不人気職【地質学者】で始めたら、ダンジョン構造を改変できる唯一のプレイヤーになっていた件。~掘って埋めて、ダンジョンごとボスを圧殺します~

夏見ナイ

文字の大きさ
70 / 80

第七十四話:最後の作戦会議

しおりを挟む
 再び、僕は、リクとして、崩壊しかけた、エリュシオン・テラの、大地に、降り立った。
 現実世界で、運営からの、悲痛なメールを受け取ったことで、僕の、腹は、完全に、据わっていた。
 もはや、感傷も、迷いも、ない。
 僕が、やるべきことは、ただ一つ。
 カイザーの、狂気を、止め、この、仮想と、現実を、巻き込んだ、未曾有の危機を、終わらせることだ。

 僕は、ゴードンと、ミモリさんを、リク工房へと、呼び寄せた。
 そして、彼らに、現実世界で、起きている、全てのことを、話した。
 プレイヤーたちの、意識障害。
 社会問題化しつつある、「ログイン後症候群」。
 そして、運営から、僕の元へ、直接、届いた、匿名の、SOS。

 二人は、僕の話を、黙って、聞いていた。
 その顔には、驚きや、恐怖よりも、むしろ、覚悟が、宿っていくのが、わかった。
「……そうか。事態は、俺たちが、思ってたより、ずっと、ヤバいことになってたんだな」
 ゴードンが、静かに、しかし、重々しく、言った。
「ゲームの中だけの、話じゃ、なくなっちまった」
「……はい」
 ミモリさんも、力強く、頷いた。
「カイザーさんの、やっていることは、もう、許されることでは、ありません。現実の、人々の、命まで、危険に晒すなんて……。絶対に、止めなければなりません」

 僕たちの、意志は、一つになった。
 だが、問題は、どうやって、それを、成し遂げるか、だ。
 ガイアの言う、世界の心臓《アビス・コア》への道は、カイザーによって、概念レベルで、完全に、封鎖されている。
 物理的な、干渉が、不可能な、その、絶対的な壁を、どうやって、突破するのか。

「……一つだけ、方法が、あります」

 僕は、工房の研究室の、中央に、広げた、エリュシオン・テラ全土の、地質図を、指さした。
 そこには、僕が、これまでの、調査で、解き明かしてきた、この世界の、プレートテクトニクスの、動きが、克明に、描き込まれていた。
「カイザーは、この世界の、法則を、書き換えることで、扉を、閉ざした。ならば、僕たちは、この世界の、法則そのものを、利用して、その扉を、物理的に、こじ開けるんです」

「……リク、お前、何を、言ってるんだ?」
 ゴードンが、怪訝な、顔をする。

「これから、僕が、話すことは、おそらく、常識では、到底、理解できない、狂気の沙汰に、聞こえるでしょう」
 僕は、一呼吸、置いた。
 そして、僕の、地質学者としての、知識の、全てを、注ぎ込んだ、最後の、そして、最大の、作戦を、二人に、告げた。
 その名を、――『プレートテクトニクス・オペレーション』。

 僕の、説明が、終わった時。
 工房は、水を打ったように、静まり返っていた。
 ゴードンも、ミモリさんも、僕が、語った、あまりにも、壮大で、そして、あまりにも、狂気じみた、計画の、全貌を、理解できず、ただ、呆然と、立ち尽くしている。

 作戦の、核心は、こうだ。
 この、エリュシオン・テラの大陸は、現実の地球と、同じように、複数の、巨大な、プレート(岩盤)によって、構成されている。
 その、プレートの、境界部分に、存在する、地質学的な、特異点――僕が、『地殻アンカーポイント』と名付けた、四つの地点。
 そこに、僕の【地形編集】スキルで、極めて、大規模な、エネルギーを、与える。

 例えば、海溝で、強制的に、プレートの、沈み込みを、加速させる。
 例えば、活火山で、地下の、マントルの動きを、刺激し、噴火を、誘発する。
 例えば、巨大な、断層帯で、岩盤の、摩擦を、極限まで、下げる。

 四つの、アンカーポイントを、同時に、起動させ、大陸プレートそのものを、スキルによって、強制的に、動かすのだ。
 その際に、発生する、超巨大地震の、莫大な、エネルギー。
 その、全てを、ただ一点――《アビス・コア》の、封印された、扉へと、収束させる。
 そして、その、惑星規模の、エネルギーで、空間そのものを、破壊し、システムの壁を、物理的に、こじ開ける。
 《アビス・コア》の、最深部への、アクセスポートを、無理やり、創り出す。

「……大陸を、動かす?」
 ゴードンが、ようやく、絞り出した声は、震えていた。
「地震を、起こして、次元の壁を、ぶっ壊す? ……リク、お前、本気で、言ってるのか?」

「本気です。これしか、方法が、ありません」
 僕の、瞳は、一切、揺らいでいなかった。

 これは、もはや、ゲームの、攻略ではない。
 地質学という、科学の、究極の、応用。
 僕が、これまで、培ってきた、全ての知識と、スキルを、注ぎ込まなければ、成功しない、一世一代の、大計画。

 僕の、その、狂気と、紙一重の、天才的な、発想。
 その、本気度を、悟った、ゴードンと、ミモリさんの顔つきが、変わった。
 彼らの、瞳に、宿ったのは、僕に対する、絶対的な、信頼の、光だった。

「……はっ。ははははは!」
 ゴードンが、腹を抱えて、笑い出した。
「大陸を、動かす、か! ここまで来たら、もう、何でも、ありだな! 面白え! やってやろうじゃねえか! お前の、その、クレージーな、作戦に、俺の、命、預けてやるよ!」
「はい!」
 ミモリさんも、力強く、頷いた。
「リクさんの、行く道が、私たちの、道です。どんな、無茶な、作戦でも、私は、信じます!」

 僕の、仲間たちは、僕の、狂気を、受け入れてくれた。
 だが、この、作戦を、実行するには、僕たち、三人だけでは、到底、人手が、足りない。
 四つの、アンカーポイントを、同時に、起動させ、そして、その際に、カイザーが、送り込んでくるであろう、妨害から、僕を、守るための、仲間が、必要だった。

 僕は、バルカンに、連絡を取った。
 そして、彼を通じて、かつての、『反王権連合』の、生き残った、ギルドリーダーたちを、この、工房へと、集めてもらった。
 僕は、彼らの前で、僕の、最後の作戦の、全てを、話した。

 彼らの、反応は、ゴードンと、ミモリさんと、同じだった。
 最初は、誰もが、絶句し、僕の、正気を、疑った。
 だが、僕の、揺るぎない、覚悟と、緻密な、理論説明、そして、現実世界にまで、及ぶ、この、世界の危機を、知るに、及んで。
 彼らの、瞳にもまた、最後の、戦いへと、臨む、決意の光が、灯っていった。

「……わかった、リク殿」
 バルカンが、連合の、総意として、重々しく、言った。
「あんたの、その、狂った、作戦に、我ら、全員の、未来を、託そう」
「我々に、何を、させればいい。指示を、くれ」

 僕は、彼らの、力強い、言葉に、深く、頷いた。
 僕の、最後の、戦いは、もはや、僕一人の、ものではなかった。
 この、世界を、愛する、全ての、仲間たちと、共に、戦う、最後の、総力戦。

「――皆さん。聞いてください」
 僕は、巨大な、地質図の前に、立ち、最後の、作戦会議を、始めた。
「これより、『プレートテクトニクス・オペレーション』を、開始します」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

処理中です...