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第五十八話 激闘の果てに
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神々の墓場から脱出した俺たちは、文字通り死の淵から生還した。
俺の体はザラガスとの死闘とダンジョンからの決死の脱出で限界を超えていた。意識は朦朧とし、ガロウの肩に担がれる形でなんとか山脈を下りていったのを最後に、俺の記憶は途切れている。
次に俺が目を覚ました時、俺は王都中央ギルドの、あの医務室のベッドの上にいた。
窓から差し込む陽光が眩しい。
体を起こすと驚くほど軽く、そして力がみなぎっているのを感じた。深い傷は全て癒え、消耗した闘気も完全に回復していた。
神々の墓場での死闘は俺の肉体を根本から作り変え、以前とは比較にならないほどの強靭さを与えていた。
「……気づいたか、ジン」
ベッドの脇で、バルガスが葉巻を燻らせながら椅子に座っていた。
その顔には安堵と、そして呆れが混じっている。
「……俺は、どれくらい眠っていた」
「丸三日だ。お前たちが北の街道で血塗れで倒れているのが発見されてな。発見した商人が腰を抜かしてギルドに駆け込んできたんだぜ。『伝説の闘神旅団が、死にかけている』ってな」
どうやら俺たちは最後の力を振り絞って山脈地帯を抜け出した後、力尽きて倒れてしまったらしい。
「ガロウとリリアナは?」
「無事だ。二人ともお前より先に目を覚まして、今は別室で休んでる。特にリリアナ嬢ちゃんは王女様だってのに、お前が目覚めるまでずっとここに付きっきりだったんだぜ。少しは感謝しろよな」
俺は何も言わなかった。
だが、胸の奥に温かいものが込み上げてくるのを感じた。
バルガスは新しい葉巻に火をつけながら、真剣な表情になった。
「……さて、英雄様。聞かせてもらおうか。一体あの魔境で何があったのかをな。お前らが持ち帰った『竜の心臓』と『教団の短剣』は、ギルドと王宮をひっくり返すほどの大騒ぎになってるんだぜ」
俺はバルガスに全てを話した。
第一階層の番人、エンシェント・タイタンとの死闘。
第二階層の精神攻撃と、リリアナの覚醒。
第三階層でのエンシェントドラゴンとの神殺しの戦い。
そして、第四階層で遭遇した黄昏の教団と、彼らが奪い去った『旧神の欠片』。
俺の話が進むにつれて、バルガスの顔から余裕が消え、険しいものへと変わっていった。
全てを話し終えた時、彼は深く長い沈黙に陥った。
「……そうか。御伽話は本当だったか」
やがて、彼は重々しく呟いた。
「黄昏の教団。旧神の復活。……とんでもねえ厄ネタを掘り起こしやがったな、お前らは」
「連中の目的は、何だ」
「世界の破壊だ。奴らは光の神々が創り出したこの秩序ある世界そのものを憎んでいる。全てを混沌と無に帰すこと。それが奴らの唯一にして絶対の教義だ」
バルガスは立ち上がり、窓の外に広がる王都の街並みを見下ろした。
「この件はもはやギルドだけでどうこうできる問題じゃねえ。国王陛下、そして大陸中の国々に伝え、連合を組んで対処する必要がある。……戦争になるかもしれんな」
その言葉は重く響いた。
俺たちの冒険はいつの間にか、世界規模の戦争の引き金となってしまっていた。
その日の午後、完全に回復した俺たちは再び王城の謁見の間へと召集された。
そこには国王と重臣たちだけでなく、騎士団の全幹部、そして王都に滞在していた他のAランク冒-険者たちも集められていた。
誰もが緊張した面持ちで俺たちを見つめている。
俺たちはそこで再び、神々の墓場での出来事を証言した。
俺が淡々と事実を語り、リリアナが古代の文献に基づく知識でそれを補足する。
ホールは水を打ったように静まり返っていた。
俺たちの話が終わった時、国王が立ち上がった。
その顔には為政者としての厳しい決意が浮かんでいた。
