追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ

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第73話:覚醒の光、迫る殲滅者

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けたたましい警報音が鳴り響く中、封印の間の壁に隠されていた複数の扉が開き、そこから銀色の巨体が次々と現れた! それは、先ほど情報保管庫で遭遇した中型ゴーレムよりもさらに大型で、両腕には回転式のガトリング砲のような武器や、高熱を発するブレードなどが装備されている。その数は、ざっと見ただけでも10体以上。赤い単眼センサーが一斉に俺たちを捉え、広間は一瞬にして絶対的な殺意で満たされた。

「警告! 最終防衛システム作動! 侵入者を完全殲滅スル!」

抑揚のない機械音声が、広間中に響き渡る。完全に包囲された。しかも、相手はこれまでの警備ゴーレムとは比較にならない、明らかに殲滅を目的とした戦闘マシンだ。

「…まずいな、これは」
俺は【万物解析】で敵戦力を分析しながら、冷や汗が背中を伝うのを感じた。一体一体が、先ほどの中型ゴーレム以上の戦闘能力を持っている。数も圧倒的だ。正面からぶつかれば、勝ち目はない。

「カイト! どうする!?」レナが叫ぶ。
「シルフィさん!」シルフィも、顔面蒼白になりながら杖を構えている。

俺たちの背後には、目覚めようとしている少女が眠る『揺り籠』がある。退路はない。

「やるしかない! 『揺り籠』を背に円陣を組め! 各個撃破は狙わず、防御と妨害に徹して時間を稼ぐぞ!」

俺の指示で、三人はクリスタルの棺を背にする形で小さな円陣を組んだ。レナが前衛、俺とシルフィが左右を固める。

「来い、鉄クズども!」
レナが吼え、戦闘が開始された!

ゴーレム部隊は、容赦なく攻撃を開始してきた。アームキャノンからエネルギー弾が雨あられと降り注ぎ、高熱ブレードが空気を切り裂きながら迫る!

「【エアロ・シールド・マキシマム】!」
シルフィが渾身の力で風の盾を展開するが、ゴーレムの猛攻の前に、盾は激しくひび割れ、長くは持ちそうにない!

「おりゃあああ!」
レナが部分獣化を発動し、驚異的なスピードでゴーレムの一体に飛びかかる! 改良された短剣と鋭い爪が装甲に叩きつけられるが、火花を散らすだけで、決定的なダメージには至らない! 逆に、ゴーレムの巨腕の一撃を受け、レナの体が壁際まで吹き飛ばされる!

「レナ!」
「ぐっ…! へ、平気だ!」
レナはすぐに立ち上がるが、口の端から血が流れている。月光狼のタフさをもってしても、このゴーレムの攻撃は重い。

俺も試作した高周波音発生装置や粘着除去剤を使ってみるが、強化されたゴーレムには効果が薄い。短剣で関節部を狙うが、装甲が厚く、動きも素早いため、なかなか隙を突けない。

数で勝り、性能でも上回る敵の猛攻の前に、俺たちの陣形は徐々に崩され、追い詰められていく。レナは複数のゴーレムに囲まれ、シルフィの魔力も尽きかけている。俺自身も、ゴーレムの腕に捕まりそうになり、回避するのが精一杯だ。

(これまで、か…!?)

仲間を守ることも、この少女を助けることもできずに、ここで終わるのか…? 諦めにも似た感情が、俺の心をよぎった、その瞬間だった。

カッ!!!!

背後にある『揺り籠』が、突如として、太陽にも匹敵するほどの眩い光を放った! 広間全体が、視界を奪うほどの強烈な、しかしどこか温かく、力強い光で満たされる!

「うわっ!?」
「な、何!?」

俺もレナもシルフィも、思わず腕で目を覆う。ゴーレムたちも、その予期せぬ光に動きを止めたようだった。

そして、光の中心――クリスタルの棺の中で、数千年の眠りについていた銀髪の少女が、ゆっくりと、その重い瞼(まぶた)を開いた。

長いまつ毛が震え、現れたのは、夜空の最も深い青を映したかのような、美しい瑠璃色の瞳。その瞳には、深い叡智の色と、長い眠りから覚めたばかりの、子供のような純粋な戸惑いが宿っていた。

少女が目覚めた瞬間、まるでダムが決壊したかのように、彼女の身体から、周囲の空間そのものを震わせるほどの、計り知れないほど膨大で、清浄な魔力が奔流となって溢れ出した! それはエーテルの力なのか、それとも彼女自身が持つ固有の魔力なのか、俺の【万物解析】ですら捉えきれない、未知のエネルギー。

その圧倒的な魔力の奔流に直接晒されたゴーレムたちは、まるで強力なEMP攻撃を受けたかのように、一斉にその動きを停止させた! 赤いセンサーの光が不規則に明滅し、関節部から火花が散る。そして、完全に機能を停止し、ただの金属の塊となって、その場に立ち尽くした。

「…………」

警報音も、戦闘音も消え失せ、広間には再び静寂が戻った。残されたのは、呆然と立ち尽くす俺たち三人と、眩い光の名残を纏いながら、ゆっくりと体を起こした銀髪の少女だけだった。

少女は、まだ状況が飲み込めていないのか、戸惑った表情で周囲を見回し、そして、その瑠璃色の瞳を、まっすぐに俺に向けた。

数千年の時を超えて。古代の研究所の最深部で。

彼女は、か細く、しかし凛とした、鈴の音のような声で、最初の言葉を発した。

「……あなたは…誰…?」

覚醒した古代の少女。機能停止した殲滅者たち。そして、彼女を巡る数多の謎。辺境領主カイトの物語は、この劇的な出会いによって、予測不能な新たな局面へと、大きく舵を切ることになった。

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