スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ

文字の大きさ
87 / 87

第88話:仲間たちの奮戦

しおりを挟む
俺が一世一代の賭けに出ている頃、アルカディア村の他の場所でも仲間たちの死闘は続いていた。

東地区。
リズベットは岩の巨人『マウンテン』と壮絶なパワーの応酬を繰り広げていた。
「おおおおおっ!」
マウンテンがビルほどもある岩の腕を振り下ろす。その一撃は大地を砕き、衝撃波だけで周囲の建物を吹き飛ばすほどの威力を持っていた。
「でけえだけじゃアタシには勝てねえんだよ!」
リズベットはその巨腕を正面からオリハルコンのウォーハンマーで受け止める。
ドッゴオオオオオン!
二つの神話級の力が激突し、凄まじいエネルギーが嵐のように吹き荒れた。

「ぐ……っ!」
さすがのリズベットもその圧倒的な質量に、膝がわずかに沈む。
「砕けよ、矮小なるドワーフ!」
マウンテンはさらに力を込め、リズベットを押し潰そうとする。

だが、リズベットは笑っていた。
「へっ、これだから脳筋は単純で助かるぜ」
彼女はハンマーを握る手にさらに力を込めた。
神匠の権能を解放する。
「――お前の体、アタシによこしな!」
彼女のオーラがハンマーを通じてマウンテンの巨体へと流れ込んでいく。
それは破壊の力ではない。
金属や鉱物の構造を支配し再構築する、神匠だけが使える究極の『支配権能』。

「な……!? 我が体が……言うことを……!」
マウンテンの顔に初めて焦りの色が浮かんだ。
彼の岩でできた体が、彼の意志に反してギシギシと軋み始める。
「てめえの体を作ってるそのカチコチの石ころはなあ、アタシにとってはただの粘土なんだよ!」
リズベットは叫んだ。「そしてアタシは粘土を好きな形にこねるのが大得意でな!」

彼女のウォーハンマーが黄金色の光を放つ。
マウンテンの巨腕が内側からありえない形に捻じ曲がっていく。
岩が金属のように溶け、そして再結晶化していく。
「やめろ……やめろおおおおっ!」
マウンテンの悲痛な叫び。

そして数秒後。
彼の巨大な腕はその形を完全に変えていた。
それはもはや腕ではなかった。
自らの岩の体を締め上げる、巨大な『檻』へと変貌していたのだ。
「……馬鹿な。我が、この絶対の力が……」
完全に動きを封じられたマウンテンは、信じられないという顔で自らの変貌した体を見下ろしていた。

「終わりだ、石ころ野郎」
リズベットは汗を拭うと、とどめの一撃を叩き込んだ。
「神匠最終奥義――アトミック・ノヴァ!」
ハンマーが檻の中のマウンテンの核(コア)だけを正確に叩き割る。
岩の巨人はその形を保てなくなり、轟音と共にただの瓦礫の山へと崩れ落ちていった。

西地区。
シルフィは蛇の髪の魔女『メデューサ』の幻術と呪術の猛攻に晒されていた。
「あらあら、可愛いエルフさん。もうお終いかしら?」
メデューサが妖艶に笑う。彼女の髪の蛇たちが一斉に石化の邪眼をシルフィへと向けた。
「……!」
シルフィは咄嗟に聖銀樹の繊維で織られたローブのマントでその視線を遮る。
マントがわずかに硬化したが、完全に石になることは防いだ。

「聖なる力……厄介ですわね。ですが、いつまで持ちますことやら」
メデューサはさらに無数の毒蛇を召喚し、シルフィへと殺到させる。
シルフィは聖なる光の矢でそれらを一体一体確実に射抜いていく。
だが、その数はあまりにも多い。
シルフィの額にじわりと汗が滲む。
このままではジリ貧。矢が尽きるか精神力が尽きるか、どちらが先か。

「……私の故郷を、私の愛する村を、あなたのような邪悪な存在に好きにはさせません!」
シルフィは意を決した。
彼女は弓を地面に置いた。
そして懐から一枚のエメラルドに輝く葉を取り出した。
『エリクサーリーフ』。

彼女はその葉を食べるのではなく、自らの胸の中心にそっと当てた。
そしてエルフの古の言葉で祈りを捧げ始めた。
それはエルフの森の最上位の巫女にしか受け継がれない禁断の秘術。
自らの生命力を触媒にして、自然界のすべての生命エネルギーを一時的にその身に宿す最終奥義。
『生命賛歌(ライフ・シンフォニー)』。

