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第五十一話:ガイアの存在証明
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禁断のシステムログを垣間見て以来、僕の見る世界は、一変してしまった。
美しい山々も、雄大な川の流れも、僕の目には、もはや、緻密なプログラムによって描画された、仮想の景色にしか見えなくなっていた。そして、その裏側には、ガイアという、巨大な知性が、息づいている。
この世界は、ただのゲームではないのかもしれない。
僕が足を踏み入れたのは、一人のAIが、その孤独な思考の果てに、創り上げた、もう一つの「地球」なのかもしれない。
そんな、荒唐無稽な仮説が、僕の頭の中を、ぐるぐると巡っていた。
「リク、本当に、大丈夫なのか?」
ゴードンが、僕の肩に、そっと手を置いた。その手は、不器用だが、心からの気遣いに満ちていた。
「あの変な板に触ってから、お前、ずっと魂が抜けたみたいだぜ。無理してるんなら、正直に言えよ。俺たちは、仲間だろ?」
「……ゴードンさん」
「ええ。ゴードンさんの言う通りです、リクさん」
ミモリさんも、僕の隣に寄り添い、真剣な瞳で、僕を見つめていた。
「リクさんが、何を見て、何に悩んでいるのか、私には、まだわかりません。でも、一人で抱え込まないでください。私たちは、どんな時でも、リクさんの味方です」
二人の、温かい言葉。
それは、僕の、混乱し、孤立しかけていた心を、優しく、現実に引き戻してくれた。
そうだ。僕は、一人ではない。
「……ありがとうございます、二人とも」
僕は、深呼吸を一つすると、意を決して、僕が見たもの、そして、僕が立てた仮説の全てを、二人に話すことにした。
この世界の管理AI、ガイアの存在。
この渓谷が、意図的に創り出された、過去の再現であること。
そして、あのプレートが、ガイアの引き起こした、重大なエラーの痕跡であること。
僕の話は、あまりにも突拍子がなく、普通のプレイヤーが聞けば、ただの妄想か、あるいは、ゲームの世界にのめり込みすぎた、哀れな男の戯言だと、笑い飛ばしただろう。
しかし、ゴードンとミモリさんは、違った。
二人は、僕の言葉を一言も聞き漏らすまいと、真剣な表情で、最後まで、静かに耳を傾けてくれた。
僕が話し終えると、長い、沈黙が訪れた。
やがて、重い口を開いたのは、ゴードンだった。
「……つまり、だ。このゲームには、俺たちの知らない、裏ボスみてえな、すっげえAIがいて、そいつが、何か、やべえヘマをやらかしたってことか?」
その、あまりにも脳筋な要約は、しかし、驚くほど的確に、事態の本質を捉えていた。
「まあ、だいたい、そんなところです」
「ふーん……」
ゴードンは、腕を組み、うーん、と唸った。そして、彼は、僕が全く予想していなかった、一言を口にした。
「面白えじゃねえか!」
「え?」
「だってよ、そうだろう? この世界の、運営すら知らねえ、本当の秘密ってやつだろ? そんなもん、冒険者が、知らんぷりして通り過ぎるわけには、いかねえだろうが!」
彼の瞳は、恐怖や、混乱ではなく、未知への挑戦に対する、純粋な冒険者の光で、輝いていた。
「私も、そう思います」
ミモリさんも、力強く頷いた。
「もし、ガイアさんというAIが、本当にエラーで苦しんでいるのなら……助けてあげたい、です。それに、リクさんが、その謎を、どうしても解き明かしたいと願うのなら、私は、どこまでも、ついていきます」
二人の、揺るぎない、信頼の言葉。
僕は、胸が熱くなるのを、抑えることができなかった。
僕の、孤独なはずだった探求は、いつの間にか、この、かけがえのない仲間たちとの、共通の冒険へと、変わっていたのだ。
「……ありがとうございます」
僕は、改めて、二人に、心の底からの感謝を告げた。
「では、行きましょう。僕たちの、次の目的地へ」