「……闘神旅団よ。貴殿らの功績、そして持ち帰った情報、誠に感謝する。貴殿らはこの国を、いや、この世界を救うための最初の英雄となった」
そして、国王はその場にいる全ての者たちに向かって高らかに宣言した。
「これよりアークライト王国は、人類の存亡をかけ黄昏の教団との全面戦争に突入する! ギルド、騎士団、そして全ての民よ! 種族の垣根を越え、今こそ一つになる時だ!」
王の言葉に、ホールは地鳴りのような歓声と決意の声に包まれた。
こうして、歴史は大きく動き出した。
俺たち三人の冒険が、世界を巻き込む巨大な戦いの始まりを告げたのだ。
謁見が終わった後、俺は王城のバルコニーで一人佇んでいた。
英雄。救世主。
そんな大層な呼ばれ方はどうにもむず痒い。
俺はただ強い奴と戦いたかっただけだ。
だが、その渇望がいつの間にか仲間を、そして世界を守るための戦いへと繋がっていた。
「……悪くない」
俺は静かに呟いた。
守るべきものがある。その事実は俺の闘志を、さらに純粋なものへと昇華させてくれる。
その時、背後から足音が聞こえた。
振り返ると、そこにいたのはアレクシスだった。
彼の腕の傷はもう癒えているようだった。
「……話は聞いた」
彼は俺の隣に並び、王都の景色を見下ろした。
「とんでもない相手に目をつけられたものだな」
「ああ」
「……俺も戦う」
アレクシスは真っ直ぐに俺の目を見た。
「騎士団としてこの国を守るためだ。……だが、それだけではない。いつかお前と対等に戦うために。俺ももっと強くならなければならん」
その瞳にはかつてのライバル心だけでなく、同じ脅威に立ち向かう戦友としての光が宿っていた。
俺は差し出された彼の手を強く握り返した。
激闘の果てに、俺たちは多くのものを失い、そして多くのものを得た。
そして、俺たちの戦いは新たなステージへと移ろうとしていた。
世界を舞台にした神々と悪魔の代理戦争。
俺は空を見上げた。
黄昏の教団、七司祭、そして旧神。
どんな敵が待っていようとも、もはや俺に迷いはない。
俺の隣には最高の仲間がいる。そして、頼れる好敵手もいる。
俺たちの伝説はここからが本番だ。
俺はこれから始まるであろう史上最大の死闘の予感に、静かに、しかし激しく胸を躍らせていた。
俺の体はザラガスとの死闘とダンジョンからの決死の脱出で限界を超えていた。意識は朦朧とし、ガロウの肩に担がれる形でなんとか山脈を下りていったのを最後に、俺の記憶は途切れている。
次に俺が目を覚ました時、俺は王都中央ギルドの、あの医務室のベッドの上にいた。
窓から差し込む陽光が眩しい。
体を起こすと驚くほど軽く、そして力がみなぎっているのを感じた。深い傷は全て癒え、消耗した闘気も完全に回復していた。
神々の墓場での死闘は俺の肉体を根本から作り変え、以前とは比較にならないほどの強靭さを与えていた。
「……気づいたか、ジン」
ベッドの脇で、バルガスが葉巻を燻らせながら椅子に座っていた。
その顔には安堵と、そして呆れが混じっている。
「……俺は、どれくらい眠っていた」
「丸三日だ。お前たちが北の街道で血塗れで倒れているのが発見されてな。発見した商人が腰を抜かしてギルドに駆け込んできたんだぜ。『伝説の闘神旅団が、死にかけている』ってな」
どうやら俺たちは最後の力を振り絞って山脈地帯を抜け出した後、力尽きて倒れてしまったらしい。
「ガロウとリリアナは?」
「無事だ。二人ともお前より先に目を覚まして、今は別室で休んでる。特にリリアナ嬢ちゃんは王女様だってのに、お前が目覚めるまでずっとここに付きっきりだったんだぜ。少しは感謝しろよな」
俺は何も言わなかった。
だが、胸の奥に温かいものが込み上げてくるのを感じた。
バルガスは新しい葉巻に火をつけながら、真剣な表情になった。
「……さて、英雄様。聞かせてもらおうか。一体あの魔境で何があったのかをな。お前らが持ち帰った『竜の心臓』と『教団の短剣』は、ギルドと王宮をひっくり返すほどの大騒ぎになってるんだぜ」
俺はバルガスに全てを話した。
