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第二十五話 初のダンジョン依頼
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謁見の間を出た俺たちは、再び文官に先導され、城内の別室へと通された。
国王からの勅命は、ギルドを介した正式な依頼という形を取るらしい。
その部屋で俺たちを待っていたのは、意外な人物だった。
「よう、小僧ども。王都中央ギルドのマスター代理、バルガスだ。お前らがデカい仕事をやらかすってんで、わざわざ俺がお目付け役として出てきてやったぜ」
スタートニアにいるはずの男が、熊のような巨体を椅子に沈めて不敵に笑っている。どうやら彼は、元々こちらの大物だったらしい。
バルガスは、分厚い資料の束をテーブルに叩きつけた。
「これが『嘆きの坑道』の資料だ。騎士団が持ち帰った、血塗れの報告書だがな」
俺たちはその資料に目を通した。
内容は、凄惨の一言に尽きる。
坑道内部は、強い負の魔力、いわゆる瘴気に満ちている。出現する魔物は、スケルトンやゾンビといった低級アンデッドから、レイスやデュラハンといった高位アンデッドまで多岐にわたる。
そして、騎士団を半壊させたのは、坑道の深部に潜む「何か」だ。生き残った者の証言は曖昧で、ただ「絶望的な影を見た」としか記録されていない。
「通常のアンデッドなら、騎士団の聖騎士どもが苦戦するはずがねえ。だが、ここの奴らは違う。瘴気の影響で異常に強化されてやがる。並の浄化魔法は弾かれ、物理攻撃への耐性も高い。おまけに、倒してもすぐに再生しやがるらしい」
バルガスの説明は、この依頼の異常な難易度を物語っていた。
推奨ランクはB。だが、内容だけ見ればAランクに匹敵するだろう。
「……面白い」
俺の口から、無意識に言葉が漏れた。
再生するアンデッド。絶望的な影。
血が騒ぐ。魂が、戦いを求めて疼いていた。
「面白い、じゃねえよ」
ガロウが、呆れたようにため息をついた。
「こりゃあ、正面から突っ込んでもジリ貧になるだけだぜ。何か対策が必要だな」
「ええ。アンデッドに有効なのは、聖属性の攻撃か、あるいは核となる部分を完全に破壊することです。私の治癒魔法には聖属性が含まれていますが、攻撃に転用するには限界があります」
リリアナが、真剣な表情で分析する。
「準備に三日やる」
バルガスが言った。
「その間に、必要な装備を揃えろ。金はギルドが前貸ししてやる。ただし、失敗すればお前らの首は王の物だと思え。成功すりゃあ、Bランクへの昇格と、一生遊んで暮らせるだけの報酬が手に入るがな」
俺たちは依頼を正式に受諾し、王城を後にした。
宿に戻る道すがら、ガロウがリリアナに話しかけた。
「しかし、嬢ちゃんが王女様だったとはなあ。俺、なんか失礼なことしなかったか?」
「ふふっ。いいえ。ガロウ様は、いつも通り接してくださって、私は嬉しかったですよ」
リリアナは、悪戯っぽく笑った。正体を明かしたことで、彼女の肩の荷が少し下りたのかもしれない。
その日から、俺たちは準備に奔走した。
ガロウは、バルガスの紹介で王都一と名高いドワーフの鍛冶師の元を訪れ、対アンデッド用の銀メッキを施した新しい大盾と、破城槌のような巨大なウォーハンマーを注文した。
リリアナは、王宮の書庫への立ち入りを特別に許可され、坑道の瘴気やアンデッドに関する古い文献を読み漁っていた。さらに、高価な聖水や、聖属性魔法を増幅させる銀の杖を買い揃えていた。
俺は、いつも通りだった。
特別な準備はしない。俺の武器は、この肉体だけだ。
ただ、二人が準備に奔走する姿を、黙って見守っていた。仲間というものが、これほど頼もしく、そして心地よいものだとは、この世界に来るまで知らなかった。
約束の三日後。
俺たちは、万全の準備を整え、王都の西門に立っていた。
嘆きの坑道は、ここから馬車で半日ほどの距離にあるという。
ギルドが用意した馬車に乗り込み、俺たちは目的地へと向かった。
坑道に近づくにつれて、周囲の景色は徐々に生気を失っていく。木々は枯れ、地面はひび割れ、空には不吉な色の雲が垂れ込めていた。
やがて、馬車が止まった。
目の前に、巨大な岩山がそびえ立っている。その中腹に、ぽっかりと空いた巨大な穴。
あれが、嘆きの坑道の入口だ。
入口の周囲には、騎士団が築いたであろう粗末な砦の残骸が残っていた。
そして、穴からは、冷たく、不気味な風が吹き出してくる。それは、死と腐敗の匂いを運んでいた。
瘴気が、目に見えるほど濃い。
「……こいつは、ひでえな」
ガロウが、思わず顔をしかめる。
リリアナも、眉をひそめ、銀の杖を強く握りしめた。
俺は、馬車から飛び降り、穴の前に立った。
奥から感じるのは、無数の死者の気配。そして、そのさらに奥底で眠る、巨大で邪悪な何か。
俺の全身が、武者震いした。
「行くぞ」
俺は、振り返らずに言った。
「ああ」
「はい!」
ガロウとリリアナの、力強い返事が続いた。
俺たちは、一列になって、その闇へと足を踏み入れた。
王の試練。初のダンジョン攻略。
この先に待つのが絶望的な影であろうと、俺たちの歩みを止めることはできない。
