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第六十話:カイザーの切り札
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僕がこじ開けた突破口から、反王権連合軍の濁流が、なだれ込んでいく。
僕たちの進軍を阻んでいた防衛壁は、もはやただの瓦礫の山と化し、僕たちの行く手を遮るものは、何もなかった。
上空では、バルカン率いる陽動部隊が、多大な犠牲を払いながらも、なお、《アヴァロン》の防衛部隊を引きつけ続けてくれている。
「よし! このまま、一気に、エーテル源まで駆け抜けるぞ!」
ゴードンが、士気を鼓舞するように叫ぶ。
連合軍の誰もが、勝利への道を、確かに感じていた。僕という、規格外の「矛」が存在する限り、カイザーのいかなる防御も、突破できる。そんな、確信にも似た空気が、軍全体に満ち溢れていた。
その、あまりにも楽観的な空気に、僕だけが、言いようのない、胸騒ぎを覚えていた。
カイザーが、このまま、黙って、僕たちの進撃を、許すはずがない。
僕が、壁を破壊した、あの瞬間。僕は、確かに、感じていた。
遥か上空の《アヴァロン》から、僕一点に向けられた、冷たく、そして、静かな、カイザーの視線を。
その視線には、焦りも、怒りもなかった。
あったのは、ただ、獲物が、自ら、罠にかかるのを、待つかのような、絶対的な、静けさだけだった。
(……罠?)
僕の脳裏を、その、不吉な単語がよぎった、その時だった。
天空の城《アヴァロン》。
その、玉座の間で、カイザーは、ホログラムのスクリーンに映し出される、僕たちの進軍の様子を、静かに、見つめていた。
彼の周囲に控える、側近たちが、焦りの色を浮かべる。
「カイザー様! このままでは、奴ら、エーテル源に到達してしまいます!」
「もはや、我々の地上部隊では、リクを止めることは不可能です! ご決断を!」
だが、カイザーは、動じなかった。
それどころか、彼の口元には、不気味なほどの、穏やかな笑みさえ、浮かんでいた。
「……慌てるな」
彼は、まるで、チェスの、最終盤を、楽しむかのように、言った。
「全て、俺の、計算通りだ」
「け、計算通り、ですと?」
「奴は、確かに、俺の『壁』を、壊した。だがな、それは、奴が、俺の『庭』に、足を踏み入れたということに、他ならない」
カイザーは、ゆっくりと、立ち上がった。
そして、玉座の横にある、一つの、黒い、水晶の台座に、その手を、置いた。
「俺は、知りたかったのだ。奴の、その規格外の力が、一体、どこまで、この世界の理に、干渉できるのかをな」
「そして、今、確信した。奴の力は、確かに、脅威だ。だが、それは、あくまで、この世界の『物理法則』という、ルールの上での話に過ぎん」
カイザーの瞳が、狂気的な、光を宿した。
「ならば、俺が、その『ルール』そのものを、書き換えてやれば、どうなる?」
彼は、台座の上の、黒い水晶に、自らの魔力を、注ぎ込み始めた。
「愚かなことだ、リク。貴様が、この俺の領域に、足を踏み入れたこと、骨の髄まで、後悔させてやる」
「見せてやろう。王だけが、使うことを許された、世界の理を、支配する、本当の力を!」
「――起動せよ! 『王権領域(キングス・テリトリー)』!」
彼が、そう、叫んだ、瞬間。
僕たちの、世界が、歪んだ。
ゴッ!
突如、僕の全身を、見えない、巨大な力で、地面に叩きつけられるかのような、凄まじい圧迫感が、襲った。
「ぐっ……!?」
「な、なんだ、これは……!?」
僕だけでなく、ゴードンも、ミモリさんも、そして、進軍していた、連合軍の全てのプレイヤーたちが、その場に、膝をつき、あるいは、倒れ伏していく。
空間そのものが、まるで、粘性を帯びた、水飴のように、重くなった。
空気が、震える。大地が、呻く。
僕たちの周囲の景色が、ぐにゃり、と、蜃気楼のように、歪んで見えた。
そして、僕の全身から、あの、大地と繋がる、地質学的なエネルギーの流れが、完全に、断ち切られるような、感覚に襲われた。
僕が、恐る恐る、自らのステータスウィンドウを開くと、そこには、絶望的な、赤い警告文が、表示されていた。
【警告:特殊フィールド『王権領域』の効果により、一部のスキルが、無効化されています】
そして、僕の、ユニークスキルのアイコン。
【地形編集】。
その、アイコンの上に、大きく、そして、無慈悲に、赤い×印が、上書きされていた。
「そん……な……」
僕の最大の武器が。
僕という、存在の、根幹をなす、その力が。
カイザーによって、完全に、沈黙させられてしまった。
天から、再び、カイザーの、高らかな、嘲笑が、降り注ぐ。
「――どうした、反逆者よ。その、自慢の力は、どうした?」
「言ったはずだ。ここは、俺の庭。この領域の中では、世界の法則は、俺が決める。俺が、『動くな』と命じれば、山すらも、その動きを、止めるのだ」
僕の、地質学の知識が。
僕が、信じてきた、この世界の、物理法則が。
たった一人の男の、傲慢な意思によって、否定され、上書きされていく。
「さあ、始めるぞ。一方的な、蹂躙の、時間だ」
カイザーの声と、共に。
歪んだ空間の、遥か前方から、無数の、新たな影が、姿を現した。
それは、《絶対王権》の、最強の、切り札。
カイザーの、親衛隊。
彼らが、僕たちを、絶望の淵へと、叩き落とすべく、ゆっくりと、その歩みを、進めてきていた。
僕の、武器は、ない。
僕たちの、希望は、潰えた。
王の、絶対的な、悪意の前に。
僕たちの進軍を阻んでいた防衛壁は、もはやただの瓦礫の山と化し、僕たちの行く手を遮るものは、何もなかった。
上空では、バルカン率いる陽動部隊が、多大な犠牲を払いながらも、なお、《アヴァロン》の防衛部隊を引きつけ続けてくれている。
「よし! このまま、一気に、エーテル源まで駆け抜けるぞ!」
ゴードンが、士気を鼓舞するように叫ぶ。
連合軍の誰もが、勝利への道を、確かに感じていた。僕という、規格外の「矛」が存在する限り、カイザーのいかなる防御も、突破できる。そんな、確信にも似た空気が、軍全体に満ち溢れていた。
その、あまりにも楽観的な空気に、僕だけが、言いようのない、胸騒ぎを覚えていた。
カイザーが、このまま、黙って、僕たちの進撃を、許すはずがない。
僕が、壁を破壊した、あの瞬間。僕は、確かに、感じていた。
遥か上空の《アヴァロン》から、僕一点に向けられた、冷たく、そして、静かな、カイザーの視線を。
その視線には、焦りも、怒りもなかった。
あったのは、ただ、獲物が、自ら、罠にかかるのを、待つかのような、絶対的な、静けさだけだった。
(……罠?)
