死闘を求めた戦闘狂、異世界で最強スキル【闘神】を授かる 〜強敵と戦うほど無限に強くなるので、神だろうが殴りに行きます〜

夏見ナイ

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第二十二話 王都の洗礼

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俺たちはリリアナの案内に従い、王都の中級冒険者たちが利用するという宿「獅子の寝床」亭へと向かった。
石造りの頑丈な四階建て。一階は酒場を兼ねており、昼間だというのに多くの冒険者で賑わっていた。
俺たちは、それぞれ部屋を確保すると、まずは腹ごしらえと情報収集のために一階の酒場へと降りた。

エールと、見るからに美味そうな肉の塊が乗ったプレートを注文する。
スタートニアの安宿とは比べ物にならない味と活気だ。

「へへっ、やっぱ都会は違うな! 飯も酒も最高だぜ!」
ガロウが、骨付き肉にかぶりつきながら満足げに唸る。
リリアナも、久しぶりのまともな食事に頬を緩ませていた。

俺は黙々と食事を進めながら、周囲の会話に耳を澄ませていた。
「Aランクパーティ『銀翼の鷲』が、北のダンジョンから帰還したらしいぞ」
「本当か! 今回はどんな宝を持ち帰ったんだ?」
「それより、騎士団の模擬戦は見に行ったか? 副団長のアレクシス様は、相変わらず化け物じみた強さだったぜ」

飛び交う会話のレベルが、これまでとは全く違う。
Aランクパーティや騎士団の副団長。そのどれもが、今の俺たちの遥か上にいる存在だ。
俺の闘争心が、心地よく刺激されるのを感じた。

俺たちが食事を始めてから、三十分ほど経った頃だった。
酒場の入口が騒がしくなり、一組のパーティが入ってきた。
リーダー格であろう、派手な赤い鎧を纏った長身の剣士。その後ろに、妖艶な雰囲気の女魔術師、影の薄い小柄な盗賊、そして神聖なオーラを纏った僧侶が続く。
バランスの取れた、いかにも手慣れたパーティだった。

彼らが胸につけているギルドカードは、銀色。Bランク冒険者の証だ。
彼らが現れると、酒場にいた他の冒険者たちの間に、わずかな緊張が走った。この酒場では、彼らが顔役といったところなのだろう。

「よう、マスター。いつもの席は空いてるか?」
リーダーの剣士が、尊大な態度で店主に声をかける。
そして、その目が、俺たちのテーブルで止まった。正確には、リリアナの姿に。

剣士の目に、下卑た光が宿った。
彼は仲間たちに何かを囁くと、にやにやと笑いながら俺たちのテーブルへと近づいてきた。

「よう、新顔。いい女連れてるじゃねえか」
剣士は、俺たちを見下ろしながら言った。その声には、明らかな侮蔑と優越感が滲んでいる。
リリアナが、不快そうに眉をひそめた。

ガロウが、食べていた骨付き肉をテーブルに叩きつけた。
ゴッ、という鈍い音が響く。
「……なんだ、てめえ。誰に断って話しかけてやがる」
ガロウの低い声には、明確な殺気が込められていた。

だが、剣士は怯まなかった。
「ハッ、威勢のいい獣人だな。俺は『紅蓮の牙』のリーダー、ザイードだ。この辺りで、俺の名前を知らねえ奴はいねえ。お前らこそ、どこの馬の骨だ?」

「闘神旅団だ。覚えとけ」
ガロウが答える。
その名を聞いたザイードは、一瞬考え込むような顔をしたが、やがて何かを思い出したように、さらに下卑た笑みを浮かべた。

「ああ、思い出したぜ。辺境のギルドでワイバーンを狩ったとかいう、成り上がりの田舎者パーティか。噂は聞いてるぜ。運良く大物を狩って、いい気になってるらしいな」

どうやら、俺たちの噂は、もう王都の一部にまで届いているらしい。
そして、それは往々にして、嫉妬と敵意を生む。

「田舎者は、王都のルールってもんを教わらねえとな。なあ?」
ザイードはそう言うと、リリアナの肩に手を伸ばそうとした。

その瞬間。
ガロウの拳が、テーブルを叩き割らんばかりの勢いで振り下ろされようとした。
だが、その拳は、寸前で空中で静止した。
俺が、ガロウの腕を軽く掴んで止めていたからだ。

「……ジン?」
ガロウが、訝しげな顔で俺を見る。
俺は無言で首を振り、立ち上がった。

そして、ザイードと向き合う。
「……何か用か」
俺の声は、平坦で、何の感情も乗っていなかった。

俺の無感動な態度が、逆にザイードのプライドを刺激したらしい。
「ああ、用ならあるぜ。お前らみたいなぽっと出が、俺たちと同じ空気を吸ってることが気に食わねえ。その女を置いて、さっさとこの街から失せな」

くだらない。
俺は心底、そう思った。
こいつの実力は、せいぜいオークジェネラルと同程度。戦う価値もない。
だが、面倒事を避けるためには、一度、格の違いを思い知らせてやる必要がありそうだ。

俺は小さく息を吐いた。
そして、次の瞬間。俺はザイードの目の前から消えていた。

「なっ!?」
ザイードが驚愕の声を上げる。
俺は、彼の背後に、音もなく立っていた。
そして、彼が腰に差した剣の柄に、そっと指を添える。

「……お前の剣、俺が今抜いて、お前の心臓を貫くこともできるぞ」
俺は、ザイードの耳元で、静かに囁いた。

ザイードの全身が、硬直した。
背後から、死神に鎌を突きつけられたかのような、絶対的な恐怖。
冷たい汗が、彼の額を伝い落ちるのが見えた。
彼は、自分がいつ背後を取られたのか、全く理解できていなかった。

「ひっ……!?」
ザイードの仲間たちも、何が起きたのか分からず、ただ狼狽えている。

俺はザイードから離れ、元の席へと戻った。
そして、何事もなかったかのように、食べかけの肉を口に運ぶ。
「もう、俺たちに構うな。次はない」

その言葉が、凍りついた空気を破った。
ザイードは、ぎこちない動きでゆっくりと振り返った。その顔は、恐怖と屈辱で真っ赤に染まっている。
彼は何かを叫ぼうとして、しかし、俺の冷たい視線に射抜かれ、言葉を失った。

彼は、本能で理解したのだ。
目の前の男は、自分とは住む世界の違う、本物の化け物なのだと。

「……行くぞ」
ザイードは、それだけを絞り出すと、仲間たちを促して足早に酒場を去っていった。
その背中は、来た時とは比べ物にならないほど、小さく見えた。

嵐が過ぎ去った後のように、酒場には静寂が訪れた。
周囲で見ていた冒険者たちは、畏怖の念を込めた目で、俺たちのテーブルを見ている。

ガロウが、腹を抱えて笑い出した。
「カッカッカッ! 見たか、あの顔! 最高に傑作だったぜ!」
リリアナも、安堵したように胸を撫で下ろしていた。

俺は、ただ黙々と食事を続けた。
王都の洗礼。
どうやら、それは俺たちが相手に施すことになったらしい。

だが、こんなものは、ただの余興だ。
俺の目的は、こんなチンピラを黙らせることではない。
この街に眠る、本物の強者と戦うことだ。

俺たちの名は、良くも悪くも、この一件で王都の冒険者たちに知れ渡ることになるだろう。
それは、さらなる面倒事を引き寄せるかもしれない。
あるいは、新たな死闘への扉を開くことになるのかもしれない。

どちらにせよ、望むところだ。
俺は、残っていたエールを飲み干した。
その味は、これから始まる戦いの味を、予感させていた。
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