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第五十八話:アヴァロンへの進軍
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決戦の日は、来た。
その日のエリュシオン・テラの空は、まるで、これから始まる壮絶な戦いを予感させるかのように、鉛色の雲に、低く覆われていた。
《アヴァロン》が浮かぶ、大陸中央部の、広大な盆地。
その、地上に、エリュシオン・テラの歴史が始まって以来、最大規模となるであろう、プレイヤーの軍勢が集結していた。
『反王権連合』。
その数、実に、五千。
僕が拠点とする《クラフトヘйム》の生産職ギルドを中核に、これまで《絶対王権》の圧政に苦しめられてきた、大小様々なギルド、そして、自由を愛する、名もなきソロプレイヤーたち。彼らが、僕の掲げた旗の下に、その垣根を越えて、集結したのだ。
大地を埋め尽くす、無数のプレイヤーたち。
そして、空を見上げれば、そこには、ドワーフ族が誇る飛行船や、エルフ族が操る巨大な魔鳥、そして、錬金術師たちが作り上げた、気球部隊。数百にも及ぶ、空の戦力が、雲を突き、整然と、編隊を組んでいた。
僕もまた、その軍勢の、最前線に立っていた。
僕の隣には、鉄壁の盾【イグニス・ウォール】を構えたゴードン。そして、その反対側には、聖なる杖【ミスリル・カドゥケウス】を握りしめ、凛とした表情を浮かべる、ミモリさん。
僕たち三人の背後には、バルカンをはじめとする、歴戦のドワーフ戦士団。そして、連合に参加した、各ギルドの精鋭たちが、静かに、その時を待っていた。
誰もが、緊張に、固く口を閉ざしている。
聞こえるのは、風の音と、鎧が擦れ合う、かすかな金属音だけ。
全ての視線が、遥か上空、雲の切れ間に、その威容を現す、一つの目標へと、注がれていた。
白亜の城、《アヴァロン》。
絶対王者カイザーが君臨する、難攻不落の、天空要塞。
その、静寂を、破ったのは、天から降り注ぐ、一つの声だった。
それは、増幅魔法によって、戦場全体に響き渡る、カイザーの声。
その声は、絶対的な自信と、僕たちに対する、底知れない侮蔑に、満ち溢れていた。
「――集まったか、烏合の衆よ」
「俺の支配に、異を唱える、愚かな虫ケラども。そして……その虫ケラを率いる、ただ一人の『反逆者』、リク」
カイザーの声は、続ける。
「貴様が、俺の想像を、幾度となく超えてきたことは、認めよう。だが、それも、今日で終わりだ。貴様らが、今、立っている場所こそが、貴様らの、墓場となる」
「この《アヴァロン》は、俺の、絶対的な王権の象徴。貴様らのような、寄せ集めの反乱軍ごときに、その城壁に、傷一つ、付けることはできん」
それは、最終通告であり、そして、僕個人への、挑発だった。
カイザーは、僕たちが、彼の城の浮遊原理に気づき、地上のエーテル源を狙っていることなど、露ほども、気づいていない。彼は、僕たちが、正面から、無謀な城攻めを仕掛けてくると、信じきっているのだ。
僕の、思う壺だった。
僕は、僕の前に立つ、五千の連合軍を、振り返った。
誰もが、不安と、緊張で、顔をこわばらせている。
僕は、僕にできる、ただ一つの方法で、彼らの心を、一つにする必要があった。
僕は、増幅の魔道具を借りると、僕の声を、戦場に響かせた。
それは、王の演説のような、カリスマに満ちたものではない。
ただ、静かな、一人の学者の、言葉だった。
「――皆さん。聞いてください。目の前の城は、確かに、強大に見えるでしょう」
「ですが、どんなに巨大な山も、どんなに強固な岩盤も。その成り立ちを、その構造を、正しく理解すれば、必ず、そこに『弱点』が存在します」
「僕は、その弱点を、知っています。そして、その弱点を、打ち砕く方法も、知っています」
僕は、一度、言葉を切った。
そして、全ての仲間たちの、瞳を見つめ、告げた。
「僕が、道を、創ります。どうか、僕を、そして、僕の知識を、信じてください!」
その、僕の、精一杯の言葉。
それに、応えたのは、ゴードンだった。
彼は、天に向かって、巨大なタワーシールドを、高々と、突き上げた。
「当たり前だぜ、リク! 俺たちは、お前を信じる! だから、ここまで来たんだろうが!」
その、ゴードンの、魂の叫びが、連合軍の、固く凍りついていた心を、溶かした。
一人、また一人と、武器を、天に突き上げる。
やがて、それは、地を揺るがすほどの、巨大な、鬨の声となって、天の《アヴァロン》へと、突き刺さっていった。
「うおおおおおおお!」
僕は、その雄叫びを背に、再び、前を向いた。
そして、僕の、全ての仲間たちに、最後の号令を下す。
「――『反王権連合』! 総員、進軍開始!」
「目標は、二つ! 陽動部隊は、天空要塞《アヴァロン》! そして、僕たち本隊は、南方の、エーテル源を目指す!」
「今、ここに、僕たちの、自由を懸けた、最後の戦いを、始める!」
僕の、その言葉を、合図に。
地上の軍勢が、空の船団が、一斉に、動き出した。
