死闘を求めた戦闘狂、異世界で最強スキル【闘神】を授かる 〜強敵と戦うほど無限に強くなるので、神だろうが殴りに行きます〜

夏見ナイ

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第五十九話 番人の警告

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王都が、戦の匂いに染まり始めていた。
国王による全面戦争の宣言から一ヶ月。アルカディアの街並みは、以前の活気を保ちつつも、その内側に確かな緊張感を孕んでいた。
城壁では兵士たちの訓練の声が一日中響き渡り、市場には武具やポーションを買い求める冒険者たちが溢れかえっている。中央ギルドの依頼ボードには、偵察や物資輸送といった、来るべき戦いに備えるための依頼が数多く貼り出されるようになった。

そして俺たち『闘神旅団』は、その渦の中心にいた。
英雄。救世主。神殺し。
大仰な二つ名と共に、俺たちの名は大陸中に広まりつつあった。
だが、当の俺たちは、そんな喧騒から距離を置くように、それぞれの日々を送っていた。

俺は、騎士団の訓練場にいた。
木剣を構え、俺の目の前に立つのは、騎士団副団長アレクシス。
あの日以来、俺たちは時間を見つけてはこうして手合わせをすることが、半ば日課となっていた。

「……はっ!」
アレクシスの剣が、光の尾を引いて俺に迫る。
以前とは比べ物にならない、鋭さと重み。彼もまた、俺との戦いを経て、確実に強くなっている。
俺はその剣を、同じく木剣で受け流した。
キィン、という甲高い音。
俺たちは言葉を交わさず、ただひたすらに、互いの技を、魂をぶつけ合った。

俺たちの戦いは、もはや殺し合いではない。
互いの全てをぶつけ、互いの限界を探り、そして共に高みを目指すための、純粋な対話だった。
敗北を知った俺にとって、この男との手合わせは、己の現在位置を確かめるための、何よりの道標となっていた。

ガロウは、ギルドに併設された訓練場で、若手の冒険者や騎士団の兵士たちに稽古をつけていた。
「ちげえ! 腰が入ってねえんだよ! 盾ってのはな、ただの板じゃねえ! てめえの覚悟そのものだ!」
彼の指導は荒っぽいが、実戦に裏打ちされたその言葉には、不思議な説得力があった。
かつての一匹狼の傭兵は、今や多くの者たちから慕われる、頼れる兄貴分のような存在になっていた。

リリアナは、王宮の書庫と魔術師ギルドを行き来する日々を送っていた。
エルフの王女としての知識と、神々の墓場での経験。その両方を活かし、彼女は対『黄昏の教団』用の新たな魔法や防御結界の研究に没頭していた。
「教団が用いるのは、古の旧神の力を借りた冒涜的な魔法です。通常の聖属性魔法だけでは、いずれ対抗できなくなります。もっと根源的な、世界の理に働きかけるような術式が必要です」
彼女は、学者たちとの議論の中で、もはやただの可憐な王女ではなく、大陸屈指の魔術研究者としての頭角を現し始めていた。

俺たちは、それぞれが、己のやり方で来るべき戦いに備えていた。
強くなるために。
そして、大切なものを、守るために。

そんな穏やかな、しかし充実した日々が続いていたある日。
大陸各地から、不穏な報せが王都にもたらされ始めた。
南の辺境の村が、一夜にして地図から消えた。
東の古代遺跡で、大規模な発掘作業を行っている謎の集団が目撃された。
西の大国では、教団の思想に共鳴した有力貴族が、反乱未遂を起こして処刑された。
全てが、黄昏の教団の仕業だった。

奴らは、水面下で着実に、そして広範囲に、その根を伸ばしていた。
目的は、ただ一つ。
各地に封印された『旧神の欠片』の捜索と回収。

そして、ついに俺たちの元へ、王国とギルドからの正式な召集命令が下った。
謁見の間に集められた俺たちの前に、巨大な大陸地図が広げられる。
そこには、教団の活動が確認された地点が、赤い印でいくつも記されていた。

「奴らの動きが、ここにきて一つの場所に収束し始めている」
国王が、重々しく口を開いた。
彼が指し示したのは、大陸の東方に広がる、広大な森林地帯。
「エルフの国、『イルミナシル』だ」

その名を聞いた瞬間、リリアナの顔から血の気が引いた。
それは、彼女の故郷だった。

「イルミナシルの森の奥深くには、世界樹と呼ばれる神代の巨木が存在する。古の伝承によれば、その樹には、旧神の中でも特に強大な力を持つ一体の、心臓部が封印されているという」
国王の言葉に、謁見の間が緊張に包まれる。

「教団の次なる狙いは、その世界樹に違いない。我々は、騎士団の主力を派遣する準備を進めている。だが、森の中での戦いは、エルフの民の協力なくしては困難を極めるだろう」
国王は、玉座から降り、リリアナの前に立った。
「リリアナ王女。そして、闘神旅団よ。貴殿らに、先遣隊としてイルミナシルへ向かい、エルフの民と連携し、教団の侵攻を阻止してもらいたい。……引き受けてくれるか」

それは、命令ではなかった。
懇願だった。

リリアナは、震える唇を固く結び、そして、力強く頷いた。
「……御意。我が故郷を、そしてこの世界を、邪なる者たちの好きにはさせません」
その瞳には、もはや王女としての弱さはなかった。
故郷と仲間を守ることを決意した、一人の戦士の光が宿っていた。

俺とガロウは、そんな彼女の隣に立ち、無言で王に頷いてみせた。
俺たちの答えは、決まっている。

新たな任務。
次なる戦場は、エルフの森イルミナシル。
リリアナの故郷を守るための、そして黄昏の教団の野望を打ち砕くための、決戦の地だ。

俺は、静かに闘志を燃やした。
ザラガスは言っていた。自分は七司祭が一人、最弱に過ぎないと。
ならば、このエルフの森には、奴を超える強者が現れるはずだ。
それでこそ、面白い。

俺たちが謁見の間を後にしようとした、その時だった。
「待て」
声をかけてきたのは、アレクシスだった。
彼は、俺の前に立つと、一つの情報を告げた。
「……数日前、王都の北門から、一人の剣士が出立したという報告があった。黒い仮面をつけた、男だそうだ」

その言葉に、俺の全身が、カッと熱を帯びた。
あいつ。
「……どこへ向かった」
「東だ。……おそらく、お前たちと同じ、イルミナシルの森へ」

仮面の剣士、アッシュ。
奴もまた、エルフの森を目指している。
その目的は、何だ。教団の仲間か、それとも。

確かなことは、一つだけ。
俺たちの道は、再び、あの場所で交差する。
俺は、静かに拳を握りしめた。
復讐の機会は、思ったよりも早く訪れるのかもしれない。

俺たちの、新たな旅が始まる。
それは、仲間と故郷を守るための戦い。
そして、俺自身の、過去を乗り越えるための、宿命の戦いだった。
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