「――光よ、集え!」
シルフィの体から眩いほどの翠色の生命の光が溢れ出した。
その光は周囲の瓦礫の下でかろうじて生きていた草花や木々の生命力を吸収し、一つの巨大な光の奔流となっていく。
彼女の銀色の髪は光を吸って緑色に輝き、その背中からは光でできた蝶のような美しい翼が生えた。
その姿はもはやただのエルフの巫女ではない。
生命そのものを司る女神の化身だった。

「な……!? あなた、一体何を……!」
メデューサの顔から初めて余裕の笑みが消えた。
シルフィは答えない。
ただ、その慈愛に満ちた、しかし有無を言わせぬ女神の瞳でメデューサを見据えた。
そしてその手を静かにメデューサへと差し伸べた。

「――土に還りなさい」

シルフィの手のひらから凝縮された生命の光がレーザーのように放たれた。
それはあらゆる呪いを、邪悪を、その根源から浄化し無に還す絶対の浄化の光。
「いやあああああああっ!」
メデューサは断末魔の悲鳴を上げた。
彼女の蛇の髪も美しい肉体も、その聖なる光を浴びて塵となり、そしてその塵さえもが光の中に溶けて消えていった。

後に残されたのは、邪悪が消え去り元の静けさを取り戻したアルカディアの街並みと、光の翼を静かに収め、その場に膝をつくシルフィの儚い姿だけだった。
彼女はその命のほとんどを使い果たしていた。
だが、その顔には故郷を、そして愛する人たちを守り抜いた満足げな笑みが浮かんでいた。

仲間たちの命を賭した奮戦。
その尊い勝利が、俺の最後の切り札が発動するための時間を稼いでくれていた。
俺の胸にブレードの刃が触れるその刹那。
俺は心の中で叫んだ。

「――今だ、アルカディア!」

俺の最後の命令に、この国そのものが応えた。
俺たちの最後の反撃が今、始まる。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!

こはるんるん
ファンタジー
「アッシュ、お前には完全に失望した。もう俺の跡目を継ぐ資格は無い。追放だ!」  主人公アッシュは、世界最強の冒険者ギルド【神喰らう蛇】のギルドマスターの息子として活躍していた。しかし、筋力のステータスが80%も低下する外れスキル【植物王(ドルイドキング)】に覚醒したことから、理不尽にも父親から追放を宣言される。  しかし、アッシュは襲われていたエルフの王女を助けたことから、史上最強の武器【世界樹の剣】を手に入れる。この剣は天界にある世界樹から作られた武器であり、『植物を支配する神スキル』【植物王】を持つアッシュにしか使いこなすことができなかった。 「エルフの王女コレットは、掟により、こ、これよりアッシュ様のつ、つつつ、妻として、お仕えさせていただきます。どうかエルフ王となり、王家にアッシュ様の血を取り入れる栄誉をお与えください!」  さらにエルフの王女から結婚して欲しい、エルフ王になって欲しいと追いかけまわされ、エルフ王国の内乱を治めることになる。さらには神獣フェンリルから忠誠を誓われる。  そんな彼の前には、父親やかつての仲間が敵として立ちはだかる。(だが【神喰らう蛇】はやがてアッシュに敗れて、あえなく没落する)  かくして、後に闘神と呼ばれることになる少年の戦いが幕を開けた……!

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

ゴミスキルと追放された俺の【模倣】が【完全模倣】に覚醒したので、最高の仲間たちと偽りの英雄パーティーに復讐することにした

黒崎隼人
ファンタジー
主人公・湊は、劣化コピーしかできない【模倣】スキルを持ちながらも、パーティー「紅蓮の剣」のために身を粉にして働いていた。しかし、リーダーの海斗に全てのスキルを奪われ、凶悪な魔物が巣食うダンジョンの最深部に置き去りにされてしまう。 死を覚悟した湊だったが、その瞬間、唯一残ったスキルが【完全模倣】へと覚醒。それは、一度見たスキルを劣化なく完全コピーし、半永久的にストックできる規格外の能力だった。 絶望の淵から這い上がり、圧倒的な力を手に入れた湊は「クロ」と名を変え、過去を捨てる。孤独な精霊使いの少女・楓、騎士団を追われた不器用な重戦士・龍司――虐げられてきた者たちとの出会いを経て、新パーティー「アヴァロン」を結成する。 これは、全てを失った一人の青年が、かけがえのない仲間と共に偽りの英雄たちへ壮絶な復讐を遂げ、やがて本物の伝説へと成り上がる物語。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...