撃され、光の粒子となって消滅した。
だが、悲劇はそれだけでは終わらない。
ドゴォォォン!
岩球は、リーダーのすぐそばを掠め、彼がいた空域を通過すると、そのまま放物線の頂点を越え、重力に従って、今度は敵の後方にいた魔法使いたちの頭上へと落下していった。
「ぐはっ!?」
「ぎゃああ!」
なすすべもなく、さらに二人の団員が、落下してきた岩球に押し潰され、地面へと叩きつけられていった。
たった一撃。たった一発の「投石」が、空の包囲網を、完膚なきまでに粉砕したのだ。
「ひっ……!」
生き残ったのは、リーダーと、あと一人だけ。
リーダーの顔からは、完全に血の気が失せていた。勝利の確信は、絶望へと変わり、彼の心を支配していた。
「ば、化け物め……! 大地だけでなく、空まで支配する気か……!」
戦意は、完全に喪失していた。
「た、退却だ! 全員、撤退しろ!」
彼は、情けない悲鳴を上げると、残った一人を連れて、算を乱して逃走していく。その背中は、もはやPKギルドの威厳など微塵も感じさせない、ただの敗残兵のそれだった。
後に残されたのは、静寂と、僕が創り出した巨大な投石器、そして、地面にめり込んだ岩球だけだった。
「……リク。お前、本当に人間か?」
ゴードンが、信じられないものを見る目で、僕が創り出した投石器を見つめている。
「投石器を、スキルで一から作り出す奴なんて、聞いたことも見たこともねえぞ」
「これも、地質学の応用です。岩石の力学と、構造力学を組み合わせれば、こういうことも可能なんです」
「もう、何でもありだな、お前の地質学……」
ミモリさんは、僕たちの無事を確認すると、ほっとしたように胸をなでおろした。
「でも、よかったです。これで、もう追っては来ませんね」
僕たちは、PKギルド《赤蠍団》を、返り討ちにした。
それも、彼らが最も得意とするはずの、奇襲と対人戦闘において、完膚なきまでに。
この一件は、すぐに、新たな噂となって、サーバー中を駆け巡ることになるだろう。
僕は、夜空を見上げた。
カイザーの、次なる一手は何だろうか。彼は、この結果をどう受け止めるのだろうか。
僕たちの戦いは、まだ始まったばかりだ。だが、僕はこの時、確信していた。
僕と、この頼もしい仲間たちがいれば、どんな困難も、どんな権力も、乗り越えていける、と。
大地が、僕たちの足元にある限り。
《赤蠍団》のリーダーが、勝利を確信した声で叫ぶ。
彼らは、飛行アイテムを駆使し、僕たちの頭上で包囲陣を形成していた。その数は、リーダーを含めて五名。残った戦力の全てだ。彼らの目には、もはや地面でうごめく僕たちが、絶好の的としか映っていないだろう。
「ゴードン、ミモリ、伏せろ!」
リーダーの号令一下、空中の団員たちが、一斉に矢や魔法を放ち始めた。それは、回避不能の死の雨。
「させるかァ!」
ゴードンは、僕とミモリさんをかばうように、巨大な盾【イグニス・ウォール】を頭上に掲げた。ガガガガッ、と凄まじい音がして、盾の表面が火花を散らす。彼の驚異的な防御力をもってしても、全方位からの攻撃を完全に防ぎきることはできず、僕たちのHPがじわじわと削られていく。
「ヒールレイン!」
ミモリさんが、必死に回復魔法を詠唱するが、攻撃の勢いはそれを上回っていた。このままでは、ジリ貧だ。
「ははは! どうした、反逆者! 手も足も出ないだろう!」
リーダーが、高笑いを響かせる。彼の言う通り、僕の【地形編集】スキルは、空中の敵には届かない。僕の最大の武器が、完全に無力化されている。
まさに、絶体絶命。誰もが、そう思っただろう。
だが、僕は、静かに空を見上げていた。その瞳には、焦りの色など微塵も浮かんでいない。
「ゴードンさん、ミモリさん。もう少しだけ、耐えてください。今、お返しの準備をしますから」
「リク!? 何か手があるのか!?」
「ええ。少し、大がかりになりますが」
僕は、自分の足元の石畳に、そっと手を触れた。そして、ユニークスキルを発動させる。
狙うは、この路地裏を形成する、石畳の岩盤そのもの。
「ユニークスキル【地形編集】――《造成》!」
僕がスキルを発動すると、僕の周囲の石畳が、グググ……と音を立てて、隆起し始めた。
「な、なんだ!? また地面を……!?」
リーダーが、訝しげな声を上げる。だが、今度の変形は、これまでとは全く違っていた。
