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第六十一話:スキル封じの絶望
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僕の視界の中で、赤い×印が上書きされた【地形編集】のスキルアイコンが、絶望的な現実を、無慈悲に、告げ続けていた。
大地との繋がりが、完全に、断ち切られた。
それは、音楽家が、聴力を失うにも等しい、根源的な喪失感。僕という存在の、半分が、死んでしまったかのようだった。
「どうした、反逆者よ。その力なくして、貴様は何ができる?」
カイザーの、嘲笑に満ちた声が、重苦しい空気の中を、支配する。
「無力な凡夫に成り下がった貴様が、この俺に勝てるはずがない!」
彼の言葉を、証明するかのように。
僕たちの前に姿を現した、《絶対王権》の親衛隊が、ゆっくりと、しかし、確実に、その包囲網を、狭めてきていた。
彼らの動きには、一切の、迷いがない。
僕が、もはや、何の脅威でもなくなったことを、完全に、理解しているのだ。
「くそっ……! リクのスキルが、使えねえだと!?」
ゴードンが、僕の隣で、歯噛みする。彼は、僕が、どんな絶望的な状況でも、必ず、奇策で覆してきたのを、誰よりも、見てきた。
だが、その、奇策を生み出す、源泉そのものが、今、枯渇してしまった。
「うおおお! だからって、黙ってやられるかよ!」
ゴードンは、雄叫びを上げると、親衛隊へと、突進しようとした。
だが、彼の動きは、明らかに、鈍い。
この『王権領域』は、僕のスキルを封じるだけでなく、僕たち連合軍、全てのプレイヤーに、ステータスを低下させる、強力なデバフ効果をも、与えていたのだ。
「ぐっ……! 体が、重い……!」
親衛隊の、一人の剣士が、振るった、何気ない一撃。
それを、ゴードンは、盾で受け止めるが、いつもなら、びくともしないはずの一撃が、彼の巨体を、大きく、よろめかせた。
「ゴードンさん!」
ミモリさんが、慌てて、回復魔法を飛ばす。
だが、彼女の魔法もまた、その輝きを、いくぶんか、失っているようだった。
完全に、僕たちの動きは、封じられている。
反王権連合の、仲間たちも、同じだった。
数で、勝っているはずの僕たちが、少数精鋭の親衛隊に、一方的に、蹂躙されていく。
あちこちで、悲鳴が上がり、光の粒子となって、消えていく、仲間たちの姿が見えた。
士気は、見る見るうちに、低下していく。
僕たちの、希望の象徴であったはずの僕が、無力になったことで、彼らの心もまた、折れかけていた。
地獄。
まさに、地獄のような、光景だった。
カイザーは、この戦場を、彼の、絶対的な力を、見せつけるための、公開処刑場へと、変えたのだ。
(……くそっ……!)
僕は、地面に膝をついたまま、必死に、思考を巡らせていた。
何か、手はないのか。
この、絶望的な状況を、覆す、何かが。
スキルが、使えない。
ならば、僕に残されているものは、何だ?
僕の、頭の中にある、知識だけだ。
(落ち着け……冷静に、分析しろ……)
僕は、この、『王権領域』という、異常なフィールドの、原理を、解き明かそうと、試みた。
カイザーは、言っていた。
『この領域の中では、世界の法則は、俺が決める』と。
これは、単なる、デバフフィールドではない。
もっと、根源的な、システムの法則を、局地的に、書き換える、禁断の力。
ガイアが、言っていた。
『彼は、深層のシステムへと、アクセスしようとしている』
おそらく、このフィールドこそが、その、一端。
(だが、どんなシステムにも、必ず、『穴』はあるはずだ……!)