第一階層の番人、エンシェント・タイタンとの死闘。
第二階層の精神攻撃と、リリアナの覚醒。
第三階層でのエンシェントドラゴンとの神殺しの戦い。
そして、第四階層で遭遇した黄昏の教団と、彼らが奪い去った『旧神の欠片』。
俺の話が進むにつれて、バルガスの顔から余裕が消え、険しいものへと変わっていった。
全てを話し終えた時、彼は深く長い沈黙に陥った。
「……そうか。御伽話は本当だったか」
やがて、彼は重々しく呟いた。
「黄昏の教団。旧神の復活。……とんでもねえ厄ネタを掘り起こしやがったな、お前らは」
「連中の目的は、何だ」
「世界の破壊だ。奴らは光の神々が創り出したこの秩序ある世界そのものを憎んでいる。全てを混沌と無に帰すこと。それが奴らの唯一にして絶対の教義だ」
バルガスは立ち上がり、窓の外に広がる王都の街並みを見下ろした。
「この件はもはやギルドだけでどうこうできる問題じゃねえ。国王陛下、そして大陸中の国々に伝え、連合を組んで対処する必要がある。……戦争になるかもしれんな」
その言葉は重く響いた。
俺たちの冒険はいつの間にか、世界規模の戦争の引き金となってしまっていた。
その日の午後、完全に回復した俺たちは再び王城の謁見の間へと召集された。
そこには国王と重臣たちだけでなく、騎士団の全幹部、そして王都に滞在していた他のAランク冒-険者たちも集められていた。
誰もが緊張した面持ちで俺たちを見つめている。
俺たちはそこで再び、神々の墓場での出来事を証言した。
俺が淡々と事実を語り、リリアナが古代の文献に基づく知識でそれを補足する。
ホールは水を打ったように静まり返っていた。
俺たちの話が終わった時、国王が立ち上がった。
その顔には為政者としての厳しい決意が浮かんでいた。
「……闘神旅団よ。貴殿らの功績、そして持ち帰った情報、誠に感謝する。貴殿らはこの国を、いや、この世界を救うための最初の英雄となった」
そして、国王はその場にいる全ての者たちに向かって高らかに宣言した。
「これよりアークライト王国は、人類の存亡をかけ黄昏の教団との全面戦争に突入する! ギルド、騎士団、そして全ての民よ! 種族の垣根を越え、今こそ一つになる時だ!」
王の言葉に、ホールは地鳴りのような歓声と決意の声に包まれた。
こうして、歴史は大きく動き出した。
俺たち三人の冒険が、世界を巻き込む巨大な戦いの始まりを告げたのだ。
謁見が終わった後、俺は王城のバルコニーで一人佇んでいた。
英雄。救世主。
そんな大層な呼ばれ方はどうにもむず痒い。
俺はただ強い奴と戦いたかっただけだ。
だが、その渇望がいつの間にか仲間を、そして世界を守るための戦いへと繋がっていた。
「……悪くない」
俺は静かに呟いた。
守るべきものがある。その事実は俺の闘志を、さらに純粋なものへと昇華させてくれる。
その時、背後から足音が聞こえた。
振り返ると、そこにいたのはアレクシスだった。
彼の腕の傷はもう癒えているようだった。
「……話は聞いた」
彼は俺の隣に並び、王都の景色を見下ろした。
「とんでもない相手に目をつけられたものだな」
「ああ」
「……俺も戦う」
アレクシスは真っ直ぐに俺の目を見た。
「騎士団としてこの国を守るためだ。……だが、それだけではない。いつかお前と対等に戦うために。俺ももっと強くならなければならん」
その瞳にはかつてのライバル心だけでなく、同じ脅威に立ち向かう戦友としての光が宿っていた。
俺は差し出された彼の手を強く握り返した。
激闘の果てに、俺たちは多くのものを失い、そして多くのものを得た。
そして、俺たちの戦いは新たなステージへと移ろうとしていた。
世界を舞台にした神々と悪魔の代理戦争。
俺は空を見上げた。
黄昏の教団、七司祭、そして旧神。
どんな敵が待っていようとも、もはや俺に迷いはない。
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