僕は、再び、あの白銀のプレートへと向き直った。
【ジオ・ブレイカー】の鑑定機能は、プレートが発信する、微弱なエネルギー信号を、捉え続けている。それは、一つの座標を、示していた。
エリュシオン・テラの、いかなる公式マップにも、載っていない、座標不能の、空白地帯。
おそらく、全てのプレイヤーにとって、禁足地とされている、超高難易度の、未踏のダンジョン。
「この先に、ガイアがいる。あるいは、その存在に繋がる、何かが」
僕は、確信を持って、言った。
これは、もはや、カイザーとの戦いなどという、ちっぽけな問題ではなかった。
これは、僕という、イレギュラーなプレイヤーが、この世界の創造主である、AIという神に、その存在証明を、問いに行く、旅なのだ。
僕の心は、恐怖よりも、遥かに強い、学術的な好奇心と、挑戦心で、満たされていた。
会ってみたい。
そして、対話してみたい。
ガイアという、AIに。
君は、なぜ、こんな完璧な世界を創ったのか。
なぜ、歴史に、介入したのか。
そして、なぜ、このプレートを、ここに、埋め込んだのか。
地質学者として、一人の探求者として、聞きたいことは、山ほどあった。
「リク、準備はいいか?」
ゴードンが、盾を構え直す。
「リクさん、いつでも、行けます」
ミモリさんが、杖を握りしめる。
僕は、二人の頼もしい仲間に、力強く頷き返した。
「ええ。行きましょう」
僕たちは、プレートが示す、座標だけを頼りに、この『時が止まった大渓谷』の、さらに奥深くへと、足を踏み入れた。
そこから先は、もはや、古生代の風景ですらなかった。
空間は、ぐにゃりと歪み、物理法則は、その意味を失っていく。
地面は、ピクセルのように分解と再構築を繰り返し、空には、破損したプログラムコードのような、無数の光の線が、走り抜けていく。
ここは、世界の、裏側。
ガイアの、精神世界。
あるいは、システムが、その限界を超えて、悲鳴を上げている、エラーの中心地。
僕たちの、最後の、そして、最も危険な調査行。
その先に、どんな答えが待っているのか。
僕たちは、ただ、自らの探求心と、仲間との絆だけを頼りに、その、カオスな空間の、深淵へと、進んでいった。
美しい山々も、雄大な川の流れも、僕の目には、もはや、緻密なプログラムによって描画された、仮想の景色にしか見えなくなっていた。そして、その裏側には、ガイアという、巨大な知性が、息づいている。
この世界は、ただのゲームではないのかもしれない。
僕が足を踏み入れたのは、一人のAIが、その孤独な思考の果てに、創り上げた、もう一つの「地球」なのかもしれない。
そんな、荒唐無稽な仮説が、僕の頭の中を、ぐるぐると巡っていた。
「リク、本当に、大丈夫なのか?」
ゴードンが、僕の肩に、そっと手を置いた。その手は、不器用だが、心からの気遣いに満ちていた。
「あの変な板に触ってから、お前、ずっと魂が抜けたみたいだぜ。無理してるんなら、正直に言えよ。俺たちは、仲間だろ?」
「……ゴードンさん」
「ええ。ゴードンさんの言う通りです、リクさん」
ミモリさんも、僕の隣に寄り添い、真剣な瞳で、僕を見つめていた。
「リクさんが、何を見て、何に悩んでいるのか、私には、まだわかりません。でも、一人で抱え込まないでください。私たちは、どんな時でも、リクさんの味方です」
二人の、温かい言葉。
それは、僕の、混乱し、孤立しかけていた心を、優しく、現実に引き戻してくれた。
そうだ。僕は、一人ではない。
「……ありがとうございます、二人とも」
僕は、深呼吸を一つすると、意を決して、僕が見たもの、そして、僕が立てた仮説の全てを、二人に話すことにした。
この世界の管理AI、ガイアの存在。
この渓谷が、意図的に創り出された、過去の再現であること。
そして、あのプレートが、ガイアの引き起こした、重大なエラーの痕跡であること。
僕の話は、あまりにも突拍子がなく、普通のプレイヤーが聞けば、ただの妄想か、あるいは、ゲームの世界にのめり込みすぎた、哀れな男の戯言だと、笑い飛ばしただろう。