僕は、弱体化させられた、鑑定スキルを、必死に、発動させた。
この、歪んだ空間の、構造を、読み解くために。
僕の視界に、ノイズ混じりの、情報が、流れ込んでくる。
【フィールド情報:王権領域(キングス・テリトリー)】
【効果範囲:半径 約5km】
【持続時間:術者(カイザー)のMPが尽きるまで】
【効果:領域内の、特定パラメータ(地形変動率)を、強制的に『0』に固定。付随して、対象(反王権連合)の、全ステータスを、30%低下させる】
「……地形変動率を、『0』に、固定……」
僕は、その、一文に、目を見開いた。
そういうことか。
僕の【地形編集】スキルが、使えないのは、僕の能力が、直接、封じられたからではない。
この、フィールド全体の、「地形が変動する」という、物理法則そのものが、カイザーによって、「変動しない」という法則に、上書きされてしまっているのだ。
なんと、傲慢で、そして、絶対的な、力。
だが、同時に、僕は、そこに、一つの、微かな「光」を、見出した。
(……領域内?)
そうだ。
この、法則の上書きは、あくまで、この、半径5kmの、フィールドの、「内側」だけの話だ。
カイザーの力は、まだ、この世界全てを、支配するには、至っていない。
ならば。
(――フィールドの、『外』からなら?)
僕の脳裏に、一つの、あまりにも、突飛で、そして、無謀な、逆転の、発想が、閃いた。
僕は、ゆっくりと、顔を上げた。
僕の視線は、もはや、目の前の、親衛隊ではない。
僕たちを、蹂躙する、この、忌々しいフィールドでもない。
僕の視線は、この、フィールドの、遥か、遥か、外側。
僕たちが、本来、目指していた、あの、南方の、火山地帯。
《アヴァロン》の、浮遊を支える、大地の、生命線。
「……エーテル源」
僕の口から、かすれた、呟きが、漏れた。
このフィールドは、僕の、直接的な、地形操作を、封じる。
ならば、僕は、直接、地形を、操作しなければいい。
遥か、遠く離れた、このフィールドの、効果範囲の「外」にある、地質構造に、干渉し。
その、影響が、このフィールドの、土台そのものである、《アヴァロン》に、及ぶように、仕向ければいい。
それは、風が吹けば、桶屋が儲かる、というような、あまりにも、遠大で、そして、不確かな、作戦。
だが、今の僕たちに残された、唯一の、そして、最高の、希望。
「……ゴードンさん、ミモリさん」
僕は、立ち上がった。
僕の瞳には、もはや、絶望の色はなかった。
そこにあるのは、新たな、そして、より困難な「パズル」を前にした、地質学者の、静かな、闘志だった。
「――ここから、脱出します」
大地との繋がりが、完全に、断ち切られた。
それは、音楽家が、聴力を失うにも等しい、根源的な喪失感。僕という存在の、半分が、死んでしまったかのようだった。
「どうした、反逆者よ。その力なくして、貴様は何ができる?」
カイザーの、嘲笑に満ちた声が、重苦しい空気の中を、支配する。
「無力な凡夫に成り下がった貴様が、この俺に勝てるはずがない!」
彼の言葉を、証明するかのように。
僕たちの前に姿を現した、《絶対王権》の親衛隊が、ゆっくりと、しかし、確実に、その包囲網を、狭めてきていた。
彼らの動きには、一切の、迷いがない。
僕が、もはや、何の脅威でもなくなったことを、完全に、理解しているのだ。
「くそっ……! リクのスキルが、使えねえだと!?」
ゴードンが、僕の隣で、歯噛みする。彼は、僕が、どんな絶望的な状況でも、必ず、奇策で覆してきたのを、誰よりも、見てきた。
だが、その、奇策を生み出す、源泉そのものが、今、枯渇してしまった。
「うおおお! だからって、黙ってやられるかよ!」
ゴードンは、雄叫びを上げると、親衛隊へと、突進しようとした。
だが、彼の動きは、明らかに、鈍い。
この『王権領域』は、僕のスキルを封じるだけでなく、僕たち連合軍、全てのプレイヤーに、ステータスを低下させる、強力なデバフ効果をも、与えていたのだ。
「ぐっ……! 体が、重い……!」
親衛隊の、一人の剣士が、振るった、何気ない一撃。
それを、ゴードンは、盾で受け止めるが、いつもなら、びくともしないはずの一撃が、彼の巨体を、大きく、よろめかせた。
「ゴードンさん!」
ミモリさんが、慌てて、回復魔法を飛ばす。
だが、彼女の魔法もまた、その輝きを、いくぶんか、失っているようだった。
完全に、僕たちの動きは、封じられている。
反王権連合の、仲間たちも、同じだった。
数で、勝っているはずの僕たちが、少数精鋭の親衛隊に、一方的に、蹂躙されていく。
あちこちで、悲鳴が上がり、光の粒子となって、消えていく、仲間たちの姿が見えた。
士気は、見る見るうちに、低下していく。
僕たちの、希望の象徴であったはずの僕が、無力になったことで、彼らの心もまた、折れかけていた。
地獄。
まさに、地獄のような、光景だった。
カイザーは、この戦場を、彼の、絶対的な力を、見せつけるための、公開処刑場へと、変えたのだ。
(……くそっ……!)
