無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

第61話 決戦の地、神域へ。全軍、突撃

け。
東の空が、血を流したかのように、赤く、燃え上がっていた。
それは、これから始まる、壮絶な戦いを、予感させるかのような、不吉で、しかし、どこまでも美しい、夜明けだった。

魔王城の前に集った、数千の、対神々連合軍。
その、全ての兵士たちの顔には、覚悟が決まっていた。
恐怖も、迷いも、もう、ない。
あるのはただ、自分たちの手で、未来を掴み取るという、燃えるような、闘志だけ。

俺は、アレスと共に、全軍の、最前線に立っていた。
俺の、右には、純白の戦闘ドレスを纏った、ルナ。
左には、真紅の軽量鎧を身につけ、『始まりの剣』を携えた、フレア。
俺の後ろには、ヴォルグ、リリス、ギルバート、エルロンド、そして、グライフ氏。
俺たちが、この世界で出会った、全ての、かけがえのない仲間たちが、そこにいた。

俺は、空を見上げた。
そこには、昨日、俺たちが、こじ開けた、神域へと続く、巨大な『門』が、虹色の光を放ちながら、口を開けている。
その道の、遥か先から、俺たちを、見下す、傲慢な、神々の視線を、感じる。

「――聞こえるか、神どもよ」
俺は、増幅魔法で、自らの声を、天へと、届けた。
「俺たちは、今から、お前たちの、その、ふざけた庭に、お邪魔させてもらう。この世界の、本当の主人が、誰なのかを、その、腐った魂に、刻み込んでやるためにな」
俺の、宣戦布告。
それに、答えるかのように、神域の門から、威厳に満ちた、しかし、怒りに震える、声が、響き渡った。

『――愚かなる、定命の者どもよ。自らの、分を、わきまえぬ、その罪、万死に値する。我らが、絶対なる、秩序の前に、ひれ伏し、消え去るがいい』

「……上等だ」
俺は、不敵に、笑った。
そして、後ろを、振り返り、俺を、信じ、ついてきてくれた、全ての仲間たちの、顔を、見回した。
「――皆、覚悟はいいか！」
俺の問いに、数千の、魂の雄叫びが、応えた。
『『『『『おおおおおおおおっ！！！！』』』』』
その声は、大地を揺るがし、天を、震わせた。

俺は、前を、向き直った。
そして、右手を、高く、天に、掲げた。

「――対神々連合軍、全軍、突撃ッ！！」

その号令を、皮切りに。
地響きと、共に、数千の軍勢が、一斉に、神域へと続く、虹色の、光の道を、駆け上がり始めた。
ドワーフの、重々しい足音。
エルフの、風のような、疾走。
人間の、不屈の、雄叫び。
そして、魔族の、静かなる、闘志。
全ての、想いを、一つにして。
俺たちは、神々の、聖域へと、殴り込みをかける。

光の道を、駆け抜けた先。
俺たちが、足を踏み入れたのは、想像を絶する、光景だった。
どこまでも続く、純白の、大理石の床。
天を突くように、そびえ立つ、黄金の、柱の数々。
空には、太陽は、存在せず、空間そのものが、神々しい、光を放っている。
そして、その、はるか上空に、巨大な、白亜の神殿が、いくつも、浮かんでいた。
ここが、決戦の地、神域。

『――よくぞ、来た、矮小なる、生命どもよ』
神々の、声が、この空間、全体から、響き渡る。
『我らが、慈悲によって、生かされていただけの、分際を、忘れ、我らに、牙を剥くとは。その、愚かさを、その、魂の、消滅をもって、後悔するがいい』

その声と、共に。
神域の、空間から、無数の、光の兵士たちが、姿を現し始めた。
神々によって、創り出された、純粋なエネルギー体。神の使徒の、量産型。
その数は、数万、いや、数十万か。
地平線の、果てまで、埋め尽くすほどの、絶望的な、物量。

「……ひっ」
連合軍の、後方の兵士から、悲鳴が、漏れる。
だが、その、恐怖の連鎖を、断ち切ったのは、フレアの、一声だった。
「――びびってんじゃねえぞ、野郎ども！ あんな、ピカピカ光るだけの、ブリキの兵隊なんざ、俺の剣の、錆にしてくれるわ！」
彼女は、『始まりの剣』を、天に、掲げた。
その、白銀の刃が、神域の光を、反射し、仲間たちの、瞳に、希望の光を、灯す。

「フレアの言う通りだ！」
ギルバートが、巨大な戦斧を、構える。
「ワシらの、槌の前に、砕けぬものなど、ないわい！」
「森の、怒りを、思い知るがいい、神々よ！」
エルロンドが、弓に、必中の矢を、つがえる。

そして、アレスが、静かに、一歩、前に出た。
「――かつての、同胞たちよ。貴殿らは、道を、間違えた。その罪は、この私が、全て、背負おう。だが、その前に、この、愛すべき、生命たちを、弄ぶことは、この私が、許さない」
彼の全身から、魔王だった頃を、彷彿とさせる、しかし、どこまでも、澄み切った、白銀のオーラが、立ち上った。

「全軍、陣形を組め！」
俺は、最後の、指揮を、執る。
「ドワーフ部隊、最前線！ 鉄壁の、盾となれ！ エルフ部隊、後方から、援護射撃！ 魔族部隊、遊撃として、敵の側面を、つけ！ 人間部隊は、全体の、支援と、負傷者の救護！」
「ルナ、フレア、アレス！ お前たちは、俺と、共に、中央を、突破する！ 狙うは、一つ！ 神々の、本拠地、中央神殿だ！」

「――行くぞッ！！」

俺たちの、雄叫びと。
神の軍勢の、無機質な、進軍が。
広大な、神域の、中央で、ついに、激突した。
世界の、歴史上、誰も、見たことのない。
生命と、神々の、最後の戦いが。
今、まさに、その、火蓋を、切ったのだ。

閃光が、走り、轟音が、響き渡る。
血と、光が、入り乱れる、壮絶な、戦場。
その、地獄のような、光景の中で。
俺は、ただ、前だけを、見据えていた。
仲間たちと、共に、この、絶望的な戦いを、必ず、生き抜き、そして、勝利するために。
俺たちの、本当の物語は、ここから、始まる。