闘神旅団の新たな戦いが、今、幕を開けた。
国王からの勅命は、ギルドを介した正式な依頼という形を取るらしい。
その部屋で俺たちを待っていたのは、意外な人物だった。
「よう、小僧ども。王都中央ギルドのマスター代理、バルガスだ。お前らがデカい仕事をやらかすってんで、わざわざ俺がお目付け役として出てきてやったぜ」
スタートニアにいるはずの男が、熊のような巨体を椅子に沈めて不敵に笑っている。どうやら彼は、元々こちらの大物だったらしい。
バルガスは、分厚い資料の束をテーブルに叩きつけた。
「これが『嘆きの坑道』の資料だ。騎士団が持ち帰った、血塗れの報告書だがな」
俺たちはその資料に目を通した。
内容は、凄惨の一言に尽きる。
坑道内部は、強い負の魔力、いわゆる瘴気に満ちている。出現する魔物は、スケルトンやゾンビといった低級アンデッドから、レイスやデュラハンといった高位アンデッドまで多岐にわたる。
そして、騎士団を半壊させたのは、坑道の深部に潜む「何か」だ。生き残った者の証言は曖昧で、ただ「絶望的な影を見た」としか記録されていない。
「通常のアンデッドなら、騎士団の聖騎士どもが苦戦するはずがねえ。だが、ここの奴らは違う。瘴気の影響で異常に強化されてやがる。並の浄化魔法は弾かれ、物理攻撃への耐性も高い。おまけに、倒してもすぐに再生しやがるらしい」
バルガスの説明は、この依頼の異常な難易度を物語っていた。
推奨ランクはB。だが、内容だけ見ればAランクに匹敵するだろう。
「……面白い」
俺の口から、無意識に言葉が漏れた。
再生するアンデッド。絶望的な影。
血が騒ぐ。魂が、戦いを求めて疼いていた。
「面白い、じゃねえよ」
ガロウが、呆れたようにため息をついた。
「こりゃあ、正面から突っ込んでもジリ貧になるだけだぜ。何か対策が必要だな」
「ええ。アンデッドに有効なのは、聖属性の攻撃か、あるいは核となる部分を完全に破壊することです。私の治癒魔法には聖属性が含まれていますが、攻撃に転用するには限界があります」
リリアナが、真剣な表情で分析する。
「準備に三日やる」
バルガスが言った。
「その間に、必要な装備を揃えろ。金はギルドが前貸ししてやる。ただし、失敗すればお前らの首は王の物だと思え。成功すりゃあ、Bランクへの昇格と、一生遊んで暮らせるだけの報酬が手に入るがな」
俺たちは依頼を正式に受諾し、王城を後にした。
宿に戻る道すがら、ガロウがリリアナに話しかけた。
「しかし、嬢ちゃんが王女様だったとはなあ。俺、なんか失礼なことしなかったか?」
「ふふっ。いいえ。ガロウ様は、いつも通り接してくださって、私は嬉しかったですよ」
リリアナは、悪戯っぽく笑った。正体を明かしたことで、彼女の肩の荷が少し下りたのかもしれない。
その日から、俺たちは準備に奔走した。
ガロウは、バルガスの紹介で王都一と名高いドワーフの鍛冶師の元を訪れ、対アンデッド用の銀メッキを施した新しい大盾と、破城槌のような巨大なウォーハンマーを注文した。
リリアナは、王宮の書庫への立ち入りを特別に許可され、坑道の瘴気やアンデッドに関する古い文献を読み漁っていた。さらに、高価な聖水や、聖属性魔法を増幅させる銀の杖を買い揃えていた。
俺は、いつも通りだった。
特別な準備はしない。俺の武器は、この肉体だけだ。
ただ、二人が準備に奔走する姿を、黙って見守っていた。仲間というものが、これほど頼もしく、そして心地よいものだとは、この世界に来るまで知らなかった。
約束の三日後。
俺たちは、万全の準備を整え、王都の西門に立っていた。
嘆きの坑道は、ここから馬車で半日ほどの距離にあるという。
ギルドが用意した馬車に乗り込み、俺たちは目的地へと向かった。
坑道に近づくにつれて、周囲の景色は徐々に生気を失っていく。木々は枯れ、地面はひび割れ、空には不吉な色の雲が垂れ込めていた。
やがて、馬車が止まった。
目の前に、巨大な岩山がそびえ立っている。その中腹に、ぽっかりと空いた巨大な穴。
あれが、嘆きの坑道の入口だ。
入口の周囲には、騎士団が築いたであろう粗末な砦の残骸が残っていた。
そして、穴からは、冷たく、不気味な風が吹き出してくる。それは、死と腐敗の匂いを運んでいた。
瘴気が、目に見えるほど濃い。
「……こいつは、ひでえな」
ガロウが、思わず顔をしかめる。
リリアナも、眉をひそめ、銀の杖を強く握りしめた。
俺は、馬車から飛び降り、穴の前に立った。
奥から感じるのは、無数の死者の気配。そして、そのさらに奥底で眠る、巨大で邪悪な何か。
俺の全身が、武者震いした。
「行くぞ」
俺は、振り返らずに言った。
「ああ」
「はい!」
ガロウとリリアナの、力強い返事が続いた。
俺たちは、一列になって、その闇へと足を踏み入れた。
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この先に待つのが絶望的な影であろうと、俺たちの歩みを止めることはできない。
闘神旅団の新たな戦いが、今、幕を開けた。
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