僕は、地面に膝をついたまま、必死に、思考を巡らせていた。
何か、手はないのか。
この、絶望的な状況を、覆す、何かが。
スキルが、使えない。
ならば、僕に残されているものは、何だ?
僕の、頭の中にある、知識だけだ。
(落ち着け……冷静に、分析しろ……)
僕は、この、『王権領域』という、異常なフィールドの、原理を、解き明かそうと、試みた。
カイザーは、言っていた。
『この領域の中では、世界の法則は、俺が決める』と。
これは、単なる、デバフフィールドではない。
もっと、根源的な、システムの法則を、局地的に、書き換える、禁断の力。
ガイアが、言っていた。
『彼は、深層のシステムへと、アクセスしようとしている』
おそらく、このフィールドこそが、その、一端。
(だが、どんなシステムにも、必ず、『穴』はあるはずだ……!)
僕は、弱体化させられた、鑑定スキルを、必死に、発動させた。
この、歪んだ空間の、構造を、読み解くために。
僕の視界に、ノイズ混じりの、情報が、流れ込んでくる。
【フィールド情報:王権領域(キングス・テリトリー)】
【効果範囲:半径 約5km】
【持続時間:術者(カイザー)のMPが尽きるまで】
【効果:領域内の、特定パラメータ(地形変動率)を、強制的に『0』に固定。付随して、対象(反王権連合)の、全ステータスを、30%低下させる】
「……地形変動率を、『0』に、固定……」
僕は、その、一文に、目を見開いた。
そういうことか。
僕の【地形編集】スキルが、使えないのは、僕の能力が、直接、封じられたからではない。
この、フィールド全体の、「地形が変動する」という、物理法則そのものが、カイザーによって、「変動しない」という法則に、上書きされてしまっているのだ。
なんと、傲慢で、そして、絶対的な、力。
だが、同時に、僕は、そこに、一つの、微かな「光」を、見出した。
(……領域内?)
そうだ。
この、法則の上書きは、あくまで、この、半径5kmの、フィールドの、「内側」だけの話だ。
カイザーの力は、まだ、この世界全てを、支配するには、至っていない。
ならば。
(――フィールドの、『外』からなら?)
僕の脳裏に、一つの、あまりにも、突飛で、そして、無謀な、逆転の、発想が、閃いた。
僕は、ゆっくりと、顔を上げた。
僕の視線は、もはや、目の前の、親衛隊ではない。
僕たちを、蹂躙する、この、忌々しいフィールドでもない。
僕の視線は、この、フィールドの、遥か、遥か、外側。
僕たちが、本来、目指していた、あの、南方の、火山地帯。
《アヴァロン》の、浮遊を支える、大地の、生命線。
「……エーテル源」
僕の口から、かすれた、呟きが、漏れた。
このフィールドは、僕の、直接的な、地形操作を、封じる。
ならば、僕は、直接、地形を、操作しなければいい。
遥か、遠く離れた、このフィールドの、効果範囲の「外」にある、地質構造に、干渉し。
その、影響が、このフィールドの、土台そのものである、《アヴァロン》に、及ぶように、仕向ければいい。
それは、風が吹けば、桶屋が儲かる、というような、あまりにも、遠大で、そして、不確かな、作戦。
だが、今の僕たちに残された、唯一の、そして、最高の、希望。
「……ゴードンさん、ミモリさん」
僕は、立ち上がった。
僕の瞳には、もはや、絶望の色はなかった。
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