僕の脳裏を、その、不吉な単語がよぎった、その時だった。
天空の城《アヴァロン》。
その、玉座の間で、カイザーは、ホログラムのスクリーンに映し出される、僕たちの進軍の様子を、静かに、見つめていた。
彼の周囲に控える、側近たちが、焦りの色を浮かべる。
「カイザー様! このままでは、奴ら、エーテル源に到達してしまいます!」
「もはや、我々の地上部隊では、リクを止めることは不可能です! ご決断を!」
だが、カイザーは、動じなかった。
それどころか、彼の口元には、不気味なほどの、穏やかな笑みさえ、浮かんでいた。
「……慌てるな」
彼は、まるで、チェスの、最終盤を、楽しむかのように、言った。
「全て、俺の、計算通りだ」
「け、計算通り、ですと?」
「奴は、確かに、俺の『壁』を、壊した。だがな、それは、奴が、俺の『庭』に、足を踏み入れたということに、他ならない」
カイザーは、ゆっくりと、立ち上がった。
そして、玉座の横にある、一つの、黒い、水晶の台座に、その手を、置いた。
「俺は、知りたかったのだ。奴の、その規格外の力が、一体、どこまで、この世界の理に、干渉できるのかをな」
「そして、今、確信した。奴の力は、確かに、脅威だ。だが、それは、あくまで、この世界の『物理法則』という、ルールの上での話に過ぎん」
カイザーの瞳が、狂気的な、光を宿した。
「ならば、俺が、その『ルール』そのものを、書き換えてやれば、どうなる?」
彼は、台座の上の、黒い水晶に、自らの魔力を、注ぎ込み始めた。
「愚かなことだ、リク。貴様が、この俺の領域に、足を踏み入れたこと、骨の髄まで、後悔させてやる」
「見せてやろう。王だけが、使うことを許された、世界の理を、支配する、本当の力を!」
「――起動せよ! 『王権領域(キングス・テリトリー)』!」
彼が、そう、叫んだ、瞬間。
僕たちの、世界が、歪んだ。
ゴッ!
突如、僕の全身を、見えない、巨大な力で、地面に叩きつけられるかのような、凄まじい圧迫感が、襲った。
「ぐっ……!?」
「な、なんだ、これは……!?」
僕だけでなく、ゴードンも、ミモリさんも、そして、進軍していた、連合軍の全てのプレイヤーたちが、その場に、膝をつき、あるいは、倒れ伏していく。
空間そのものが、まるで、粘性を帯びた、水飴のように、重くなった。
空気が、震える。大地が、呻く。
僕たちの周囲の景色が、ぐにゃり、と、蜃気楼のように、歪んで見えた。
そして、僕の全身から、あの、大地と繋がる、地質学的なエネルギーの流れが、完全に、断ち切られるような、感覚に襲われた。
僕が、恐る恐る、自らのステータスウィンドウを開くと、そこには、絶望的な、赤い警告文が、表示されていた。
【警告:特殊フィールド『王権領域』の効果により、一部のスキルが、無効化されています】
そして、僕の、ユニークスキルのアイコン。
【地形編集】。
その、アイコンの上に、大きく、そして、無慈悲に、赤い×印が、上書きされていた。
「そん……な……」
僕の最大の武器が。
僕という、存在の、根幹をなす、その力が。
カイザーによって、完全に、沈黙させられてしまった。
天から、再び、カイザーの、高らかな、嘲笑が、降り注ぐ。
「――どうした、反逆者よ。その、自慢の力は、どうした?」
「言ったはずだ。ここは、俺の庭。この領域の中では、世界の法則は、俺が決める。俺が、『動くな』と命じれば、山すらも、その動きを、止めるのだ」
僕の、地質学の知識が。
僕が、信じてきた、この世界の、物理法則が。
たった一人の男の、傲慢な意思によって、否定され、上書きされていく。
「さあ、始めるぞ。一方的な、蹂躙の、時間だ」
カイザーの声と、共に。
歪んだ空間の、遥か前方から、無数の、新たな影が、姿を現した。
それは、《絶対王権》の、最強の、切り札。
カイザーの、親衛隊。
彼らが、僕たちを、絶望の淵へと、叩き落とすべく、ゆっくりと、その歩みを、進めてきていた。
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僕たちの、希望は、潰えた。
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