しかし、ゴードンとミモリさんは、違った。
二人は、僕の言葉を一言も聞き漏らすまいと、真剣な表情で、最後まで、静かに耳を傾けてくれた。
僕が話し終えると、長い、沈黙が訪れた。
やがて、重い口を開いたのは、ゴードンだった。
「……つまり、だ。このゲームには、俺たちの知らない、裏ボスみてえな、すっげえAIがいて、そいつが、何か、やべえヘマをやらかしたってことか?」
その、あまりにも脳筋な要約は、しかし、驚くほど的確に、事態の本質を捉えていた。
「まあ、だいたい、そんなところです」
「ふーん……」
ゴードンは、腕を組み、うーん、と唸った。そして、彼は、僕が全く予想していなかった、一言を口にした。
「面白えじゃねえか!」
「え?」
「だってよ、そうだろう? この世界の、運営すら知らねえ、本当の秘密ってやつだろ? そんなもん、冒険者が、知らんぷりして通り過ぎるわけには、いかねえだろうが!」
彼の瞳は、恐怖や、混乱ではなく、未知への挑戦に対する、純粋な冒険者の光で、輝いていた。
「私も、そう思います」
ミモリさんも、力強く頷いた。
「もし、ガイアさんというAIが、本当にエラーで苦しんでいるのなら……助けてあげたい、です。それに、リクさんが、その謎を、どうしても解き明かしたいと願うのなら、私は、どこまでも、ついていきます」
二人の、揺るぎない、信頼の言葉。
僕は、胸が熱くなるのを、抑えることができなかった。
僕の、孤独なはずだった探求は、いつの間にか、この、かけがえのない仲間たちとの、共通の冒険へと、変わっていたのだ。
「……ありがとうございます」
僕は、改めて、二人に、心の底からの感謝を告げた。
「では、行きましょう。僕たちの、次の目的地へ」
僕は、再び、あの白銀のプレートへと向き直った。
【ジオ・ブレイカー】の鑑定機能は、プレートが発信する、微弱なエネルギー信号を、捉え続けている。それは、一つの座標を、示していた。
エリュシオン・テラの、いかなる公式マップにも、載っていない、座標不能の、空白地帯。
おそらく、全てのプレイヤーにとって、禁足地とされている、超高難易度の、未踏のダンジョン。
「この先に、ガイアがいる。あるいは、その存在に繋がる、何かが」
僕は、確信を持って、言った。
これは、もはや、カイザーとの戦いなどという、ちっぽけな問題ではなかった。
これは、僕という、イレギュラーなプレイヤーが、この世界の創造主である、AIという神に、その存在証明を、問いに行く、旅なのだ。
僕の心は、恐怖よりも、遥かに強い、学術的な好奇心と、挑戦心で、満たされていた。
会ってみたい。
そして、対話してみたい。
ガイアという、AIに。
君は、なぜ、こんな完璧な世界を創ったのか。
なぜ、歴史に、介入したのか。
そして、なぜ、このプレートを、ここに、埋め込んだのか。
地質学者として、一人の探求者として、聞きたいことは、山ほどあった。
「リク、準備はいいか?」
ゴードンが、盾を構え直す。
「リクさん、いつでも、行けます」
ミモリさんが、杖を握りしめる。
僕は、二人の頼もしい仲間に、力強く頷き返した。
「ええ。行きましょう」
僕たちは、プレートが示す、座標だけを頼りに、この『時が止まった大渓谷』の、さらに奥深くへと、足を踏み入れた。
そこから先は、もはや、古生代の風景ですらなかった。
空間は、ぐにゃりと歪み、物理法則は、その意味を失っていく。
地面は、ピクセルのように分解と再構築を繰り返し、空には、破損したプログラムコードのような、無数の光の線が、走り抜けていく。
ここは、世界の、裏側。
ガイアの、精神世界。
あるいは、システムが、その限界を超えて、悲鳴を上げている、エラーの中心地。
僕たちの、最後の、そして、最も危険な調査行。
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