不人気職【地質学者】で始めたら、ダンジョン構造を改変できる唯一のプレイヤーになっていた件。~掘って埋めて、ダンジョンごとボスを圧殺します~

夏見ナイ

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第七十六話:神の妨害と仲間たちの盾

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 僕が、第一のアンカーポイントを起動させた、その瞬間。
 海底洞窟の天井、すなわち、海溝の壁面を構成していた、不安定な堆積層が、轟音と共に、崩落を開始した。
 それは、もはや「地すべり」という生易しいものではない。
 数億トンもの土砂が、巨大な一つの塊となって、プレートの断層面めがけて、雪崩れ込んでいく。
 質量兵器と化した、大地そのもの。

 ズズズズズズン……!

 凄まじい地響きが、洞窟全体を揺るがし、僕たちの足元が、大きく傾いた。
 断層面に叩きつけられた、圧倒的な質量と衝撃が、二つのプレートの、絶妙なバランスを、破壊したのだ。
 地球の、時計の針が、ギシリ、と、無理やり、進められる音が、聞こえた気がした。

 第一のアンカーポイント、起動成功。
 だが、僕たちに、安堵している暇はなかった。

『――小賢しい真似を』

 カイザーの、冷たい声が、僕たちの脳内に響き渡る。
 僕たちの目の前に、空間の歪みから、次々と、異形の存在が、溢れ出してきた。
 暴走した、世界の法則が生み出した、「アンチ・リク・プログラム」。
 その軍勢が、僕たちの背後を守る、ゴードンたちへと、襲いかかった。

「うおおおおお!」

 ゴードンが、雄叫びを上げ、その最初の、一体を、盾で受け止める。
 それは、かつて、僕が《腐蝕の沼沢》で、使った戦術を、模倣した、敵だった。
 敵の、身体は、泥でできており、その攻撃は、ゴードンの足元を、液状化させ、その動きを、封じようとする。

「なめるなァ!」
 だが、ゴードンも、同じ手は、二度も、食らわない。
 彼は、盾【イグニス・ウォール】に蓄積された、熱エネルギーを、足元に放出し、泥を、瞬時に、蒸発、硬化させて、その拘束を、破ってみせた。

 しかし、敵は、一体だけではなかった。
 天井からは、僕が、ミノタウロスを、葬った時と、同じように、巨大な、岩盤が、連合の仲間たちへと、降り注ぐ。
 地面からは、僕が、カイザーの、防衛壁を、破壊した時と、同じように、超高周波の、振動が、発生し、仲間たちの、平衡感覚を、奪っていく。

 それは、悪夢のような、光景だった。
 僕が、これまで、編み出してきた、知識と、奇策の、全てが、今、敵となって、僕の、大切な仲間たちへと、牙を剥いているのだ。
 カイザーは、僕の、過去のデータを、ハッキングし、それを、自らの、軍勢として、再生産している。
 僕を、最も、精神的に、追い詰めるための、最も、悪趣味な、戦術。

「リク! 気にするな!」
 ゴードンが、僕の、心の揺らぎを、見透かしたかのように、叫んだ。
「お前の、その、すげえ技が、本物だってことの、証明じゃねえか! こんな、紛い物に、俺たちが、負けるかよ!」

「はい!」
 ミモリさんの、声が、響く。
「過去は、乗り越えるために、あるんです! 私たちは、リクさんと、共に、もっと、強くなりました!」
 彼女の、杖から、放たれた、聖なる光が、仲間たちの、傷を、癒し、そして、僕の、心を、奮い立たせる。

 仲間たちが、僕の、過去の、亡霊たちと、死闘を、繰り広げてくれている。
 僕が、やるべきことは、ただ、前を、進むことだけだ。

「……次の、アンカーポイントへ、向かいます!」
 僕は、潜水艇へと、戻ると、第二の、目的地へと、針路を、取った。
 仲間たちの、決死の、防衛戦を、背に。
 僕は、この、深海の、闇から、脱出した。

 僕たちが、次に向かったのは、第二のアンカーポイント。
 大陸中央部に、そびえ立つ、巨大な、活火山。その、火口の、内部だった。
 灼熱の、空気が、肌を、焼く。
 足元では、深紅色の、マグマが、まるで、地球の、血液のように、煮え滾っている。

 そして、ここにも、カイザーの、神の軍勢が、待ち構えていた。
 今度の敵は、僕が、灼熱の渓谷で、使った、溶岩流の、制御や、サラマンダーを、自爆させた、あの、爆発の、戦術を、模倣してくる。

「バルカン! こっちは、任せたぞ!」
「応!」
 今度は、バルカン率いる、ドワーフ戦士団が、僕の、盾となった。
 彼らは、生まれながらの、炎と、鋼の、民。
 溶岩の、熱にも、怯むことなく、その、自慢の、斧と、ハンマーで、アンチ・リク・プログラムを、打ち砕いていく。

 僕は、その間に、火口の、中心部へと、到達した。
 僕が、ここで、やるべきこと。
 それは、この、火山の、地下深く。
 大陸の、プレートの下から、突き上げてくる、巨大な、熱の、塊――『マントルプルーム』を、刺激すること。

 それは、もはや、地形編集というよりは、惑星の、気候変動すら、引き起こしかねない、禁断の、一手。
 僕は、マグマの、流れを、読み、そして、地殻の、最も、薄い、一点を、見つけ出した。
「――第二の、アンカーポイント、起動!」

 僕の、スキルが、その、地殻の、一点を、貫く。
 地下深くで、眠っていた、巨大な、熱の、龍が、目を、覚ました。
 火山全体が、咆哮を上げ、巨大な、噴火の、兆候が、始まった。

 休む間もなく、僕たちは、第三の、アンカーポイントへと、飛んだ。
 そこは、二つの、大陸プレートが、すれ違う、巨大な、横ずれ断層帯。
 何千キロにも、わたって、続く、大地の、巨大な、亀裂。
 ここで、僕が、やるべきことは、二つの、プレートの、間で、巨大な、摩擦力を、生み出している、岩盤の、一部――『アスペリティ』を、破壊すること。
 岩盤の、摩擦係数を、極限まで、下げ、プレートの、動きを、滑らかに、してやる。

 ここでもまた、仲間たちが、僕の、盾となってくれた。
 僕の、奇策に、魅せられ、連合に、参加してくれた、様々な、ギルドの、トッププレイヤーたち。
 彼らは、僕の、過去の、戦術を、自らの、オリジナルな、戦術で、乗り越え、そして、僕のための、道を、切り拓いてくれた。

「――第三、起動!」

 海溝が、動き。
 火山が、火を噴き。
 断層が、滑る。
 僕が、起動した、三つの、アンカーポイントが、この、大陸の、プレート全体に、凄まじい、エネルギーを、蓄積させていく。

 大地が、軋む。
 空が、歪む。
 世界そのものが、今、まさに、生まれ変わろうとする、陣痛の、悲鳴を、上げていた。
 残る、アンカーポイントは、あと一つ。
 全ての、エネルギーが、臨界点に、達する、最後の、引き金。

 僕たちは、最後の、決戦の地へと、向かった。
 僕たちの、仲間たちの、全ての、思いを、その、背に、背負って。
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