追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ

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第31話:帰還、共有される意志

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重い石の階段を登り切り、再び祠の中から地上へと這い出す。眩しい太陽の光が目に染み、新鮮な森の空気を胸いっぱいに吸い込むと、ようやく生きた心地がした。地下遺跡の、あのひんやりとして埃っぽい、閉ざされた空間の感覚がまだ肌に残っているようだ。

「ふぅ…」

安堵の息をつくと同時に、どっと疲労感が押し寄せてくる。遺跡内部での緊張と、【万物解析】の連続使用による魔力の消耗は、思った以上に大きかったらしい。

俺はテル村への帰路を急いだ。道すがら、頭の中では遺跡での発見がぐるぐると巡っていた。巨大な動力炉、荒らされた研究室、そしてあの石版に刻まれていた衝撃的な内容――生命創造、エーテル制御、異界接続…。これらは、人類が触れてはならない領域の知識だったのではないか? 先日の合成獣(キメラ)は、やはりあの遺跡の研究の産物である可能性が高い。そして、警備ゴーレムの残骸。あの遺跡は、決して安全な場所ではない。

(シルフィとレナには、どこまで話すべきか…)

遺跡の存在や古代技術の可能性は共有すべきだろう。だが、石版に記されていたような危険すぎる情報は、今はまだ伏せておくべきかもしれない。無用な不安を与えるだけだ。それに、あの遺跡にはまだ多くの謎と危険が残されている。再び調査に向かうにしても、十分な準備と、そして仲間との連携が必要になるだろう。

そんなことを考えながら歩いているうちに、見慣れたテル村の柵が見えてきた。俺の姿を見つけると、見張り番をしていた村の若者が駆け寄ってきた。
「カイトさん! お帰りなさい! ご無事でしたか!」
「ああ、問題なかったよ。留守中、何か変わったことは?」
「いえ、特に何も。拠点建設も順調に進んでいますよ。シルフィさんとレナさんも、心配して何度も様子を見に来てました」

それを聞いて、少し心が温かくなる。俺を待っていてくれる仲間がいる。その事実が、疲れた体に力を与えてくれるようだった。

家の扉を開けると、中にいたシルフィとレナが、弾かれたように顔を上げた。
「カイト!」
「おかえり!」
二人は同時に駆け寄り、俺の無事な姿を見て、心底ほっとした表情を浮かべた。
「心配しました…! 何もなくて、本当によかったです!」シルフィが安堵の息をつく。
「ったく、遅かったじゃねーか! 何かあったのかと思ったぞ!」レナはぶっきらぼうな口調だが、その声には心配の色が滲んでいた。

「ああ、すまない。少し長居してしまった。でも、大丈夫だ。大きな収穫があったぞ」
俺は二人を安心させるように微笑み、囲炉裏のそばに腰を下ろした。シルフィがすぐにお茶を淹れてくれる。その温かさが体に染み渡った。

拠点建設は順調に進んでいること、村に特に変わったことはなかったことなどを二人から聞き、俺は今回の遺跡調査の結果を話し始めた。

「あの祠の地下には、予想通り、広大な古代遺跡が広がっていた」
俺がそう切り出すと、シルフィとレナは息を呑んで聞き入った。
「内部には、巨大な動力炉のような装置や、研究室と思われる部屋があった。おそらく、数千年前に放棄されたものだろう。そして…先日の合成獣(キメラ)は、やはりあの遺跡と関係がある可能性が高い」
「やっぱり…!」レナが悔しそうに呟く。
「研究室のような場所には、争ったような痕跡や、壊れた警備用のゴーレムもいた。遺跡は何者かによって荒らされ、放棄されたのかもしれない」

俺は、遺跡の危険性も隠さずに伝えた。罠や、まだ機能しているかもしれない防衛システム。そして、そこに眠るであろう未知の技術や知識の、計り知れない力と危険性。

「だが、同時に、大きな可能性も感じた。あの遺跡には、俺たちが強くなるためのヒントや、この村をもっと豊かに、そして安全にするための技術が眠っているかもしれない」

そして、俺は懐から、遺跡で見つけた遺物をいくつか取り出して見せた。まずは、あの黒い立方体。
「これは、空間収納ボックスというらしい。古代の魔道具だ。見ててくれ」
俺は解析した通りに魔力を操作すると、立方体の表面が淡く光り、中に物を出し入れできる空間が現れた。
「わぁ…! すごい!」
「なんだこれ! 便利じゃねーか!」
シルフィとレナは目を丸くして驚いている。実用的なアイテムは、やはり反応が良い。

次に、用途不明の金属製の道具と、数枚の石版を取り出した。
「これも遺跡で見つけたものだ。この道具が何なのか、まだ分からない。この石版には古代文字が刻まれているが、解読するには時間がかかりそうだ」
俺は石版の具体的な内容には触れず、今後の調査課題であることを示唆するに留めた。二人は、古代の遺物を興味深そうに眺めている。

「今回の調査で分かったのは、俺たちの知らない古代の力と、そして未知の脅威が、すぐ近くに存在するということだ」俺は二人を真っ直ぐに見据えて言った。「だからこそ、俺たちは、まず拠点建設を最優先で進めなければならない。あそこを完成させれば、村の安全は格段に上がるはずだ。そして、俺たち自身も、もっと強くならなければならない。シルフィは精霊魔法を、レナは月光狼の力を、俺はこの【万物解析】を、もっと磨き上げる必要がある」
「はい!」シルフィが力強く頷く。
「おう! やってやるぜ!」レナも拳を握りしめる。

「拠点建設と並行して、遺跡から持ち帰ったこれらの情報を解析していく。そして、十分な準備ができたら、また遺跡の調査に向かいたい。ただし、次は三人でだ」
「三人で…」
「ああ。あの遺跡は、一人で探索するには危険すぎる。それに、シルフィの魔法やレナの力があれば、きっと俺だけでは見つけられない発見や、乗り越えられない困難も突破できるはずだ」

俺の言葉に、シルフィとレナは顔を見合わせ、そして力強く頷いた。
「はい! カイトのお役に立てるよう、精一杯頑張ります!」
「おう! 任せとけ! どんな危険な場所でも、あたしがついてるぜ!」

拠点建設という目に見える目標に加え、遺跡の謎の解明という、新たな大きな目標が生まれた。それは危険を伴う道かもしれないが、三人で力を合わせれば、きっと乗り越えていける。俺たちの絆は、この日の誓いによって、さらに固く結ばれたのだ。

囲炉裏の火が、三人の決意を映し出すように、力強く燃えている。俺は、懐にしまったままの、あの不気味な黒い魔石の存在を思い出し、気を引き締めた。解明されていない脅威への警戒を怠らず、しかし前を向いて、俺たちは次なる一歩を踏み出す。

辺境の物語は、拠点整備と遺跡探索という二つの大きな流れと共に、いよいよ本格的な展開を迎えようとしていた。
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