スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ

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第74話:決戦

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アルカディアが巨大な生命体『城塞生命体』へと変貌を遂げたことで、戦いの趨勢は完全に決した。
帝国軍の兵士たちはもはや戦うことなどできず、ただ目の前で蠢く神の創造物を前に呆然と立ち尽くすか、あるいは恐怖に駆られて逃げ惑うことしかできなかった。
壁は侵入しようとする者を自動的に迎撃し、大地は足を踏み入れた者の足元を的確に崩す。
彼らはもはやアルカディアという国に一歩たりとも近づくことさえ許されなかったのだ。

「……撤退だ」
後方ですべてを見ていたヴァルケンハインが、絞り出すようにその言葉を口にした。
だが、その命令はもはや彼の軍には届かなかった。
指揮系統は完全に麻痺し、兵士たちはただパニックに陥っているだけだった。

「……逃がすと思うか?」

壁の中心部、最も高くそびえ立つ主塔の上。
そこに、いつの間にか俺は立っていた。
全身から金色のオーラを放ち、その手には太陽のように輝くガイアズ・エッジが握られている。その姿はまるで天から降臨した戦神のようだった。
俺は眼下の混乱の極みにある帝国軍と、その後方で唇を噛み締めながら俺を睨みつける総司令官ヴァルケンハインを見据えた。

この戦いを終わらせる。
だが、それはただ敵を追い返すだけでは不十分だった。
二度とこのアルカディアに牙を剥こうなどと思わせない、絶対的な力の差を彼らの魂に刻みつけなければならない。

俺はガイアズ・エッジを天に掲げた。
そして、このアルカディアのすべての力を今この一点に集約させる。
「――来たれ、我が神国のultimate weapon」
俺は静かに、そして荘厳に唱えた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

アルカディアの中央広場。
聖銀樹が根を張るその大地が、大きく、そしてゆっくりと隆起を始めた。
それはもはや地形操作というレベルではない。
大地そのものが一つの巨大な『器』を形作っていく。
土が、岩が、そして地下深くで眠っていたミスリルやオリハルコンの鉱脈さえもが、一つの意志の下に集結し再構築されていく。

やがてそれは、その完全な姿を現した。
天を突くほどの巨大な人型の巨人。
その体は神銀の輝きを放つディバインメタルで覆われ、その両肩にはバリスタの砲門がいくつも備え付けられている。背中には光の翼が生え、その手にはオリハルコンでできた城ほどもある巨大な剣が握られていた。
そして、その顔の中心には俺が立つ主塔が、まるでコックピットのように融合している。

アルカディアという国そのものが変形した、究極の決戦兵器。
その名は、『ガイアタイタン』。

「……な……」
「……神よ……」
帝国の兵士たちが天を仰ぎ、絶望の声を漏らす。
彼らの目の前に立つそれは、もはや人間の兵器などではなかった。
神話の中にのみ登場する、世界を創造しそして破壊する神そのものだった。

俺はガイアタイタンの内部で、静かにその巨体と意識を同調させた。
まるで自分の手足を動かすかのように自由自在にこの巨人を操ることができる。
俺はヴァルケンハインがいる帝国軍の本陣を見据えた。

ズシン……!

ガイアタイタンが最初の一歩を踏み出した。
ただ歩くだけで大地が揺れ、衝撃波が帝国軍の陣地を襲う。
兵士たちはその圧倒的な威容を前に、もはや逃げることさえ忘れ、ただその場にへたり込むことしかできなかった。

俺はガイアタイタンの右腕をゆっくりと振り上げた。
オリハルコンの超巨大な剣が天に掲げられる。
その切っ先が太陽の光を反射し、地上に絶望的な輝きを落とした。

「……これがアルカディアだ」
俺は静かに呟いた。
「これが、俺たちの国だ」

そして、その剣を振り下ろした。
ヴァルケンハインの本陣、その『横』の何もない大地に向かって。

ゴオオオオオオオオオオオオッ!

空気が断裂する。
剣が振り下ろされた先の大地は、まるで神の怒りに触れたかのように、一直線に地平線の彼方まで断裂した。
深さ数百メートル。
幅数十メートル。
終わりの見えない巨大な渓谷が、一瞬にしてそこに生まれたのだ。

俺は帝国軍を直接攻撃しなかった。
ただ彼らの目の前で、この星の大地をチーズのように切り裂いてみせただけだ。
だが、その一撃はどんな虐殺よりもどんな破壊よりも雄弁に、彼らの心に絶対的な真実を刻みつけた。
――我々は、決して神には勝てない。

静寂。
戦場を支配していた最後の悲鳴さえも消え去った。
残されたのは風の音と、帝国兵たちの絶望的な喘ぎだけ。
やがて一人の兵士がその場に膝から崩れ落ち、天を仰いで祈りを捧げ始めた。
それは伝染した。
一人、また一人と兵士たちは武器を捨て大地にひれ伏し、自分たちの理解を超えた神の御業に、ただ許しを乞うように祈り始めたのだ。

一万の帝国最強の軍勢の、完全な戦意喪失。
後方でその全てを見ていたヴァルケンハインもまた、馬上から力なく崩れ落ちていた。
彼の鉄仮面は砕け散っていた。
その顔に浮かんでいたのは、もはや将軍としての誇りも虐殺者としての狂気もなかった。
ただ一人の人間としての、純粋な、そして絶対的な畏怖だけだった。

俺はガイアタイタンの巨体から静かに彼らを見下ろした。
決戦は終わった。
それは勝利という言葉さえ陳puに聞こえるほどの、完全な決着だった。
俺は彼らの命を奪わなかった。
ただ、彼らの『戦う』という意志そのものを、この大地から消し去ったのだ。

俺はガイアタイタンの活動を停止させ、その巨体を再びアルカディアの国土へと還していく。
大地は元の穏やかな姿を取り戻していく。
だが、そこに刻まれた巨大な傷跡――神が大地を切り裂いた痕だけは、永遠に消えることはないだろう。
この戦いの、そしてアルカディアという神国の誕生を後世に語り継ぐための記念碑として。
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