隆起した岩盤は、ただ盛り上がるだけではない。それは、まるで粘土細工のように形を変え、僕の目の前に、巨大な「球体」を創り出していったのだ。直径、約二メートル。緻密な花崗岩でできた、完全な球体。それは、まるで古代の巨人が使う砲弾のようだった。
「岩の玉……? そんなものを作って、どうするつもりだ?」
リーダーは、僕の意図が理解できず、眉をひそめている。
だが、僕の「造成」は、まだ終わらない。
次に僕が創り出したのは、その巨大な岩球を乗せるための、湾曲した「受け皿」と、その受け皿を、シーソーのように跳ね上げるための、長大な「アーム」だった。
僕が創り上げたもの。それは、現代の兵器ではない。もっと、原始的で、しかし、城壁すらも打ち砕く、古の知恵の結晶。
――巨大な、「投石器(カタパルト)」だった。
「まさか……!」
リーダーが、ついに僕の狙いに気づいた時には、もう遅かった。
「ゴードンさん! 今です!」
「おうよ!」
僕は、投石器のアームの先端に、ゴードンを誘導した。そして、彼に、その巨体と、スキルを使って、全力で地面を踏みつけるように指示する。
「ヘヴィ・スタンプ!」
ゴードンが渾身の力でアームの端を踏みつけると、シーソーの原理で、反対側の「受け皿」が、凄まじい勢いで跳ね上がった。
その上に乗っていた、直径二メートルの巨大な岩球が、放物線を描いて、夜空へと撃ち出される。
ヒュオォォォ!
風を切り裂く、凄まじい音。
それは、もはや単なる「投石」ではない。ビルをも砕く、巨大な質量兵器。
予想だにしなかった「対空攻撃」に、空中の《赤蠍団》は、完全に虚を突かれた。
「う、うわああああ!」
「避けろ! 避けろォ!」
彼らは、慌てて散開しようとする。だが、巨大な岩球は、彼らの密集した隊形の中央へと、寸分の狂いもなく吸い込まれていった。
ゴッ!
鈍い、肉が潰れるような音。
一人の団員が、岩球に直撃され、光の粒子となって消滅した。
だが、悲劇はそれだけでは終わらない。
ドゴォォォン!
岩球は、リーダーのすぐそばを掠め、彼がいた空域を通過すると、そのまま放物線の頂点を越え、重力に従って、今度は敵の後方にいた魔法使いたちの頭上へと落下していった。
「ぐはっ!?」
「ぎゃああ!」
なすすべもなく、さらに二人の団員が、落下してきた岩球に押し潰され、地面へと叩きつけられていった。
たった一撃。たった一発の「投石」が、空の包囲網を、完膚なきまでに粉砕したのだ。
「ひっ……!」
生き残ったのは、リーダーと、あと一人だけ。
リーダーの顔からは、完全に血の気が失せていた。勝利の確信は、絶望へと変わり、彼の心を支配していた。
「ば、化け物め……! 大地だけでなく、空まで支配する気か……!」
戦意は、完全に喪失していた。
「た、退却だ! 全員、撤退しろ!」
彼は、情けない悲鳴を上げると、残った一人を連れて、算を乱して逃走していく。その背中は、もはやPKギルドの威厳など微塵も感じさせない、ただの敗残兵のそれだった。
後に残されたのは、静寂と、僕が創り出した巨大な投石器、そして、地面にめり込んだ岩球だけだった。
「……リク。お前、本当に人間か?」
ゴードンが、信じられないものを見る目で、僕が創り出した投石器を見つめている。
「投石器を、スキルで一から作り出す奴なんて、聞いたことも見たこともねえぞ」
「これも、地質学の応用です。岩石の力学と、構造力学を組み合わせれば、こういうことも可能なんです」
「もう、何でもありだな、お前の地質学……」
ミモリさんは、僕たちの無事を確認すると、ほっとしたように胸をなでおろした。
「でも、よかったです。これで、もう追っては来ませんね」
僕たちは、PKギルド《赤蠍団》を、返り討ちにした。
それも、彼らが最も得意とするはずの、奇襲と対人戦闘において、完膚なきまでに。
この一件は、すぐに、新たな噂となって、サーバー中を駆け巡ることになるだろう。
僕は、夜空を見上げた。
カイザーの、次なる一手は何だろうか。彼は、この結果をどう受け止めるのだろうか。
僕たちの戦いは、まだ始まったばかりだ。だが、僕はこの時、確信していた。
僕と、この頼もしい仲間たちがいれば、どんな困難も、どんな権力も、乗り越えていける、と。
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