エリュシオン・テラの歴史上、最大規模の総力戦。その火蓋が、今、静かに、そして、確かに、切って落とされた。
王の、傲慢な城を、地に堕とすために。
その日のエリュシオン・テラの空は、まるで、これから始まる壮絶な戦いを予感させるかのように、鉛色の雲に、低く覆われていた。
《アヴァロン》が浮かぶ、大陸中央部の、広大な盆地。
その、地上に、エリュシオン・テラの歴史が始まって以来、最大規模となるであろう、プレイヤーの軍勢が集結していた。
『反王権連合』。
その数、実に、五千。
僕が拠点とする《クラフトヘйム》の生産職ギルドを中核に、これまで《絶対王権》の圧政に苦しめられてきた、大小様々なギルド、そして、自由を愛する、名もなきソロプレイヤーたち。彼らが、僕の掲げた旗の下に、その垣根を越えて、集結したのだ。
大地を埋め尽くす、無数のプレイヤーたち。
そして、空を見上げれば、そこには、ドワーフ族が誇る飛行船や、エルフ族が操る巨大な魔鳥、そして、錬金術師たちが作り上げた、気球部隊。数百にも及ぶ、空の戦力が、雲を突き、整然と、編隊を組んでいた。
僕もまた、その軍勢の、最前線に立っていた。
僕の隣には、鉄壁の盾【イグニス・ウォール】を構えたゴードン。そして、その反対側には、聖なる杖【ミスリル・カドゥケウス】を握りしめ、凛とした表情を浮かべる、ミモリさん。
僕たち三人の背後には、バルカンをはじめとする、歴戦のドワーフ戦士団。そして、連合に参加した、各ギルドの精鋭たちが、静かに、その時を待っていた。
誰もが、緊張に、固く口を閉ざしている。
聞こえるのは、風の音と、鎧が擦れ合う、かすかな金属音だけ。
全ての視線が、遥か上空、雲の切れ間に、その威容を現す、一つの目標へと、注がれていた。
白亜の城、《アヴァロン》。
絶対王者カイザーが君臨する、難攻不落の、天空要塞。
その、静寂を、破ったのは、天から降り注ぐ、一つの声だった。
それは、増幅魔法によって、戦場全体に響き渡る、カイザーの声。
その声は、絶対的な自信と、僕たちに対する、底知れない侮蔑に、満ち溢れていた。
「――集まったか、烏合の衆よ」
「俺の支配に、異を唱える、愚かな虫ケラども。そして……その虫ケラを率いる、ただ一人の『反逆者』、リク」
カイザーの声は、続ける。
「貴様が、俺の想像を、幾度となく超えてきたことは、認めよう。だが、それも、今日で終わりだ。貴様らが、今、立っている場所こそが、貴様らの、墓場となる」
「この《アヴァロン》は、俺の、絶対的な王権の象徴。貴様らのような、寄せ集めの反乱軍ごときに、その城壁に、傷一つ、付けることはできん」
それは、最終通告であり、そして、僕個人への、挑発だった。
カイザーは、僕たちが、彼の城の浮遊原理に気づき、地上のエーテル源を狙っていることなど、露ほども、気づいていない。彼は、僕たちが、正面から、無謀な城攻めを仕掛けてくると、信じきっているのだ。
僕の、思う壺だった。
僕は、僕の前に立つ、五千の連合軍を、振り返った。
誰もが、不安と、緊張で、顔をこわばらせている。
僕は、僕にできる、ただ一つの方法で、彼らの心を、一つにする必要があった。
僕は、増幅の魔道具を借りると、僕の声を、戦場に響かせた。
それは、王の演説のような、カリスマに満ちたものではない。
ただ、静かな、一人の学者の、言葉だった。
「――皆さん。聞いてください。目の前の城は、確かに、強大に見えるでしょう」
「ですが、どんなに巨大な山も、どんなに強固な岩盤も。その成り立ちを、その構造を、正しく理解すれば、必ず、そこに『弱点』が存在します」
「僕は、その弱点を、知っています。そして、その弱点を、打ち砕く方法も、知っています」
僕は、一度、言葉を切った。
そして、全ての仲間たちの、瞳を見つめ、告げた。
「僕が、道を、創ります。どうか、僕を、そして、僕の知識を、信じてください!」
その、僕の、精一杯の言葉。
それに、応えたのは、ゴードンだった。
彼は、天に向かって、巨大なタワーシールドを、高々と、突き上げた。
「当たり前だぜ、リク! 俺たちは、お前を信じる! だから、ここまで来たんだろうが!」
その、ゴードンの、魂の叫びが、連合軍の、固く凍りついていた心を、溶かした。
一人、また一人と、武器を、天に突き上げる。
やがて、それは、地を揺るがすほどの、巨大な、鬨の声となって、天の《アヴァロン》へと、突き刺さっていった。
「うおおおおおおお!」
僕は、その雄叫びを背に、再び、前を向いた。
そして、僕の、全ての仲間たちに、最後の号令を下す。
「――『反王権連合』! 総員、進軍開始!」
「目標は、二つ! 陽動部隊は、天空要塞《アヴァロン》! そして、僕たち本隊は、南方の、エーテル源を目指す!」
「今、ここに、僕たちの、自由を懸けた、最後の戦いを、始める!」
僕の、その言葉を、合図に。
地上の軍勢が、空の船団が、一斉に、動き出した。
エリュシオン・テラの歴史上、最大規模の総力戦。その火蓋が、今、静かに、そして、確かに、切って落とされた。
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